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やさしいひと(2025)

 コーヒーを飲みに行こうと思った。

 休みの日に起き上がるのって、どうしてこんなに難しいんだろう。
 起き上がったところで、ごはんを食べてソファーでまた寝ちゃうのがいつものパターン。
 こういうときは、外に出ちゃうのがいちばん手っ取り早い。
 なんとなくまっとうな、”正しい人間”に擬態できるような気がする。
 今日もよく頑張りました。優しいスタンプを押してあげられるような。

 でも、高熱に三日も焼かれた身体は、思ったよりもボコボコで
 あんなにベッドと一緒に過ごしたのに、まだベッドがわたしを呼んでいて、なかなか起き上がれなくて。シャワーを浴びるのも面倒で。

 コーヒーを淹れよう。と思った。
 お湯を沸かして、豆を挽いて。
 それくらいはできるような気がして、なんだか嬉しくなった。


 二〇二五年 一月三日
 やさしいひとになりたい、と思ってふとんを蹴飛ばした。
 コーヒーを飲みに行けないのならば、コーヒーを淹れられる人になりたい。
 わたしのペースで、息をできる人になりたい。
「こうなりたい」と思った一歩手前でもいい。もっと手前の日があってもいい。忘れないで、諦めないでいたら、それでいい。

 やさしいひとになりたい。
 無責任に励ます人よりも、どうせ無責任なら許したい。
 わたしにとって、わたしが思うやさしいひとになりたい。

 たぶんもう、誰かの言葉で迷ったり失ったりしないよう
 わたしが、わたしにとってやさしくいられますように。

 そんなふうに思いながら、今年はコーヒーを飲みたいと思っている。


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▼「誰かの言葉で、もう迷ったり失ったりしたくない」




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