スマートヴィレッジ・ボルドー
はじめに
ボルドーの郊外が面白いのは、スマートビレッジとワインツーリズムが結合している点だ。日本ではスマートビレッジというと、過疎地のDXや遠隔医療、自治体サービスの効率化が語られがちである。しかしボルドー周辺では、地域の維持・活性化のために、村を維持するために観光客を呼ぶ、観光客を呼ぶためにデジタルを活用する、ワイン生産にテクノロジを活用するという発想が伺える。

スマートビレッジは村を維持し成長させるための手段である
ボルドー周辺には世界的に有名なワイン産地が広がる。一方で、それら多くのワイン村は人口数千人規模の小さなコミュニティであもる。サンテミリオンやメドックなど、特にグローバルに名の知れたワイン醸造所は、世界中の人が訪れる場所になっており、その価値は単なる農村ではなく、世界中から人が訪れる観光資源を持つことにある。
そこで重要になるのがデジタル技術だ。訪問者はスマートフォンひとつでワイナリーを予約し、地域交通の情報を取得し、多言語で観光情報を得ることができる。小さな村でありながら、グローバルな観光客を受け入れる仕組みが整備されている。
スマートビレッジとは、必ずしも最新技術で村を変えることを指さない。ボルドーでみたスマートビレッジは、村の魅力を世界につなげるための仕組みづくりだ。

ワイン街道は、スマートな地域づくりから
ボルドーでは、ワイナリー単体ではなく地域全体で観光を形成している。
今回案内をお願いした、AEVA Tours、ボルドーのスーパー案内人曰く、うまくいっているエリアでは、横のつながりが強くみられる。2000年代には、有名なワイナリーは、基本訪問は不可能だった。だが、老舗のワイナリーが、村の運命をかけて、観光客に門戸を開いたことから、周囲がつづけるようになったという。そして、長く続くボルドーのワイン祭(AEVA Toursのワイン祭りブログ)ばかりでなく、ワインマラソンや様々なイベントを村が一丸となって盛り上げる(もちろん本人たちも楽しんでいるのだろうが)。
日本では、観光というと有名な施設に行くという点の観光になりがちだが、ボルドーで経験できるのは面の観光だ。ワイナリー、レストラン、宿泊施設、農家、歴史的建造物、サイクリング・ルートが一体となってワイン街道を形成している。個々の村は小さくても、エリアをネットワークとして見ると一つの巨大な観光圏になっているため、数日滞在しても飽きることがない。
点を面にする発想は、スマートシティが都市インフラをネットワーク化するのと同じ発想と言えないだろうか。ネットワーク化された観光資源は、コレクティブに人智を結集し、スマートビレッジの独自プラットフォームを構成している。

終わりに
ボルドーのスマートビレッジは、村を都市化する取り組みでは決してない。村らしさを残したまま、デジタル技術によって遠く離れたボルドーに魅了された世界の人々を接続する挑戦である。

ワイン畑や歴史的な街並みは何百年も前から変わらない。一方で予約や交通、観光情報の提供にはデジタルが活用されている。サンテミリオン観光局が提供する地下観光は、オンラインで予約(英語も)することができる。
小さな村にもかかわらず、2020年に訪問したとき以上にシャトーホテルが増加し、敷居が高いと思われていた古城宿泊が一般旅行者にも簡単にアクセス可能になっていた。予約案内も英語とフランス語で併記され、訪問時もホテルの方々皆が英語を話しているのにも驚いた。

宿泊したホテルで借りた自転車は、電気自転車だ。初めて電気自転車に乗り、2時間半、サンテミリオンの村周辺を走り回ったが、景色もよく、風が気持ちよく、あちこちに示される「自転車こっち」のサインが可愛く、心がほんわかした。電気自転車に乗ることになるとは思わなかったが、それなりに暑さを感じた後半だったにもかかわらず楽しい体験となったのは、テクノロジーのおかげだ。

ボルドーのスマートビレッジが目指すのは、あちこちにセンサーやドローンが飛んでいるような街ではないし、最新技術で景観を変えることでもない。その土地ならではの価値を次世代につなぐ仕組みづくりだ。
ボルドーのスマート化は、都市では競争力を高めるために、技術が活用され、村では、地域の個性を守るために存在しているんだなと、改めて「スマート」とは何をいうのか考えさせられた。

謝辞
AEVA Tours、ボルドーのスーパー案内人様。楽しいだけでなく、充実した1週間をありがとうございました。オンラインでの情報収集や予約ができる今の時代でも、我々のニーズを汲み取り設計していただける専門家の視点は、大変助かりました。また、おりに触れ提供くださる現地の知見があったからこそ、単なる訪問にとどまらず、さまざまな視座を得ることにつながりました。
