子ども同士の遊ぶ約束が、まあ、めんどくさい
「ママ、今度の土曜日、〇〇ちゃんとプール行く約束した! 行ってもいい?」
家に帰ってくるなり、小学4年生の娘が言い出した。
「え! どういうこと!?」
思わず額にしわを寄せながら、聞き返してしまった。
子どもが小学生になってから、地味に「面倒だな……」と思うようになったことがある。
それが、子ども同士で交わしてくる「友達と遊ぶ約束」だ。
近所の公園や友達の家なら、まだいい。
でも、少し遠くて、親の付き添いが必要になるような場所となると、話は別である。
娘も小学4年生。
近所で遊ぶくらいなら、携帯電話やGPSを持たせて、帰る時間を決めておけば、子どもたちだけでも大丈夫かなと思っている。
でも、少し遠くへ行くとなると、まだ子どもたちだけで行かせるのは心配だ。
最近、この「どこまでなら子どもだけで行かせるか」の線引きに悩むことが増えてきた。
ましてや今回はプール。
水の事故も心配なので、さすがに子どもたちだけで「行ってらっしゃい!」とは言えないし、そもそもプール施設の規定でもNGだろう。
しかも、約束をしてきた友達は同じクラスではあるものの、私は相手のお母さんの顔も知らない。
一緒にプールへ行くとなれば、当然、親同士も一緒に過ごすことになる。
初対面のお母さんとプール……。
なかなかハードルが高い。
「う~ん、お友達のお母さんのこと知らないから、ちょっと難しいかな。プールだとママも一緒に行かないといけないしね……」
やんわり断ってみた。
しかし、娘は食い下がらない。
「〇〇ちゃんのママはいいって言ってたみたいだよ! ママ、お願い!」
私の目の前で手を合わせて、必死にお願いしてくる。
いやいや。
「いいって言ってた『みたい』」じゃ分からないのよ。
子どもにとっては、「一緒にプール行こう!」で済む話なのだろう。
でも、親はそうはいかない。
どうやって行く?
何時に集合する?
何時に帰る?
相手のお母さんは本当に了承している?
色々と確認が必要なのだ。
そもそも私は、そのお母さんと話したことすらない。
子どもの「遊ぼう!」の一言の裏側で、親は意外と大変のである。
それからというもの、娘と友達は、親たちを置き去りにして、せっせとプールへ行く話を進めていった。
そして、しまいには、
「ママが行けないなら、〇〇ちゃんのママが一人で連れて行ってくれるって! 〇〇ちゃんは絶対私とプール行きたいんだって! 私も行きたい!」
と言い出した。
ええ……。
話がどんどん大きくなっている。
そこで改めて娘から詳しく話を聞いてみると、どうやら、もともとは友達とそのお母さんの二人でプールへ行く予定だったらしい。
そこへ娘が、
「私も行きたい!」
と言い出したようなのだ。
なるほど。
そういうことだったのか……。
それならなおさら、勝手にお邪魔するわけにはいかない。
とはいえ、子どもの話だけでは、本当に相手のお母さんが了承しているのかも分からない。
これはもう、相手のお母さんに直接確認するしかないのでは……。
しかし、私は連絡先を知らない。
唯一の連絡手段といえば、クラスのグループLINEから個人的に連絡を取ること。
正直、めんどくさい。
しかも、ほとんど話したこともない親から突然LINEが届いたら、相手だって驚くだろう。
できれば避けたい。
でも、このまま子ども同士だけで話を進めるわけにもいかない。
意を決して、相手のお母さんに連絡してみることにした。
「子ども同士でプールへ行く約束をしているようですが、お話は聞いていますか?」
そんな確認とともに、もともと親子二人で行く予定だったと聞いているので、こちらのことは気にせず、予定どおりお出かけください、という内容をやんわりと送った。
すると、相手のお母さんから返信が来た。
どうやら、友達のほうも娘と一緒に行くことをとても楽しみにしているらしい。
何度かメッセージをやり取りした結果、
「せっかくなので、夏休みの思い出に一緒に行きましょう」
ということになった。
そして、当日。
相手のお母さんとは、もちろん初対面。
最初こそ少し気まずかったものの、話してみると、学校のことやPTAのことなど、いろいろな話をすることができた。
「へぇ、そうだったんだ!」と、知らなかった情報を教えてもらうこともあった。
何より、娘たちが本当に楽しそうだった。プールではしゃぐ二人を見ながら、「まあ、来てよかったのかな」と思った。
今回をきっかけに相手のお母さんと連絡先も交換できたので、これから子ども同士が遊ぶときには、直接確認できるし。
そう考えれば、結果的にはよかったのだと思う。
でも、今回のことで改めて思った。
子ども同士の「遊ぶ約束」って、難しいし、面倒だ。
「明日〇〇ちゃんと遊ぶ!」
と言われても、本当に約束できているのか分からない。
実際、約束の場所へ行ったのに、友達が来なかった……なんてこともある。
少し遠くへ行くとなれば……
誰と?
どこへ?
何時まで?
どうやって行く?
と、いろいろ確認したくなる。
少し、過保護かもしれないが、最近は子ども絡みの変な事件も多いから、なおさらだ。
私が子どもの頃、友達と遊ぶことは、もっと気軽だったような気がする。
友達の家に電話をして、
「今日、遊べる?」
なんて聞いて、子ども同士で勝手に約束して遊んでいた。
親同士がわざわざ連絡を取り合うことも、今ほど多くなかったように思う。もしかしたら、私が知らなかっただけで、母は母で、「子どもの遊ぶ約束、めんどくさいな……」と思っていたのかもしれないけれど。
親はどこまで子どもの約束に関わればいいのか。
相手の親には、どこまで確認したほうがいいのか。
子どもだけで行かせていいのは、どこまでなのか。
小学4年生。
親がすべて決める年齢でもない。かといって、何でも子どもだけに全てを任せられる年齢でもない。
ちょうどその狭間にいるからこそ、難しいのかもしれない。
今回のプールだって、最初は、「めんどくさいことになったな……」と思っていた。
でも、楽しそうにはしゃぐ娘を見ていたら、行ってよかったとも思う。
きっと、こうやって親が間に入らなければならないのも、あと数年なのだろう。
そのうち、「今日、友達と出かけてくるね」とだけ言って、勝手に出かけていくようになるのかもしれない。
そう考えると、この面倒くささも期間限定なのかもしれない。
……とはいえ、子ども同士の遊ぶ約束は、まあ、めんどくさい。
