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暮らしを、心を、ととのえる。

正直に言うと以前の私にとって、
家事は「体力を削るだけの苦行」でしかなかった。

仕事から帰ると、そこはもう一つの戦場。
ストレスと疲れで「布」を身に纏っていることすら耐えられず、帰宅するなり廊下に服をすべて脱ぎ捨て、全裸でキッチンに立ち、野菜を刻んでいたこともある。
油はねの恐怖より、一刻も早く解放されたい執念が勝っていただけだ。

賞味期限なんて見ている暇はない。
全裸で、無心で食材を切り刻む!

洗濯物が山積みになったソファを見ては、
「これ誰が片付けるの?
うちの母でも来ると思ってんの?」と、
夫に八つ当たり!
理不尽に怒られながら、残業からぐったりして帰宅した夫が、無言で溜まった洗い物を片付ける。
まさに、救いようのない地獄絵図。

あの頃の私は、間違いなく人生という名のサウナ室で水風呂なしの「地獄のガマン大会」を強いられていたのだ。

ところが、再就職をひかえた今、
手に入れたのは人生の長い「外気浴」タイム。
時間に余裕ができたことで、
私はある真理にたどり着いた。

「家事って、じつはサウナなんじゃない?」

そう考え直した瞬間、あんなに憎かった日課は、自分をいたわる至福の時間に変わった。

掃除機をかける間はスマホを置き、
頭の中のモヤモヤを吸い取っていく。
お気に入りの家電を相棒に、「いい仕事するね!」と上司気取りで話しかける。

なかでもお気に入りは、
結婚するときに勢いで買った、
バーミキュラのライスポットだ。

正直、買った直後は
「重いし洗うの超めんどくさいし、早く壊れないかな。そうすれば大義名分を持ってレトルトご飯生活にできるのに」
なんて罰当たりなことを思っていた。

いま、そのライスポットで炊き上げる「鯛飯」の香りを嗅いだ瞬間、そんな呪いは消し飛んだ。
鯛の旨みがグッと出たごはん。
夏にはとうもろこしの甘みがはじけるごはん。

手間をかけるって、こういうことかと、
心がととのっていくのがわかる。


家事が楽しくなると、遊び心もわいてきた。
仕事中の夫へ送る、一通のメッセージ。名づけて『今日の晩ごはん・公式メルマガ』だ。
「本日のメニューは◯◯と◯◯です!」
なによりの食いしん坊である夫は、
この「飯テロ」なメルマガを、
きっと喜んでくれている。

すべての家事を終え、きれいになったリビングでソファに沈み込む。
その幸せは、水風呂のあとの外気浴に、
驚くほどよく似ている。

今日も私は、自分の手で自分を整えた!

このお休み期間で私が学んだのは、
「心のゆとりは、自分でつくれる」
ということ。

きっと、社会という名の
「激アツ・サウナ室」に戻れば、
また余裕なんて一瞬で蒸発してしまうだろう。

けれど、今の私には、
この「ととのい」の技術がある。

忙しいときこそ、あえて無心でシンクを磨く。
とっておきのライスポットで、自分を甘やかす。そして、隣にいる夫もしっかり道連れにして、二人で「家事」を楽しんでいく。

家事は、私を削る「労働」ではない。
どんなに忙しい日々の中でも、
自分をリセットして、明日を最高な状態で迎えるための「セルフロウリュ」なのだ。

この学びがあれば、次の一歩も、
きっと私らしく踏み出せる気がする。

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