おもちゃ箱と、宝石箱
捨てる勇気をくれ
何事かと思って、LINEを読み進めてみた。
どうやら、結婚式用に”ちゃんとした”パールのピアスを買ったところ
高価な買い物をしたときにもらえる、ちゃんとしたピアスケースをもらってしまったらしい。
そんなこと言われたら捨てられない。
でも実際は、かさばる。難しい。
大きさの割に、あんまり入らない。
小ぶりだけど、旅行に持っていく…ような感じではない。
結婚指輪とか、入ってそうなイメージ。
実物見たことないから知らないけれど。
収納力に対して、ケースがデカすぎるアレ
それはむらさき色のベロアで、やさしい楕円をしていた。
ちょっと、とっておいて
わたしだって、要るか要らないかで言ったら、要らんのだ。
ピアスはたくさん持っているし、百均で買ったアレに、ぽすぽすとピアスを嵌めている。

ダイソーで買いました
チェーンのタイプは、ルピシアの小さい缶に入れている(絡まるから、本当はよくないけれど)

ジングルベルにはポケモンのピアス
キャロルにはそれ以外が入ってる
当然、絡まる
小さくて、1セットしか入らないようなケースは要らんのだ。
わかっている。
だけども、捨てる前に一度撫でたってバチは当たらないのではないだろうか。
そう思って、一度撫でることにした。
実際に会ってみたそれは、思ったよりしっくりと、わたしの手に収まった。
深い夜みたいなむらさき
ちょうどよく重たく、用途としては絶妙にどうしようもないサイズ感なのに
ああ、こんなはずじゃなかったのに。
アレ、1セットしか入らないかと思ったけれど、3つくらい入りそうだ…
ああ、ばかだなァ、と思いながらも捨てる決意ができなくて、持ち帰ってしまった。
そう、捨てる決意はいつでもできる。
3秒でできる。
まあいいではないか。
決断がいつでも、正しくなくたって。
◆
持ち帰ったそれを、部屋に飾った。
ちょうど、ひまわりが枯れてしまったところで、デスクの周りは少しさびしい。
このあいだまで花瓶があったそこへ、そっと置いてみた。

おもちゃ箱みたいなデスクに、少し異物
それなのに、すうっと馴染む。
それは、宝箱みたいだった。
幼いころ、背伸びして憧れた、宝石箱。
祖母から譲り受けた指輪を入れてみた。
大きな黄色、確かめるすべはないけれど、おそらくトパーズ。
それから、おもちゃではないピアスをしまう。
少しだけ持っている、本物の宝石。
それらはどっしりと、深い夜にしまわれた。
大切に、しまわれた。
それはなぜだか大切で、丁寧な生き方のような気がした。
ハンカチひとつずつにアイロンをかけるような、そういう、自分とは違う異次元の美しさ
それがこの、おもちゃ箱みたいな6畳の中の、たった10センチにも満たないくらいの場所に存在していることが、その不釣り合いさが、なぜだかとても愛おしかった。
ああ、大切にしている。大切にされている。
わたしは、大丈夫。
何かあったら、このケースだけ抱えて逃げよう。
これと、はじめしゃちょーのチェキだけ持って逃げよう。
きっと、そうしよう。
もう少し、この丁寧と暮らしてみよう。
捨てるのは3秒だってできる、だいじょうぶ。
もう少し涼しくなったら、またお花を買うでしょうから、置き場に困るかもしれないけれど
どうかそのときまで
反対側を愛している
泣けない夜と、泣かない夜
おとなのふりして、こどもっぽい
優しさと拒絶
おもちゃ箱と、宝石箱
ごちゃごちゃ、がちゃりと暮らすわたしだけれど
少しだけ、丁寧に
少しだけ、大切に
暮らしてみても、いいんじゃないか。
自分には似合わないような美しさをまとってみても
そういうものが似合わないわたしのままでも
好きが好きで
大切が大切で
生きていく、それだけで
不釣り合いのわたしで
いいのではないか、と思っている。

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