【第53話 何であんたがここにいる!?】『ネガティ部!』~美男美女ばかりなのに普通?の俺が入部しても大丈夫なのか!?~
第5章 謎めいた合宿編
第53話 何であんたがここにいる!?
ヤバい、ヤバい、ヤバい……非常にヤバいぞーーーっ!!
バスの揺れが原因とはいえ、俺の唇が舞奈の唇に触れてしまうなんて……なんて恐ろしい『事故』が起きてしまったんだ!?
幸いにも舞奈はまだ目を覚ましていないし、和久塁やモブオ、それに周りのみんなも急な揺れで体勢を崩していて、俺たちを見ている余裕なんてなかったみたいだ。
とりあえず目撃者はいない。
……でも。
舞奈に対して、とてつもない罪悪感が押し寄せてくる。
俺にとっては初めてのキスだ。
もし舞奈にとっても初めてだったら……その相手が、よりにもよって俺だったとしたら申し訳なさ過ぎる!!
好きでもない男が初めての相手なんて……俺は何て取り返しのつかないことを……。
いや、待て。
これは本当にキスと呼べるのか?
急ブレーキで身体が舞奈の方へ倒れ、その拍子に唇が触れただけだ。
そうだ、これは事故なんだ。
よし。
これはお互いに**『ノーカウント』**ということにしよう!!
……って、舞奈の目が開いてるぞーーーっ!!??
「一矢、何がノーカウントなの?」
「ま、まままま、舞奈!? お、お前起きてたのか!? い、いつから目を覚ましていたんだよ!?」
「え? 今だけど? 何で?」
「い、いや……さっきから起こしてたけど全然起きなかったからさ……」
どうやら舞奈は何も気付いていないみたいだ。
はぁぁぁ……良かったぁぁぁ。
「そ、そうなんだ……。私、凄く素敵な夢を見てたんだけどさぁ……」
「どんな夢だったんだ?」
「ケーキやクッキー、それにチョコレートまで次から次へと出てきてね。どれも甘くてすっごく美味しかったの。でも突然……」
「と、突然どうした?」
「食べてたお菓子が急に塩辛くなっちゃってさぁ。それでビックリして目が覚めちゃったの。もう少し続きが見たかったなぁ……」
「へ、へぇ……そうなんだ……」
ヤッバーーーッ!!
そういえば俺、舞奈を起こす前までポテチを食べてたよな!?
もしかして……俺の唇についていたポテチの塩が舞奈の唇に……。
ダメだ。
これ以上考えたら恥ずかし過ぎて、今日一日舞奈の顔をまともに見られなくなりそうだ。
「と、とりあえずもうすぐ合宿所に着くらしいから、降りる準備をしておいた方がいいぞ」
「う、うん……分かった。ペロッ……あれ? 本当に唇が塩辛いような気がするんだけど……」
ドキーーーンッ!!
「あら舞奈、起きたみたいね。それじゃあ布津野君、舞奈も起きたことだし、私と席を代わりましょうか?」
「えっ? ああ、そうだな。代わろう代わろう……」
自分の唇をペロッとされると、さっきの事故を思い出してしまうじゃないか。
ヤバい……。
この合宿の間、俺は平常心でいられるのだろうか?
でも……。
正直に言えば、舞奈とのキスを『ノーカウント』にするのは少しだけ寂しい気もしている。
舞奈の気持ちはともかく、俺の初キスの相手が学園トップクラスの美少女なんだからな。
シチュエーションは最悪だったけど、俺の心の中だけでも『初キスの相手は舞奈』ってことにしてもバチは当たらないような……。
……いやいやいやっ!!
ダメだ!!
やっぱりノーカウントにしよう。
俺だって、いつか本当に好きな人と、お互いに気持ちが通じ合った上でキスをする日が来るかもしれないしな。
はぁぁ……。
俺が子龍先輩みたいなイケメンだったらなぁ……。
もちろん、ちゃんと正面を向いている時限定だけど。
あれだけイケメンなら自分に自信も持てるし、高校生になる前からモテまくって、キスくらい普通に経験していたんだろうなぁ。
もし舞奈にバレたとしても、
『ゴメン。少し唇が触れちゃったね。嫌だったらノーカウントにしてくれていいから』
……なんて爽やかに笑って言えるんだろう。
そこから恋愛に発展する可能性だって――
……止めよう。
考えれば考えるほど虚しくなってくるぜ。
【二年一組 三時限目・子龍視点】
「ハッ、ハッ、ハァックションッ!!」
!?
か、風邪かな?
それとも今日から合宿に行っている一矢君が、僕の噂でもしていたりして……。
いや、もし噂をしていたとしても、きっと悪口だよね。
最近、僕にだけ妙に厳しいからなぁ……。
でも、こんな影が薄くて友達も少ない僕が話題に上るだけでも嬉しいことだけどね。
そういえば一矢君達、そろそろ合宿所に着いた頃かなぁ。
今年の合宿はどんな内容なんだろう?
ボソボソボソ……
あっ、僕がクシャミをしたせいでクラスがざわつき始めた。
きっと授業の邪魔をしてしまったんだ。
皆に迷惑をかけちゃったなぁ……。
申し訳ないし、恥ずかしくて皆の顔が見られないよ……。
「い、今の子龍君のクシャミよね?」(ポッ)
「そ、そうよね!? 今のは間違いなく子龍君だわ!」(ポッ)
「子龍君のクシャミなんて初めて聞いた! 凄くレアじゃない!?」(ポッ)
「久しぶりに仁見の声を聞いたな。クシャミだけど」
「クシャミした瞬間、少し笑ったように見えなかった?」
「子龍君の笑顔なんて見れたら、私もう幸せ過ぎるわ……」(ポッ)
「あ~あ、子龍君と同じクラスで本当に良かったぁ……」(ポッ)
『今日は本当に貴重なものが見られたわねぇ……』
【合宿所前広場】
ハッ、ハッ、ハックションッ!!
「おっ、フツオ。風邪でも引いたのか?」
「い、いや……風邪じゃないと思うけど、一瞬寒気がしたような……。まぁ大丈夫だろ。それに俺はこの二日間、病気になってる暇なんてないからな!!」
さっきの罪悪感のせいかもしれない。
今はとにかく合宿に集中しよう。
ん?
あの広場の壇上で拡声器を持っている人……。
なんか見覚えのある体型というか、立ち姿というか……。
「クズ共! やっと到着したかーーっ!! 待ちくたびれて家に帰ろうかと思ったぞーーっ!! ハーッハッハッハ!!」
なっ!!??
「おーっ、ヒトヤンじゃないかーーっ!! 何をシケたツラしてるんだーーっ!? バス酔いでもしたのかぁ〜!? それともバスの中で誰にも言えないような甘酸っぱい経験でもしたってかぁ〜!?」
ドッキーーーンッ!!
な、な、な、何でっ!?
「何で、ルイルイがこの合宿所にいるんだーーーーーーっ!!??」
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