【初恋保管係】~忘れるためじゃない。いつか笑って返してもらうために~ 第四話 二十年越しの名札(後編)
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第四話 第四話 二十年越しの名札(後編)
結婚式前日、春風が心地よく吹く午後だった。
「緊張するね」
弘子が少し笑う。
「結婚式?」
武志が聞く。
弘子は首を横に振った。
「違う。こっち」
二人は同時に目の前の店を見上げた。
昔と変わらない木造の建物。
少し色あせた看板。
『青葉文具店』
そして、小さく目立たない木札。
『初恋保管係』
「まだあった」
武志が小さく呟く。
「うん」
弘子も嬉しそうに微笑んだ。
二十年前、中学校の卒業式の日。
二人で名札を預けた場所。
約束を残した場所。
その店が、今も変わらずそこにあった。
カラン——。
ベルが鳴る。
「いらっしゃいませ」
店の奥から若い女性が現れた。
梓だった。
「本日はどのようなご用件でしょうか」
武志は少し照れながら言う。
「二十年前に名札を預けました」
梓の表情が少し変わる。
「少々お待ちください」
奥の保管棚へ向かう。
何百もの桐箱が一つひとつ丁寧に並んでいる。
帳簿を開く。
古い文字。
母の筆跡だった。
預かり番号 00051
品名 中学校の名札 二点
返却条件
『二人が結婚する日』
梓は思わず微笑んだ。
「お母さん……」
小さく呟きながら、桐箱を抱えて戻る。
「お待たせしました」
二人の前へ桐箱を置く。
「お預かりしてから、ちょうど二十年になります」
武志と弘子は顔を見合わせた。
「開けてもよろしいですか?」
梓が尋ねる。
二人は静かに頷いた。
蓋を開ける。
そこには二つの名札が並んでいた。
少し色あせている。
角も欠けている。
けれど、二十年前のままだった。
弘子がそっと手に取る。
「懐かしい……」
自然と涙があふれる。
武志も名札を見つめながら笑った。
「こんな小さい名札だったんだな」
「私たちも子どもだったねぇ?」
「うん、そうだな」
しばらく二人は何も話さなかった。
しかし心地の良い沈黙だった。
やがて武志が静かに言う。
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