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義母は「おさぼりさん」と言う

義母が夕飯を作らなくなってきた。
いや、作れなくなってきた頃の話。

家族やケアマネさんが、何度も宅配弁当をすすめていた。

「夕食を毎日作るのは大変でしょう。
宅配弁当って方法もありますよ」

「うちの父も使ってる。
メニューも多いし、美味しいらしいよ」

折り込みチラシや、
ケアマネさんが用意してくれたパンフレットも見せた。

でも返事はいつも同じ。

「えぇ〜。
自分で作ってるから、いらないなぁ」



夕方になると、義父母は自転車で出かける。

近所の中華・ラーメンチェーン店。

ほぼ毎日。

自分で夕食を作っているはずの義母は言う。

「今日は、ちょっとおさぼりさん」

昨日も、一昨日もおさぼりさんだったよ。
とは、ツッコまない。



誰にも言われたことはない。

でも、

「そんなに親の食事が心配なら、
嫁のあんたが作ればいいじゃない」

そんな声を、
私が勝手に聞いていた。

夫も義弟も義父母も、
そんなことは言わない。

たぶん。



どうにだってできた。

義父母のご飯ぐらい、
できる嫁なら作っているだろう。

「作りすぎちゃったから」

そう言って、
手作りのものを持っていけばいい。

昨日の記憶なんてないのだから、
毎日そう言ってもいい。

どうにだってできた。

でも、しなかった。

そんな時間も優しさもなかった。

いや、

そんな優しさが、なかった。



「ただでお弁当が食べられるんだって」

宅配弁当のお試しに申し込んだ。

このまま注文してくれたらいいな、と思って。

「そんな弁当、食べたことない」

と言い出しそうなので、
アンケートも作った。

名前
量 少ない ふつう 多い
味 美味しくない ふつう 美味しい

大きな文字で、
丸をつけるだけ。

「ほら、この前食べて美味しいって言ってたお弁当だよ」

忘れてしまっても、
後から、思い出せるように。




夕食後、
アンケートを回収に行った。

量も味も、

「ふつう」

に丸がついていた。

企みとはちょっと違うけれど、

まぁ、よしとしよう。

その言葉だけが、残った。

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