半分と欲張り
今日は、遠回りをして帰ろう。
なんだか気分がよかった。
理由は明白で、友達とごはんを食べてきたから。
たっぷりおしゃべりをした相手は、「会社のひと」だったのに
もうすっかり「友達」だ。
線引きがどこにあるのか知らないけれど、わたしは「友達」と呼びたい。
ふたりで延々とおしゃべりできる相手は、漏れなく友達だ。
うれしいなあ、と思う。
あなたの話は、なんでも。
聞いてくれるのも、話してくれるのも。
友情は、恋よりも盲目だ。
気分がいいついでに、散歩をしよう。
少し、遠回りをしよう。
それは、うっとりとするような幸福だった。
*
幸福に片足をずぶりと落として、歩き出そうとしたときに思い出してしまった。
今日は、手紙を書こうと思っていた。
そうだ、コンビニでポストカード印刷をしたかったんだ。
出先で写真を撮ったら、印刷して友達に送るのが好きだった。
いつか一緒に見たいね、と思う相手へ届ける。
コンビニに寄るルートと、遠回りのルートを検索する。
遠回りをしたら、ファミマかローソンを通れない。
大量印刷のときは、セブンよりも、ファミマかローソンがいい。
少し前までは、セブンでしかハガキ印刷できなかったけれど、いまはだいたいのコンビニでできるようになった。
うーん、
散歩よりも印刷のほうが優先順位が高いかな。
もしかしたら今日、印刷したハガキを使いたくなるかもしれない。
万全である、ということはわたしの心を安心させる。
予備のティッシュやハンドソープがあること、
夏のあいだでも、少し厚手の羽毛も用意しておくこと、
家の中に、食べるものがあること。
欲しいときに、手が届くこと。
*
わたしは歩き出した。
遠回りの道を、歩き出した。
*
遠回りの道を半分行って、途中で遠回りを離脱して、いつもの道に戻る。
それから、少し引き返してコンビニに向かった。
わたしは、遠回りもコンビニも、諦めなかった。
ああ、なんと賢くなっただろう。
どちらかを選ばねばならないと思っていた。
遠回りをするならば、いつもの散歩コースをきっちり歩かねば、と思っていた。
引き返すルートは、なんだか美しくない。と思っていた。
ぜんぶ、ぜんぶ勝手だった。
もっと、もっとすなおでよかった。
散歩もしたい、コンビニも行きたい
叶うときは、どっちも選んだらいい。
ただそれだけのことを、なかなかできなかったような、いまもできていないような気がしている。
欲張りに生きよう、と思う。
あんまり気にしないで生きよう、と思う。
思ったより世界は、少なくともわたしの周りは寛大で
わたしが常識の大枠さえ外れなければ、なんでもいいのだ。
大丈夫なのだ。
「すごいね」と言ってくれた友達の声を思い出す。
「すっごくいいね」と笑った自分の声が、身体中を駆け巡っている。

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