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小説「AEDクイズ」②

放課後の教室。窓の外には、淡い光がゆるやかに差し込んでいた。

「なあ、AEDクイズ研究会、立ち上げようぜ」
俺が言うと、広瀬は缶ジュースのプルタブを鳴らして言った。

「いや、俺クイズ作るのには賛成したけど、研究会って……そんな話したっけ?」

「してないけど、やろうよ。甲子園と、高校生クイズ、ダブルで目指すんだよ」

「いやいや、AEDクイズ、高校生クイズにはほぼ出ないと思うけど?」
と冷静に突っ込んできたのは図書委員の佐伯。眼鏡越しにこちらを見てくる。

「俺は賛成」
と、大林がゆっくり手を挙げた。
「おれ、お前らがAED研究会つくるなら、絶対入る。助けられた恩義もあるしな」

俺は指を折って数えた。

「よし、大林で4人。4人いれば、研究会って申請できるはず」

「顧問は山下先生に頼んでさ」

「ちょっと待て。山下先生は野球部の顧問だし、そもそも俺たち野球部だろ?」
と広瀬。

「俺、野球部やめるわ」
俺は言った。自分でも驚くほど、すっと言えた。

「は?」

「もっとやりたいこと見つかった。AEDのこと、伝えるの、マジでちゃんとやりたい」

教室が一瞬だけ静かになった。

「お前は甲子園行けよな、エース!」

「……あと一人、部員か」

すると佐伯が、小さくため息をついた。

「……え、私、必然的に入れられてるの?」

「いや、違うの?……頼む」
俺は思わず頭を下げた。

しばらくして、佐伯がつぶやいた。

「……まあ、AEDがどこにあるか知らない生徒、まだいっぱいいるしね」

「ってことは!」

「正式に入るとは言ってない。でも……名前、貸してあげてもいいかも」

俺と広瀬と大林が、顔を見合わせて叫んだ。

「よっしゃああ!」

「……でも、あと一人足りないのか」

俺がぽつりと言うと、広瀬が腕を組んだ。

「うーん。もう勧誘しかないよな。部活説明会とか、学食前で声かけるとか?」

「いや、それ……なんか恥ずかしい」佐伯が即答した。

「だったら……チラシ?」大林が言う。

「よし、チラシ作って勧誘だ!」と俺が勢いよく言ったその瞬間、

「ちょっと待て」広瀬がツッコむ。

「ノリだけで突っ走るな。ちゃんと作戦立てようぜ」

「……たしかに」俺は一度、机に肘をついて考えた。

「まず、誰に響かせたいかだよな」

大林が言う。「AEDとか、クイズとか……それだけじゃ、たぶん立ち止まってもらえない」

「“なんか面白そう”って思わせなきゃダメだよね」と佐伯。

「よし、キャッチコピーを考えよう!」俺が言うと、みんながうなずいた。

(黒板に向かって案を出し始める)

佐伯「“AEDってなに?から始まる命の授業”とか」

大林「“君の1クリック(←マウスじゃなくてAED)で命が救える”」

広瀬「高校生クイズ、野球、文化祭、AED、すべてを叶える場所――AEDクイズ研究会!」

俺「それだとちょっと盛りすぎ!」

(全員笑う)

「じゃあ、構成はこうしよう」と佐伯がノートを開く。

キャッチコピー

AEDクイズで楽しく知識をゲット

実際に命が救われたエピソード

入会テスト風クイズ

最後に『本気で楽しむ、AED研究会』って締める

「クイズは私が選んでおく」
「デザインは元美術部の俺に任せろ!」
「広瀬は……野球の合間にコピー手伝え」
「俺は全体の構成見る!」

黒板にはみんなの案が走り書きされていく。


「あとさ、“1日1問AEDクイズ”ってコーナー作んない? SNSでも流せるやつ」

「それ超いい!」
「バズるかも!」

放課後の教室に、笑い声と夕陽が差し込む。

「OK!この見出し、もっとフォント大きくしてみない?」

「“命を救う知識、クイズで学ぼう”の部分は赤で強調しよう。視線、絶対止まるから」

「アイキャッチになるイラスト、AEDっぽく見えるように描いてみたんだけど……どう?」

「おお、すげえ。なんか……ポスターっていうか、ポップだな!」

教室の机の上、ノートパソコン、マーカーペン、コピー用紙にスケッチブック。放課後の時間はとっくに過ぎて、教室には俺たちだけ。でも誰一人、集中を切らすことなく、夢中になっていた。

「もう少し下の余白、詰めて……このキャッチコピーの下にクイズ入れたらどう?」

「いいね、それ!『入会テスト(?)AEDクイズに挑戦!』って入れてみようよ」

「で、そこに“実際にある間違い”を選択肢にする。リアルに、でもちょっと面白くね」

「よし……これで……チラシ、完成!」

俺の一言に、みんなの手が止まった。

机の上には、カラフルで目を引く一枚のポスター。




🧠【AEDクイズ研究会】部員募集中!
命を救う知識、クイズで学ぼう。未来のヒーローは君かもしれない。

🔥入会テスト(?)AEDクイズに挑戦!

Q1:AED使用に際して正しい行動はどちらでしょうか?
① 意識が朦朧としていたので、迷わずAEDを使った
② 意識が朦朧としていたので、AEDを使ってよいか同意を求めた

➡️ どちらも×! AEDは「意識なし」「呼吸が不明確」なとき、ためらわず使う!

Q2:AEDを使ってはいけないのは次のうちの誰でしょうか?
① 心臓を押さえ唸ってる人
② 意識も呼吸もない人
③ 妊婦さん
④ 赤ちゃん

➡️ 正解は①! 唸ってる=意識あり!②③④はAED使用OK!
※小児用パッド使用(または大人用で代用)で赤ちゃんにも使えます!

Q3:電極パッドを貼った後、うめき声や嫌がるしぐさが出てきた。どうする?
① 電極パッドははがす
② 電極パッドはそのままにして、状態の観察を行う
③ 電極パッドはそのまま、コネクタを抜いて電源を切る

➡️ 正解は②! 状態が回復した可能性あり。AEDは勝手に判断してくれるので、こっちは落ち着いて観察を!

🏫「AEDって怖くない」そんな空気、作っていこう
クイズを作って、学んで、広める!

学校にもっとAEDを知ってもらいたい。
でも固すぎるのはナシ!楽しく、でも本気でやる。

「……こういうのさ、文化祭とかで配れたらいいかもな」

「それ最高!」

「やっぱり私、入るとは言ってないけど名前は貸してあげる」

「いや、もう“準・正式部員”だろそれ」

みんなで笑い合いながら、チラシの端をそっと持ち上げる。

その一枚に込めた想いはただひとつ――
「もしもの時、君がヒーローになれるように」

これは、誰かの命を救う一枚になる。
そして、AEDクイズ研究会の本当のスタートだった。


『AEDクイズ② 研究会、始動!』――完


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