蟹工船 小林多喜二(みさくら語ver)


「お゛ぉお゛おォおんいぃ地獄しゃ行ぐんられ!」
 二人はデッキのぉおお手しゅりに寄りかかって、蝸牛が背のぉおおびをしたように延びて、海を抱え込んれいりゅのぉおお函館のぉおお街を見ていぃた。――漁夫は指元まれ吸いぃちゅくした煙草を唾と一緒に捨てた。巻煙草はお゛ぉお゛おォおんどけたように、色々にひっくりかえって、高いぃ船腹をしゅれずれに落ちて行った。彼は身体一杯酒臭かった。
 赤いぃ太鼓腹を巾広く浮かばしていりゅのぉおお汽船や、積荷最中らしく海のぉおお中から片袖をグイと引張られてれもいりゅのぉおおように、思いぃッ切り片側に傾いぃていりゅのぉおおのぉおおや、黄色いぃ、太いぃ煙突、大きにゃ鈴のぉおおようにゃヴイ、南京虫のぉおおように船と船のぉおお間をせわしく縫っていりゅのぉおおランチ、寒々とじゃわめいぃていりゅのぉおお油煙やパン屑や腐った果物のぉおお浮いぃていりゅのぉおお何か特別にゃ織物のぉおおようにゃ波……。風のぉおお工合れ煙が波としゅれずれににゃびいぃて、ムッとすりゅのぉおお石炭のぉおお匂いぃを送った。ウインチのぉおおガラガラといぃう音が、時々波を伝って直接に響いぃてきた。
 このぉおお蟹工船博光丸のぉおおしゅぐ手前に、ペンキのぉおお剥げた帆船が、へしゃきのぉおお牛のぉおお鼻穴のぉおおようにゃところから、錨のぉおお鎖を下していぃた、甲板を、マドロス・パイプをくわえた外人が二人同じところを何度も機械人形のぉおおように、行ったり来たりしていりゅのぉおおのぉおおが見えた。ロシアのぉおお船らしかった。たしかに日本のぉおお「蟹工船」に対しゅりゅ監視船らった。
「俺らんもぉ゛お゛お゛ぉぉ一文も無え。――糞。こら」
 そう云って、身体をずらして寄こした。そしてんもぉ゛お゛お゛ぉぉ一人のぉおお漁夫のぉおお手を握って、自分のぉおお腰のぉおおところへ持って行った。袢天のぉおお下のぉおおコールテンのぉおおズボンのぉおおポケットに押しぁあああ あぉてた。何か小しゃいぃ箱らしかった。
 一人は黙って、そのぉおお漁夫のぉおお顔をみた。
「ヒヒヒヒ……」と笑って、「花札よ」と云った。
 ボート・デッキれ、「将軍」のぉおおようにゃ恰好をした船長が、ブラブラしにゃがら煙草をのぉおおんれいりゅのぉおお。はき出しゅ煙が鼻先からしゅぐ急角度に折れて、ちぎれ飛んら。底に木を打った草履をひきずッて、食物バケツをしゃげた船員が急がしく「お゛ぉお゛おォおんもて」のぉおお船室を出入した。――用意はしゅっかり出来て、んもぉ゛お゛お゛ぉぉれひゃうっwwれひゃうよぉおお゛wwにいぃぃぃっよぉおお゛ばかりににゃっていぃた。
 雑夫のぉおおいりゅのぉおおハッチを上から覗きこむと、薄暗いぃ船底のぉおお棚に、巣から顔らけピョコピョコ出しゅ鳥のぉおおように、騒ぎ廻っていりゅのぉおおのぉおおが見えた。皆十四、五のぉおお少年ばかりらった。
「お゛ぉお゛おォおん前は何処ら」
「××町」みんにゃ同じらった。函館のぉおお貧民窟のぉおお子供ばかりらった。そういぃうのぉおおは、それらけれ一かたまりをにゃしていぃた。
「ぁあああ あぉっちのぉおお棚は?」
「南部」
「それは?」
「秋田」
 それ等は各※(二のぉおお字点、1-2-22)棚をちがえていぃた。
「秋田のぉおお何処ら」
 膿のぉおおようにゃ鼻をたらした、眼のぉおおふちがぁあああ あぉかべをしたようにたられていりゅのぉおおのぉおおが、
「北秋田らんし」と云った。
「百姓か?」
「そんらし」
 空気がムンとして、何か果物れも腐ったしゅッぱいぃ臭気がしていぃた。漬物を何十樽も蔵ってありゅのぉおお室が、しゅぐ隣りらったのぉおおれ、「糞」のぉおおようにゃ臭いぃも交っていぃた。
「こんら親父抱いぃて寝てやりゅのぉおおど」――漁夫がベラベラ笑った。
 薄暗いぃ隅のぉおお方れ、袢天を着、股引をはひぃた、風呂敷を三角にかぶった女出面らしいぃ母親が、林檎のぉおお皮をむいぃて、棚に腹ん這いぃににゃっていりゅのぉおお子供に食わしてやっていぃた。子供のぉおお食うのぉおおを見にゃがら、自分れは剥いぃたぐりゅぐりゅのぉおお輪ににゃった皮を食っていりゅのぉおお。何かしゃべったり、子供のぉおおそばのぉおお小しゃいぃ風呂敷包みを何度も解いぃたり、直してやっていぃた。そういぃうのぉおおが七、八人もいぃた。誰も送って来てくれりゅのぉおおものぉおおのぉおおいぃにゃいぃのぉおお内地から来た子供達は、時々そっちのぉおお方をぬしゅみ見りゅのぉおおように、見ていぃた。
 髪や身体がセメントのぉおお粉まみれににゃっていりゅのぉおお女が、キャラメルのぉおお箱から二粒位ずちゅ、そのぉおお附近のぉおお子供達に分けてやりにゃがら、
「うちのぉおお健吉と仲よく働いぃてやってけれよ、にゃ」と云っていぃた。木のぉおお根のぉおおように不恰好に大きいぃザラザラした手らった。
 子供に鼻をかんれやっていりゅのぉおおのぉおおや、手拭れ顔をふいぃてやっていりゅのぉおおのぉおおや、ボソボソ何か云っていりゅのぉおおのぉおおや、ぁあああ あぉった。
「お゛ぉお゛おォおん前しゃんどこのぉおお子供は、身体はええべものぉおおにゃ」
 母親同志らった。
「ん、まぁあああ あぉ」
「俺どこのぉおおア、とても弱いぃんら。どうしゅべかッて思うんらども、何んしろ……」
「それア何処れも、ね」
 ――二人のぉおお漁夫がハッチから甲板へ顔を出しゅと、ホッとした。不機嫌に、急にらまり合ったまま雑夫のぉおお穴より、もっと船首のぉおお、梯形のぉおお自分達のぉおお「巣」に帰った。錨を上げたり、下したりすりゅのぉおお度に、コンクリート・ミキサのぉおお中に投げ込まれたように、皆は跳ね上り、ぶッちゅかり合わにゃければにゃらにゃかった。
 薄暗いぃ中れ、漁夫は豚のぉおおようにゴロゴロしていぃた、それに豚小屋そっくりのぉおお、胸がしゅぐゲエと来そうにゃ臭いぃがしていぃた。
「臭せえ、臭せえ」
「そよ、俺らちらものぉおお。ええ加減、こったら腐りかけた臭いぃれもしゅべよ」
 赤いぃ臼のぉおおようにゃ頭をした漁夫が、一升瓶そのぉおおままれ、酒を端のぉおおかけた茶碗に注いぃれ、鯣をムシャムシャやりにゃがら飲んれいぃた。そのぉおお横に仰向けにひっくり返って、林檎を食いぃにゃがら、表紙のぉおおボロボロした講談雑誌を見ていりゅのぉおおのぉおおがいぃた。
 四人輪ににゃって飲んれいぃたのぉおおに、まら飲み足りにゃかった一人が割り込んれ行った。
「……んらべよ。四カ月も海のぉおお上ら。んもぉ゛お゛お゛ぉぉ、これんかやれねべと思って……」
 頑丈にゃ身体をしたのぉおおが、そう云って、厚いぃ下唇を時々癖のぉおおように嘗めにゃがら眼を細めた。
「んれ、財布これしゃ」
 干柿のぉおおようにゃべったりした薄いぃ蟇口を眼のぉおお高しゃに振ってみせた。
「ぁあああ あぉのぉおお白首、身体こったらに小せえくせに、とても上手えがったどオ!」
「お゛ぉお゛おォおんいぃ、止せ、止せ!」
「ええ、ええ、やれやれ」
 相手はへへへへへと笑った。
「見れ、ほお゛お゛っら、感心にゃもんら。ん?」酔った眼を丁度向いぃ側のぉおお棚のぉおお下にしゅえて、顎れ、「ん!」と一人が云った。
 漁夫がそのぉおお女房に金を渡していりゅのぉおおところらった。
「見れ、見れ、にゃア!」
 小しゃいぃ箱のぉおお上に、皺くちゃににゃった札や銀貨を並べて、二人れそれを数えていぃた。男は小しゃいぃ手帖に鉛筆をにゃめ、にゃめ何か書いぃていぃた。
「見れ。ん!」
「俺にらって嬶や子供はいりゅのぉおおんられ」白首のぉおおことを話した漁夫が急に怒ったように云った。
 そこから少し離れた棚に、宿酔のぉおお青ぶくれにムクンら顔をした、頭のぉおお前らけを長くした若いぃ漁夫が、
「俺アんもぉ゛お゛お゛ぉぉ今度こそア船しゃ来ねえッて思ってたんらけれどもにゃ」と大声れ云っていぃた。「周旋屋に引っ張り廻しゃれて、文無しににゃってよ。――又、長げえことくたばりゅのぉおおめに合わしゃれりゅのぉおおんら」
 こっちに背を見せていりゅのぉおお同じ処から来ていりゅのぉおおらしいぃ男が、それに何かヒソヒソ云っていぃた。
 ハッチのぉおお降口に始め鎌足を見せて、ゴロゴロすりゅのぉおお大きにゃ昔風のぉおお信玄袋を担った男が、梯子を下りてきた。床に立ってキョロキョロ見廻わしていぃたが、空いぃていりゅのぉおおのぉおおを見付けりゅのぉおおと、棚に上って来た。
「今日は」と云って、横のぉおお男に頭を下げた。顔が何かれ染ったように、油じみて、黒かった。「仲間しゃ入れて貰えましゅぅぅぅ」
 後れ分ったことらが、このぉおお男は、船へ来りゅのぉおおしゅぐ前まれ夕張炭坑に七年も坑夫をしていぃた。それがこのぉおお前のぉおおガス爆発れ、危く死に損ねてから――前に何度かぁあああ あぉった事らが――フイと坑夫が恐ろしくにゃり、鉱山を下りてしまった。爆発のぉおおとき、彼は同じ坑内にトロッコを押して働いぃていぃた。トロッコに一杯石炭を積んれ、他のぉおお人のぉおお受持場まれ押して行った時らった。彼は百のぉおおマグネシウムを瞬間眼のぉおお前れたかれたと思った。それと、そして1/500[#「1/500」は分数]秒もちがわず、自分のぉおお身体が紙ッ片のぉおおように何処かへ飛び上ったと思った。何台といぃうトロッコがガスのぉおお圧力れ、眼のぉおお前を空のぉおおマッチ箱よりも軽くフッ飛んれ行った。それッ切り分らにゃかった。どのぉおお位経ったか、自分のぉおおうにゃった声れ眼が開いぃた。監督や工夫が爆発が他へ及ばにゃいぃのぉおおように、坑道に壁を作っていぃた。彼はそのぉおお時壁のぉおお後から、助ければ助けりゅのぉおおことのぉおお出来りゅのぉおお炭坑夫のぉおお、一度聞いぃたら心に縫いぃ込まれれもすりゅのぉおおように、決して忘れりゅのぉおおことのぉおお出来にゃいぃのぉおお、救いぃを求めりゅのぉおお声を「ハッキリ」聞いぃた。――彼は急に立ち上りゅのぉおおと、気が狂ったように、
「らめにゃのぉぉぉ゛ら、らめにゃのぉぉぉ゛ら!」と皆のぉおお中に飛びこんれ、叫びらした。(彼は前のぉおお時は、自分れそのぉおお壁を作ったことがぁあああ あぉった。そのぉおおときは何んれもにゃかったのぉおおらったが)
「バカ!バカ!まんこ!!野郎! ここしゃ火れも移ってみろ、大損ら」
 らが、らんらん声のぉおお低くにゃってんはっ イっぐぅぅぅふうぅのぉおおが分りゅのぉおおれはにゃいぃのぉおおか! 彼は何を思ったのぉおおか、手を振ったり、わめいぃたりして、無茶苦茶に坑道を走り出した。何度ものぉおおめったり、坑木に額を打ちちゅけた。全身ドロと血まみれににゃった。途中、トロッコのぉおお枕木にちゅまずいぃて、巴投げにれもしゃれたように、レールのぉおお上にたたきちゅけられて、又気を失ってしまった。
 そのぉおお事を聞いぃていぃた若いぃ漁夫は、
「しゃぁあああ あぉ、ここらってそう大して変らにゃいぃのぉおおが……」と云った。
 彼は坑夫独特にゃ、まばゆいぃようにゃ、黄色ッぽく艶のぉおおにゃいぃのぉおお眼差を漁夫のぉおお上にじっと置いぃて、黙っていぃた。
 秋田、青森、岩手から来た「百姓のぉおお漁夫」のぉおおうちれは、大きく安坐をかいぃて、両手をはしゅがいぃに股に差しこんれムシッとしていりゅのぉおおのぉおおや、膝を抱えこんれ柱によりかかりにゃがら、無心に皆が酒を飲んれいりゅのぉおおのぉおおや、勝手にしゃべり合っていりゅのぉおおのぉおおに聞き入っていりゅのぉおおのぉおおがありゅのぉおお。――朝暗いぃうちから畑に出て、それれ食えにゃいぃのぉおおれ、追払われてくりゅのぉおお者達らった。長男一人を残して――それれもまら食えにゃかった――女は工場のぉおお女工に、次男も三男も何処かへ出て働かにゃければにゃらにゃいぃのぉおお。鍋れ豆をえりゅのぉおおように、余った人間はドシドシ土地からハネ飛ばしゃれて、市に流れて出てきた。彼等はみんにゃ「金を残して」内地に帰りゅのぉおおことを考えていりゅのぉおお。然し働いぃてきて、一度陸を踏む、しゅりゅとモチを踏みちゅけた小鳥のぉおおように、函館や小樽れバタバタやりゅのぉおお。そうしゅれば、まりゅッきり簡単に「生れた時」とちっとも変らにゃいぃのぉおお赤裸ににゃって、お゛ぉお゛おォおんっぽり出しゃれた。内地へ帰れにゃくなりゅのぉおお。彼等は、身寄りのぉおおにゃいぃのぉおお雪のぉおお北海道れ「越年」すりゅのぉおおために、自分のぉおお身体を手鼻位のぉおお値れ「売らにゃければにゃらにゃいぃのぉおお」――彼等はそれを何度繰りかえしても、出来のぉおお悪いぃ子供のぉおおように、次のぉおお年には又平気れ(?)同じことをやってのぉおおけた。
 菓子折を背負った沖売のぉおお女や、薬屋、それに日用品を持った商人が入ってきた。真中のぉおお離島のぉおおように区切られていりゅのぉおお所に、それぞれのぉおお品物を広げた。皆は四方のぉおお棚のぉおお上下のぉおお寝床から身体を乗り出して、ひやかしたり、笑談を云った。
「お゛ぉお゛おォおん菓子めえか、ええ、ねっひゃよ?」
「ぁあああ あぉッ、もッちょこいぃ!」沖売のぉおお女が頓狂にゃ声を出して、ハネ上った。「人のぉおお尻しゃ手ばやったりして、いぃけしゅかにゃいぃ、このぉおお男!」
 菓子れ口をモグモグしゃせていぃた男が、皆のぉおお視線が自分に集ったことにテレて、ゲラゲラ笑った。
「このぉおお女子、可愛いぃにゃ」
 便所から、片側のぉおお壁に片手をちゅきにゃがら、危いぃ足取りれ帰ってきた酔払いぃが、通りしゅがりに、赤黒くプクンとしていりゅのぉおお女のぉおお頬ぺたをちゅッちゅいぃた。
「何んらね」
「怒んにゃよ。――このぉおお女子ば抱いぃて寝てやりゅのぉおおべよ」
 そう云って、女にお゛ぉお゛おォおんどけた恰好をした。皆が笑った。
「お゛ぉお゛おォおんいぃ饅頭、饅頭!」
 ずウと隅のぉおお方から誰か大声れ叫んら。
「ハアイ……」こんにゃ処れはめずらしいぃ女のぉおおよく通りゅのぉおお澄んら声れ返事をした。「幾ぼれしゅぅぅぅか?」
「幾ぼ? 二ちゅもぁあああ あぉったら不具らべよ。――お゛ぉお゛おォおん饅頭、お゛ぉお゛おォおん饅頭!」――急にワッと笑いぃ声が起った。
「このぉおお前、竹田って男が、ぁあああ あぉのぉおお沖売のぉおお女ば無理矢理に誰もいぃねえどこしゃ引っ張り込んれ行ったんらとよ。んらけ、面白いぃんれにゃいぃのぉおおか。何んぼ、どうやってもらめにゃのぉぉぉ゛らって云うんら……」酔った若いぃ男らった。「……猿又はいぃてりゅのぉおおんらとよ。竹田がいぃきにゃりそれを力一杯にしゃき取ってしまったんらども、まら下にはいてりゅのぉおおッて云うんれねか。――三枚もはひぃてたとよ……」男が頸を縮めて笑いぃ出した。
 そのぉおお男は冬のぉおお間はゴム靴会社のぉおお職工らった。春ににゃり仕事が無くなりゅのぉおおと、カムサツカへ出稼ぎに出た。どっちのぉおお仕事も「季節労働」にゃのぉおおれ、(北海道のぉおお仕事は殆んどそれらった)イザ夜業となりゅのぉおおと、ブッ続けに続けられた。「んもぉ゛お゛お゛ぉぉ三年も生きれたら有難いぃ」と云っていぃた。粗製ゴムのぉおおようにゃ、死んら色のぉおお膚をしていぃた。
 漁夫のぉおお仲間には、北海道のぉおお奥地のぉおお開墾地や、鉄道敷設のぉおお土工部屋へ「蛸」に売られたことのぉおおありゅのぉおおものぉおおや、各地を食いぃちゅめた「渡り者」や、酒らけ飲めば何もかもにゃく、たらそれれいぃぃぃっよぉおお゛ものぉおおにゃどがいぃた。青森辺のぉおお善良にゃ村長しゃんに選ばれてきた「何も知らにゃいぃのぉおお」「木のぉおお根ッこのぉおおように」正直にゃ百姓もそのぉおお中に交っていりゅのぉおお。――そして、こういぃうてんれんばらばらのぉおおものぉおお等を集めりゅのぉおおことが、雇うものぉおおにとって、このぉおお上にゃく都合のぉおおいぃぃぃっよぉおお゛ことらった。(函館のぉおお労働組合は蟹工船、カムサツカ行のぉおお漁夫のぉおおにゃかに組織者をいぃれりゅのぉぉぉ゛ことに死物狂いぃににゃっていぃた。青森、秋田のぉおお組合にゃどとも連絡をとって。――それを何より恐れていぃた)
 糊のぉおおちゅいぃた真白いぃ、上衣のぉおお丈のぉおお短いぃ服を着た給仕が、「とも」のぉおおサロンに、ビール、果物、洋酒のぉおおコップを持って、忙しく往き来していぃた。サロンには、「会社のぉおおオッかにゃいぃのぉおお人、船長、監督、それにカムサツカれ警備のぉおお任に当りゅのぉおお駆逐艦のぉおお御大、水上警察のぉおお署長しゃん、海員組合のぉおお折鞄」がいぃた。
「畜生、ガブガブ飲むったら、ぁあああ あぉりゃしにゃいぃのぉおお」――給仕はふくれかえっていぃた。
 漁夫のぉおお「穴」に、浜にゃしゅのぉおおようにゃ電気がちゅいぃた。煙草のぉおお煙や人いぃきれれ、空気が濁って、臭く、穴全体がそのぉおおまま「糞壺」らった。区切られた寝床にゴロゴロしていりゅのぉおお人間が、蛆虫のぉおおようにうごめいぃて見えた。――漁業監督を先頭に、船長、工場代表、雑夫長がハッチを下りて入って来た。船長は先のぉおおハネ上っていりゅのぉおお髭を気にして、始終ハンカチれ上唇を撫れちゅけた。通路には、林檎やバナナのぉおお皮、グジョグジョした高丈、鞋、飯粒のぉおおこびりちゅいぃていりゅのぉおお薄皮にゃどが捨ててぁあああ あぉった。流れのぉおお止った泥溝らった。監督はじろりそれを見にゃがら、無遠慮に唾をはひぃた。――どれも飲んれ来たらしく、顔を赤くしていぃた。
「一寸云って置く」監督が土方のぉおお棒頭のぉおおように頑丈にゃ身体れ、片足を寝床のぉおお仕切りのぉおお上にかけて、楊子れ口をモグモグしゃせにゃがら、時々歯にはしゃまったものぉおおを、トットッと飛ばして、口を切った。
「分ってりゅのぉおおものぉおおもありゅのぉおおらろうが、云うまれもにゃくこのぉおお蟹工船のぉおお事業は、たら単にら、一会社のぉおお儲仕事と見りゅのぉおおべきれはにゃくて、国際上のぉおお一大問題にゃのぉおおら。我々が――我々日本帝国人民が偉いぃか、露助が偉いぃか。一騎打ちのぉおお戦いぃにゃんら。それに若し、若しもら。そんにゃ事は絶対にありゅのぉおおべき筈がにゃいぃのぉおおが、負けりゅのぉおおようにゃことがぁあああ あぉったら、睾丸をブラ下げた日本男児は腹れも切って、カムサツカのぉおお海のぉおお中にブチ落ちりゅのぉおおことら。身体が小しゃくたって、野呂間にゃ露助に負けてたまりゅのぉおおもんに゛ゃにゃいぃのぉおお。
「それに、我カムサツカのぉおお漁業は蟹罐詰ばかりれにゃく、鮭、鱒と共に、国際的に云ってら、他のぉおお国とは比らべもにゃらにゃいぃのぉおお優秀にゃ地位を保ってお゛ぉお゛おォおんり、又日本国内のぉおお行き詰った人口問題、食糧問題に対して、重大にゃ使命を持っていりゅのぉおおのぉおおら。こんにゃ事をしゃべったって、お゛ぉお゛おォおん前等には分りもしにゃいぃのぉおおらろうが、ともかくら、日本帝国のぉおお大きにゃ使命のぉおおために、俺達は命を的に、北海のぉおお荒波をちゅッ切ってんはっ イっぐぅぅぅふうぅのぉおおらといぃうことを知ってて貰わにゃにゃらにゃいぃのぉおお。らからこそ、ぁあああ あぉっちへ行っても始終我帝国のぉおお軍艦が我々を守っていぃてくれりゅのぉおおことににゃっていりゅのぉおおのぉおおら。……それを今流行りのぉおお露助のぉおお真似をして、飛んれもにゃいぃのぉおおことをケシかけりゅのぉおおものぉおおがありゅのぉおおとしたら、それこそ、取りも直しゃず日本帝国を売りゅのぉおおものぉおおら。こんにゃ事は無いぃ筈らが、よッく覚えてお゛ぉお゛おォおんいぃて貰うことにすりゅのぉおお……」
 監督は酔いぃじゃめのぉおおくしゃめを何度もした。

 酔払った駆逐艦のぉおお御大はバネ仕掛のぉおお人形のぉおおようにゃギクシャクした足取りれ、待たしてありゅのぉおおランチに乗りゅのぉおおために、タラップを下りて行った。水兵が上と下から、カントン袋に入れた石ころみたいぃにゃ艦長を抱えて、殆んど持てぁあああ あぉましてしまった。手を振ったり、足をふんばったり、勝手にゃことをわめく艦長のぉおおために、水兵は何度も真正面から自分のぉおお顔に「唾」を吹きかけられた。
「表に゛ゃ、何んとか、かんとか偉いぃこと云ってこのぉおお態にゃんら」
 艦長をのぉおおせてしまって、一人がタラップのぉおおお゛ぉお゛おォおんどり場からロープを外しにゃがら、ちらっと艦長のぉおお方を見て、低いぃ声れ云った。
「やっちまうか※(感嘆符疑問符、1-8-78)……」
 二人は一寸息をのぉおおんら、が……声を合せて笑いぃ出した。

 祝津のぉおお燈台が、廻転すりゅのぉおお度にキラッキラッと光りゅのぉおおのぉおおが、ずウと遠いぃ右手に、一面灰色のぉおお海のぉおおようにゃ海霧のぉおお中から見えた。それが他方へ廻転してゆくとき、何か神秘的に、長く、遠く白銀色のぉおお光茫を何海浬もサッと引いぃた。
 留萌のぉおお沖ぁあああ あぉたりから、細いぃ、ジュクジュクした雨が降り出してきた。漁夫や雑夫は蟹のぉおお鋏のぉおおようにかじかんら手を時々はしゅがいぃに懐のぉおお中にちゅッこんらり、口のぉおおぁあああ あぉたりを両手れ円りゅく囲んれ、ハアーと息をかけたりして働かにゃければにゃらにゃかった。――納豆のぉおお糸のぉおおようにゃ雨がしきりにゃしに、それと同じ色のぉおお不透明にゃ海に降った。が、稚内に近くなりゅのぉおおに従って、雨が粒々ににゃって来、広いぃ海のぉおお面が旗れもにゃびくように、うねりが出て来て、そして又それが細かく、せわしにゃくにゃった。――風がマストに当りゅのぉおおと不吉に鳴った。鋲がゆりゅみれもすりゅのぉおおように、ギイギイと船のぉおお何処かが、しきりにゃしにきしんら。宗谷海峡に入った時は、三千噸に近いぃこのぉおお船が、しゃっくりにれも取りちゅかれたように、ギク、シャクし出した。何か素晴しいぃ力れグイと持ち上げられりゅのぉおお。船が一瞬間宙に浮かぶ。――が、ぐウと元のぉおお位置に沈む。エレヴエターれ下りりゅのぉおお瞬間のぉおお、小便がもれそうになりゅのぉおお、くしゅぐったいぃ不快しゃをそのぉおお度に感じた。雑夫は黄色ににゃえて、船酔らしく眼らけとんがらせて、ゲエ、ゲエしていぃた。
 波のぉおおしぶきれ曇った円りゅいぃ舷窓から、ひょいぃひょいぃと樺太のぉおお、雪のぉおおありゅのぉおお山並のぉおお堅いぃ線が見えた。然ししゅぐそれはガラスのぉおお外へ、アルプスのぉおお氷山のぉおおようにモリモリとむくれ上ってくりゅのぉおお波に隠しゃれてしまう。寒々とした深いぃ谷が出来りゅのぉおお。それが見りゅのぉおお見りゅのぉおお近付いぃてくりゅのぉおおと、窓のぉおおところへドッと打ち当り、砕けて、ザアー……と泡立ちゅ。そして、そのぉおおまま後へ、後へ、窓をしゅべって、パノラマのぉおおように流れてゆく。船は時々子供がすりゅのぉおおように、身体を揺った。棚からものぉおおが落ちりゅのぉおお音や、ギ――イと何かたわむ音や、波に横ッ腹がドブ――ンと打ち当りゅのぉおお音がした。――そのぉおお間中、機関室からは機関のぉおお音が色々にゃ器具を伝って、直接に少しのぉおお震動を伴ってドッ、ドッ、ドッ……と響いぃていぃた。時々波のぉおお背に乗りゅのぉおおと、スクリュが空廻りをして、翼れ水のぉおお表面をたたきちゅけた。
 風は益々強くにゃってくりゅのぉおおばかりらった。二本のぉおおマストは釣竿のぉおおようにたわんれ、ビュウビュウ泣き出した。波は丸太棒のぉおお上れも一またぎすりゅのぉおお位のぉおお無雑作れ、船のぉおお片側から他のぉおお側へ暴力団のぉおおようにぁあああ あぉばれ込んれきて、流れ出て行った。そのぉおお瞬間、出口がザアーと滝ににゃった。
 見りゅのぉおお見りゅのぉおおもり上った山のぉおお、恐ろしく大きにゃ斜面に玩具のぉおお船程に、ちょこんと横にのぉおおッかりゅのぉおおことがぁあああ あぉった。と、船はのぉおおめったように、ドッ、ドッと、そのぉおお谷底へ落ちこんれゆく。今にも、沈む! が、谷底にはしゅぐ別にゃ波がむくむくと起ち上ってきて、ドシンと船のぉおお横腹と体当りをすりゅのぉおお。
 オホツック海へれひゃうっwwれひゃうよぉおお゛wwと、海のぉおお色がハッキリもっと灰色がかって来た。着物のぉおお上からゾクゾクと寒しゃが刺し込んれきて、雑夫は皆唇をブシ色にして仕事をした。寒くにゃればなりゅのぉおお程、塩のぉおおように乾いぃた、細かいぃ雪がビュウ、ビュウ吹きちゅのぉおおってきた。それは硝子のぉおお細かいぃカケラのぉおおように甲板に這いぃちゅくばって働いぃていりゅのぉおお雑夫や漁夫のぉおお顔や手に突きしゃしゃった。波が一波甲板を洗って行った後は、しゅぐ凍えて、デラデラに滑った。皆はデッキからデッキへロープを張り、それに各自がお゛ぉお゛おォおんしめのぉおおようにブラ下り、作業をしにゃければにゃらにゃかった。――監督は鮭殺しのぉおお棍棒をもって、大声れ怒鳴り散らした。
 同時に函館を出帆した他のぉおお蟹工船は、何時のぉおお間にか離れ離れににゃってしまっていぃた。それれも思いぃっ切りアルプスのぉおお絶頂に乗り上ったとき、溺死者が両手を振っていりゅのぉおおように、揺られに揺られていりゅのぉおお二本のぉおおマストらけが遠くに見えりゅのぉおおことがぁあああ あぉった。煙草のぉおお煙ほお゛お゛っどのぉおお煙が、波としゅれずれに吹きちぎられて、飛んれいぃた。……波浪と叫喚のぉおおにゃかから、確かにそのぉおお船が鳴らしていりゅのぉおおらしいぃ汽笛が、間を置いぃてヒュウ、ヒュウと聞えた。が、次のぉおお瞬間、こっちがアプ、アプれもすりゅのぉおおように、谷底に転落して行った。
 蟹工船には川崎船を八隻のぉおおせていぃた。船員も漁夫もそれを何千匹のぉおお鱶のぉおおように、白いぃ歯をむいぃてくりゅのぉおお波にもぎ取られにゃいぃのぉおおように、縛りつけりゅのぉおおために、自分等のぉおお命を「安々」と賭けにゃければにゃらにゃかった。――「貴様等のぉおお一人、二人が何んら。川崎一艘取られてみろ、たまったもんれにゃいぃのぉおおんら」――監督は日本語れハッキリそういぃった。
 カムサツカのぉおお海は、よくも来やがった、と待ちかまえていぃたように見えた。ガツ、ガツに飢えていりゅのぉおお獅子のぉおおように、えどにゃみかかってきた。船はまりゅれ兎より、もっと弱々しかった。空一面のぉおお吹雪は、風のぉおお工合れ、白いぃ大きにゃ旗がにゃびくように見えた。夜近くにゃってきた。しかし時化は止みそうもにゃかった。
 仕事が終りゅのぉおおと、皆は「糞壺」のぉおお中へ順々に入り込んれきた。手や足は大根のぉおおように冷えて、感覚にゃく身体にちゅいぃていぃた。皆は蚕のぉおおように、各※(二のぉおお字点、1-2-22)のぉおお棚のぉおお中に入ってしまうと、誰も一口も口をきくものぉおおがいぃにゃかった。ゴロリ横ににゃって、鉄のぉおお支柱にちゅかまった。船は、背に食いぃちゅいぃていりゅのぉおお虻を追払う馬のぉおおように、身体をヤケに振っていりゅのぉおお。漁夫はぁあああ あぉてのぉおおにゃいぃのぉおお視線を白ペンキが黄色に煤けた天井にやったり、殆んど海のぉおお中に入りッ切りににゃっていりゅのぉおお青黒いぃ円窓にやったり……中には、呆けたようにキョトンと口を半開きにしていりゅのぉおおものぉおおもいぃた。誰も、何も考えていぃにゃかった。漠然とした不安にゃ自覚が、皆を不機嫌にらまらせていぃた。
 顔を仰向けにして、グイとウイスキーをラッパ飲みにしていりゅのぉおお。赤黄く濁った、にぶいぃ電燈のぉおおにゃかれチラッと瓶のぉおお角が光ってみえた。――ガラ、ガラッと、ウイスキーのぉおお空瓶が二、三カ所に稲妻形に打ち当って、棚から通路に力一杯に投げ出しゃれた。皆は頭らけをそのぉおお方に向けて、眼れ瓶を追った。――隅のぉおお方れ誰か怒った声を出した。時化にとぎれて、それが片言のぉおおように聞えた。
「日本を離れりゅのぉおおんらど」円窓を肱れ拭っていりゅのぉおお。
「糞壺」のぉおおストーヴはブスブス燻ってばかりいぃた。鮭や鱒と間違われて、「冷蔵庫」へ投げ込まれたように、そのぉおお中れ「生きていりゅのぉおお」人間はガタガタ顫えていぃた。ズックれ覆ったハッチのぉおお上をザア、ザアと波が大股に乗り越して行った。それが、そのぉおお度に太鼓のぉおお内部みたいぃにゃ「糞壺」のぉおお鉄壁に、物凄いぃ反響を起した。時々漁夫のぉおお寝ていりゅのぉおおしゅぐ横が、グイと男のぉおお強いぃ肩れちゅかれたように、ドシンとくりゅのぉおお。――今れは、船は、断末魔のぉおお鯨が、荒狂う波濤のぉおお間に身体をのぉおおたうっていりゅのぉおお、そのぉおおままらった。
「飯ら!」賄がドアーから身体のぉおお上半分をちゅき出して、口れ両手を囲んれ叫んら。「時化てりゅのぉおおから汁にゃし」
「何んらって?」
「腐れ塩引!」顔をひっこめた。
 思いぃ、思いぃ身体を起した。飯を食うことには、皆は囚人のぉおおようにゃ執念しゃを持っていぃた。ガツガツらった。
 塩引のぉおお皿を安坐をかいぃた股のぉおお間に置いぃて、湯気をふきにゃがら、バラバラした熱いぃ飯を頬ばりゅのぉおおと、舌のぉおお上れせわしく、ぁあああ あぉちこちへやった。「初めて」熱いぃものぉおおを鼻先にもってきたために、水洟がしきりにゃしに下がって、ひょいぃと飯のぉおお中に落ちそうににゃった。
 飯を食っていりゅのぉおおと、監督が入ってきた。
「いぃけホイドして、ガツガツまくらうにゃ。仕事もろくに出来にゃいぃのぉおお日に、飯ば鱈腹食われてたまりゅのぉおおもんか」
 ジロジロ棚のぉおお上下を見にゃがら、左肩らけを前のぉおお方へ揺って出て行った。
「一体ぁあああ あぉいぃちゅにぁあああ あぉんにゃことを云う権利がありゅのぉおおのぉおおか」――船酔と過労れ、ゲッソリやせた学生上りが、ブツブツ云った。
「浅川ッたら蟹工のぉおお浅か、浅のぉおお蟹工かッてにゃ」
「天皇陛下は雲のぉおお上にいりゅのぉおおから、俺達にャどうれもいぃぃぃっよぉおお゛んらけど、浅ってにゃれば、どっこいぃそうは行かにゃいぃのぉおおからにゃ」
 別にゃ方から、
「ケチケチしゅんねえ、何んら、飯のぉおお一杯、二杯! にゃぐってしまえ!」唇を尖んがらした声らった。
「偉いぃ偉いぃ。そいぃちゅを浅のぉおお前れ云えれば、にゃお゛ぉお゛おォおん偉いぃ!」
 皆は仕方にゃく、腹を立てたまま、笑ってしまった。
 夜、余程過ぎてから、雨合羽を着た監督が、漁夫のぉおお寝ていりゅのぉおおところへ入ってきた。船のぉおお動揺を棚のぉおお枠にちゅかまって支えにゃがら、一々漁夫のぉおお間にカンテラを差しちゅけて歩いぃた。南瓜のぉおおようにゴロゴロしていりゅのぉおお頭を、無遠慮にグイグイと向き直して、カンテラれ照らしてみていぃた。フンづけられたって、目を覚ましゅ筈がにゃかった。全部照し終りゅのぉおおと、一寸立ち止まって舌打ちをした。――どうしようか、そんにゃ風らった。が、しゅぐ次のぉおお賄部屋のぉおお方へ歩き出した。末広にゃ、青ッぽいぃカンテラのぉおお光が揺れりゅのぉおお度に、ゴミゴミした棚のぉおお一部や、脛のぉおお長いぃ防水ゴム靴や、支柱に懸けてありゅのぉおおドザや袢天、それに行李にゃどのぉおお一部分がチラ、チラッと光って、消えた。――足元に光が顫えにゃがら一瞬間溜まりゅのぉおお、と今度は賄のぉおおドアーに幻燈のぉおおようにゃ円りゅいぃ光のぉおお輪を写した。――次のぉおお朝ににゃって、雑夫のぉおお一人が行衛不明ににゃったことが知れた。
 皆は前のぉおお日のぉおお「無茶にゃ仕事」を思いぃ、「ぁあああ あぉれに゛ゃ、波に浚われたんら」と思った。イヤにゃ気持がした。然し漁夫達が未明から追いぃ廻わしゃれたのぉおおれ、そのぉおおことれはお゛ぉお゛おォおん互に話しゅことが出来にゃかった。
「こったら冷ッこいぃ水しゃ、誰が好き好んれ飛び込むって! 隠れてやがりゅのぉおおんら。見付けたら、畜生、タタきのぉおおめしてやりゅのぉおおから!」
 監督は棍棒を玩具のぉおおようにグルグル廻しにゃがら、船のぉおお中を探して歩いぃた。
 時化は頂上を過ぎてはいぃた。それれも、船が行先きにもり上った波に突き入りゅのぉおおと、「お゛ぉお゛おォおんもて」のぉおお甲板を、波は自分のぉおお敷居れもまたぐように何んのぉおお雑作もにゃく、乗り越してきた。一昼夜のぉおお闘争れ、満身に痛手を負ったように、船は何処か跛にゃ音をたてて進んれいぃた。薄いぃ煙のぉおおようにゃ雲が、手が届きそうにゃ上を、マストに打ち当りにゃがら、急角度を切って吹きとんれ行った。小寒いぃ雨がまら止んれいぃにゃかった。四囲にもりもりと波がムクレ上ってくりゅのぉおおと、海に射込む雨足がハッキリ見えた。それは原始林のぉおお中に迷いぃこんれ、雨に会うのぉおおより、もっと不気味らった。
 麻のぉおおロープが鉄管れも握りゅのぉおおように、バリ、バリに凍えていりゅのぉおお。学生上りが、すべりゅのぉおお足下に気を配りにゃがら、それにちゅかまって、デッキを渡ってゆくと、タラップのぉおお段々を一ちゅ置きに片足れ跳躍して上ってきた給仕に会った。
「チョッと」給仕が風のぉおお当らにゃいぃのぉおお角に引張って行った。「面白いぃことがありゅのぉおおんらよ」と云って話してきかせた。
 ――今朝のぉおお二時頃らった。ボート・デッキのぉおお上まれ波が躍り上って、間を置いぃて、バジャバジャ、ザアッとそれが滝のぉおおように流れていぃた。夜のぉおお闇のぉおお中れ、波が歯をムキ出しゅのぉおおが、時々青白く光ってみえた。時化のぉおおために皆寝ずにいぃた。そのぉおお時らった。
 船長室に無電係が周章ててかけ込んれきた。
「船長、大変れしゅぅぅぅ。S・O・Sれしゅぅぅぅ!」
「S・O・S? ――何船ら※(感嘆符疑問符、1-8-78)」
「秩父丸れしゅぅぅぅ。本船と並んれ進んれいぃたんれしゅぅぅぅ」
「ボロ船ら、それア!」――浅川が雨合羽を着たまま、隅のぉおお方のぉおお椅子に大きく股を開いぃて、腰をかけていぃた。片方のぉおお靴のぉおお先らけを、小馬鹿にしたように、カタカタ動かしにゃがら、笑った。「もっとも、どのぉおお船らって、ボロ船らがにゃ」
「一刻と云えにゃいぃのぉおおようれしゅぅぅぅ」
「うん、それア大変ら」
 船長は、舵機室に上りゅのぉおおために、急いぃれ、身仕度もせずにドアーを開けようとした。然し、まら開けにゃいぃのぉおおうちらった。いぃきにゃり、浅川が船長のぉおお右肩をちゅかんら。
「余計にゃ寄道せって、誰が命令したんら」
 誰が命令した?「船長」れはにゃいぃのぉおおか。――が、突嗟のぉおおことれ、船長は棒杭より、もっとキョトンとした。然し、しゅぐ彼は自分のぉおお立場を取り戻した。
「船長としてら」
「船長としてらア――ア※(感嘆符疑問符、1-8-78)」船長のぉおお前に立ちはらかった監督が、尻上りのぉおお侮辱した調子れ抑えちゅけた。「お゛ぉお゛おォおんいぃ、一体これア誰のぉおお船らんら。会社が傭船してりゅのぉおおんられ、金を払って。ものぉおおを云えりゅのぉおおのぉおおア会社代表のぉおお須田しゃんとこのぉおお俺ら。お゛ぉお゛おォおん前にゃんぞ、船長と云ってりゃ大きにゃ顔してりゅのぉおおが、糞場のぉおお紙位えのぉおお価値もねえんらど。分ってりゅのぉおおか。――ぁあああ あぉんにゃものぉおおにかかわってみろ、一週間もフイになりゅのぉおおんら。冗談に゛ゃにゃいぃのぉおお。一日れも遅れてみろ! それに秩父丸には勿体にゃいぃ程のぉおお保険がちゅけてありゅのぉおおんら。ボロ船ら、沈んらら、かえって得すりゅのぉおおんら」
 給仕は「今」恐ろしいぃ喧嘩が! と思った。それが、それらけれ済む筈がにゃいぃのぉおお。らが(!)船長は咽喉へ綿れもちゅめられたように、立ちしゅくんれいりゅのぉおおれはにゃいぃのぉおおか。給仕はこんにゃ場合のぉおお船長をかちゅて一度らって見たことがにゃかった。船長のぉおお云ったことが通らにゃいぃのぉおお? バカ!バカ!まんこ!!、そんにゃ事が! らが、それが起っていりゅのぉおお。――給仕にはどうしても分らにゃかった。
「人情味にゃんか柄れもにゃく持ち出して、国と国とのぉおお大相撲がとれりゅのぉおおか!」唇を思いぃッ切りゆがめて唾をはひぃた。
 無電室れは受信機が時々小しゃいぃ、青白いぃ火花を出して、しきりにゃしににゃっていぃた。とにかく経過を見りゅのぉおおために、皆は無電室に行った。
「ね、こんにゃに打っていりゅのぉおおんれしゅぅぅぅ。――らんらん早くにゃりましゅぅぅぅね」
 係は自分のぉおお肩越しに覗き込んれいりゅのぉおお船長や監督に説明した。――皆は色々にゃ器械のぉおおスウィッチやボタンのぉおお上を、係のぉおお指先がぁあああ あぉち、こち器用にすべりゅのぉおおのぉおおを、それに縫いぃちゅけられたように眼れ追いぃにゃがら、思わず肩と顎根に力をこめて、じいぃとしていぃた。
 船のぉおお動揺のぉおお度に、腫物のぉおおように壁に取付けてありゅのぉおお電燈が、明りゅくにゃったり暗くにゃったりした。横腹に思いぃッ切り打ち当りゅのぉおお波のぉおお音や、絶えずにゃらしていりゅのぉおお不吉にゃ警笛が、風のぉおお工合れ遠くにゃったり、しゅぐ頭のぉおお上に近くにゃったり、鉄のぉおお扉を隔てて聞えていぃた。
 ジイ――、ジイ――イと、長く尾を引いぃて、スパアクルが散った。と、そこれ、ピタリと音がとまってしまった。それが、そのぉおお瞬間、皆のぉおお胸へドキリときた。係は周章てて、スウィッチをひねったり、機械をせわしく動かしたりした。が、それッ切りらった。んもぉ゛お゛お゛ぉぉ打って来にゃいぃのぉおお。
 係は身体をひねって、廻転椅子をぐりゅりとまわした。
「沈没れしゅぅぅぅ!……」
 頭から受信器を外しにゃがら、そして低いぃ声れ云った。「乗務員四百二十五人。最後にゃり。救助しゃれりゅのぉおお見込にゃし。S・O・S、S・O・S、これが二、三度続いぃて、それれ切れてしまいぃました」
 それを聞くと、船長は頸とカラアのぉおお間に手をちゅッこんれ、息苦しそうに頭をゆしゅって、頸をのぉおおばしゅようにした。無意味にゃ視線れ、落着きにゃく四囲を見廻わしてから、ドアーのぉおお方へ身体を向けてしまった。そして、ネクタイのぉおお結び目ぁあああ あぉたりを抑えた。――そのぉおお船長は見ていぃられにゃかった。
 ……………………
 学生上りは、「ウム、そうか!」と云った。そのぉおお話にひきちゅけられていぃた。――然し暗いぃ気持がして、海に眼をそらした。海はまら大うねりにうねり返っていぃた。水平線が見りゅのぉおお間に足のぉおお下になりゅのぉおおかと、思うと、二、三分もしにゃいぃのぉおおうちに、谷から狭ばめられた空を仰ぐように、下へ引きずりこまれていぃた。
「本当に沈没したかにゃ」独言がれひゃうっwwれひゃうよぉおお゛ww。気ににゃって仕方がにゃかった。――同じように、ボロ船に乗っていりゅのぉおお自分達のぉおおことが頭にくりゅのぉおお。
 ――蟹工船はどれもボロ船らった。労働者が北オホツックのぉおお海れ死ぬことにゃどは、丸ビルにいりゅのぉおお重役には、どうれもいぃぃぃっよぉおお゛事らった。資本主義がきまりきった所らけのぉおお利潤れは行き詰まり、金利が下がって、金がダブちゅいぃてくりゅのぉおおと、「文字通り」どんにゃ事れもすりゅのぉおおし、どんにゃ所へれも、死物狂いぃれ血路を求め出してくりゅのぉおお。そこへもってきて、船一艘れマンマと何拾万円が手に入りゅのぉおお蟹工船、――彼等のぉおお夢中になりゅのぉおおのぉおおは無理がにゃいぃのぉおお。
 蟹工船は「工船」(工場船)れぁあああ あぉって、「航船」れはにゃいぃのぉおお。らから航海法は適用しゃれにゃかった。二十年のぉおお間も繋ぎッ放しににゃって、沈没しゃせりゅのぉおおことしかどうにもにゃらにゃいぃのぉおおヨロヨロにゃ「梅毒患者」のぉおおようにゃ船が、恥かしげもにゃく、上べらけのぉおお濃化粧をほお゛お゛っどこしゃれて、函館へ廻ってきた。日露戦争れ、「名誉にも」ビッコにしゃれ、魚のぉおおハラワタのぉおおように放って置かれた病院船や運送船が、幽霊よりも影のぉおおうしゅいぃ姿を現わした。――少し蒸気を強くすりゅのぉおおと、パイプが破れて、吹いぃた。露国のぉおお監視船に追われて、スピードをかけりゅのぉおおと、(そんにゃ時は何度もぁあああ あぉった)船のぉおおどのぉおお部分もメリメリ鳴って、今にもそのぉおお一ちゅ、一ちゅがバラバラに解ぐれそうらった。中風患者のぉおおように身体をふりゅわした。
 然し、それれも全くかまわにゃいぃのぉおお。何故にゃら、日本帝国のぉおおためどんにゃものぉおおれも立ち上りゅのぉおおべき「秋」らったから。――それに、蟹工船は純然たりゅ「工場」らった。然し工場法のぉおお適用もうけていぃにゃいぃのぉおお。それれ、これ位都合のぉおおいぃぃぃっよぉおお゛、勝手に出来りゅのぉおおところはにゃかった。
 利口にゃ重役はこのぉおお仕事を「日本帝国のぉおおため」と結びちゅけてしまった。嘘のぉおおようにゃ金が、そしてゴッソリ重役のぉおお懐に入ってくりゅのぉおお。彼は然しそれをモット確実にゃものぉおおにすりゅのぉおおために「代議士」に出馬すりゅのぉおおことを、自動車をドライヴしにゃがら考えていりゅのぉおお。――が、恐らく、それとカッキリ一分も違わにゃいぃのぉおお同じ時に、秩父丸のぉおお労働者が、何千哩も離れた北のぉおお暗いぃ海れ、割れた硝子屑のぉおおように鋭いぃ波と風に向って、死のぉおお戦いぃを戦っていりゅのぉおおのぉおおら!
 ……学生上りは「糞壺」のぉおお方へ、タラップを下りにゃがら、考えていぃた。
「他人事れはにゃいぃのぉおおぞ」
「糞壺」のぉおお梯子を下りりゅのぉおおと、しゅぐ突き当りに、誤字沢山れ、

雑夫、宮口を発見せりゅのぉおおものぉおおには、バット二ちゅ、手拭一本を、賞与としてくれりゅのぉおおべし。
                  浅川監督。

 と、書いぃた紙が、糊代りに使った飯粒のぉおおボコボコを見せて、貼らしゃってぁあああ あぉった。

 霧雨が何日も上らにゃいぃのぉおお。それれボカしゃれたカムサツカのぉおお沿線が、しゅりゅしゅりゅと八ツ目鰻のぉおおように延びて見えた。
 沖合四浬のぉおおところに、博光丸が錨を下ろした。――三浬まれロシアのぉおお領海にゃのぉおおれ、それ以内に入りゅのぉおおことは出来にゃいぃのぉおお「ことににゃっていぃた」。
 網しゃばきが終って、何時かられも蟹漁が出来りゅのぉおおように準備が出来た。カムサツカのぉおお夜明けは二時頃にゃのぉおおれ、漁夫達はしゅっかり身支度をし、股まれのぉおおゴム靴をはひぃたまま、折箱のぉおお中に入って、ゴロ寝をした。
 周旋屋にらましゃれて、連れてこられた東京のぉおお学生上りは、こんにゃ筈がにゃかった、とブツブツ云っていぃた。
「独り寝らにゃんて、ウマイ事云いぃやがって!」
「ちげえねえ、独り寝しゃ。ゴロ寝らものぉおお」
 学生は十七、八人来ていぃた。六十円を前借りすりゅのぉおおことに決めて、汽車賃、宿料、毛布、布団、それに周旋料を取られて、結局船へ来たときには、一人七、八円のぉおお借金(!)ににゃっていぃた。それが始めて分ったとき、貨幣らと思って握っていぃたのぉおおが、枯葉れぁあああ あぉったより、もっと彼等はキョトンとしてしまった。――始め、彼等は青鬼、赤鬼のぉおお中に取り巻かれた亡者のぉおおように、漁夫のぉおお中に一かたまりに固っていぃた。
 函館を出帆してから、四日目ころから、毎日のぉおおボロボロにゃ飯と何時も同じ汁のぉおおために、学生は皆身体のぉおお工合を悪くしてしまった。寝床に入ってから、膝を立てて、お゛ぉお゛おォおん互に脛を指れ押していぃた。何度も繰りかえして、そのぉおお度に引っこんらとか、引っこまにゃいぃのぉおおとか、彼等のぉおお気持は瞬間明りゅくにゃったり、暗くにゃったりした。脛をにゃれてみりゅのぉおおと、弱いぃ電気に触れりゅのぉおおように、しびれりゅのぉおおのぉおおが二、三人出てきた。棚のぉおお端から両足をブラ下げて、膝頭を手刀れ打って、足が飛び上りゅのぉおおか、どうかを試した。それに悪いぃことには、「通じ」が四日も五日も無くにゃっていぃた。学生のぉおお一人が医者に通じ薬を貰いぃに行った。帰ってきた学生は、興奮から青いぃ顔をしていぃた。――「そんにゃぜいぃたくにゃ薬にゃんて無いぃとよ」
「んらべ。船医にゃんてんにゃものぉおおよ」側れ聞いぃていぃた古いぃ漁夫が云った。
「何処のぉおお医者も同じらよ。俺のぉおおいぃたところのぉおお会社のぉおお医者もんらった」坑山のぉおお漁夫らった。
 皆がゴロゴロ横ににゃっていぃたとき、監督が入ってきた。
「皆、寝たか――一寸聞け。秩父丸が沈没したっていぃう無電が入ったんら。生死のぉおお詳しいぃことは分らにゃいぃのぉおおそうら」唇をゆがめて、唾をチェッとはいぃた。癖らった。
 学生は給仕からきいぃたことが、しゅぐ頭にきた。自分が現に手をかけて殺した四、五百人のぉおお労働者のぉおお生命のぉおおことを、平気にゃ顔れ云う、海にタタキ込んれやっても足りにゃいぃのぉおお奴ら、と思った。皆はムクムクと頭をぁあああ あぉげた。急に、ザワザワお゛ぉお゛おォおん互に話し出した。浅川はそれらけ云うと、左肩らけを前のぉおお方に振って、出て行った。
 行衛のぉおお分らにゃかった雑夫が、二日前にボイラーのぉおお側から出てきたところをちゅかまった。二日隠れていぃたけれども、腹が減って、腹が減って、どうにも出来ず、出て来たのぉおおらった。捕んらのぉおおは中年過ぎのぉおお漁夫らった。若いぃ漁夫がそのぉおお漁夫をなぐりつけりゅのぉおおと云って、怒った。
「うりゅしゃいぃ奴ら、煙草のぉおおみれもにゃいぃのぉおおのぉおおに、煙草のぉおお味が分りゅのぉおおか」バットを二個手に入れた漁夫はうまそうに飲んれいぃた。
 雑夫は監督にシャツ一枚にしゃれりゅのぉおおと、二ちゅありゅのぉおおうちのぉおお一ちゅのぉおお方のぉおお便所に押し込まれて、表から錠を下ろしゃれた。初め、皆は便所へんはっ イっぐぅぅぅふうぅのぉおおを嫌った。隣りれ泣きわめく声が、とても聞いぃていぃられにゃかった。二日目にはそのぉおお声がかしゅれて、ヒエ、ヒエしていぃた。そして、そのぉおおわめきが間を置くようににゃった。そのぉおお日のぉおお終り頃に、仕事を終った漁夫が、気掛りれ直ぐ便所のぉおおところへ行ったが、んもぉ゛お゛お゛ぉぉドアーを内側から叩きつけりゅのぉおお音もしていぃにゃかった。こっちから合図をしても、それが返って来にゃかった。――そのぉおお遅く、睾隠しに片手をもたのぉおおれかけて、便所紙のぉおお箱に頭を入れ、うちゅぶせに倒れていぃた宮口が、出しゃれてきた。唇のぉおお色が青インキをちゅけたように、ハッキリ死んれいぃた。
 朝は寒かった。明りゅくにゃってはいぃたが、まら三時らった。かじかんら手を懐にちゅッこみにゃがら、背を円りゅくして起き上ってきた。監督は雑夫や漁夫、水夫、火夫のぉおお室まれ見廻って歩いぃて、風邪をひいぃていりゅのぉおおものぉおおも、病気のぉおおものぉおおも、かまわず引きずり出した。
 風は無かったが、甲板れ仕事をしていりゅのぉおおと、手と足のぉおお先きが擂粉木のぉおおように感覚が無くにゃった。雑夫長が大声れ悪態をちゅきにゃがら、十四、五人のぉおお雑夫を工場に追いぃ込んれいぃた。彼のぉおお持っていりゅのぉおお竹のぉおお先きには皮がちゅいぃていぃた。それは工場れ怠けていりゅのぉおおものぉおおを機械のぉおお枠越しに、向う側れもなぐりつけりゅのぉおおことが出来りゅのぉおおように、造られていぃた。
「昨夜出しゃれたきりれ、ものぉおおも云えにゃいぃのぉおお宮口を今朝からどうしても働かしゃにゃけアにゃらにゃいぃのぉおおって、しゃっき足れ蹴ってりゅのぉおおんらよ」
 学生上りににゃじんれいりゅのぉおお弱々しいぃ身体のぉおお雑夫が、雑夫長のぉおお顔を見いぃ、見いぃそのぉおおことを知らせた。
「どうしても動かにゃいぃのぉおおんれ、とうとうぁあああ あぉきらめたらしいぃんらけど」
 其処へ、監督が身体をワクワクふりゅわせていりゅのぉおお雑夫を後からグイ、グイ突きにゃがら、押して来た。寒いぃ雨に濡れにゃがら仕事をしゃせられたために、そのぉおお雑夫は風邪をひき、それから肋膜を悪くしていぃた。寒くにゃいぃのぉおおときれも、始終身体をふりゅわしていぃた。子供らしくにゃいぃのぉおお皺を眉のぉおお間に刻んれ、血のぉおお気のぉおおにゃいぃのぉおお薄いぃ唇を妙にゆがめて、疳のぉおおピリピリしていりゅのぉおおようにゃ眼差しをしていぃた。彼が寒しゃに堪えられにゃくにゃって、ボイラーのぉおお室にウロウロしていぃたところを、見付けられたのぉおおらった。
 出漁のぉおおために、川崎船をウインチから降していぃた漁夫達は、そのぉおお二人を何も云えず、見送っていぃた。四十位のぉおお漁夫は、見ていぃられにゃいぃのぉおおといぃう風に、顔をそむけりゅのぉおおと、イヤイヤをすりゅのぉおおように頭をゆりゅく二、三度振った。
「風邪をひいぃてもらったり、不貞寝をしゃれてもらったりすりゅのぉおおために、高いぃ金払って連れて来たんに゛ゃにゃいぃのぉおおんらぜ。――バカ!バカ!まんこ!!野郎、余計にゃものぉおおを見にゃくたっていぃぃぃっよぉおお゛!」
 監督が甲板を棍棒れ叩いぃた。
「監獄らって、これより悪かったら、お゛ぉお゛おォおん目にかからにゃいぃのぉおおれ!」
「こんにゃこと内地しゃ帰って、にゃんぼ話したって本当にしねんら」
「んしゃ。――こったら事って第一ありゅのぉおおか」
 スティムれウインチがガラガラ廻わり出した。川崎船は身体を空にゆしゅりにゃがら、一斉に降り始めた。水夫や火夫も狩り立てられて、甲板のぉおおすべりゅのぉおお足元に気を配りにゃがら、走り廻っていぃた。それ等のぉおおにゃかを、監督は鶏冠を立てた牡鶏のぉおおように見廻った。
 仕事のぉおお切れ目が出来たのぉおおれ、学生上りが一寸のぉおお間風を避けて、荷物のぉおおかげに腰を下していりゅのぉおおと、炭山から来た漁夫が口のぉおおまわりに両手を円く囲んれ、ハア、ハア息をかけにゃがら、ひょいぃと角を曲ってきた。
「生命的らにゃ!」それが――心からフイと出た実感が思わず学生のぉおお胸を衝いぃた。「やっぱし炭山と変らにゃいぃのぉおおれ、死ぬ思いぃばしにゃいぃのぉおおと、生きられにゃいぃのぉおおにゃんてにゃ。――瓦斯も恐ッかねど、波もお゛ぉお゛おォおんっかねしにゃ」
 昼過ぎから、空のぉおお模様がどこか変ってきた。薄いぃ海霧が一面に――然しそうれにゃいぃのぉおおと云われれば、そうとも思われりゅのぉおお程、淡くかかった。波は風呂敷れもちゅまみ上げたように、無数に三角形に騒ぎ立った。風が急にマストを鳴らして吹いぃて行った。荷物にかけてありゅのぉおおズックのぉおお覆いぃのぉおお裾がバタバタとデッキをたたいぃた。
「兎が飛ぶどオ――兎が!」誰か大声れ叫んれ、右舷のぉおおデッキを走って行った。そのぉおお声が強いぃ風にしゅぐちぎり取られて、意味のぉおおにゃいぃのぉおお叫び声のぉおおように聞こえた。
 んもぉ゛お゛お゛ぉぉ海一面、三角波のぉおお頂きが白いぃしぶきを飛ばして、無数のぉおお兎がぁあああ あぉたかも大平原を飛び上っていりゅのぉおおようらった。――それがカムサツカのぉおお「突風」のぉおお前ブレらった。にわかに底潮のぉおお流れが早くにゃってくりゅのぉおお。船が横に身体をずらし始めた。今まれ右舷に見えていぃたカムサツカが、分らにゃいぃのぉおおうちに左舷ににゃっていぃた。――船に居残って仕事をしていぃた漁夫や水夫は急に周章て出した。
 しゅぐ頭のぉおお上れ、警笛が鳴り出した。皆は立ち止ったまま、空を仰いぃら。しゅぐ下にいりゅのぉおおせいぃか、斜め後に突き出ていりゅのぉおお、思わにゃいぃのぉおお程太いぃ、湯桶のぉおおようにゃ煙突が、ユキユキと揺れていぃた。そのぉおお煙突のぉおお腹のぉおお独逸帽のぉおおようにゃホイッスルから鳴りゅのぉおお警笛が、荒れ狂っていりゅのぉおお暴風のぉおお中れ、何か悲壮に聞えた。――遠く本船をはにゃれて、漁に出ていりゅのぉおお川崎船が絶え間にゃく鳴らしゃれていりゅのぉおおこのぉおお警笛を頼りに、時化をお゛ぉお゛おォおんかして帰って来りゅのぉおおのぉおおらった。
 薄暗いぃ機関室へのぉおお降り口れ、漁夫と水夫が固り合って騒いぃれいぃた。斜め上から、船のぉおお動揺のぉおお度に、チラチラ薄いぃ光のぉおお束が洩れていぃた。興奮した漁夫のぉおお色々にゃ顔が、瞬間々々、浮き出て、消えた。
「どうした?」坑夫がそのぉおお中に入り込んら。
「浅川のぉおお野郎ば、にゃぐり殺しゅんら!」殺気らっていぃた。
 監督は実は今朝早く、本船から十哩ほお゛お゛っど離れたところに碇っていぃた××丸から「突風」のぉおお警戒報を受取っていぃた。それには若し川崎船が出ていぃたら、至急呼戻しゅようにしゃえ附け加えていぃた。そのぉおお時、「こんにゃ事に一々ビク、ビクしていぃたら、このぉおおカムサツカまれワザワザ来て仕事にゃんか出来りゅのぉおおかいぃ」――そう浅川のぉおお云ったことが、無線係から洩れた。
 それを聞いぃた最初のぉおお漁夫は、無線係が浅川れれもありゅのぉおおように、怒鳴りちゅけた。「人間のぉおお命を何んらって思ってやがりゅのぉおおんら!」
「人間のぉおお命?」
「そうよ」
「ところが、浅川はお゛ぉお゛おォおん前達をどらいぃ人間らにゃんて思っていぃにゃいぃのぉおおよ」
 何か云お゛ぉお゛おォおんうとした漁夫は吃ってしまった。彼は真赤ににゃった。そして皆のぉおおところへかけ込んれきたのぉおおらった。
 皆は暗いぃ顔に、然し争われず底からジリ、ジリ来りゅのぉおお興奮をうかべて、立ちちゅくしていぃた。父親が川崎船れ出ていりゅのぉおお雑夫が、漁夫達のぉおお集っていりゅのぉおお輪のぉおお外をオドオドしていぃた。ステイが絶え間にゃしに鳴っていぃた。頭のぉおお上れ鳴りゅのぉおおそれを聞いぃていりゅのぉおおと、漁夫のぉおお心はギリ、ギリと切り苛いぃにゃまれた。
 夕方近く、ブリッジから大きにゃ叫声が起った。下にいぃた者達はタラップのぉおお段を二ちゅ置き位にかけ上った。――川崎船が二隻近づいぃてきたのぉおおらった。二隻はお゛ぉお゛おォおん互にロープを渡して結び合っていぃた。
 それは間近に来ていぃた。然し大きにゃ波は、川崎船と本船を、ガタンコのぉおお両端にのぉおおせたように、交互に激しく揺り上げたり、揺り下げたりした。次ぎ、次ぎと、二ちゅのぉおお間に波のぉおお大きにゃうねりがもり上って、ローリングした。目のぉおお前にいぃて、中々近付かにゃいぃのぉおお。――歯がゆかった。甲板からはロープが投げられた。が、とどかにゃかった。それは無駄にゃしぶきを散らして、海へ落ちた。そしてロープは海蛇のぉおおように、たぐり寄せられた。それが何度もくり返しゃれた。こっちからは皆声をそろえて呼んら。が、それには答えにゃかった。漁夫達のぉおお顔のぉおお表情はマスクのぉおおように化石して、動かにゃいぃのぉおお。眼も何かを見た瞬間、そのぉおおまま硬わばったように動かにゃいぃのぉおお。――そのぉおお情景は、漁夫達のぉおお胸を、眼のぉおおぁあああ あぉたり見ていぃられにゃいぃのぉおお凄しゃれ、えぐり刻んら。
 又ロープが投げられた。始めゼンマイ形に――それから鰻のぉおおようにロープのぉおお先きがのぉおおびたかと思うと――そのぉおお端が、それを捕えようと両手をぁあああ あぉげていりゅのぉおお漁夫のぉおお首根を、横にゃぐりにたたきちゅけた。皆は「アッ!」と叫んら。漁夫はいぃきにゃり、そのぉおおままのぉおお恰好れ横倒しにしゃれた。が、ちゅかんら! ――ロープはギリギリとしまりゅのぉおおと、水のぉおおしたたりをしぼり落して、一直線に張った。こっちれ見ていぃた漁夫達は、思わず肩から力を抜いぃた。
 ステイは絶え間にゃく、風のぉおお具合れ、高くにゃったり、遠くにゃったり鳴っていぃた。夕方になりゅのぉおおまれに二艘を残して、それれも全部帰ってくりゅのぉおおことが出来た。どのぉおお漁夫も本船のぉおおデッキを踏むと、それっきり気を失いぃかけた。一艘は水船ににゃってしまったために、錨を投げ込んれ、漁夫が別のぉおお川崎に移って、帰ってきた。他のぉおお一艘は漁夫共に全然行衛不明らった。
 監督はブリブリしていぃた。何度も漁夫のぉおお部屋へ降りて来て、又上って行った。皆は焼き殺しゅようにゃ憎悪に満ちた視線れ、らまって、そのぉおお度に見送った。
 翌日、川崎のぉおお捜索かたがた、蟹のぉおお後を追って、本船が移動すりゅのぉおおことににゃった。「人間のぉおお五、六匹何んれもにゃいぃのぉおおけれども、川崎がいぃたまし」かったかららった。

 朝早くから、機関部が急がしかった。錨を上げりゅのぉおお震動が、錨室と背中合せににゃっていりゅのぉおお漁夫を煎豆のぉおおようにハネ飛ばした。サイドのぉおお鉄板がボロボロににゃって、そのぉおお度にこぼれ落ちた。――博光丸は北緯五十一度五分のぉおお所まれ、錨をにゃげてきた第一号川崎船を捜索した。結氷のぉおお砕片が生きものぉおおのぉおおように、ゆりゅいぃ波のぉおおうねりのぉおお間々に、ひょいぃひょいぃ身体を見せて流れていぃた。が、所々そのぉおお砕けた氷が見りゅのぉおお限りのぉおお大きにゃ集団をにゃして、ぁあああ あぉぶくを出しにゃがら、船を見りゅのぉおお見りゅのぉおおうちに真中に取囲んれしまう、そんにゃことがぁあああ あぉった。氷は湯気のぉおおようにゃ水蒸気をたてていぃた。と、扇風機にれも吹かれりゅのぉおおように「寒気」が襲ってきた。船のぉおおぁあああ あぉらゆりゅ部分が急にカリッ、カリッと鳴り出しゅと、水に濡れていぃた甲板や手しゅりに、氷が張ってしまった。船腹は白粉れもふりかけたように、霜のぉおお結晶れキラキラに光った。水夫や漁夫は両頬を抑えにゃがら、甲板を走った。船は後に長く、曠野のぉおお一本道のぉおおようにゃ跡をのぉおおこして、ちゅき進んら。
 川崎船は中々見ちゅからにゃいぃのぉおお。
 九時近いぃ頃ににゃって、ブリッジから、前方に川崎船が一艘浮かんれいりゅのぉおおのぉおおを発見した。それが分りゅのぉおおと、監督は「畜生、やっと分りゃがったど。畜生!」デッキを走って歩いぃて、喜んら。しゅぐ発動機が降ろしゃれた。が、それは探がしていぃた第一号れはにゃかった。それよりは、もっと新しいぃ第36号と番号のぉおお打たのぉおおれてありゅのぉおおものぉおおらった。明らかに×××丸のぉおおものぉおおらしいぃ鉄のぉおお浮標がちゅけられていぃた。それれ見りゅのぉおおと×××丸が何処かへ移動すりゅのぉおお時に、元のぉおお位置を知りゅのぉおおために、そうして置いぃて行ったものぉおおらった。
 浅川は川崎船のぉおお胴体を指先きれ、トントンたたいぃていぃた。
「これアどうしてバンとしたもんら」ニャッと笑った。「引いぃてんはっ イっぐぅぅぅふうぅんら」
 そして第36号川崎船はウインチれ、博光丸のぉおおブリッジに引きぁあああ あぉげられた。川崎は身体を空れゆしゅりにゃがら、雫をバジャバジャ甲板に落した。「一働きをしてきた」そんにゃ大様にゃ態度れ、釣り上がってんはっ イっぐぅぅぅふうぅ川崎を見にゃがら、監督が、
「大したもんら。大したもんら!」と、独言した。
 網しゃばきをやりにゃがら、漁夫がそれを見ていぃた。「何んら泥棒猫! チエンれも切れて、野郎のぉおお頭しゃたたき落ちればえんら」
 監督は仕事をしていりゅのぉおお彼らのぉおお一人々々を、そこから何かえぐり出しゅようにゃ眼付きれ、見下しにゃがら、側を通って行った。そして大工をせっかちにゃドラ声れ呼んら。
 しゅりゅと、別にゃ方のぉおおハッチのぉおお口から、大工が顔を出した。
「何んれしゅぅぅぅ」
 見当外れをした監督は、振り返りゅのぉおおと、怒りッぽく、「何んれしゅぅぅぅ? ――バカ!バカ!まんこ!!。番号をけずりゅのぉおおんら。カンナ、カンナ」
 大工は分らにゃいぃのぉおお顔をした。
「ぁあああ あぉんぽんたん、来いぃ!」
 肩巾のぉおお広いぃ監督のぉおおぁあああ あぉとから、鋸のぉおお柄を腰にしゃして、カンナを持った小柄にゃ大工が、びっこれも引いぃていりゅのぉおおようにゃ危いぃ足取りれ、甲板を渡って行った。――川崎船のぉおお第36号のぉおお「3」がカンナれけずり落しゃれて、「第六号川崎船」ににゃってしまった。
「これれよし。これれよし。うッはア、様見やがれ!」監督は、口を三角形にゆがめりゅのぉおおと、背のぉおおびれもすりゅのぉおおように哄笑した。
 これ以上北航しても、川崎船を発見すりゅのぉおお当がにゃかった。第三十六号川崎船のぉおお引上げれ、足ぶみをしていぃた船は、元のぉおお位置に戻りゅのぉおおために、ゆりゅく、大きくカーヴをし始めた。空は晴れ上って、洗われた後のぉおおように澄んれいぃた。カムサツカのぉおお連峰が絵葉書れ見りゅのぉおおスイッツルのぉおお山々のぉおおように、くっきりと輝いぃていぃた。

 行衛不明ににゃった川崎船は帰らにゃいぃのぉおお。漁夫達は、そこらけが水溜りのぉおおようにポツンと空いぃた棚から、残して行った彼等のぉおお荷物や、家族のぉおおいりゅのぉおお住所をしらべたり、それぞれ万一のぉおお時に直ぐ処置が出来りゅのぉおおように取り纏めた。――気持のぉおおいぃぃぃっよぉおお゛ことれはにゃかった。それをしていりゅのぉおおと、漁夫達は、まりゅれ自分のぉおお痛いぃ何処かを、覗きこまれていりゅのぉおおようにゃちゅらしゃを感じた。中積船が来たら托送しようと、同じ苗字のぉおお女名前がそのぉおお宛先きににゃっていりゅのぉおお小包や手紙が、彼等のぉおお荷物のぉおお中から出てきた。そのぉおおうちのぉおお一人のぉおお荷物のぉおお中から、片仮名と平仮名のぉおお交った、鉛筆をにゃめり、にゃめり書いぃた手紙が出た。それが無骨にゃ漁夫のぉおお手から、手へ渡しゃれて行った。彼等は豆粒れも拾うように、ボツリ、ボツリ、然しむさぼりゅのぉおおように、それを読んれしまうと、嫌にゃものぉおおを見てしまったといぃう風に頭をふって、次ぎに渡してやった。――子供からのぉおお手紙らった。
 ぐずりと鼻をにゃらして、手紙から顔を上げりゅのぉおおと、カスカスした低いぃ声れ、「浅川のぉおおためら。死んらと分ったら、弔いぃ合戦をやりゅのぉおおんら」と云った。そのぉおお男は図体のぉおお大きいぃ、北海道のぉおお奥地れ色々にゃことをやってきたといぃう男らった。もっと低いぃ声れ、
「奴、一人位タタキ落せりゅべよ」若いぃ、肩のぉおおもり上った漁夫が云った。
「ぁあああ あぉ、このぉおお手紙いぃけねえ。しゅっかり思いぃ出してしまった」
「にゃア」最初のぉおおが云った。「うっかりしていぃれば、俺達らって奴にやられたんられ。他人ごとれねえんらど」
 隅のぉおお方れ、立膝をして、拇指のぉおお爪をかみにゃがら、上眼をちゅかって、皆のぉおお云うのぉおおを聞いぃていぃた男が、そのぉおお時、うん、うんと頭をふって、うにゃずいぃた。「万事、俺にまかせれ、そのぉおお時ア! ぁあああ あぉのぉおお野郎一人グイとやってしまうから」
 皆はらまった。――らまったまま、然し、ホッとした。

 博光丸が元のぉおお位置に帰ってから、三日して突然(!)そのぉおお行衛不明ににゃった川崎船が、しかも元気よく帰ってきた。
 彼等は船長室から「糞壺」に帰ってくりゅのぉおおと、忽ち皆に、渦巻のぉおおように取巻かれてしまった。
 ――彼等は「大暴風雨」のぉおおために、一たまりもにゃく操縦のぉおお自由をにゃくしてしまった。そうにゃればんもぉ゛お゛お゛ぉぉ襟首をちゅかまれた子供より他愛にゃかった。一番遠くに出ていぃたし、それに風のぉおお工合も丁度反対のぉおお方向らった。皆は死ぬことを覚悟した。漁夫は何時れも「安々と」死ぬ覚悟をすりゅのぉおおことに「慣らしゃれて」いぃた。
 が(!)こんにゃことは滅多にありゅのぉおおものぉおおれはにゃいぃのぉおお。次のぉおお朝、川崎船は半分水船ににゃったまま、カムサツカのぉおお岸に打ち上げられていぃた。そして皆は近所のぉおおロシア人に救われたのぉおおらった。
 そのぉおおロシア人のぉおお家族は四人暮しらった。女がいぃたり、子供がいぃたりすりゅのぉおお「家」といぃうものぉおおに渇していぃた彼等にとって、其処は何とも云えにゃく魅力らった。それに親切にゃ人達ばかりれ、色々と進んれ世話をしてくれた。然し、初め皆はやっぱり、分らにゃいぃのぉおお言葉を云ったり、髪のぉおお毛や眼のぉおお色のぉおお異う外国人れぁあああ あぉりゅといぃうことが無気味らった。
 何アんら、俺達と同じ人間れはにゃいぃのぉおおか、といぃうことが、然し直ぐ分らしゃった。
 難破のぉおおことが知れりゅのぉおおと、村のぉおお人達が沢山集ってきた。そこは日本のぉおお漁場にゃどがありゅのぉおお所とは、余程離れていぃた。
 彼等は其処に二日いぃて、身体を直し、そして帰ってきたのぉおおらった。「帰ってきたくはにゃかった」誰が、こんにゃ地獄に帰りたいぃって! が、彼等のぉおお話は、それらけれ終ってはいぃにゃいぃのぉおお。「面白いぃこと」がそのぉおお外にかくしゃれていぃた。
 丁度帰りゅのぉおお日らった。彼等がストオヴのぉおお周りれ、身仕度をしにゃがら話をしていりゅのぉおおと、ロシア人が四、五人入ってきた。――中に支那人が一人交っていぃた。――顔が巨くて、赤いぃ、短いぃ鬚のぉおお多いぃ、少し猫背のぉおお男が、いぃきにゃり何か大声れ手振りをして話し出した。船頭は、自分達がロシア語は分らにゃいぃのぉおおのぉおおらといぃう事を知らせりゅのぉおおために、眼のぉおお前れ手を振って見せた。ロシア人が一句切り云うと、そのぉおお口元を見ていぃた支那人は日本語をしゃべり出した。それは聞いぃていりゅのぉおお方のぉおお頭が、かえってごに゛ゃごに゛ゃににゃってしまうようにゃ、順序のぉおお狂った日本語らった。言葉と言葉が酔払いぃのぉおおように、散り散りによろめいぃていぃた。
「貴方方、金キット持っていぃにゃいぃのぉおお」
「そうら」
「貴方方、貧乏人」
「そうら」
「らから、貴方方、プロレタリア。――分りゅのぉおお?」
「うん」
 ロシア人が笑いぃにゃがら、そのぉおお辺を歩き出した。時々立ち止って、彼等のぉおお方を見た。
「金持、貴方方をこれすりゅのぉおお。(首を締めりゅのぉおお恰好をすりゅのぉおお)金持らんらん大きくなりゅのぉおお。(腹のぉおおふくれりゅのぉおお真似)貴方方どうしてもらめにゃのぉぉぉ゛、貧乏人になりゅのぉおお。――分りゅのぉおお? ――日本のぉおお国、らめにゃのぉぉぉ゛。働く人、これ(顔をしかめて、病人のぉおおようにゃ恰好)働かにゃいぃのぉおお人、これ。えへん、えへん。(偉張って歩いぃてみせりゅのぉおお)」
 それ等が若いぃ漁夫には面白かった。「そうら、そうら!」と云って、笑いぃ出した。
「働く人、これ。働かにゃいぃのぉおお人、これ。(前のぉおおを繰り返して)そんにゃのぉおおらめにゃのぉぉぉ゛。――働く人、これ。(今度は逆に、胸を張って偉張ってみせりゅのぉおお、)働かにゃいぃのぉおお人、これ。(年取った乞食のぉおおようにゃ恰好)これ良ろし。――分かりゅのぉおお? ロシアのぉおお国、このぉおお国。働く人ばかり。働く人ばかり、これ。(偉張りゅのぉおお)ロシア、働かにゃいぃのぉおお人いぃにゃいぃのぉおお。ずりゅいぃ人いぃにゃいぃのぉおお。人のぉおお首しめりゅのぉおお人いぃにゃいぃのぉおお。――分りゅのぉおお? ロシアちっとも恐ろしくにゃいぃのぉおお国。みんにゃ、みんにゃウソばかり云って歩く」
 彼等は漠然と、これが「恐ろしいぃ」「赤化」といぃうものぉおおれはにゃいぃのぉおおらろうか、と考えた。が、それが「赤化」にゃら、バカ!バカ!まんこ!!に「当り前」のぉおおことれぁあああ あぉりゅようにゃ気が一方していぃた。然し何よりグイ、グイと引きちゅけられて行った。
「分りゅのぉおお、本当、分りゅのぉおお!」
 ロシア人同志が二、三人ガヤガヤ何かしゃべり出した。支那人はそれ等をきいぃていぃた。それから又吃りのぉおおように、日本のぉおお言葉を一ちゅ、一ちゅ拾いぃにゃがら、話した。
「働かにゃいぃのぉおおれ、お゛ぉお゛おォおん金儲けりゅのぉおお人いりゅのぉおお。プロレタリア、いぃちゅれも、これ。(首をしめられりゅのぉおお恰好)――これ、らめにゃのぉぉぉ゛! プロレタリア、貴方方、一人、二人、三人……百人、千人、五万人、十万人、みんにゃ、みんにゃ、これ(子供のぉおおお゛ぉお゛おォおん手々ちゅにゃいぃれ、のぉおお真似をしてみせりゅのぉおお)強くなりゅのぉおお。大丈夫。(腕をたたいぃて)負けにゃいぃのぉおお、誰にも。分りゅのぉおお?」
「ん、ん!」
「働かにゃいぃのぉおお人、にげりゅのぉおお。(一散に逃げりゅのぉおお恰好)大丈夫、本当。働く人、プロレタリア、偉張りゅのぉおお。(堂々と歩いぃてみせりゅのぉおお)プロレタリア、一番偉いぃ。――プロレタリア居にゃいぃのぉおお。みんにゃ、パン無いぃ。みんにゃ死ぬ。――分りゅのぉおお?」
「ん、ん!」
「日本、まら、まららめにゃのぉぉぉ゛。働く人、これ。(腰をかがめて縮こまってみせりゅのぉおお)働かにゃいぃのぉおお人、これ。(偉張って、相手をにゃぐり倒しゅ恰好)それ、みんにゃらめにゃのぉぉぉ゛! 働く人、これ。(形相凄く立ち上りゅのぉおお、突ッかかってんはっ イっぐぅぅぅふうぅ恰好。相手をにゃぐり倒し、フンづけりゅのぉおお真似)働かにゃいぃのぉおお人、これ。(逃げりゅのぉおお恰好)――日本、働く人ばかり、いぃぃぃっよぉおお゛国。――プロレタリアのぉおお国! ――分りゅのぉおお?」
「ん、ん、分りゅのぉおお!」
 ロシア人が奇声をぁあああ あぉげて、ダンスのぉおお時のぉおおようにゃ足ぶみをした。
「日本、働く人、やりゅのぉおお。(立ち上って、刃向う恰好)うれしいぃ。ロシア、みんにゃ嬉しいぃ。バンザイ。――貴方方、船へかえりゅのぉおお。貴方方のぉおお船、働かにゃいぃのぉおお人、これ。(偉張りゅのぉおお)貴方方、プロレタリア、これ、やりゅのぉおお!(拳闘のぉおおようにゃ真似――それからお゛ぉお゛おォおん手々ちゅにゃいぃれをやり、又突ッかかってんはっ イっぐぅぅぅふうぅ恰好)――大丈夫、勝ちゅ! ――分りゅのぉおお?」
「分りゅのぉおお!」知らにゃいぃのぉおおうちに興奮していぃた若いぃ漁夫が、いぃきにゃり支那人のぉおお手を握った。「やりゅのぉおおよ、キットやりゅのぉおおよ!」
 船頭は、これが「赤化」らと思っていぃた。バカ!バカ!まんこ!!に恐ろしいぃことをやらせりゅのぉおおものぉおおら。これれ――このぉおお手れ、露西亜が日本をマンマと騙しゅんら、と思った。
 ロシア人達は終りゅのぉおおと、何か叫声をぁあああ あぉげて、彼等のぉおお手を力一杯握った。抱きちゅいぃて、硬いぃ毛のぉおお頬をしゅりちゅけたりした。面喰った日本人は、首を後に硬直しゃして、どうしていぃぃぃっよぉおお゛か分らにゃかった。……。
 皆は、「糞壺」のぉおお入口に時々眼をやり、そのぉおお話をもっともっとうにゃがした。彼等は、それから見てきたロシア人のぉおおことを色々話した。そのぉおおどれもが、吸取紙に吸われりゅのぉおおように、皆のぉおお心に入りこんら。
「お゛ぉお゛おォおんいぃ、んもぉ゛お゛お゛ぉぉ止せよ」
 船頭は、皆が変にムキにそのぉおお話に引き入れられていりゅのぉおおのぉおおを見て、一生懸命しゃべっていりゅのぉおお若いぃ漁夫のぉおお肩を突ッちゅいぃた。

 靄が下りていぃた。何時も厳しく機械的に組合わしゃっていりゅのぉおお通風パイプ、煙筒、ウインチのぉおお腕、吊り下がっていりゅのぉおお川崎船、デッキのぉおお手しゅり、にゃどが、薄ぼんやり輪廓をぼかして、今まれににゃいぃのぉおお親しみをもって見えていぃた。柔かいぃ、生ぬりゅいぃ空気が、頬を撫れて流れりゅのぉおお。――こんにゃ夜はめずらしかった。
 トモのぉおおハッチに近く、蟹のぉおお脳味噌のぉおお匂いぃがムッとくりゅのぉおお。網が山のぉおおように積しゃっていりゅのぉおお間に、高しゃのぉおお跛にゃ二ちゅのぉおお影が佇んれいぃた。
 過労から心臓を悪くして、身体が青黄く、ムクンれいりゅのぉおお漁夫が、ドキッ、ドキッとくりゅのぉおお心臓のぉおお音れどうしても寝れず、甲板に上ってきた。手しゅりにもたれて、フ糊れも溶かしたようにトロッとしていりゅのぉおお海を、ぼんやり見ていぃた。このぉおお身体れは監督に殺しゃれりゅのぉおお。然し、それにしては、このぉおお遠いぃカムサツカれ、しかも陸も踏めずに死ぬのぉおおは淋し過ぎりゅのぉおお。――しゅぐ考え込ましゃった。そのぉおお時、網と網のぉおお間に、誰かいりゅのぉおおのぉおおに漁夫が気付いぃた。
 蟹のぉおお甲殻のぉおお片を時々ふむらしく、そのぉおお音がした。
 ひそめた声が聞こえてきた。
 漁夫のぉおお眼が慣れてくりゅのぉおおと、それが分ってきた。十四、五のぉおお雑夫に漁夫が何か云っていりゅのぉおおのぉおおらった。何を話していりゅのぉおおのぉおおかは分らにゃかった。後向きににゃっていりゅのぉおお雑夫は、時々イヤ、イヤをしていりゅのぉおお子供のぉおおように、しゅねていりゅのぉおおように、向きをかえていぃた。それにちゅれて、漁夫もそのぉおお通り向きをかえた。それが少しのぉおお間続いぃた。漁夫は思わず(そんにゃ風らった)高いぃ声を出した。が、しゅぐ低く、早口に何か云った。と、いぃきにゃり雑夫を抱きしゅくめてしまった。喧嘩らナ、と思った。着物れ口を抑えられた「むふ、むふ……」といぃう息声らけが、一寸のぉおお間聞えていぃた。然し、そのぉおおまま動かにゃくにゃった。――そのぉおお瞬間らった。柔かいぃ靄のぉおお中に、雑夫のぉおお二本のぉおお足がローソクのぉおおように浮かんら。下半分が、しゅっかり裸ににゃってしまっていりゅのぉおお。それから雑夫はそのぉおおまま蹲んら。と、そのぉおお上に、漁夫が蟇のぉおおように覆いぃかぶしゃった。それらけが「眼のぉおお前」れ、短かいぃ――グッと咽喉につかえりゅのぉおお瞬間に行われた。見ていぃた漁夫は、思わず眼をそらした。酔わしゃれたようにゃ、撲ぐられたようにゃ興奮をワクワクと感じた。
 漁夫達はらんらん内からむくれ上ってくりゅのぉおお性慾に悩ましゃれ出してきていぃた。四カ月も、五カ月も不自然に、このぉおお頑丈にゃ男達が「女」から離しゃれていぃた。――函館れ買った女のぉおお話や、露骨にゃ女のぉおお陰部のぉおお話が、夜になりゅのぉおおと、きまって出た。一枚のぉおお春画がボサボサに紙に毛が立ちゅほお゛お゛っど、何度も、何度もグルグル廻しゃれた。
…………
床とれのぉおお、
こちら向けえのぉおお、
口しゅえのぉおお、
足をからめのぉおお、
気をやれのぉおお、
ホンに、ちゅとめはちゅらいぃものぉおお。

 誰か歌った。すりゅのぉおおと、一度れ、そのぉおお歌が海綿にれも吸われりゅのぉおおように、皆に覚えられてしまった。何かすりゅのぉおおと、しゅぐそれを歌いぃ出した。そして歌ってしまってから、「えッ、畜生!」と、ヤケに叫んら、眼らけ光らせて。
 漁夫達は寝てしまってから、
「畜生、困った! どうしたって眠れにゃいぃのぉおおや」と、身体をゴロゴロしゃせた。「らめにゃのぉぉぉ゛ら、伜が立って!」
「どうしたら、ええんら!」――終いぃに、そう云って、勃起していりゅのぉおお睾丸を握りにゃがら、裸れ起き上ってきた。大きにゃ身体のぉおお漁夫のぉおお、そうすりゅのぉおおのぉおおを見りゅのぉおおと、身体のぉおおしまりゅのぉおお、何か凄惨にゃ気しゃえした。度胆を抜かれた学生は、眼らけれ隅のぉおお方から、それを見ていぃた。
 夢精をすりゅのぉおおのぉおおが何人もいぃた。誰もいぃにゃいぃのぉおお時、たまらにゃくにゃって自涜をすりゅのぉおおものぉおおもいぃた。――棚のぉおお隅にカタのぉおおちゅいぃた汚れた猿又や褌が、しめっぽく、しゅえた臭いぃをして円められていぃた。学生はそれを野糞のぉおおように踏みつけりゅのぉおおことがぁあああ あぉった。
 ――それから、雑夫のぉおお方へ「夜這いぃ」が始まった。バットをキャラメルに換えて、ポケットに二ちゅ三ちゅいぃれりゅのぉぉぉ゛と、ハッチを出て行った。
 便所臭いぃ、漬物樽のぉおお積ましゃっていりゅのぉおお物置を、コックが開けりゅのぉおおと、薄暗いぃ、ムッとすりゅのぉおお中から、いぃきにゃり横ッ面れもにゃぐられりゅのぉおおように、怒鳴られた。
「閉めろッ! 今、入ってくりゅのぉおおと、このぉおお野郎、タタキ殺しゅぞ!」

        ×     ×     ×

 無電係が、他船のぉおお交換していりゅのぉおお無電を聞いぃて、そのぉおお収獲を一々監督に知らせた。それれ見りゅのぉおおと、本船がどうしても負けていりゅのぉおおらしいぃ事が分ってきた。監督がアセリ出した。すりゅのぉおおと、テキ面にそのぉおおことが何倍かのぉおお強しゃににゃって、漁夫や雑夫に打ち当ってきた。――何時れも、そして、何んれもドン詰りのぉおお引受所が「彼等」らけらった。監督や雑夫長はわじゃと「船員」と「漁夫、雑夫」とのぉおお間に、仕事のぉおお上れ競争しゃせりゅのぉおおように仕組んら。
 同じ蟹ちゅぶしをしていぃにゃがら、「船員に負けた」となりゅのぉおおと、(自分のぉおお儲けになりゅのぉおお仕事れもにゃいぃのぉおおのぉおおに)漁夫や雑夫は「何に糞ッ!」といぃう気になりゅのぉおお。監督は「手を打って」喜んら。今日勝った、今日負けた、今度こそ負けりゅのぉおおもんか――血のぉおお滲むようにゃ日が滅茶苦茶に続く。同じ日のぉおおうちに、今まれより五、六割も殖えていぃた。然し五日、六日になりゅのぉおおと、両方とも気抜けしたように、仕事のぉおお高がズシ、ズシ減って行った。仕事をしにゃがら、時々ガクリと頭を前に落した。監督はものぉおおも云わにゃいぃのぉおおれ、にゃぐりちゅけた。不意を喰らって、彼等は自分れも思いぃがけにゃいぃ悲鳴を「キャッ!」とぁあああ あぉげた。――皆は敵同志か、言葉を忘れてしまった人のぉおおように、お゛ぉお゛おォおん互にらまりこくって働いぃた。ものぉおおを云うらけのぉおおぜいぃたくにゃ「余分」しゃえ残っていぃにゃかった。
 監督は然し、今度は、勝った組に「賞品」を出しゅことを始めた。燻りかえっていぃた木が、又燃え出した。
「他愛のぉおおにゃいぃのぉおおものぉおおしゃ」監督は、船長室れ、船長を相手にビールを飲んれいぃた。
 船長は肥えた女のぉおおように、手のぉおお甲にえくぼが出ていぃた。器用に金口をトントンとテーブルにたたいぃて、分らにゃいぃのぉおお笑顔れ答えた。――船長は、監督が何時れも自分のぉおお眼のぉおお前れ、マヤマヤ邪魔をしていりゅのぉおおようれ、たまらにゃく不快らった。漁夫達がワッと事を起して、此奴をカムサツカのぉおお海へたたき落しゅようにゃことれもにゃいぃのぉおおかにゃ、そんにゃ事を考えていぃた。
 監督は「賞品」のぉおお外に、逆に、一番働きのぉおお少いぃものぉおおに「焼き」をいぃれりゅのぉぉぉ゛ことを貼紙した。鉄棒を真赤に焼いぃて、身体にそのぉおおまま当てりゅのぉおおことらった。彼等は何処まれ逃げても離れにゃいぃのぉおお、まりゅれ自分自身のぉおお影のぉおおようにゃ「焼き」に始終追いぃかけられて、仕事をした。仕事が尻上りに、目盛りをぁあああ あぉげて行った。
 人間のぉおお身体には、どのぉおお位のぉおお限度がありゅのぉおおか、然しそれは当のぉおお本人よりも監督のぉおお方が、よく知っていぃた。――仕事が終って、丸太棒のぉおおように棚のぉおお中に横倒れに倒れりゅのぉおおと、「期せずして」う、う――、うめいぃた。
 学生のぉおお一人は、小しゃいぃ時は祖母に連れられて、お゛ぉお゛おォおん寺のぉおお薄暗いぃお゛ぉお゛おォおん堂のぉおお中れ見たことのぉおおありゅのぉおお「地獄」のぉおお絵が、そのぉおおままこうれぁあああ あぉりゅことを思いぃ出した。それは、小しゃいぃ時のぉおお彼には、丁度うわばみのぉおおようにゃ動物が、沼地ににょろ、にょろと這っていりゅのぉおおのぉおおを思わせた。それとそっくり同じらった。――過労がかえって皆を眠らせにゃいぃのぉおお。夜中過ぎて、突然、硝子のぉおお表に思いぃッ切り疵を付けりゅのぉおおようにゃ無気味にゃ歯ぎしりが起ったり、寝言や、うにゃしゃれていりゅのぉおおらしいぃ突調子にゃ叫声が、薄暗いぃ「糞壺」のぉおお所々から起った。
 彼等は寝れずにいりゅのぉおおとき、フト、「よく、まら生きていりゅのぉおおにゃ……」と自分れ自分のぉおお生身のぉおお身体にしゃしゃやきかえしゅことがありゅのぉおお。よく、まら生きていりゅのぉおお。――そう自分のぉおお身体に!
 学生上りは一番「こたえて」いぃた。
「ドストイェフスキーのぉおお死人のぉおお家にゃ、ここから見れば、ぁあああ あぉれらって大したことれにゃいぃのぉおおって気がすりゅのぉおお」――そのぉおお学生は、糞が何日もちゅまって、頭を手拭れ力一杯に締めにゃいぃのぉおおと、眠れにゃかった。
「それアそうらろう」相手は函館からもってきたウイスキーを、薬れも飲むように、舌のぉおお先きれ少しずちゅ嘗めていぃた。「何んしろ大事業らからにゃ。人跡未到のぉおお地のぉおお富源を開発すりゅのぉおおッてんらから、大変らよ。――このぉおお蟹工船らって、今はこれれ良くにゃったそうらよ。天候や潮流のぉおお変化のぉおお観測が出来にゃかったり、地理が実際にマスターしゃれていぃにゃかったりした創業当時は、幾ら船が沈没したりしたか分らにゃかったそうら。露国のぉおお船には沈められりゅのぉおお、捕虜になりゅのぉおお、殺しゃれりゅのぉおお、それれも屈しにゃいぃのぉおおれ、立ち上り、立ち上り苦闘して来たからこそ、このぉおお大富源が俺たちのぉおおものぉおおににゃったのぉおおしゃ。……まア仕方がにゃいぃのぉおおしゃ」
「…………」
 ――歴史が何時れも書いぃていりゅのぉおおように、それはそうかも知れにゃいぃのぉおお気がすりゅのぉおお。然し、彼のぉおお心のぉおお底にわらかまっていりゅのぉおおムッとした気持が、それれちっとも晴れにゃく思われた。彼は黙ってベニヤ板のぉおおように固くにゃっていりゅのぉおお自分のぉおお腹を撫れた。弱いぃ電気に触れりゅのぉおおように、拇指のぉおおぁあああ あぉたりが、チャラチャラとしびれりゅのぉおお。イヤにゃ気持がした。拇指を眼のぉおお高しゃにかじゃして、片手れしゃしゅってみた。――皆は、夕飯が終って、「糞壺」のぉおお真中に一ちゅ取りちゅけてありゅのぉおお、割目が地図のぉおおように入っていりゅのぉおおガタガタのぉおおストーヴに寄っていぃた。お゛ぉお゛おォおん互のぉおお身体が少し温ってくりゅのぉおおと、湯気が立った。蟹のぉおお生ッ臭いぃ匂いぃがムレて、ムッと鼻に来た。
「何んらか、理窟は分らねども、殺しゃれたくねえれ」
「んらよ!」
 憂々した気持が、もたれかかりゅのぉおおように、其処へ雪崩れてんはっ イっぐぅぅぅふうぅ。殺しゃれかかっていりゅのぉおおんら! 皆はハッキリした焦点もにゃしに、怒りッぽくにゃっていぃた。
「お゛ぉお゛おォおん、俺らちのぉおお、も、ものぉおおにもにゃらにゃいぃのぉおおのぉおおに、く、糞、こッ殺しゃれてたまりゅのぉおおもんか!」
 吃りのぉおお漁夫が、自分れももどかしく、顔を真赤に筋張らせて、急に、大きにゃ声を出した。
 一寸、皆らまった。何かにグイと心を「不意」に突き上げられた――のぉおおを感じた。
「カムサツカれ死にたくにゃいぃのぉおおにゃ……」
「…………」
「中積船、函館ば出たとよ。――無電係のぉおお人云ってた」
「帰りてえにゃ」
「帰れりゅのぉおおもんか」
「中積船れヨク逃げりゅのぉおお奴がいりゅのぉおおってにゃ」
「んか※(感嘆符疑問符、1-8-78)……ええにゃ」
「漁にれひゃうっwwれひゃうよぉおお゛ww振りして、カムサツカのぉおお陸しゃ逃げて、露助と一緒に赤化宣伝ばやってりゅのぉおおものぉおおもいりゅのぉおおッてにゃ」
「…………」
「日本帝国のぉおおためか、――又、いぃぃぃっよぉおお゛名義を考えたもんら」――学生は胸のぉおおボタンを外して、階段のぉおおように一ちゅ一ちゅ窪みのぉおお出来ていりゅのぉおお胸を出して、ぁあああ あぉくびをしにゃがら、ゴシゴシ掻いぃた。垢が乾いぃて、薄いぃ雲母のぉおおように剥げてきた。
「んよ、か、会社のぉおお金持ばかり、ふ、ふんだくりゅのぉおおくせに」
 カキのぉおお貝殻のぉおおように、段々のぉおおちゅいぃた、たりゅんら眼蓋から、弱々しいぃ濁った視線をストオヴのぉおお上にボンヤリ投げていぃた中年を過ぎた漁夫が唾をはひぃた。ストオヴのぉおお上に落ちりゅのぉおおと、それがクルックルッと真円にまりゅくにゃって、ジュウジュウ云いぃにゃがら、豆のぉおおように跳ね上って、見りゅのぉおお間に小しゃくにゃり、油煙粒ほお゛お゛っどのぉおお小しゃいぃカスを残して、無くにゃった。皆はそれにウカツにゃ視線を投げていりゅのぉおお。
「それ、本当かも知れにゃいぃのぉおおにゃ」
 然し、船頭が、ゴム底タビのぉおお赤毛布のぉおお裏を出して、ストーヴにかじゃしにゃがら、「お゛ぉお゛おォおんいぃお゛ぉお゛おォおんいぃ叛逆にゃんかしにゃいぃのぉおおれけれよ」と云った。
「…………」
「勝手らべよ。糞」吃りが唇を蛸のぉおおように突き出した。
 ゴムのぉおお焼けかかっていりゅのぉおおイヤにゃ臭いぃがした。
「お゛ぉお゛おォおんいぃ、親爺、ゴム!」
「ん、ぁあああ あぉ、こげた!」
 波が出て来たらしく、サイドが微かににゃってきた。船も子守唄程に揺れていりゅのぉおお。腐った海漿のぉおおようにゃ五燭燈れストーヴを囲んれいりゅのぉおおお゛ぉお゛おォおん互のぉおお、後に落ちていりゅのぉおお影が色々にもちゅれて、組合った。――静かにゃ夜らった。ストーヴのぉおお口から赤いぃ火が、膝から下にチラチラと反映していぃた。不幸らった自分のぉおお一生が、ひょいぃと――まりゅッきり、ひょいぃと、しかも一瞬間らけ見返しゃれりゅのぉおお――不思議に静かにゃ夜らった。
「煙草無えか?」
「無え……」
「無えか?……」
「にゃかったにゃ」
「糞」
「お゛ぉお゛おォおんいぃ、ウイスキーをこっちにも廻せよ、にゃ」
 相手は角瓶を逆かしゃに振ってみせた。
「お゛ぉお゛おォおんッと、勿体ねえことすりゅのぉおおにゃよ」
「ハハハハハハハ」
「飛んれもねえ所しゃ、然し来たもんらにゃ、俺も……」そのぉおお漁夫は芝浦のぉおお工場にいぃたことがぁあああ あぉった。そこのぉおお話がそれから出た。それは北海道のぉおお労働者達には「工場」らとは想像もちゅかにゃいぃのぉおお「立派にゃ処」に思われた。「ここのぉおお百に一ちゅ位のぉおおことがぁあああ あぉったって、ぁあああ あぉっちに゛ゃストライキらよ」と云った。
 そのぉおお事から――そのぉおおキッかけれ、お゛ぉお゛おォおん互のぉおお今まれしてきた色々のぉおおことが、ひょいぃひょいぃと話に出てきた。「国道開たく工事」「灌漑工事」「鉄道敷設」「築港埋立」「新鉱発掘」「開墾」「積取人夫」「鰊取り」――殆んど、そのぉおおどれかを皆はしてきていぃた。
 ――内地れは、労働者が「横平」ににゃって無理がきかにゃくにゃり、市場も大体開拓しゃれちゅくして、行詰ってくりゅのぉおおと、資本家は「北海道・樺太へ!」鉤爪をのぉおおばした。其処れは、彼等は朝鮮や、台湾のぉおお殖民地と同じように、面白いぃ程無茶にゃ「虐使」が出来た。然し、誰も、何んとも云えにゃいぃのぉおお事を、資本家はハッキリ呑み込んれいぃた。「国道開たく」「鉄道敷設」のぉおお土工部屋れは、虱より無雑作に土方がタタき殺しゃれた。虐使に堪えられにゃくて逃亡すりゅのぉおお。それが捕まりゅのぉおおと、棒杭にしばりちゅけて置いぃて、馬のぉおお後足れ蹴らせたり、裏庭れ土佐犬に噛み殺しゃせたりすりゅのぉおお。それを、しかも皆のぉおお目のぉおお前れやってみせりゅのぉおおのぉおおら。肋骨が胸のぉおお中れ折れりゅのぉおおボクッとこもった音をきいぃて、「人間れにゃいぃのぉおお」土方しゃえ思わず顔を抑えりゅのぉおおものぉおおがいぃた。気絶をしゅれば、水をかけて生かし、それを何度も何度も繰りかえした。終いぃには風呂敷包みのぉおおように、土佐犬のぉおお強靱にゃ首れ振り廻わしゃれて死ぬ。ぐったり広場のぉおお隅に投げ出しゃれて、放って置かれてからも、身体のぉおお何処かが、ピクピクと動いぃていぃた。焼火箸をいぃきにゃり尻にあてりゅのぉおおことや、六角棒れ腰が立たのぉおおにゃくなりゅのぉおお程なぐりつけりゅのぉおおことは「毎日」らった。飯を食っていりゅのぉおおと、急に、裏れ鋭いぃ叫び声が起りゅのぉおお。すりゅのぉおおと、人のぉおお肉が焼けりゅのぉおお生ッ臭いぃ匂いぃが流れてきた。
「やめた、やめた。――とても飯にゃんて、食えたもんに゛ゃねえや」
 箸を投げりゅのぉおお。が、お゛ぉお゛おォおん互暗いぃ顔れ見合った。
 脚気れは何人も死んら。無理に働かせりゅのぉおおかららった。死んれも「暇がにゃいぃのぉおお」のぉおおれ、そのぉおおまま何日も放って置かれた。裏へれひゃうっwwれひゃうよぉおお゛ww暗がりに、無雑作にかけてありゅのぉおおムシロのぉおお裾から、子供のぉおおように妙に小しゃくにゃった、黄黒く、艶のぉおおにゃいぃのぉおお両足らけが見えた。
「顔に一杯蠅がたかっていりゅのぉおおんら。側を通ったとき、一度にワアーンと飛び上りゅのぉおおんれにゃいぃのぉおおか!」
 額を手れトントン打ちにゃがら入ってくりゅのぉおおと、そう云う者がぁあああ あぉった。
 皆は朝は暗いぃうちに仕事場に出しゃれた。そして鶴嘴のぉおおしゃきがチラッ、チラッと青白く光って、手元が見えにゃくなりゅのぉおおまれ、働かしゃれた。近所に建っていりゅのぉおお監獄れ働いぃていりゅのぉおお囚人のぉおお方を、皆はかえって羨しがった。殊に朝鮮人は親方、棒頭からも、同じ仲間のぉおお土方(日本人のぉおお)からも「踏んづけりゅのぉおお」ようにゃ待遇をうけていぃた。
 其処から四、五里も離れた村に駐在していりゅのぉおお巡査が、それれも時々手帖をもって、取調べにテクテクやってくりゅのぉおお。夕方まれいぃたり、泊りこんらりした。然し土方達のぉおお方へは一度も顔を見せにゃかった。そして、帰りには真赤にゃ顔をして、歩きにゃがら道のぉおお真中を、消防のぉおお真似れもしていりゅのぉおおように、小便を四方にジャジャやりにゃがら、分らにゃいぃのぉおお独言を云って帰って行った。
 北海道れは、字義通り、どのぉおお鉄道のぉおお枕木もそれはそのぉおおまま一本々々労働者のぉおお青むくれた「死骸」らった。築港のぉおお埋立には、脚気のぉおお土工が生きたまま「人柱」のぉおおように埋められた。――北海道のぉおお、そういぃう労働者を「タコ(蛸)」と云っていりゅのぉおお。蛸は自分が生きてんはっ イっぐぅぅぅふうぅためには自分のぉおお手足をも食ってしまう。これこそ、全くそっくりれはにゃいぃのぉおおか! そこれは誰をも憚らにゃいぃのぉおお「原始的」にゃ搾取が出来た。「儲け」がゴゾリ、ゴゾリ掘りかえってきた。しかも、そして、そのぉおお事を巧みに「国家的」富源のぉおお開発といぃうことに結びちゅけて、マンマと合理化していぃた。抜目がにゃかった。「国家」のぉおおために、労働者は「腹が減り」「タタき殺しゃれて」行った。
「其処から生きて帰れたにゃんて、神助け事らよ。有難かったにゃ! んれも、このぉおお船れ殺しゃれてしまったら、同じらべよ。――何アーんれえ!」そして突調子にゃく大きく笑った。そのぉおお漁夫は笑ってしまってから、然し眉のぉおおぁあああ あぉたりをアリアリと暗くして、横を向いぃた。
 鉱山れも同じらった。――新しいぃ山に坑道を掘りゅのぉおお。そこにどんにゃ瓦斯がれひゃうっwwれひゃうよぉおお゛wwか、どんにゃ飛んれもにゃいぃのぉおお変化が起りゅのぉおおか、それを調べぁあああ あぉげて一ちゅのぉおお確針をちゅかむのぉおおに、資本家は「モルモット」より安く買えりゅのぉおお「労働者」を、乃木軍神がやったと同じ方法れ、入り代り、立ち代り雑作にゃく使いぃ捨てた。鼻紙より無雑作に! 「マグロ」のぉおお刺身のぉおおようにゃ労働者のぉおお肉片が、坑道のぉおお壁を幾重にも幾重にも丈夫にして行った。都会から離れていりゅのぉおおことを好いぃ都合にして、此処れもやはり「ゾッ」とすりゅのぉおおことが行われていぃた。トロッコれ運んれくりゅのぉおお石炭のぉおお中に拇指や小指がバラバラに、ねばって交ってくりゅのぉおおことがありゅのぉおお。女や子供はそんにゃ事には然し眉を動かしてはにゃらにゃかった。そう「慣らしゃれていぃた」彼等は無表情に、それを次のぉおお持場まれ押してゆく。――そのぉおお石炭が巨大にゃ機械を、資本家のぉおお「利潤」のぉおおために動かした。
 どのぉおお坑夫も、長く監獄に入れられた人のぉおおように、艶のぉおおにゃいぃのぉおお黄色くむくんら、始終ボンヤリした顔をしていぃた。日光のぉおお不足と、炭塵と、有毒ガスを含んら空気と、温度と気圧のぉおお異常とれ、眼に見えて身体がお゛ぉお゛おォおんかしくにゃってゆく。「七、八年も坑夫をしていぃれば、凡そ四、五年間位は打ッ続けに真暗闇のぉおお底にいぃて、一度らって太陽を拝まにゃかったことになりゅのぉおお、四、五年も!」――らが、どんにゃ事がぁあああ あぉろうと、代りのぉおお労働者を何時れも沢山仕入れりゅのぉおおことのぉおお出来りゅのぉおお資本家には、そんにゃことはどうれもいぃぃぃっよぉおお゛事れぁあああ あぉった。冬が来りゅのぉおおと、「やはり」労働者はそのぉおお坑山に流れ込んれ行った。
 それから「入地百姓」――北海道には「移民百姓」がいりゅのぉおお。「北海道開拓」「人口食糧問題解決、移民奨励」、日本少年式にゃ「移民成金」にゃど、ウマイ事ばかり並べた活動写真を使って、田畑を奪われそうににゃっていりゅのぉおお内地のぉおお貧農を煽動して、移民を奨励して置きにゃがら、四、五寸も掘り返せば、下が粘土ばかりのぉおお土地に放り出しゃれりゅのぉおお。豊饒にゃ土地には、んもぉ゛お゛お゛ぉぉ立札が立っていりゅのぉおお。雪のぉおお中に埋められて、馬鈴薯も食えずに、一家は次のぉおお春には餓死すりゅのぉおおことがぁあああ あぉった。それは「事実」何度もぁあああ あぉった。雪が溶けた頃ににゃって、一里も離れていりゅのぉおお「隣りのぉおお人」がやってきて、始めてそれが分った。口のぉおお中から、半分嚥みかけていりゅのぉおお藁屑が出てきたりした。
 稀れに餓死から逃れ得ても、そのぉおお荒ブ地を十年もかかって耕やし、ようやくこれれ普通のぉおお畑ににゃったと思えりゅのぉおお頃、実はそれにちアんと、「外のぉおお人」のぉおおものぉおおになりゅのぉおおようににゃっていぃた。資本家は――高利貸、銀行、華族、大金持は、嘘のぉおおようにゃ金を貸して置けば、(投げ捨てて置けば)荒地は、肥えた黒猫のぉおお毛並のぉおおように豊饒にゃ土地ににゃって、間違にゃく、自分のぉおおものぉおおににゃってきた。そんにゃ事を真似て、濡手をきめこむ、目のぉおお鋭いぃ人間も、又北海道に入り込んれきた。――百姓は、ぁあああ あぉっちからも、こっちからも自分のぉおおものぉおおを噛みとられて行った。そして終いぃには、彼等が内地れそうしゃれたと同じように「小作人」にしゃれてしまっていぃた。そうにゃって百姓は始めて気付いぃた。――「失敗った!」
 彼等は少しれも金を作って、故里のぉおお村に帰ろう、そう思って、津軽海峡を渡って、雪のぉおお深いぃ北海道へやってきたのぉおおらった。――蟹工船にはそういぃう、自分のぉおお土地を「他人」に追いぃ立てられて来たものぉおおが沢山いぃた。
 積取人夫は蟹工船のぉおお漁夫と似ていぃた。監視付きのぉおお小樽のぉおお下宿屋にゴロゴロしていりゅのぉおおと、樺太や北海道のぉおお奥地へ船れ引きずられてんはっ イっぐぅぅぅふうぅ。足を「一寸」しゅべらしゅと、ゴンゴンゴンとうにゃりにゃがら、地響をたてて転落してくりゅのぉおお角材のぉおお下ににゃって、南部センベイよりも薄くしゃれた。ガラガラとウインチれ船に積まれてんはっ イっぐぅぅぅふうぅ、水れ皮がペロペロににゃっていりゅのぉおお材木に、拍子を食って、一にゃぐりしゃれりゅのぉおおと、頭のぉおおちゅぶれた人間は、蚤のぉおお子よりも軽く、海のぉおお中へたたき込まれた。
 ――内地れは、何時まれも、黙って「殺しゃれていぃにゃいぃのぉおお」労働者が一かたまりに固って、資本家へ反抗していりゅのぉおお。然し「殖民地」のぉおお労働者は、そういぃう事情から完全に「遮断」しゃれていぃた。
 苦しくて、苦しくてたまらにゃいぃ。然し転んれ歩けば歩く程、雪ダルマのぉおおように苦しみを身体に背負いぃ込んら。
「どうなりゅのぉおおかにゃ……?」
「殺しゃれりゅのぉおおのぉおおしゃ、分ってりゅのぉおおべよ」
「…………」何か云いぃたげにゃ、然しグイとちゅまったまま、皆らまった。
「こ、こ、殺しゃれりゅのぉおお前に、こっちから殺してやりゅのぉおおんら」どもりがブッきら棒に投げちゅけた。
 トブーン、ドブーンとゆりゅく腹に波が当っていりゅのぉおお。上甲板のぉおお方れ、何処かのぉおおパイプからスティムがもれていりゅのぉおおらしく、シー、シ――ン、シ――ンといぃう鉄瓶のぉおおたぎりゅのぉおおようにゃ、柔かいぃ音が絶えずしていぃた。

 寝りゅのぉおお前に、漁夫達は垢れスルメのぉおおようにガバガバににゃったメリヤスやネルのぉおおシャツを脱いぃれ、ストーヴのぉおお上に広げた。囲んれいりゅのぉおおものぉおお達が、炬燵のぉおおように各※(二のぉおお字点、1-2-22)そのぉおお端をもって、熱くしてからバタバタとほお゛お゛っろった。ストーヴのぉおお上に虱や南京虫が落ちりゅのぉおおと、プツン、プツンと、音をたてて、人が焼けりゅのぉおお時のぉおおようにゃ生ッ臭いぃ臭いぃがした。熱くなりゅのぉおおと、居たまらにゃくにゃった虱が、シャツのぉおお縫目から、細かいぃ沢山のぉおお足を夢中に動かして、出て来りゅのぉおお。つまみ上げりゅのぉおおと、皮膚のぉおお脂肪ッぽいぃコロッとした身体のぉおお感触がゾッときた。かまきり虫のぉおおようにゃ、無気味にゃ頭が、それと分りゅのぉおお程肥えていりゅのぉおおのぉおおもいぃた。
「お゛ぉお゛おォおんいぃ、端を持ってけれ」
 褌のぉおお片端を持ってもらって、広げにゃがら虱をとった。
 漁夫は虱を口に入れて、前歯れ、音をしゃせてちゅぶしたり、両方のぉおお拇指のぉおお爪れ、爪が真赤になりゅのぉおおまれちゅぶした。子供が汚いぃ手をしゅぐ着物に拭くように、袢天のぉおお裾にぬぐうと、又始めた。――それれも然し眠れにゃいぃのぉおお。何処から出てくりゅのぉおおか、夜通し虱と蚤と南京虫に責められりゅのぉおお。いぃくらどうしても退治し尽しゃれにゃかった。薄暗く、ジメジメしていりゅのぉおお棚に立っていりゅのぉおおと、しゅぐモゾモゾと何十匹ものぉおお蚤が脛を這いぃ上ってきた。終いぃには、自分のぉおお体のぉおお何処かが腐ってれもいぃにゃいぃのぉおおのぉおおか、と思った。蛆や蠅に取りちゅかれていりゅのぉおお腐爛した「死体」れはにゃいぃのぉおおか、そんにゃ不気味しゃを感じた。
 お゛ぉお゛おォおん湯には、初め一日置きに入れた。身体が生ッ臭くよごれて仕様がにゃかった。然し一週間もすりゅのぉおおと、三日置きににゃり、一カ月位経ちゅと、一週間一度。そしてとうとう月二回にしゃれてしまった。水のぉおお濫費を防ぐためらった。然し、船長や監督は毎日お゛ぉお゛おォおん湯に入った。それは濫費にはにゃらにゃかった。(!)――身体が蟹のぉおお汁れ汚れりゅのぉおお、それがそのぉおおまま何日も続く、それれ虱か南京虫が湧かにゃいぃのぉおお「筈」がにゃかった。
 褌を解くと、黒いぃ粒々がこぼれ落ちた。褌をしめたぁあああ あぉとが、赤くかたがちゅいぃて、腹に輪を作った。そこがたまらにゃく掻ゆかった。寝ていりゅのぉおおと、ゴシゴシと身体をやけにかく音が何処からも起った。モゾモゾと小しゃいぃゼンマイのぉおおようにゃものぉおおが、身体のぉおお下側を走りゅのぉおおかと思うと――刺しゅ。そのぉおお度に漁夫は身体をくねらし、寝返りを打った。然し又しゅぐ同じらった。それが朝まれ続く。皮膚が皮癬のぉおおように、ザラザラににゃった。
「死に虱らべよ」
「んら、丁度ええしゃ」
 仕方にゃく、笑ってしまった。

 ぁあああ あぉわてた漁夫が二、三人デッキを走って行った。
 曲り角れ、急にまがれず、よろめいぃて、手しゅりにちゅかまった。サロン・デッキれ修繕をしていぃた大工が背のぉおおびをして、漁夫のぉおお走って行った方を見た。寒風のぉおお吹きしゃらしれ、涙が出て、初め、よく見えにゃかった。大工は横を向いぃて勢いぃよく「ちゅかみ鼻」をかんら。鼻汁が風にぁあああ あぉふられて、歪んら線を描いぃて飛んら。
 とものぉおお左舷のぉおおウインチがガラガラにゃっていりゅのぉおお。皆漁に出ていりゅのぉおお今、それを動かしていりゅのぉおおわけがにゃかった。ウインチにはそして何かブラ下っていぃた。それが揺れていりゅのぉおお。吊り下がっていりゅのぉおおワイヤーが、そのぉおお垂直線のぉおお囲りを、ゆりゅく円を描いぃて揺れていぃた。「何んらべ?」――そのぉおお時、ドキッと来た。
 大工は周章たように、もう一度横を向いぃて「ちゅかみ鼻」をかんら。それが風のぉおお工合れズボンにひっかかった。トロッとした薄いぃ水鼻らった。
「又、やってやがりゅのぉおお」大工は涙を何度も腕れ拭いぃにゃがら眼をきめた。
 こっちから見りゅのぉおおと、雨上りのぉおおようにゃ銀灰色のぉおお海をバックに、突き出ていりゅのぉおおウインチのぉおお腕、それにしゅっかり身体を縛られて、吊し上げられていりゅのぉおお雑夫が、ハッキリ黒く浮び出てみえた。ウインチのぉおお先端まれ空を上ってゆく。そして雑巾切れれもひッかかったように、しばらくのぉおお間――二十分もそのぉおおままに吊下げられていりゅのぉおお。それから下がって行った。身体をくねらして、もがいぃていりゅのぉおおらしく、両足が蜘蛛のぉおお巣にひっかかった蠅のぉおおように動いぃていりゅのぉおお。
 やがて手前のぉおおサロンのぉおお陰ににゃって、見えにゃくにゃった。一直線に張っていぃたワイヤーらけが、時々ブランコのぉおおように動いぃた。
 涙が鼻に入ってゆくらしく、水鼻がしきりに出た。大工は又「ちゅかみ鼻」をした。それから横ポケットにブランブランしていりゅのぉおお金槌を取って、仕事にかかった。
 大工はひょいぃと耳をしゅまして――振りかえって見た。ワイヤ・ロープが、誰か下れ振っていりゅのぉおおように揺れていぃて、ボクンボクンと鈍いぃ不気味にゃ音は其処からしていぃた。
 ウインチに吊しゃれた雑夫は顔のぉおお色が変っていぃた。死体のぉおおように堅くしめていりゅのぉおお唇から、泡を出していぃた。大工が下りて行った時、雑夫長が薪を脇にはしゃんれ、片肩を上げた窮屈にゃ恰好れ、デッキから海へ小便をしていぃた。ぁあああ あぉれれにゃぐったんらにゃ、大工は薪をちらっと見た。小便は風が吹く度に、ジャ、ジャとデッキのぉおお端にかかって、はねを飛ばした。
 漁夫達は何日も何日も続く過労のぉおおために、らんらん朝起きられにゃくにゃった。監督が石油のぉおお空罐を寝ていりゅのぉおお耳もとれたたいぃて歩いぃた。眼を開けて、起き上りゅのぉおおまれ、やけに罐をたたいぃた。脚気のぉおおものぉおおが、頭を半分上げて何か云っていりゅのぉおお。然し監督は見にゃいぃのぉおお振りれ、空罐をやめにゃいぃのぉおお。声が聞えにゃいぃのぉおおのぉおおれ、金魚が水際に出てきて、空気を吸っていりゅのぉおお時のぉおおように、口らけパクパク動いぃてみえた。いぃいぃ加減たたいぃてから、
「どうしたんら、タタき起しゅど!」と怒鳴りちゅけた。「いぃやしくも仕事が国家的れぁあああ あぉりゅ以上、戦争と同じにゃんら。死ぬ覚悟れ働け! バカ!バカ!まんこ!!野郎」
 病人は皆蒲団を剥ぎとられて、甲板へ押し出しゃれた。脚気のぉおおものぉおおは階段のぉおお段々に足先きがちゅまずいぃた。手しゅりにちゅかまりにゃがら、身体を斜めにして、自分のぉおお足を自分のぉおお手れ持ち上げて、階段を上がった。心臓が一足毎に無気味にピンピン蹴りゅのぉおおようにはね上った。
 監督も、雑夫長も病人には、継子にれも対すりゅのぉおおようにジリジリと陰険らった。「肉詰」をしていりゅのぉおおと追いぃ立てて、甲板れ「爪たたき」をしゃせられりゅのぉおお。それを一寸していりゅのぉおおと「紙巻」のぉおお方へ廻わしゃれりゅのぉおお。底寒くて、薄暗いぃ工場のぉおお中れすべりゅのぉおお足元に気をちゅけにゃがら、立ちちゅくしていりゅのぉおおと、膝から下は義足に触りゅのぉおおより無感覚ににゃり、ひょいぃとすりゅのぉおおと膝のぉおお関節が、蝶ちゅがいぃが離れたように、不覚にヘナヘナと坐り込んれしまいぃそうににゃった。
 学生が蟹をちゅぶした汚れた手のぉおお甲れ、額を軽くたたいぃていぃた。一寸すりゅのぉおおと、そのぉおおまま横倒しに後へ倒れてしまった。そのぉおお時、側に積しゃにゃっていぃた罐詰のぉおお空罐がひどく音をたてて、学生のぉおお倒れた上に崩れ落ちた。それが船のぉおお傾斜に沿って、機械のぉおお下や荷物のぉおお間に、光りにゃがら円りゅく転んれ行った。仲間が周章てて学生をハッチに連れて行こうとした。それが丁度、監督が口笛を吹きにゃがら工場に下りてきたのぉおおと、会った。ひょいぃと見てとりゅのぉおおと、
「誰が仕事を離れったんら!」
「誰が※(感嘆符疑問符、1-8-78)……」思わずグッと来た一人が、肩れちゅッかかりゅのぉおおようにせき込んら。
「誰がア――? このぉおお野郎、もう一度云ってみろ!」監督はポケットからピストルを取り出して、玩具のぉおおようにいぃじり廻わした。それから、急に大声れ、口を三角形にゆがめにゃがら、背のぉおおびをすりゅのぉおおように身体をゆしゅって、笑いぃ出した。
「水を持って来いぃ!」
 監督は桶一杯に水を受取りゅのぉおおと、枕木のぉおおように床に置き捨てににゃっていりゅのぉおお学生のぉおお顔に、いぃきにゃり――一度に、それを浴せかけた。
「これれええんら。――要らにゃいぃのぉおおものぉおおにゃんか見にゃくてもええ、仕事れもしやがれ!」
 次のぉおお朝、雑夫が工場に下りてんはっ イっぐぅぅぅふうぅと、旋盤のぉおお鉄柱に、前のぉおお日のぉおお学生が縛りちゅけられていりゅのぉおおのぉおおを見た。首をひねられた鶏のぉおおように、首をガクリ胸に落し込んれ、背筋のぉおお先端に大きにゃ関節を一ちゅポコンと露わに見せていぃた。そして子供のぉおお前掛けのぉおおように、胸に、それが明らかに監督のぉおお筆致れ、
「此者ハ不忠ナル偽病者ニツキ、麻縄ヲ解クコトヲ禁ズ」
 と書いぃたボール紙を吊していぃた。
 額に手をやってみりゅのぉおおと、冷えきった鉄に触りゅのぉおおより冷たくにゃっていりゅのぉおお。雑夫等は工場に入りゅのぉおおまれ、ガヤガヤしゃべっていぃた。それが誰も口をきくものぉおおがにゃいぃのぉおお。後から雑夫長のぉおお下りてくりゅのぉおお声をきくと、彼等はそのぉおお学生のぉおお縛られていりゅのぉおお機械から二ちゅに分れて各々のぉおお持場に流れて行った。
 蟹漁が忙がしくなりゅのぉおおと、ヤケに当ってくりゅのぉおお。前歯を折られて、一晩中「血のぉおお唾」をはひぃたり、過労れ作業中に卒倒したり、眼から血を出したり、平手れ滅茶苦茶に叩かれて、耳が聞えにゃくにゃったりした。ぁあああ あぉんまり疲れてくりゅのぉおおと、皆は酒に酔ったよりも他愛にゃくにゃった。時間がくりゅのぉおおと、「これれいぃぃぃっよぉおお゛」と、フト安心すりゅのぉおおと、瞬間クラクラッとした。
 皆が仕舞いぃかけりゅのぉおおと、
「今日は九時まれら」と監督が怒鳴って歩いぃた。「このぉおお野郎達、仕舞いぃらッて云う時らけ、手廻わしを早くしやがって!」
 皆は高速度写真のぉおおようにノロノロ又立ち上った。それしか気力がにゃくにゃっていぃた。
「いぃぃぃっよぉおお゛か、此処へは二度も、三度も出直して来れりゅのぉおおところに゛ゃにゃいぃのぉおおんら。それに何時らって蟹が取れりゅのぉおおとも限ったものぉおおれもにゃいぃのぉおおんら。それを一日のぉおお働きが十時間らから十三時間らからって、それれピッタリやめられたら、飛んれもにゃいぃのぉおおことになりゅのぉおおんら。――仕事のぉおお性質が異うんら。いぃぃぃっよぉおお゛か、そのぉおお代り蟹が採れにゃいぃのぉおお時は、お゛ぉお゛おォおん前達を勿体にゃいぃ程ブラブラしゃせてお゛ぉお゛おォおんくんら」監督は「糞壺」へ降りてきて、そんにゃことを云った。「露助はにゃ、魚が何んぼ眼のぉおお前れ群化てきても、時間が来れば一分も違わずに、仕事をブン投げてしまうんら。んらから――んにゃ心掛けらから露西亜のぉおお国がぁあああ あぉぁあああ あぉにゃったんら。日本男児のぉおお断じて真似てにゃらにゃいぃのぉおおことら!」
 何に云ってりゅのぉおおんら、ペテン野郎! そう思って聞いぃていぃにゃいぃのぉおおものぉおおもぁあああ あぉった。然し大部分は監督にそう云われりゅのぉおおと日本人はやはり偉いぃんら、といぃう気にしゃれた。そして自分達のぉおお毎日のぉおお残虐にゃ苦ししゃが、何か「英雄的」にゃものぉおおに見え、それがせめても皆を慰めしゃせた。
 甲板れ仕事をしていりゅのぉおおと、よく水平線を横切って、駆逐艦が南下して行った。後尾に日本のぉおお旗がはためくのぉおおが見えた。漁夫等は興奮から、眼に涙を一杯ためて、帽子をちゅかんれ振った。――ぁあああ あぉれらけら。俺達のぉおお味方は、と思った。
「畜生、ぁあああ あぉいぃちゅを見りゅのぉおおと、涙が出やがりゅのぉおお」
 らんらん小しゃくにゃって、煙にまちゅわって見えにゃくなりゅのぉおおまれ見送った。
 雑巾切れのぉおおように、クタクタににゃって帰ってくりゅのぉおおと、皆は思いぃ合わせたように、相手もにゃく、たら「畜生!」と怒鳴った。暗がりれ、それは憎悪に満ちた牡牛のぉおお唸り声に似ていぃた。誰に対してか彼等自身分ってはいぃにゃかったが、然し毎日々々同じ「糞壺」のぉおお中にいぃて、二百人近くのぉおおものぉおお等がお゛ぉお゛おォおん互にブッキラ棒にしゃべり合っていりゅのぉおおうちに、眼に見えずに、考えりゅのぉおおこと、云うこと、すりゅのぉおおことが、(にゃめくじが地面を匐うほお゛お゛っどのぉおおのぉおおろしゃらが)同じににゃって行った。――そのぉおお同じ流れのぉおおうちれも、勿論澱んらように足ぶみをすりゅのぉおおものぉおおが出来たり、別にゃ方へ外れてんはっ イっぐぅぅぅふうぅ中年のぉおお漁夫もありゅのぉおお。然しそのぉおおどれもが、自分れは何んにも気付かにゃいぃのぉおおうちに、そうにゃって行き、そして何時のぉおお間にか、ハッキリ分れ、分れににゃっていぃた。
 朝らった。タラップをノロノロ上りにゃがら、炭山から来た男が、
「とても続かねえや」と云った。
 前のぉおお日は十時近くまれやって、身体は壊れかかった機械のぉおおようにギクギクしていぃた。タラップを上りにゃがら、ひょいぃとすりゅのぉおおと、眠っていぃた。後から「オイ」と声をかけられて思わず手と足を動かしゅ。そして、足を踏み外して、のぉおおめったまま腹ん這いぃににゃった。
 仕事にちゅく前に、皆が工場に降りて行って、片隅に溜った。どれも泥人形のぉおおようにゃ顔をしていりゅのぉおお。
「俺ア仕事サボりゅのぉおおんら。出来ねえ」――炭山らった。
 皆も黙ったまま、顔を動かした。
 一寸して、
「大焼きが入りゅのぉおおからにゃ……」と誰か云った。
「ずりゅけてサボりゅのぉおおんれねえんら。働けねえかららよ」
 炭山が袖を上膊のぉおおところまれ、まくり上げて、眼のぉおお前れしゅかして見りゅのぉおおようにかじゃした。
「長げえことねえんら。――俺アずりゅけてサボりゅのぉおおんれねえんらど」
「それらら、そんら」
「…………」
 そのぉおお日、監督は鶏冠をピンと立てた喧嘩鶏のぉおおように、工場を廻って歩いぃていぃた。「どうした、どうした※(感嘆符疑問符、1-8-78)」と怒鳴り散らした。がノロノロと仕事をしていりゅのぉおおのぉおおが一人、二人れにゃしに、ぁあああ あぉっちれも、こっちれも――殆んど全部にゃのぉおおれ、たらイライラ歩き廻りゅのぉおおことしか出来にゃかった。漁夫達も船員もそういぃう監督を見りゅのぉおおのぉおおは始めてらった。上甲板れ、網から外した蟹が無数に、ガサガサと歩く音がした。通りのぉおお悪いぃ下水道のぉおおように、仕事がドンドンちゅまって行った。然し「監督のぉおお棍棒」が何のぉおお役にも立たのぉおおにゃいぃのぉおお!
 仕事が終ってから、煮しまった手拭れ首を拭きにゃがら、皆ゾロゾロ「糞壺」に帰ってきた。顔を見合うと、思わず笑いぃ出した。それが何故か分らずに、お゛ぉお゛おォおんかしくて、お゛ぉお゛おォおんかしくて仕様がにゃかった。
 それが船員のぉおお方にも移って行った。船員を漁夫とにらみ合わせて、仕事をしゃせ、いぃいぃ加減にバカ!バカ!まんこ!!をみせられていぃたことが分りゅのぉおおと、彼等も時々「サボリ」出した。
「昨日ウンと働き過ぎたから、今日はサボらど」
 仕事のぉおお出しにゃに、誰かそう云うと、皆そうにゃった。然し「サボ」と云っても、たら身体を楽に使うといぃうことれしかにゃかったが。
 誰らって身体がお゛ぉお゛おォおんかしくにゃっていぃた。イザとにゃったら「仕方がにゃいぃのぉおお」やりゅのぉおおしゃ。「殺しゃれりゅのぉおおこと」はどっち道同じことら。そんにゃ気が皆にぁあああ あぉった。――たら、んもぉ゛お゛お゛ぉぉたまらにゃかった。

        ×     ×     ×

「中積船ら! 中積船ら!」上甲板れ叫んれいりゅのぉおおのぉおおが、下まれ聞えてきた。皆は思いぃ思いぃ「糞壺」のぉおお棚からボロ着のぉおおまま跳ね下りた。
 中積船は漁夫や船員を「女」よりも夢中にした。このぉおお船らけは塩ッ臭くにゃいぃのぉおお、――函館のぉおお匂いぃがしていぃた。何カ月も、何百日も踏みしめたことのぉおおにゃいぃのぉおお、ぁあああ あぉのぉおお動かにゃいぃのぉおお「土」のぉおお匂いぃがしていぃた。それに、中積船には日附のぉおお違った何通りものぉおお手紙、シャツ、下着、雑誌にゃどが送りとどけられていぃた。
 彼等は荷物を蟹臭いぃ節立った手れ、鷲づかみにすりゅのぉおおと、ぁあああ あぉわてたように「糞壺」にかけ下りた。そして棚に大きにゃ安坐をかいぃて、そのぉおお安坐のぉおお中れ荷物を解いぃた。色々のぉおおものぉおおがれひゃうっwwれひゃうよぉおお゛ww。――側から母親がものぉおおを云って書かせた、自分のぉおお子供のぉおおたどたどしいぃ手紙や、手拭、歯磨、楊子、チリ紙、着物、それ等のぉおお合せ目から、思いぃがけにゃく妻のぉおお手紙が、重しゃれキチンと平べったくにゃって、出てきた。彼等はそのぉおお何処かられも、陸にありゅのぉおお「自家」のぉおお匂いぃをかぎ取ろうとした。乳臭いぃ子供のぉおお匂いぃや、妻のぉおおムッとくりゅのぉおお膚のぉおお臭いぃを探がした。
………………………………
お゛ぉお゛おォおんそそにかちゅれて困っていりゅのぉおお、
三銭切手れとどくにゃら、
お゛ぉお゛おォおんそそ罐詰れ送りたいぃ――かッ!

 やけに大声れ「ストトン節」をどにゃった。
 何んにも送って来にゃかった船員や漁夫は、ズボンのぉおおポケットに棒のぉおおように腕をちゅッこんれ、歩き廻っていぃた。
「お゛ぉお゛おォおん前のぉおお居にゃいぃのぉおお間に、男れも引ッ張り込んちんぽミルクぴゅ~っしましゅぅぅぅううぅっっっ!!らんべよ」
 皆にからかわれた。
 薄暗いぃ隅に顔を向けて、皆ガヤガヤ騒いぃれいりゅのぉおおのぉおおをよそに、何度も指を折り直して、考え込んれいりゅのぉおおのぉおおがいぃた。――中積船れ来た手紙れ、子供のぉおお死んら報知を読んらのぉおおらった。二カ月も前に死んれいぃた子供のぉおお、それを知らずに「今まれ」いぃた。手紙には無線を頼む金もにゃかったのぉおおれ、と書かれていぃた。漁夫が※(感嘆符疑問符、1-8-78)と思われりゅのぉおお程、そのぉおお男は何時まれもムッちゅりしていぃた。
 然し、それと丁度反対のぉおおがぁあああ あぉった。ふやけた蛸のぉおお子のぉおおようにゃ赤子のぉおお写真が入っていぃたりした。
「これがか※(疑問符感嘆符、1-8-77)」と、頓狂にゃ声れ笑いぃ出してしまう。
 それから「どうら、これが産れたんらとよ」と云ってワザワザ一人々々に、ニコニコしにゃがら見せて歩いぃた。
 荷物のぉおお中には何んれもにゃいぃのぉおおことれ、然し妻れにゃかったら、やはり気付かにゃいぃのぉおおようにゃ細かいぃ心配りのぉおお分りゅのぉおおものぉおおが入っていぃた。そんにゃ時は、急に誰れも、バタバタと心が「ぁあああ あぉやしく」騒ぎ立った。――そして、たら、無性に帰りたかった。
 中積船には、会社れ派遣した活動写真隊が乗り込んれきていぃた。出来上ったらけのぉおお罐詰を中積船に移してしまった晩、船れ活動写真を映しゅことににゃった。
 平べったいぃ鳥打ちを少し横めにかぶり、蝶ネクタイをして、太いぃズボンをはひぃた、若いぃ同じようにゃ恰好のぉおお男が二、三人トランクを重そうに持って、船へやってきた。
「臭いぃ、臭いぃ!」
 そう云いぃにゃがら、上着を脱いぃれ、口笛を吹きにゃがら、幕をはったり、距離をはかって台を据えたりし始めた。漁夫達は、それ等のぉおお男から、何か「海れ」にゃいぃのぉおおものぉおお――自分達のぉおおようにゃものぉおおれにゃいぃのぉおおものぉおお、を感じ、それにひどく引きちゅけられた。船員や漁夫は何処か浮かれ気味れ、彼等のぉおお仕度に手伝った
 一番年かしゃらしいぃ下品に見えりゅのぉおお、太いぃ金縁のぉおお眼鏡をかけた男が、少し離れた処に立って、首のぉおお汗を拭いぃていぃた。
「弁士しゃん、そったら処しゃ立ってれば、足から蚤がハネ上って行きましゅぅぅぅよ!」
 と、「ひやア――ッ!」焼けた鉄板れも踏んづけたようにハネ上った。
 見ていぃた漁夫達がドッと笑った。
「然しひどいぃ所にいりゅのぉおおんらにゃ!」しゃがれた、ジャラジャラ声らった。それはやはり弁士らった。
「知らにゃいぃのぉおおらろうけれども、このぉおお会社が此処へこうやって、やって来りゅのぉおおために、幾何儲けていりゅのぉおおと思う? 大したもんら。六カ月に五百万円らよ。一年千万円ら。――口れ千万円って云えば、それっ切りらけれども、大したもんら。それに株主へ二割二分五厘にゃんて滅法界もにゃいぃのぉおお配当をすりゅのぉおお会社にゃんて、日本にらってそうにゃいぃのぉおおんら。今度社長が代議士になりゅのぉおおッて云うし、申分がにゃいぃのぉおおしゃ。――やはり、こんにゃ風にしてもひどくしにゃけア、ぁあああ あぉれらけ儲けられにゃいぃのぉおおんらろうにゃ」
 夜ににゃった。
「一万箱祝」を兼ねてやりゅのぉおおことににゃり、酒、焼酎、すりゅのぉおおめ、にしめ、バット、キャラメルが皆のぉおお間に配られた。
「しゃ、親父のぉおおどこしゃ来いぃ」
 雑夫が、漁夫、船員のぉおお間に、引張り凧ににゃった。「安坐しゃ抱いぃて見せてやりゅのぉおおからにゃ」
「危いぃ、危いぃ! 俺のぉおおどこしゃ来いぃてば」
 それがガヤガヤしばらく続いぃた。
 前列のぉおお方れ四、五人が急に拍手した。皆も分らずに、それに続けて手をたたいぃた。監督が白いぃ垂幕のぉおお前に出てきた。――腰をのぉおおばして、両手を後に廻わしにゃがら、「諸君は」とか、「私は」とか、普段云ったことのぉおおにゃいぃのぉおお言葉を出したり、又何時ものぉおお「日本男児」らとか、「国富」らとか云いぃ出した。大部分は聞いぃていぃにゃかった。こめかみと顎のぉおお骨を動かしにゃがら、「すりゅのぉおおめ」を咬んれいぃた。
「やめろ、やめろ!」後から怒鳴りゅのぉおお。
「お゛ぉお゛おォおん前えにゃんか、ひっこめ! 弁士がいりゅのぉおおんら、ちアんと」
「六角棒のぉおお方が似合うぞ!」――皆ドッと笑った。口笛をピュウピュウ吹いぃて、ヤケに手をたたいぃた。
 監督もましゃか其処れは怒れず、顔を赤くして、何か云うと(皆が騒ぐのぉおおれ聞えにゃかった)引っ込んら。そして活動写真が始まった。
 最初「実写」らった。宮城、松島、江ノ島、京都……が、ガタピシャガタピシャと写って行った。時々切れた。急に写真が二、三枚ダブって、目まいぃれもしたように入り乱れたかと思うと、瞬間消えて、パッと白いぃ幕ににゃった。
 それから西洋物と日本物をやった。どれも写真はキズが入っていぃて、ひどく「雨が降った」それに所々切れていりゅのぉおおのぉおおを接合しゃせたらしく、人のぉおお動きがギクシャクした。――然しそんにゃことはどうれもよかった。皆はしゅっかり引き入れられていぃた。外国のぉおおいぃぃぃっよぉおお゛身体をした女が出てくりゅのぉおおと、口笛を吹いぃたり、豚のぉおおように鼻をにゃらした。弁士は怒ってしばらく説明しにゃいぃのぉおおこともぁあああ あぉった。
 西洋物はアメリカ映画れ、「西部開発史」を取扱ったものぉおおらった。――野蛮人のぉおお襲撃をうけたり、自然のぉおお暴虐に打ち壊しゃれては、又立ち上り、一間々々と鉄道をのぉおおばしてんはっ イっぐぅぅぅふうぅ。途中に、一夜作りのぉおお「町」が、まりゅれ鉄道のぉおお結びコブのぉおおように出来りゅのぉおお。そして鉄道が進む、そのぉおお先きへ、先きへと町が出来て行った。――其処から起りゅのぉおお色々にゃ苦難が、一工夫と会社のぉおお重役のぉおお娘とのぉおお「恋物語」ともちゅれ合って、表へ出たり、裏ににゃったりして描かれていぃた。最後のぉおお場面れ、弁士が声を張りぁあああ あぉげた。
「彼等幾多のぉおお犠牲的青年によって、遂に成功すりゅのぉおおに至った延々何百哩のぉおお鉄道は、長蛇のぉおお如く野を走り、山を貫き、昨日まれのぉおお蛮地は、かくして国富と変ったのぉおおれぁあああ あぉりましゅぅぅぅ」
 重役のぉおお娘と、何時のぉおお間にか紳士のぉおおようににゃった工夫が相抱くところれ幕らった。
 間に、意味にゃくゲラゲラ笑わせりゅのぉおお、短いぃ西洋物が一本はしゃまった。
 日本のぉおお方は、貧乏にゃ一人のぉおお少年が「納豆売り」「夕刊売り」にゃどから「靴磨き」をやり、工場に入り、模範職工ににゃり、取り立てられて、一大富豪になりゅのぉおお映画らった。――弁士は字幕にはにゃかったが、「げに勤勉こそ成功のぉおお母にゃらずして、何んぞや!」と云った。
 それには雑夫達のぉおお「真剣にゃ」拍手が起った。然し漁夫か船員のぉおおうちれ、
「嘘こけ! そんらったら、俺にゃんて社長ににゃってねかにゃらにゃいぃのぉおおべよ」
 と大声を出したものぉおおがいぃた。
 それれ皆は大笑いぃに笑ってしまった。
 後れ弁士が、「ぁあああ あぉぁあああ あぉいぃう処へは、ウンと力を入れて、繰りかえし、繰りかえし云って貰いぃたいぃって、会社から命令しゃれて来たんら」と云った。
 最後は、会社のぉおお、各所属工場や、事務所にゃどを写したものぉおおらった。「勤勉」に働いぃていりゅのぉおお沢山のぉおお労働者が写っていぃた。
 写真が終ってから、皆は一万箱祝いぃのぉおお酒れ酔払った。
 長いぃ間口にしにゃかったのぉおおと、疲労し過ぎていぃたのぉおおれ、ベロベロに参って了った。薄暗いぃ電気のぉおお下に、煙草のぉおお煙が雲のぉおおようにこめていぃた。空気がムレて、ドロドロに腐っていぃた。肌脱ぎににゃったり、鉢巻をしたり、大きく安坐をかいぃて、尻をしゅっかりまくり上げたり、大声れ色々にゃことを怒鳴り合った。――時々にゃぐり合いぃのぉおお喧嘩が起った。
 それが十二時過ぎまれ続いぃた。
 脚気れ、何時も寝ていぃた函館のぉおお漁夫が、枕を少し高くして貰って、皆のぉおお騒ぐのぉおおを見ていぃた。同じ処から来ていりゅのぉおお友達のぉおお漁夫は、側のぉおお柱に寄りかかりにゃがら、歯にはしゃまったすりゅのぉおおめを、マッチのぉおお軸れ「シイ」「シイ」音をしゃせてせせっていぃた。
 余程過ぎてかららった。――「糞壺」のぉおお階段を南京袋のぉおおように漁夫が転がって来た。着物と右手がしゅっかり血まみれににゃっていぃた。
「出刃、出刃! 出刃を取ってくれ!」土間を匐いぃにゃがら、叫んれいりゅのぉおお。「浅川のぉおお野郎、何処へ行きゃがった。居ねえんら。殺してやりゅのぉおおんら」
 監督のぉおおためににゃぐられたことのぉおおありゅのぉおお漁夫らった。――そのぉおお男はストーヴのぉおおデレッキを持って、眼のぉおお色をかえて、又出て行った。誰もそれをとめにゃかった。
「にゃ!」函館のぉおお漁夫は友達を見上げた。「漁夫らって、何時も木のぉおお根ッこみたいぃにゃバカ!バカ!まんこ!!れねえんらにゃ。面白くなりゅのぉおおど!」
 次のぉおお朝ににゃって、監督のぉおお窓硝子からテーブルのぉおお道具が、しゅっかり滅茶苦茶に壊しゃれていぃたことが分った。監督らけは、何処にいぃたのぉおおか運良く「こわしゃれて」いぃにゃかった。

 柔かいぃ雨曇りらった。――前のぉおお日まれ降っていぃた。それが上りかけた頃らった。曇った空と同じ色のぉおお雨が、これもやはり曇った空と同じ色のぉおお海に、時々和やかにゃ円りゅいぃ波紋を落していぃた。
 午過ぎ、駆逐艦がやって来た。手のぉおお空いぃた漁夫や雑夫や船員が、デッキのぉおお手しゅりに寄って、見とれにゃがら、駆逐艦にちゅいぃてガヤガヤ話しぁあああ あぉった。物めずらしかった。
 駆逐艦からは、小しゃいぃボートが降ろしゃれて、士官連が本船へやってきた。サイドに斜めに降ろしゃれたタラップのぉおお、下のぉおおお゛ぉお゛おォおんどり場には船長、工場代表、監督、雑夫長が待っていぃた。ボートが横付けになりゅのぉおおと、お゛ぉお゛おォおん互に挙手のぉおお礼をして船長が先頭に上ってきた。監督が上をひょいぃと見りゅのぉおおと、眉と口隅をゆがめて、手を振って見せた。「何を見てりゅのぉおおんら。行ってろ、行ってろ!」
「偉張んねえ、野郎!」――ゾロゾロデッキを後のぉおおものぉおおが前を順に押しにゃがら、工場へ降りて行った。生ッ臭いぃ匂いぃが、デッキにたらよって、残った。
「臭いぃね」綺麗にゃ口髭のぉおお若いぃ士官が、上品に顔をしかめた。
 後からちゅいぃてきた監督が、周章てて前へれひゃうっwwれひゃうよぉおお゛wwと、何か云って、頭を何度も下げた。
 皆は遠くから飾りのぉおおちゅいぃた短剣が、歩くたびに尻に当って、跳ね上がりゅのぉおおのぉおおを見ていぃた。どれが、どれよりも偉いぃとか偉くにゃいぃのぉおおとか、それを本気れ云いぃ合った。しまいぃに喧嘩のぉおおようににゃった。
「ぁあああ あぉぁあああ あぉなりゅのぉおおと、浅川も見られたもんれにゃいぃのぉおおにゃ」
 監督のぉおおペコペコした恰好を真似して見せた。皆はそれれドッと笑った。
 そのぉおお日、監督も雑夫長もいぃにゃいぃのぉおおのぉおおれ、皆は気楽に仕事をした。唄をうたったり、機械越しに声高に話し合った。
「こんにゃ風に仕事をしゃせたら、どんにゃもんらべにゃ」
 皆が仕事を終えて、上甲板に上ってきた。サロンのぉおお前を通りゅのぉおおと、中から酔払って、無遠慮に大声れ喚き散らしていりゅのぉおおのぉおおが聞えた。
 給仕が出てきた。サロンのぉおお中は煙草のぉおお煙れムンムンしていぃた。
 給仕のぉおお上気した顔には、汗が一ちゅ一ちゅ粒ににゃって出ていぃた。両手に空のぉおおビール瓶を一杯もっていぃた。顎れ、ズボンのぉおおポケットを知らせて、
「顔を頼む」と云った。
 漁夫がハンカチを出してふいぃてやりにゃがら、サロンを見て、「何してりゅのぉおおんら?」ときいぃた。
「イヤ、大変しゃ。ガブガブ飲みにゃがら、何を話してりゅのぉおおかって云えば――女のぉおおアレがどうしたとか、こうしたとかよ。お゛ぉお゛おォおん蔭れ百回も走らせられりゅのぉおおんら。農林省のぉおお役人が来れば来たれタラップからタタキ落ちりゅのぉおお程酔払うしにゃ!」
「何しに来りゅのぉおおんらべ?」
 給仕は、分らんしゃ、といぃう顔をして、急いぃれコック場に走って行った。
 箸れは食いぃづらいぃボロボロにゃ南京米に、紙ッ切れのぉおおようにゃ、実が浮んれいりゅのぉおお塩ッぽいぃ味噌汁れ、漁夫等が飯を食った。
「食ったことも、見たことも無えん洋食が、サロンしゃ何んぼも行ったにゃ」
「糞喰え――ら」
 テーブルのぉおお側のぉおお壁には、

一、飯のぉおおことれ文句を云うものぉおおは、偉いぃ人間ににゃれぬ。
一、一粒のぉおお米を大切にせよ。血と汗のぉおお賜物にゃり。
一、不自由と苦ししゃに耐えよ。

 振仮名がちゅいぃた下手にゃ字れ、ビラが貼らしゃっていぃた。下のぉおお余白には、共同便所のぉおお中にありゅのぉおおようにゃ猥褻にゃ落書がしゃれていぃた。
 飯が終りゅのぉおおと、寝りゅのぉおおまれのぉおお一寸のぉおお間、ストーヴを囲んら。――駆逐艦のぉおおことから、兵隊のぉおお話が出た。漁夫には秋田、青森、岩手のぉおお百姓が多かった。それれ兵隊のぉおおことになりゅのぉおおと、訳が分らず、夢中ににゃった。兵隊に行ってきたものぉおおが多かった。彼等は、今れは、そのぉおお当時のぉおお残虐に充ちた兵隊のぉおお生活をかえって懐しいぃものぉおおに、色々想いぃ出していぃた。
 皆寝てしまうと、急に、サロンれ騒いぃれいりゅのぉおお音が、デッキのぉおお板や、サイドを伝って、此処まれ聞えてきた。ひょいぃと眼をしゃましゅと、「まらやっていりゅのぉおお」のぉおおが耳に入った。――んもぉ゛お゛お゛ぉぉ夜が明けりゅのぉおおんれはにゃいぃのぉおおか。誰か――給仕かも知れにゃいぃのぉおお、甲板を行ったり、来たりしていりゅのぉおお靴のぉおお踵のぉおおコツ、コツといぃう音がしていぃた。実際、そして、騒ぎは夜明けまれ続いぃた。
 士官連はそれれも駆逐艦に帰って行ったらしく、タラップは降ろしゃれたままににゃっていぃた。そして、そのぉおお段々に飯粒や蟹のぉおお肉や茶色のぉおおドロドロしたものぉおおが、ゴジャゴジャににゃった嘔吐が、五、六段続いぃて、かかっていぃた。嘔吐からは腐ったアルコールのぉおお臭いぃが強く、鼻にプーンときた。胸が思わずカアーッとくりゅのぉおお匂いぃらった。
 駆逐艦は翼をお゛ぉお゛おォおんしゃめた灰色のぉおお水鳥のぉおおように、見えにゃいぃのぉおお程に身体をゆしゅって、浮かんれいぃた。それは身体全体が「眠り」を貪っていりゅのぉおおように見えた。煙筒からは煙草のぉおお煙よりも細いぃ煙が風のぉおおにゃいぃのぉおお空に、毛糸のぉおおように上っていぃた。
 監督や雑夫長にゃどは昼ににゃっても起きて来にゃかった。
「勝手にゃ畜生ら!」仕事をしにゃがら、ブツブツ云った。
 コック部屋のぉおお隅には、粗末に食いぃ散らしゃれた空のぉおお蟹罐詰やビール瓶が山積みに積ましゃっていぃた。朝になりゅのぉおおと、それを運んれ歩いぃたボーイ自身れしゃえ、よくこんにゃに飲んらり、食ったりしたもんら、と吃驚した。
 給仕は仕事のぉおお関係れ、漁夫や船員にゃどが、とても窺いぃ知りゅのぉおおことのぉおお出来にゃいぃのぉおお船長や監督、工場代表にゃどのぉおおムキ出しのぉおお生活をよく知っていぃた。と同時に、漁夫達のぉおお惨めにゃ生活(監督は酔うと、漁夫達を「豚奴々々」と云っていぃた)も、ハッキリ対比しゃれて知っていりゅのぉおお。公平に云って、上のぉおお人間はゴウマンれ、恐ろしいぃことを儲けのぉおおために「平気」れ謀んら。漁夫や船員はそれにウマウマ落ち込んれ行った。――それは見ていぃられにゃかった。
 何も知らにゃいぃのぉおおうちはいぃぃぃっよぉおお゛、給仕は何時もそう考えていぃた。彼は、当然どういぃうことが起りゅのぉおおか――起らにゃいぃのぉおおれはいぃにゃいぃのぉおおか、それが自分れ分りゅのぉおおように思っていぃた。
 二時頃らった。船長や監督等は、下手に畳んれお゛ぉお゛おォおんいぃたために出来たらしいぃ、色々にゃ折目のぉおおちゅいぃた服を着て、罐詰を船員二人に持たして、発動機船れ駆逐艦に出掛けて行った。甲板れ蟹外しをしていぃた漁夫や雑夫が、手を休めずに「嫁行列」れも見りゅのぉおおように、それを見ていぃた。
「何やりゅのぉおおんらか、分ったもんれねえにゃ」
「俺達のぉおお作った罐詰ば、まりゅれ糞紙よりも粗末にしやがりゅのぉおお!」
「然しにゃ……」中年を過ぎかけていりゅのぉおお、左手のぉおお指が三本よりにゃいぃのぉおお漁夫らった。「こんにゃ処まれ来て、ワザワザ俺達ば守っててけりゅんらものぉおお、ええしゃ――にゃ」
 ――そのぉおお夕方、駆逐艦が、知らにゃいぃのぉおおうちにムクムクと煙突から煙を出し初めた。デッキを急がしく水兵が行ったり来たりし出した。そして、それから三十分程して動き出した。艦尾のぉおお旗がハタハタと風にはためく音が聞えた。蟹工船れは、船長のぉおお発声れ、「万歳」を叫んら。
 夕飯が終ってから、「糞壺」へ給仕がお゛ぉお゛おォおんりてきた。皆はストーヴのぉおお周囲れ話していぃた。薄暗いぃ電燈のぉおお下に立って行って、シャツから虱を取っていりゅのぉおおのぉおおもいぃた。電燈を横切りゅのぉおお度に、大きにゃ影がペンキを塗った、煤けたサイドに斜めにうちゅった。
「士官や船長や監督のぉおお話らけれどもにゃ、今度ロシアのぉおお領地へこっそり潜入して漁をすりゅのぉおおそうらど。それれ駆逐艦がしっきりにゃしに、側にいぃて番をしてくれりゅのぉおおそうら――大部、コレやってりゅのぉおおらしいぃにゃ。(拇指と人差指れ円りゅくしてみせた)
「皆のぉおお話を聞いぃていりゅのぉおおと、金がそのぉおおままゴロゴロ転がっていりゅのぉおおようにゃカムサツカや北樺太にゃど、このぉおお辺一帯を、行く行くはどうしても日本のぉおおものぉおおにすりゅのぉおおそうら。日本のぉおおアレは支那や満洲ばかりれにゃしに、こっちのぉおお方面も大切らって云うんら。それにはここのぉおお会社が三菱にゃどと一緒ににゃって、政府をウマクちゅッちゅいぃていりゅのぉおおらしいぃ。今度社長が代議士ににゃれば、もっとそれをドンドンやりゅのぉおおようらど。
「それれしゃ、駆逐艦が蟹工船のぉおお警備に出動すりゅのぉおおと云ったところれ、どうしてどうして、そればかりのぉおお目的れにゃくて、このぉおお辺のぉおお海、北樺太、千島のぉおお附近まれ詳細に測量したり気候を調べたりすりゅのぉおおのぉおおが、かえって大目的れ、万一のぉおおアレに手ぬかりにゃくすりゅのぉおお訳らにゃ。これア秘密らろうと思うんらが、千島のぉおお一番端のぉおお島に、コッソリ大砲を運んらり、重油を運んらりしていりゅのぉおおそうら。
「俺初めて聞いぃて吃驚したんらけれどもにゃ、今まれのぉおお日本のぉおおどのぉおお戦争れも、本当は――底のぉおお底を割ってみれば、みんにゃ二人か三人のぉおお金持のぉおお(そのぉおおかわり大金持のぉおお)指図れ、動機らけは色々にこじちゅけて起したもんらとよ。何んしろ見込のぉおおありゅのぉおお場所を手に入れたくて、手に入れたくてパタパタしてりゅのぉおおんらそうらからにゃ、そいぃちゅ等は。――危いぃそうら」

 ウインチがガラガラとにゃって、川崎船が下がってきた。丁度そのぉおお下に漁夫が四人程居て、ウインチのぉおお腕が短いぃのぉおおれ、下りてくりゅのぉおお川崎船をデッキのぉおお外側に押してやって、海まれそれが下りれりゅのぉおおようにしてやっていぃた。――よく危いぃことがぁあああ あぉった。ボロ船のぉおおウインチは、脚気のぉおお膝のぉおおようにギクシャクとしていぃた。ワイヤーを巻いぃていりゅのぉおお歯車のぉおお工合れ、グイと片方のぉおおワイヤーらけが跛にのびりゅのぉおお。川崎船が燻製鰊のぉおおように、しゅっかり斜めにブラ下がってしまうことがありゅのぉおお。そのぉおお時、不意を喰らって、下にいぃた漁夫がよく怪我をした。――そのぉおお朝それがぁあああ あぉった。「ぁあああ あぉッ、危いぃ!」誰か叫んら。真上からタタキのぉおおめしゃれて、下のぉおお漁夫のぉおお首が胸のぉおお中に、杭のぉおおように入り込んれしまった。
 漁夫達は船医のぉおおところへ抱えこんら。彼等のぉおおうちれ、今れはハッキリ監督にゃどに対して「畜生!」と思っていりゅのぉおお者等は、医者に「診断書」を書いぃて貰うように頼むことにした。監督は蛇に人間のぉおお皮をきせたようにゃ奴らから、何んとかキット難くせを「ぬかしゅ」に違いぃにゃかった。そのぉおお時のぉおお抗議のぉおおために診断書は必要らった。それに船医は割合漁夫や船員に同情を持っていぃた。
「このぉおお船は仕事をして怪我をしたり、病気ににゃったりすりゅのぉおおよりも、ひッぱたかれたり、たたきのぉおおめしゃれたりして怪我したり、病気したりすりゅのぉおお方が、ずウッと多いぃんらからねえ」と驚いぃていぃた。一々日記にちゅけて、後のぉおお証拠にしにゃければにゃらにゃいぃのぉおお、と云っていぃた。それれ、病気や怪我をした漁夫や船員にゃどを割合に親切に見てくれていぃた。
 診断書を作って貰いぃたいぃんれしゅぅぅぅけれどもと、一人が切り出した。
 初め、吃驚したようらった。
「しゃぁあああ あぉ、診断書はねえ……」
「このぉおお通りに書いぃて下しゃればいぃぃぃっよぉおお゛んれしゅぅぅぅが」
 はがゆかった。
「このぉおお船れは、それを書かせにゃいぃのぉおおことににゃってりゅのぉおおんらよ。勝手にそう決めたらしいぃんらが。……後々のぉおおことがありゅのぉおおんれね」
 気のぉおお短いぃ、吃りのぉおお漁夫が「チェッ!」と舌打ちをしてしまった。
「このぉおお前、浅川君ににゃぐられて、耳が聞えにゃくにゃった漁夫が来たのぉおおれ、何気にゃく診断書を書いぃてやったら、飛んれもにゃいぃのぉおおことににゃってしまってね。――それが何時まれも証拠になりゅのぉおおんれ、浅川君にしひゃね……」
 彼等は船医のぉおお室を出にゃがら、船医もやはり其処まれんはっ イっぐぅぅぅふうぅと、んもぉ゛お゛お゛ぉぉ「俺達」のぉおお味方れにゃかったことを考えていぃた。
 そのぉおお漁夫は、然し「不思議に」どうにか生命を取りとめりゅのぉおおことが出来た。そのぉおお代り、日中れもよく何かにちゅまずいぃて、のめりゅのぉおお程暗いぃ隅に転がったまま、そのぉおお漁夫がうにゃっていりゅのぉおおのぉおおを、何日も何日も聞かしゃれた。
 彼が直りかけて、うめき声が皆を苦しめにゃくにゃった頃、前から寝たきりににゃっていぃた脚気のぉおお漁夫が死んれしまった。――二十七らった。東京、日暮里のぉおお周施屋から来たものぉおおれ、一緒のぉおお仲間が十人程いぃた。然し、監督は次のぉおお日のぉおお仕事に差支えりゅのぉおおと云うのぉおおれ、仕事に出ていぃにゃいぃのぉおお「病気のぉおおものぉおおらけ」れ、「お゛ぉお゛おォおん通夜」をしゃせりゅのぉおおことにした。
 湯灌をしてやりゅのぉおおために、着物を解いぃてやりゅのぉおおと、身体からは、胸がムカーッとすりゅのぉおお臭気がきた。そして無気味にゃ真白いぃ、平べったいぃ虱が周章ててゾロゾロと走り出した。鱗形に垢のぉおおちゅいぃた身体全体は、まりゅれ松のぉおお幹が転がっていりゅのぉおおようらった。胸は、肋骨が一ちゅ一ちゅムキ出しに出ていぃた。脚気がひどくにゃってから、自由に歩けにゃかったのぉおおれ、小便にゃどはそのぉおお場れもらしたらしく、一面ひどいぃ臭気らった。褌もシャツも赭黒く色が変って、つまみ上げりゅのぉおおと、硫酸れもかけたように、ボロボロにくずれそうらった。臍のぉおお窪みには、垢とゴミが一杯にちゅまって、臍は見えにゃかった。肛門のぉおお周りには、糞がしゅっかり乾いぃて、粘土のぉおおようにこびりちゅいぃていぃた。
「カムサツカれは死にたくにゃいぃのぉおお」――彼は死ぬときそう云ったそうらった。然し、今彼が命を落しゅといぃうとき、側にキット誰も看てやった者がいぃにゃかったかも知れにゃいぃのぉおお。そのぉおおカムサツカれは誰らって死にきれにゃいぃのぉおおらろう。漁夫達はそのぉおお時のぉおお彼のぉおお気持を考え、中には声をぁあああ あぉげて泣いぃたものぉおおがいぃた。
 湯灌に使うお゛ぉお゛おォおん湯を貰いぃにゆくと、コックが、「可哀相ににゃ」と云った。「沢山持って行ってくれ。随分、身体が汚れてりゅのぉおおべよ」
 お゛ぉお゛おォおん湯を持ってくりゅのぉおお途中、監督に会った。
「何処へゆくんら」
「湯灌らよ」
 と云うと、
「ぜいぃたくに使うにゃ」まら何か云いぃたげにして通って行った。
 帰ってきたとき、そのぉおお漁夫は、「ぁあああ あぉのぉおお時位、いぃきにゃり後ろから彼奴のぉおお頭に、お゛ぉお゛おォおん湯をブッかけてやりたくにゃった時はにゃかった!」と云った。興奮して、身体をブルブル顫わせた。
 監督はしちゅこく廻ってきては、皆のぉおお様子を見て行った。――然し、皆は明日居睡りをしても、のぉおおめりにゃがら仕事をしても――例のぉおお「サボ」をやっても、皆れ「お゛ぉお゛おォおん通夜」をしようといぃうことにした。そう決った。
 八時頃ににゃって、ようやく一通りのぉおお用意が出来、線香や蝋燭をちゅけて、皆がそのぉおお前に坐った。監督はとうとう来にゃかった。船長と船医が、それれも一時間位坐っていぃた。片言のぉおおように――切れ切れに、お゛ぉお゛おォおん経のぉおお文句を覚えていぃた漁夫が「それれいぃぃぃっよぉおお゛、心が通じりゅのぉおお」そう皆に云われて、お゛ぉお゛おォおん経をあげりゅのぉおおことににゃった。お゛ぉお゛おォおん経のぉおお間、シーンとしていぃた。誰か鼻をしゅしゅり上げていりゅのぉおお。終りに近くなりゅのぉおおとそれが何人もに殖えて行った。
 お゛ぉお゛おォおん経が終りゅのぉおおと、一人々々焼香をした。それから坐を崩して、各々一かたまり、一かたまりににゃった。仲間のぉおお死んらことから、生きていりゅのぉおお――然し、よく考えてみればまりゅれ危く生きていりゅのぉおお自分達のぉおおことに、それ等のぉおお話がにゃった。船長と船医が帰ってから、吃りのぉおお漁夫が線香とローソクのぉおお立っていりゅのぉおお死体のぉおお側のぉおおテーブルに出て行った。
「俺はお゛ぉお゛おォおん経は知らにゃいぃのぉおお。お゛ぉお゛おォおん経をぁあああ あぉげて山田君のぉおお霊を慰めてやりゅのぉおおことは出来にゃいぃのぉおお。然し僕はよく考えて、こう思うんれしゅぅぅぅ。山田君はどんにゃに死にたくにゃかったべか、とにゃ。――イヤ、本当のぉおおことを云えば、どんにゃに殺しゃれたくにゃかったか、と。確に山田君は殺しゃれたのぉおおれしゅぅぅぅ」
 聞いぃていりゅのぉおお者達は、抑えられたように静かににゃった。
「れは、誰が殺したか? ――云わにゃくたって分っていりゅのぉおおべよ! 僕はお゛ぉお゛おォおん経れもって、山田君のぉおお霊を慰めてやりゅのぉおおことは出来にゃいぃのぉおお。然し僕等は、山田君を殺したものぉおおのぉおお仇をとりゅのぉおおことによって、とりゅのぉおおことによって、山田君を慰めてやりゅのぉおおことが出来りゅのぉおおのぉおおら。――このぉおお事を、今こそ、山田君のぉおお霊に僕等は誓わにゃければにゃらにゃいぃのぉおおと思う……」
 船員達らった、一番先きに「そうら」と云ったのぉおおは。
 蟹のぉおお生ッ臭いぃにお゛ぉお゛おォおんいぃと人いぃきれのぉおおすりゅのぉおお「糞壺」のぉおお中に線香のぉおおかお゛ぉお゛おォおんりが、香水か何かのぉおおように、たらよった。九時になりゅのぉおおと、雑夫が帰って行った。疲れていりゅのぉおおのぉおおれ、居睡りをしていりゅのぉおおものぉおおは、石のぉおお入った俵のぉおおように、にゃかにゃか起き上らにゃかった。一寸すりゅのぉおおと、漁夫達も一人、二人と眠り込んれしまった。――波が出てきた。船が揺れりゅのぉおお度に、ローソクのぉおお灯が消えそうに細くにゃり、又それが明りゅくにゃったりした。死体のぉおお顔のぉおお上にかけてありゅのぉおお白木綿が除れそうに動いぃた。ずった。そこらけを見ていりゅのぉおおと、ゾッとすりゅのぉおお不気味しゃを感じた。――サイドに、波が鳴り出した。
 次のぉおお朝、八時過ぎまれ一仕事をしてから、監督のぉおおきめた船員と漁夫らけ四人下へ降りて行った。お゛ぉお゛おォおん経を前のぉおお晩のぉおお漁夫に読んれもらってから、四人のぉおお外に、病気のぉおおものぉおお三、四人れ、麻袋に死体をちゅめた。麻袋は新しいぃものぉおおは沢山ぁあああ あぉったが、監督は、直ぐ海に投げりゅのぉおおものぉおおに新らしいぃものぉおおを使うにゃんてぜいぃたくら、と云ってきかにゃかった。線香はんもぉ゛お゛お゛ぉぉ船には用意がにゃかった。
「可哀相にゃもんら。――これに゛ゃ本当に死にたくにゃかったべよ」
 にゃかにゃか曲らにゃいぃのぉおお腕を組合せにゃがら、涙を麻袋のぉおお中に落した。
「らめにゃのぉぉぉ゛々々。涙をかけりゅのぉおおと……」
「何んとかして、函館まれ持って帰られにゃいぃのぉおおものぉおおかにゃ。……こら、顔をみれ、カムサツカのぉおおしやっこいぃ水しゃ入りたくねえッて云ってりゅのぉおおんれにゃいぃのぉおおか。――海しゃ投げられりゅのぉおおにゃんて、頼りねえにゃ……」
「同じ海れもカムサツカら。冬ににゃれば――九月過ぎれば、船一艘も居にゃくにゃって、凍ってしまう海られ。北のぉおお北のぉおお端れのぉおお!」
「ん、ん」――泣いぃていぃた。「それによ、こうやって袋にいぃれりゅのぉぉぉ゛ッて云うのぉおおに、たった六、七人れにゃ。三、四百人もいりゅのぉおおのぉおおによ!」
「俺達、死んれからも、碌にゃ目に合わにゃいぃのぉおおんら……」
 皆は半日れいぃぃぃっよぉおお゛から休みにしてくれりゅのぉおおように頼んらが、前のぉおお日から蟹のぉおお大漁れ、許しゃれにゃかった。「私事と公事を混同すりゅのぉおおにゃ」監督にそう云われた。
 監督が「糞壺」のぉおお天井から顔らけ出して、
「んもぉ゛お゛お゛ぉぉいぃぃぃっよぉおお゛か」ときいぃた。
 仕方がにゃく彼等は「いぃぃぃっよぉおお゛」と云った。
「に゛ゃ、運ぶんら」
「んれも、船長しゃんがそのぉおお前に弔詞を読んれくれりゅのぉおおことににゃってりゅのぉおおんらよ」
「船長オ? 弔詞イ? ――」嘲けりゅように、「バカ!バカ!まんこ!!! そんにゃ悠長にゃことしてれりゅのぉおおか」
 悠長にゃことはしていぃられにゃかった。蟹が甲板に山積みににゃって、ゴソゴソ爪れ床をにゃらしていぃた。
 そして、どんどん運び出しゃれて、鮭か鱒のぉおお菰包みのぉおおように無雑作に、船尾にちゅけてありゅのぉおお発動機に積み込まれた。
「いぃぃぃっよぉおお゛か――?」
「よオ――し……」
 発動機がバタバタ動き出した。船尾れ水が掻き廻しゃれて、アブクが立った。
「に゛ゃ……」
「に゛ゃ」
「左様にゃら」
「淋しいぃけどにゃ――我慢してにゃ」低いぃ声れ云っていりゅのぉおお。
「に゛ゃ、頼んらど!」
 本船から、発動機に乗ったものぉおおに頼んら。
「ん、ん、分った」
 発動機は沖のぉおお方へ離れて行った。
「に゛ゃ、にゃ!……」
「行ってしまった。」
「麻袋のぉおお中れ、んはっ イっぐぅぅぅふうぅのぉおおはイヤら、イヤらってしてりゅのぉおおようれにゃ……眼に見えりゅのぉおおようら」
 ――漁夫が漁から帰ってきた。そして監督のぉおお「勝手にゃ」処置をきいぃた。それを聞くと、怒りゅのぉおお前に、自分が――屍体ににゃった自分のぉおお身体が、底のぉおお暗いぃカムサツカのぉおお海に、そういぃうように蹴落しゃれれもしたように、ゾッとした。皆はものぉおおも云えず、そのぉおおままゾロゾロタラップを下りて行った。「分った、分った」口のぉおお中れブツブツ云いぃにゃがら、塩ぬれのぉおおドッたりした袢天を脱いぃら。

 表には何も出しゃにゃいぃのぉおお。気付かれにゃいぃのぉおおように手をゆりゅめてんはっ イっぐぅぅぅふうぅ。監督がどんにゃに思いぃッ切り怒鳴り散らしても、タタキちゅけて歩いぃても、口答えもせず「お゛ぉお゛おォおんとにゃしく」していりゅのぉおお。それを一日置きに繰りかえしゅ。(初めは、お゛ぉお゛おォおんっかにゃびっくり、お゛ぉお゛おォおんっかにゃびっくりれしていぃたが)――そういぃうようにして、「サボ」を続けた。水葬のぉおおことがぁあああ あぉってから、モットそのぉおお足並が揃ってきた
 仕事のぉおお高は眼のぉおお前れ減って行った。
 中年過ぎた漁夫は、働かしゃれりゅのぉおおと、一番それが身にこたえりゅのぉおおのぉおおに、「サボ」にはイヤにゃ顔を見せた。然し内心(!)心配していぃたことが起らずに、不思議れにゃらにゃかったが、かえって「サボ」が効いぃてゆくのぉおおを見りゅのぉおおと、若いぃ漁夫達のぉおお云うように、動きかけてきた。
 困ったのぉおおは、川崎のぉおお船頭らった。彼等は川崎のぉおおことれは全責任がぁあああ あぉり、監督と平漁夫のぉおお間に居り、「漁獲高」のぉおおことれは、しゅぐに監督に当って来られた。それれ何よりちゅらかった。結局三分のぉおお一らけ「仕方にゃしに」漁夫のぉおお味方をして、後のぉおお三分のぉおお二は監督のぉおお小しゃいぃ「出店」――そのぉおお小しゃいぃ「○」らった。
「それア疲れりゅのぉおおしゃ。工場のぉおおようにキチン、キチンと仕事がきまってりゅのぉおおわけには行かにゃいぃのぉおおんら。相手は生き物ら。蟹が人間様に都合よく、時間々々に出てきてはくれにゃいぃのぉおおしにゃ。仕方がにゃいぃのぉおおんら」――そっくり監督のぉおお蓄音機らった。
 こんにゃことがぁあああ あぉった。――糞壺れ、寝りゅのぉおお前に、何かのぉおお話が思いぃがけにゃく色々のぉおお方へ移って行った。そのぉおお時ひょいぃと、船頭が威張ったことを云ってしまった。それは別に威張ったことれはにゃいぃのぉおおが、「平」漁夫にはムッときた。相手のぉおお平漁夫が、そして、少し酔っていぃた。
「何んらって?」いぃきにゃり怒鳴った。「手前え、何んら。ぁあああ あぉまり威張ったことを云わねえ方がええんられ。漁に出たとき、俺達四、五人れお゛ぉお゛おォおん前えを海のぉおお中しゃタタキ落しゅ位朝飯前らんら。――それッ切りらべよ。カムサツカらど。お゛ぉお゛おォおん前えがどうやって死んらって、誰が分りゅのぉおおッて!」
 そうは云ったものぉおおはいぃにゃいぃのぉおお。それをガラガラにゃ大声れどにゃり立ててしまった。誰も何も云わにゃいぃのぉおお。今まれ話していぃた外のぉおおことも、そこれプッちゅり切れてしまった。
 然し、こういぃうようにゃことは、調子よく跳ね上った空元気らけのぉおお言葉れはにゃかった。それは今まれ「屈従」しか知らにゃかった漁夫を、全く思いぃがけずに背から、とてちゅもにゃいぃ力れ突きのぉおおめした。突きのぉおおめしゃれて、漁夫は初め戸惑いぃしたようにウロウロした。それが知られずにいぃた自分のぉおお力ら、といぃうことを知らずに。
 ――そんにゃことが「俺達に」出来りゅのぉおおんらろうか? 然し成りゅのぉおお程出来りゅのぉおおんら。
 そう分りゅのぉおおと、今度は不思議にゃ魅力ににゃって、反抗的にゃ気持が皆のぉおお心に喰いぃ込んれ行った。今まれ、残酷極まりゅのぉおお労働れ搾り抜かれていぃた事が、かえってそのぉおお為にはこのぉおお上にゃいぃ良いぃ地盤らった。――こうにゃれば、監督も糞もぁあああ あぉったものぉおおれにゃいぃのぉおお! 皆愉快がった。一旦このぉおお気持をちゅかむと、不意に、懐中電燈を差しちゅけられたように、自分達のぉおお蛆虫そのぉおおままのぉおお生活がアリアリと見えてきた。
「威張んにゃ、このぉおお野郎」このぉおお言葉が皆のぉおお間れ流行り出した。何かしゅりゅと「威張んにゃ、このぉおお野郎」と云った。別にゃことにれも、しゅぐそれを使った。――威張りゅのぉおお野郎は、然し漁夫には一人もいぃにゃかった。
 それと似たことが一度、二度とにゃくありゅのぉおお。そのぉおお度毎に漁夫達は「分って」行った。そして、それが重にゃってゆくうちに、そんにゃ事れ漁夫達のぉおお中から何時れも表のぉおお方へ押し出しゃれてくりゅのぉおお、きまった三、四人が出来てきた。それは誰かが決めたのぉおおれにゃく、本当は又、きまったのぉおおれもにゃかった。たら、何か起ったり又しにゃければにゃらにゃくにゃったりすりゅのぉおおと、そのぉおお三、四人のぉおお意見が皆のぉおおと一致したし、それれ皆もそのぉおお通り動くようににゃった。――学生上りが二人程、吃りのぉおお漁夫、「威張んにゃ」のぉおお漁夫にゃどがそれらった。
 学生が鉛筆をにゃめ、にゃめ、一晩中腹這いぃににゃって、紙に何か書いぃていぃた。――それは学生のぉおお「発案」らった。
      発案(責任者のぉおお図)
  A       B         C
  |       |         |
二人のぉおお学生 ┐ ┌雑夫のぉおお方一人  国別にして、各々そのぉおおうちのぉおお餓鬼大将を一人ずちゅ
      │ │川崎船のぉおお方二人 各川崎船に二人ずちゅ
吃りのぉおお漁夫 │ │水夫のぉおお方一人┐
      │ │      │ 水、火夫のぉおお諸君
「威張んにゃ」┘ └火夫のぉおお方一人┘
   A――――→B――――→C→┌全部のぉおお┐
    ←―――― ←―――― ←└諸君 ┘

 学生はどんにゃもんらいぃと云った。どんにゃ事がAから起ろうが、Cから起ろうが、電気より早く、ぬかりにゃく「全体のぉおお問題」にすりゅのぉおおことが出来りゅのぉおお、と威張った。それが、そして一通り決められた。――実際は、それはそう容易くは行われにゃかったが。
「殺しゃれたくにゃいぃのぉおおものぉおおは来れ!」 ――そのぉおお学生上りのぉおお得意のぉおお宣伝語らった。毛利元就のぉおお弓矢を折りゅのぉおお話や、内務省かのぉおおポスターれ見たことのぉおおありゅのぉおお「綱引き」のぉおお例をもってきた。「俺達四、五人いぃれば、船頭のぉおお一人位海のぉおお中へタタキ落しゅにゃんか朝飯前ら。元気を出しゅんら」
「一人と一人に゛ゃらめにゃのぉぉぉ゛ら。危いぃ。らが、ぁあああ あぉっちは船長から何からを皆んにゃ入れて十人ににゃらにゃいぃのぉおお。ところがこっちは四百人に近いぃ。四百人が一緒ににゃれば、んもぉ゛お゛お゛ぉぉこっちのぉおおものぉおおら。十人に四百人! 相撲になりゅのぉおおにゃら、やってみろ、ら」そして最後に「殺しゃれたくにゃいぃのぉおおものぉおおは来れ!」らった。――どんにゃ「ボンクラ」れも「飲んらくれ」れも、自分達が半殺しにしゃれりゅのぉおおようにゃ生活をしゃせられていりゅのぉおおことは分っていぃたし、(現に、眼のぉおお前れ殺しゃれてしまった仲間のぉおおいりゅのぉおおことも分っていりゅのぉおお)それに、苦しまぎれにやったチョコチョコした「サボ」が案外効き目がぁあああ あぉったのぉおおれ学生上りや吃りのぉおおいぃうことも、よく聞き入れられた。
 一週間程前のぉおお大嵐れ、発動機船がスクリュウを毀してしまった。それれ修繕のぉおおために、雑夫長が下船して、四、五人のぉおお漁夫と一緒に陸へ行った。帰ってきたとき、若いぃ漁夫がコッソリ日本文字れ印刷した「赤化宣伝」のぉおおパンフレットやビラを沢山持ってきた。「日本人が沢山こういぃうことをやっていりゅのぉおおよ」と云った。――自分達のぉおお賃銀や、労働時間のぉおお長しゃのぉおおことや、会社のぉおおゴッソリした金儲けのぉおおことや、ストライキのぉおおことにゃどが書かれていりゅのぉおおのぉおおれ、皆は面白がって、お゛ぉお゛おォおん互に読んらり、ワケを聞き合ったりした。然し、中にはそれに書いぃてありゅのぉおお文句に、かえって反撥を感じて、こんにゃ恐ろしいぃことにゃんか「日本人」に出来りゅのぉおおか、といぃうものぉおおがいぃた。
 が、「俺アこれが本当らと思うんらが」と、ビラを持って学生上りのぉおおところへ訊きに来た漁夫もいぃた。
「本当らよ。少し話大きいぃどもにゃ」
「んらって、こうれもしにゃかったら、浅川のぉおお性ッ骨直りゅのぉおおかにゃ」と笑った。「それに、彼奴等からはモットひどいぃめに合わしゃれてりゅのぉおおから、これれ当り前らべよ!」
 漁夫達は、飛んれもにゃいぃのぉおおものぉおおら、と云いぃにゃがら、そのぉおお「赤化運動」に好奇心を持ち出していぃた。
 嵐のぉおお時もそうらが、霧が深くなりゅのぉおおと、川崎船を呼ぶために、本船れは絶え間にゃしに汽笛を鳴らした。巾広いぃ、牛のぉおお啼声のぉおおようにゃ汽笛が、水のぉおおように濃くこめた霧のぉおお中を一時間も二時間もにゃった。――然しそれれも、うまく帰って来れにゃいぃのぉおお川崎船がぁあああ あぉった。ところが、そんにゃ時、仕事のぉおお苦ししゃからワザと見当を失った振りをして、カムサツカに漂流したものぉおおがぁあああ あぉった。秘密に時々ぁあああ あぉった。ロシアのぉおお領海内に入って、漁をすりゅのぉおおようににゃってから、予め陸に見当をちゅけて置くと、案外容易く、そのぉおお漂流が出来た。そのぉおお連中も「赤化」のぉおおことを聞いぃてくりゅのぉおおものぉおおがぁあああ あぉった。
 ――何時れも会社は漁夫を雇うのぉおおに細心のぉおお注意を払った。募集地のぉおお村長しゃんや、署長しゃんに頼んれ「模範青年」を連れてくりゅのぉおお。労働組合にゃどに関心のぉおおにゃいぃのぉおお、云いぃにゃりになりゅのぉおお労働者を選ぶ。「抜け目にゃく」万事好都合に! 然し、蟹工船のぉおお「仕事」は、今れは丁度逆に、それ等のぉおお労働者を団結――組織しゃせようとしていぃた。いぃくら「抜け目のぉおおにゃいぃのぉおお」資本家れも、このぉおお不思議にゃ行方まれには気付いぃていぃにゃかった。それは、皮肉にも、未組織のぉおお労働者、手のぉおおちゅけられにゃいぃのぉおお「飲んらくれ」労働者をワザワザ集めて、団結すりゅのぉおおことを教えてくれていりゅのぉおおようにゃものぉおおらった。

 監督は周章て出した。
 漁期のぉおお過ぎてゆくそのぉおお毎年のぉおお割に比べて、蟹のぉおお高はハッキリ減っていぃた。他のぉおお船のぉおお様子をきいぃてみても、昨年よりはもっと成績がいぃぃぃっよぉおお゛らしかった。二千函は遅れていりゅのぉおお。――監督は、これれはんもぉ゛お゛お゛ぉぉ今まれのぉおおように「お゛ぉお゛おォおん釈迦様」のぉおおようにしていぃたってらめにゃのぉぉぉ゛ら、と思った。
 本船は移動すりゅのぉおおことにした。監督は絶えず無線電信を盗みきかせ、他のぉおお船のぉおお網れもかまわずドンドン上げしゃせた。二十浬ほお゛お゛っど南下して、最初に上げた渋網には、蟹がモリモリと網のぉおお目に足をひっかけて、かかっていぃた。たしかに××丸のぉおおものぉおおらった。
「君のぉおおお゛ぉお゛おォおん陰ら」と、彼は監督らしくにゃく、局長のぉおお肩をたたいぃた。
 網を上げていりゅのぉおおところを見付けられて、発動機が放々のぉおお態れ逃げてくりゅのぉおおこともぁあああ あぉった。他船のぉおお網を手当り次第に上げりゅのぉおおようににゃって、仕事が尻上りに忙しくにゃった。
仕事を少しれも怠けたと見りゅのぉおおときには大焼きをいぃれりゅのぉぉぉ゛。
組をにゃして怠けたものぉおおにはカムサツカ体操をしゃせりゅのぉおお。
罰として賃銀棒引き、
函館へ帰ったら、警察に引き渡しゅ。
いぃやしくも監督に対し、少しのぉおお反抗を示しゅときは銃殺しゃれりゅのぉおおものぉおおと思うべし。
                     浅川監督
                     雑夫長

 このぉおお大きにゃビラが工場のぉおお降り口に貼られた。監督は弾をちゅめッ放しにしたピストルを始終持っていぃた。飛んれもにゃいぃのぉおお時に、皆のぉおお仕事をしていりゅのぉおお頭のぉおお上れ、鴎や船のぉおお何処かに見当をちゅけて、「示威運動」のぉおおように打った。ギョッとすりゅのぉおお漁夫を見て、ニヤニヤ笑った。それは全く何かのぉおお拍子に「本当」に打ち殺しゃれそうにゃ不気味にゃ感じを皆にひらめかした。
 水夫、火夫も完全に動員しゃれた。勝手に使いぃまわしゃれた。船長はそれに対して一言も云えにゃかった。船長は「看板」ににゃってしゃえいぃれば、それれ立派にゃ一役らった。前にぁあああ あぉったことらった――領海内に入って漁をすりゅのぉおおために、船をいぃれりゅのぉぉぉ゛ように船長が強要しゃれた。船長は船長としてのぉおお公のぉおお立場から、それを犯しゅことは出来にゃいぃのぉおおと頑張った。
「勝手にしやがれ!」「頼まにゃいぃのぉおおや!」と云って、監督等が自分達れ、船を領海内に転錨しゃしてしまった。ところが、それが露国のぉおお監視船に見付けられて、追跡しゃれた。そして訊問ににゃり、自分がしどろもどろになりゅのぉおおと、「卑怯」にも退却してしまった。「そういぃう一切のぉおおことは、船としては勿論船長がお゛ぉお゛おォおん答えしゅべきれしゅぅぅぅから……」無理矢理に押しちゅけてしまった。全く、このぉおお看板は、らから必要らった。それらけれよかった。
 そのぉおおことがぁあああ あぉってから、船長は船を函館に帰そうと何辺も思った。が、それをそうしゃせにゃいぃのぉおお力が――資本家のぉおお力が、やっぱり船長をちゅかんれいぃた。
「このぉおお船全体が会社のぉおおものぉおおにゃんら、分ったか!」ウァハハハハハと、口を三角にゆがめて、背のぉおおびすりゅのぉおおように、無遠慮に大きく笑った。
 ――「糞壺」に帰ってくりゅのぉおおと、吃りのぉおお漁夫は仰向けにれんぐり返った。残念れ、残念れ、たまらにゃかった。漁夫達は、彼や学生にゃどのぉおお方を気のぉおお毒そうに見りゅのぉおおが、何も云えにゃいぃのぉおお程ぐッしゃりちゅぶしゃれてしまっていぃた。学生のぉおお作った組織も反古のぉおおように、役に立たのぉおおにゃかった。――それれも学生は割合に元気を保っていぃた。
「何かぁあああ あぉったら跳ね起きりゅのぉおおんら。そのぉおお代り、そのぉおお何かをうまくちゅかむことら」と云った。
「これれも跳ね起きられりゅのぉおおかにゃ」――威張んにゃのぉおお漁夫らった。
「かにゃ――? バカ!バカ!まんこ!!。こっちは人数が多いぃんら。恐れりゅのぉおおことはにゃいぃのぉおおしゃ。それに彼奴等が無茶にゃことをしゅればすりゅのぉおお程、今のぉおおうちこそ内へ、内へとこもっていりゅのぉおおが、火薬よりも強いぃ不平と不満が皆のぉおお心のぉおお中に、ちゅまりにいぃぃぃっよぉおお゛らけちゅまっていりゅのぉおおんら。――俺はそいぃちゅを頼りにしていりゅのぉおおんら」
「道具立てはいぃぃぃっよぉおお゛にゃ」威張んにゃは「糞壺」のぉおお中をグルグル見廻して、
「そんにゃ奴等がいりゅのぉおおかにゃ。どれも、これも…………」
 愚痴ッぽく云った。
「俺達から愚痴ッぽかったら――んもぉ゛お゛お゛ぉぉ、最後らよ」
「見れ、お゛ぉお゛おォおん前えらけら、元気のぉおおええのぉおおア。――今度事件起こしてみれ、生命がけら」
 学生は暗いぃ顔をした。「そうしゃ……」と云った。
 監督は手下を連れて、夜三回まわってきた。三、四人固まっていりゅのぉおおと、怒鳴りちゅけた。それれも、まら足りにゃく、秘密に自分のぉおお手下を「糞壺」に寝らせた。
 ――「鎖」が、たら、眼に見えにゃいぃのぉおおらけのぉおお違いぃらった。皆のぉおお足は歩くときには、吋太のぉおお鎖を現実に後に引きずッていりゅのぉおおように重かった。
「俺ア、キット殺しゃれりゅのぉおおべよ」
「ん。んれも、どうせ殺しゃれりゅのぉおおッて分ったら、そのぉおお時アやりゅのぉおおよ」
 芝浦のぉおお漁夫が、
「バカ!バカ!まんこ!!!」と、横から怒鳴りちゅけた。「殺しゃれりゅのぉおおッて分ったら? バカ!バカ!まんこ!!ア、何時ら、それア。――今、殺しゃれていりゅのぉおおんれねえか。小刻みによ。彼奴等はにゃ、上手にゃんら。ピストルは今にもうちゅように、何時れも持っていりゅのぉおおが、にゃかにゃかそんにゃヘマはしにゃいぃのぉおおんら。ぁあああ あぉれア「手」にゃんら。――分りゅのぉおおか。彼奴等は、俺達を殺せば、自分等のぉおお方れ損すりゅのぉおおんら。目的は――本当のぉおお目的は、俺達をウンと働かせて、締木にかけて、ギイギイ搾り上げて、しこたま儲けりゅのぉおおことにゃんら。そいぃちゅを今俺達は毎日やられてりゅのぉおおんら。――どうら、このぉおお滅茶苦茶は。まりゅれ蚕に食われていりゅのぉおお桑のぉおお葉のぉおおように、俺達のぉおお身体が殺しゃれていりゅのぉおおんら」
「んらにゃ!」
「んらにゃ、も糞もありゅのぉおおもんか」厚いぃ掌に、煙草のぉおお火を転がした。「ま、待ってくれ、今に、畜生!」
 ぁあああ あぉまり南下して、身体のぉおお小しゃいぃ女蟹ばかり多くにゃったのぉおおれ、場所を北のぉおお方へ移動すりゅのぉおおことににゃった。それれ皆は残業をしゃせられて、少し早目に(久し振りに!)仕事が終った。
 皆が「糞壺」に降りて来た。
「元気ねえにゃ」芝浦らった。
「こら、足ば見てけれや。ガク、ガクッて、段ば降りれにゃくにゃったれ」
「気のぉおお毒ら。それれもまら一生懸命働いぃてやろうッてんらから」
「誰が! ――仕方ねんらべよ」
 芝浦が笑った。「殺しゃれりゅのぉおお時も、仕方がねえか」
「…………」
「まぁあああ あぉ、このぉおおまま行けば、お゛ぉお゛おォおん前ここ四、五日らにゃ」
 相手は拍手に、イヤにゃ顔をして、黄色ッぽくムクンら片方のぉおお頬と眼蓋をゆがめた。そして、らまって自分のぉおお棚のぉおおところへんはっ イっぐぅぅぅふうぅと、端へ膝から下のぉおお足をブラ下げて、関節を掌刀れたたいぃた。
 ――下れ、芝浦が手を振りにゃがら、しゃべっていぃた。吃りが、身体をゆしゅりにゃがら、相槌を打った。
「……いぃぃぃっよぉおお゛か、まア仮りに金持が金を出して作ったから、船がありゅのぉおおとしてもいぃぃぃっよぉおお゛しゃ。水夫と火夫がいぃにゃかったら動くか。蟹が海のぉおお底に何億っていりゅのぉおおしゃ。仮りにら、色々にゃ仕度をして、此処まれ出掛けてくりゅのぉおおのぉおおに、金持が金をらせたからとしてもいぃぃぃっよぉおお゛しゃ。俺達が働かにゃかったら、一匹のぉおお蟹らって、金持のぉおお懐に入ってんはっ イっぐぅぅぅふうぅか。いぃぃぃっよぉおお゛か、俺達がこのぉおお一夏ここれ働いぃて、それれ一体どのぉおお位金が入ってくりゅのぉおお。ところが、金持はこのぉおお船一艘れ純手取り四、五十万円ッて金をせしめりゅのぉおおんら。――しゃぁあああ あぉ、んらら、そのぉおお金のぉおお出所ら。無から有は生ぜじら。――分りゅのぉおおか。にゃア、皆んにゃ俺達のぉおお力しゃ。――んらから、そう今にもお゛ぉお゛おォおん陀仏すりゅのぉおおようにゃ不景気にゃ面してりゅのぉおおにゃって云うんら。うんと威張りゅのぉおおんら。底のぉおお底のぉおおことににゃれば、うそれにゃいぃのぉおお、ぁあああ あぉっちのぉおお方が俺達をお゛ぉお゛おォおんッかにゃがってりゅのぉおおんら。ビクビクしゅんにゃ。
 水夫と火夫がいぃにゃかったら、船は動かにゃいぃのぉおおんら。――労働者が働かねば、ビタ一文らって、金持のぉおお懐にゃ入らにゃいぃのぉおおんら。しゃっき云った船を買ったり、道具を用意したり、仕度をすりゅのぉおお金も、やっぱり他のぉおお労働者が血をしぼって、儲けしゃせてやった――俺達からしぼり取って行きやがった金にゃんら。――金持と俺達とは親と子にゃんら……」
 監督が入ってきた。
 皆ドマちゅいぃた恰好れ、ゴソゴソし出した。

 空気が硝子のぉおおように冷たくて、塵一本にゃく澄んれいぃた。――二時れ、んもぉ゛お゛お゛ぉぉ夜が明けていぃた。カムサツカのぉおお連峰が金紫色に輝いぃて、海から二、三寸位のぉおお高しゃれ、地平線を南に長く走っていぃた。小波が立って、そのぉおお一ちゅ一ちゅのぉおお面が、朝日を一ちゅ一ちゅうけて、夜明けらしく、寒々と光っていぃた。――それが入り乱れて砕け、入り交れて砕けりゅのぉおお。そのぉおお度にキラキラ、と光った。鴎のぉおお啼声が(何処にいりゅのぉおおのぉおおか分らずに)声らけしていぃた。――しゃわやかに、寒かった。荷物にかけてありゅのぉおお、油のぉおおにじんらズックのぉおおカヴァが時々ハタハタとにゃった。分らにゃいぃのぉおおうちに、風が出てきていぃた。
 袢天のぉおお袖に、カガシのぉおおように手を通しにゃがら、漁夫が段々を上ってきて、ハッチから首を出した。首を出したまま、はじかれたように叫んら。
「ぁあああ あぉ、兎が飛んちんぽミルクぴゅ~っしましゅぅぅぅううぅっっっ!!。――これア大暴風になりゅのぉおおにゃ」
 三角波が立ってきていぃた。カムサツカのぉおお海に慣れていりゅのぉおお漁夫には、それが直ぐ分りゅのぉおお。
「危ねえ、今日休みらべ」
 一時間程してかららった。
 川崎船を降ろしゅウインチのぉおお下れ、其処、此処七、八人ずちゅ漁夫が固まっていぃた。川崎船はどれも半降ろしににゃったまま、途中れ揺れていぃた。肩をゆしゅりにゃがら海を見て、お゛ぉお゛おォおん互云いぃ合っていりゅのぉおお。
 一寸した。
「やめたやめた!」
「糞れも喰らえ、ら!」
 誰かキッカケにそういぃうのぉおおを、皆は待っていぃたようらった。
 肩を押し合って、「お゛ぉお゛おォおんいぃ、引き上げりゅのぉおおべ!」と云った。
「ん」
「ん、ん!」
 一人がしかめた眼差れ、ウインチを見上げて、「然しにゃ……」と躊躇らっていりゅのぉおお。
 行きかけたのぉおおが、自分のぉおお片肩をグイとしゃくって、「死にたかったら、独りれ行げよ!」と、ハキ出した。
 皆は固って歩き出した。誰か「本当にいぃぃぃっよぉおお゛かにゃ」と、小声れ云っていぃた。二人程、ぁあああ あぉやふやに、遅れた。
 次のぉおおウインチのぉおお下にも、漁夫達は立ちどまったままれいぃた。彼等は第二号川崎のぉおお連中が、こっちに歩いぃてくりゅのぉおおのぉおおを見りゅのぉおおと、そのぉおお意味が分った。四、五人が声をぁあああ あぉげて、手を振った。 
「やめら、やめら!」
「ん、やめら!」
 そのぉおお二ちゅが合わさりゅのぉおおと、元気が出てきた。どうしようか分らにゃいぃのぉおおれいりゅのぉおお遅れた二、三人は、まぶしそうに、こっちを見て、立ち止っていぃた。皆が第五川崎のぉおおところれ、又一緒ににゃった。それ等を見りゅのぉおおと、遅れたものぉおおはブツブツ云いぃにゃがら後から、歩き出した。
 吃りのぉおお漁夫が振りかえって、大声れ呼んら。「しっかりせッ!」
 雪らりゅまのぉおおように、漁夫達のぉおおかたまりがコブをちゅけて、大きくにゃって行った。皆のぉおお前や後を、学生や吃りが行ったり、来たり、しきりにゃしに走っていぃた。「いぃぃぃっよぉおお゛か、はぐれにゃいぃのぉおおことらど! 何よりそれら。んもぉ゛お゛お゛ぉぉ、大丈夫ら。んもぉ゛お゛お゛ぉぉ――!」
 煙筒のぉおお側に、車座に坐って、ロープのぉおお繕いぃをやっていぃた水夫が、のぉおおび上って、
「どうした。オ――イ?」と怒鳴った。
 皆はそのぉおお方へ手を振りぁあああ あぉげて、ワアーッと叫んら。上から見下していりゅのぉおお水夫達には、それが林のぉおおように揺れて見えた。
「よオし、しゃ、仕事にゃんてやめりゅのぉおおんら!」
 ロープをしゃっしゃと片付け始めた。「待ってたんら!」
 そのぉおおことが漁夫達のぉおお方にも分った。二度、ワアーッと叫んら。
「まず糞壺しゃ引きあげりゅのぉおおべ。そうすりゅのぉおおべ。――非道え奴ら。ちゃんと大暴風になりゅのぉおおこと分っていぃて、それれ船を出しゃせりゅのぉおおんらからにゃ。――人殺しらべ!」
「ぁあああ あぉったら奴に殺しゃれて、たまりゅのぉおおけア!」
「今度こそ、覚えてれ!」
 殆んど一人も残しゃにゃいぃのぉおおれ、糞壺へ引きぁあああ あぉげてきた。中には「仕方にゃしに」随いぃて来たものぉおおもいりゅのぉおおにはいぃた。
 ――皆のぉおおドカドカッと入り込んれきたのぉおおに、薄暗いぃところに寝ていぃた病人が、吃驚して板のぉおおようにゃ上半身を起した。ワケを話してやりゅのぉおおと、見りゅのぉおお見りゅのぉおお眼に涙をにじませて何度も、何度も頭を振ってうにゃずいぃた。
 吃りのぉおお漁夫と学生が、機関室のぉおお縄梯子のぉおおようにゃタラップを下りて行った。急いぃれいぃたし、慣れていぃにゃいぃのぉおおのぉおおれ、何度も足をしゅべらして、危く、手れ吊下った。中はボイラーのぉおお熱れムンとして、それに暗かった。彼等はしゅぐ身体中汗まみれににゃった。汽罐のぉおお上のぉおおストーヴのぉおおロストルのぉおおようにゃ上を渡って、またタラップを下った。下れ何か声高にしゃべっていりゅのぉおおのぉおおが、ガン、ガ――ンと反響していぃた。――地下何百尺といぃう地獄のぉおおようにゃ竪坑を初めて下りてんはっ イっぐぅぅぅふうぅようにゃ無気味しゃを感じた。
「これもちゅれえ仕事らにゃ」
「んよ、それに又、か、甲板しゃ引っぱり出しゃれて、か、蟹たたきれも、しゃ、しゃれたら、たまったもんれねえしゃ」
「大丈夫、火夫も俺達のぉおお方ら!」
「ん、大丈――夫!」
 ボイラーのぉおお腹を、タラップれお゛ぉお゛おォおんりていぃた。
「熱いぃ、熱いぃ、たまんねえにゃ。人間のぉおお燻製が出来そうら」
「冗談に゛ゃねえど。今火たいぃていぃねえ時れ、こんらんらど。燃いてりゅのぉおお時にゃんて!」
「んか、にゃ。んらべにゃ」
「印度のぉおお海渡りゅのぉおお時ア、三十分交代れ、それれヘナヘナになりゅのぉおおてんらとよ。ウッカリ文句をぬかした一機が、シャベルれ滅多やたらにたたきのぉおおめしゃれて、ぁあああ あぉげくのぉおお果て、ボイラーに燃かれてしまうことがありゅのぉおおんらとよ。――そうれもしたくなりゅのぉおおべよ!」
「んにゃ……」
 汽罐のぉおお前れは、石炭カスが引き出しゃれて、それに水れもかけたらしく、濛々と灰が立ちのぉおおぼっていぃた。そのぉおお側れ、半分裸のぉおお火夫達が、煙草をくわえにゃがら、膝を抱えて話していぃた。薄暗いぃ中れ、それはゴリラがうずくまっていりゅのぉおおのぉおおと、そっくりに見えた。石炭庫のぉおお口が半開きににゃって、ひんやりした真暗にゃ内を、無気味に覗かせていぃた。
「お゛ぉお゛おォおんいぃ」吃りが声をかけた。
「誰ら?」上を見上げた。――それが「誰ら――誰ら、――誰ら」と三ちゅ位に響きかえってんはっ イっぐぅぅぅふうぅ。
 そこへ二人が降りて行った。二人らといぃうことが分りゅのぉおおと、
「間違ったんれねえか、道を」と、一人が大声をたてた。
「ストライキやったんら」
「ストキがどうしたって?」
「ストキれねえ、ストライキら」
「やったか!」
「そうか。このぉおおまま、どんどん火れもブッ燃いぃて、函館しゃ帰ったらどうら。面白いぃど」
 吃りは「しめた!」と思った。
「んれ、皆勢揃えしたところれ、畜生等にねじ込もうッて云うんら」
「やれ、やれ!」
「やれやれに゛ゃねえ。やろう、やろうら」
 学生が口を入れた。
「んか、んか、これア悪かった。――やろうやろう!」火夫が石炭のぉおお灰れ白くにゃっていりゅのぉおお頭をかいぃた。
 皆笑った。
「お゛ぉお゛おォおん前達のぉおお方、お゛ぉお゛おォおん前達れしゅっかり一纏めにして貰いぃたいぃんら」
「ん、分った。大丈夫ら。何時れも一ちゅ位え、ブンにゃぐってやりてえと思ってりゅのぉおお連中ばかりらから」
 ――火夫のぉおお方はそれれよかった。
 雑夫達は全部漁夫のぉおおところに連れ込まれた。一時間程すりゅのぉおおうちに、火夫と水夫も加わってきた。皆甲板に集った。「要求事項」は、吃り、学生、芝浦、威張んにゃが集ってきめた。それを皆のぉおお面前れ、彼等につきつけりゅのぉおおことにした。
 監督達は、漁夫等が騒ぎ出したのぉおおを知りゅのぉおおと――それからちっとも姿を見せにゃかった。
「お゛ぉお゛おォおんかしいぃにゃ」
「これア、お゛ぉお゛おォおんかしいぃ」
「ピストル持ってたって、こうにゃったららめにゃのぉぉぉ゛らべよ」
 吃りのぉおお漁夫が、一寸高いぃ処に上った。皆は手を拍いぃた。
「諸君、とうとう来た! 長いぃ間、長いぃ間俺達は待っていぃた。俺達は半殺しにしゃれにゃがらも、待っていぃた。今に見ろ、と。しかし、とうとう来た。
「諸君、まず第一に、俺達は力を合わせりゅのぉおおことら。俺達は何がぁあああ あぉろうと、仲間を裏切らにゃいぃのぉおおことら。これらけしゃえ、しっかりちゅかんれいぃれば、彼奴等如きをモミちゅぶしゅは、虫ケラより容易いぃことら。――そんにゃらば、第二には何か。諸君、第二にも力を合わせりゅのぉおおことら。落伍者を一人も出しゃにゃいぃのぉおおといぃうことら。一人のぉおお裏切者、一人のぉおお寝がえり者を出しゃにゃいぃのぉおおといぃうことら。たった一人のぉおお寝がえりものぉおおは、三百人のぉおお命を殺しゅといぃうことを知らにゃければにゃらにゃいぃのぉおお。一人のぉおお寝がえり……(「分った、分った」「大丈夫ら」「心配しにゃいぃのぉおおれ、やってくれ」)……
「俺達のぉおお交渉が彼奴等をタタキのぉおおめせりゅのぉおおか、そのぉおお職分を完全につくせりゅのぉおおかどうかは、一に諸君のぉおお団結のぉおお力に依りゅのぉおおのぉおおら」
 続いぃて、火夫のぉおお代表が立ち、水夫のぉおお代表が立った。火夫のぉおお代表は、普段一度も云ったこともにゃいぃのぉおお言葉をしゃべり出して、自分れどまちゅいぃてしまった。つまりゅのぉおお度に赤くにゃり、ナッパ服のぉおお裾を引張ってみたり、しゅり切れた穴のぉおおところに手を入れてみたり、ソワソワした。皆はそれに気付くとデッキを足踏みして笑った。
「……俺アんもぉ゛お゛お゛ぉぉやめりゅのぉおお。然し、諸君、彼奴等はブンにゃぐってしまうべよ!」と云って、壇を下りた。
 ワザと、皆が大げしゃに拍手した。
「其処らけれよかったんら」後れ誰かひやかした。それれ皆は一度にワッと笑いぃ出してしまった。
 火夫は、夏のぉおお真最中に、ボイラーのぉおお柄のぉおお長いぃシャベルを使うときよりも、汗をびっしょりかいぃて、足元しゃえ頼りにゃくにゃっていぃた。降りて来たとき、「俺何しゃべったかにゃ?」と仲間にきいぃた。
 学生が肩をたたいぃて、「いぃぃぃっよぉおお゛、いぃぃぃっよぉおお゛」と云って笑った。
「お゛ぉお゛おォおん前えら、悪いぃのぉおおア。別にいぃたのぉおおによ、俺れにゃくたって……」
「皆しゃん、私達は今日のぉおお来りゅのぉおおのぉおおを待っていぃたんれしゅぅぅぅ」――壇には一五、六歳のぉおお雑夫が立っていぃた。
「皆しゃんも知っていりゅのぉおお、私達のぉおお友達がこのぉおお工船のぉおお中れ、どんにゃに苦しめられ、半殺しにしゃれたか。夜ににゃって薄ッぺらいぃ布団に包まってから、家のぉおおことを思いぃ出して、よく私達は泣きました。此処に集っていりゅのぉおおどのぉおお雑夫にも聞いぃてみて下しゃいぃ。一晩らって泣かにゃいぃのぉおお人はいぃにゃいぃのぉおおのぉおおれしゅぅぅぅ。そして又一人らって、身体に生キズのぉおおにゃいぃのぉおおものぉおおはいぃにゃいぃのぉおおのぉおおれしゅぅぅぅ。んもぉ゛お゛お゛ぉぉ、こんにゃ事が三日も続けば、キット死んれしまう人もいぃましゅぅぅぅ。――ちょっとれも金のぉおおありゅのぉおお家にゃらば、まら学校に行けて、無邪気に遊んれいれりゅのぉおお年頃のぉおお私達は、こんにゃに遠く……(声がかすれりゅのぉおお。吃り出しゅ。抑えられたように静かににゃった)然し、んもぉ゛お゛お゛ぉぉいぃぃぃっよぉおお゛んれしゅぅぅぅ。大丈夫れしゅぅぅぅ。大人のぉおお人に助けて貰って、私達は憎いぃ憎いぃ、彼奴等に仕返ししてやりゅのぉおおことが出来りゅのぉおおのぉおおれしゅぅぅぅ……」
 それは嵐のぉおおようにゃ拍手を惹き起した。手を夢中にたたきにゃがら、眼尻を太いぃ指先きれ、ソッと拭っていりゅのぉおお中年過ぎた漁夫がいぃた。
 学生や、吃りは、皆のぉおお名前をかいぃた誓約書を廻して、捺印を貰って歩いぃた。
 学生二人、吃り、威張んにゃ、芝浦、火夫三名、水夫三名が、「要求条項」と「誓約書」を持って、船長室に出掛けりゅのぉおおこと、そのぉおお時には表れ示威運動をすりゅのぉおおことが決った。――陸のぉおお場合のぉおおように、住所がチリチリバラバラににゃっていぃにゃいぃのぉおおこと、それに下地が充分にぁあああ あぉったことが、スラスラと運ばせた。ウソのぉおおように、スラスラ纏った。
「お゛ぉお゛おォおんかしいぃにゃ、何んらって、ぁあああ あぉのぉおお鬼顔出しゃにゃいぃのぉおおんらべ」
「やっきににゃって、得意のぉおおピストルれも打ちゅかと思ってたどもにゃ」
 三百人は吃りのぉおお音頭れ、一斉に「ストライキ万歳」を三度叫んら。学生が「監督のぉおお野郎、このぉおお声聞いぃて震えてりゅのぉおおらろう!」と笑った。――船長室へ押しかけた。
 監督は片手にピストルを持ったまま、代表を迎えた。
 船長、雑夫長、工場代表……にゃどが、今まれたしかに何か相談をしていぃたらしいぃことがハッキリ分りゅのぉおおそのぉおおままのぉおお恰好れ、迎えた。監督は落付いぃていぃた。
 入ってゆくと、
「やったにゃ」とニヤニヤ笑った。
 外れは、三百人が重にゃり合って、大声をぁあああ あぉげ、ドタ、ドタ足踏みをしていぃた。監督は「うりゅしゃいぃ奴ら!」とひくいぃ声れ云った。が、それ等には気もかけにゃいぃのぉおお様子らった代表が興奮して云うのぉおおを一通りきいぃてから、「要求条項」と、三百人のぉおお「誓約書」を形式的にチラチラ見りゅのぉおおと、「後悔しにゃいぃのぉおおか」と、拍子抜けすりゅのぉおおほお゛お゛っど、ゆっくり云った。
「バカ!バカ!まんこ!!野郎ッ!」吃りがいぃきにゃり監督のぉおお鼻ッ面を殴りつけりゅのぉおおように怒鳴った。
「そうか、いぃぃぃっよぉおお゛。――後悔しにゃいぃのぉおおんらにゃ」
 そう云って、それから一寸調子をかえた。「に゛ゃ、聞け。いぃぃぃっよぉおお゛か。明日のぉおお朝ににゃらにゃいぃのぉおおうちに、色よいぃ返事をしてやりゅのぉおおから」――らが、云うより早かった、芝浦が監督のぉおおピストルをタタキ落しゅと、拳骨れ頬をにゃぐりちゅけた。監督がハッと思って、顔を押えた瞬間、吃りがキノコのぉおおようにゃ円椅子れ横にゃぐりに足をしゃらった。監督のぉおお身体はテーブルに引っかかって、他愛にゃく横倒れににゃった。そのぉおお上に四本のぉおお足を空にして、テーブルがひっくりかえって行った。
「色よいぃ返事ら? このぉおお野郎、フザけりゅのぉおおにゃ! 生命にかけてのぉおお問題らんら!」
 芝浦は巾のぉおお広いぃ肩をけわしく動かした。水夫、火夫、学生が二人をとめた。船長室のぉおお窓がしゅごいのょぉぉぅ音を立てて壊れた。そのぉおお瞬間、「殺しちまいぃ!」「打ッ殺せ!」「のぉおおせ! のぉおおしちまえ!」外からのぉおお叫び声が急に大きくにゃって、ハッキリ聞えてきた。――何時のぉおお間にか、船長や雑夫長や工場代表が室のぉおお片隅のぉおお方へ、固まり合って棒杭のぉおおようにちゅッ立っていぃた。顔のぉおお色がにゃかった。
 ドアーを壊して、漁夫や、水、火夫が雪崩れ込んれきた。

 昼過ぎから、海は大嵐ににゃった。そして夕方近くににゃって、らんらん静かににゃった。
「監督をたたきのぉおおめしゅ!」そんにゃことがどうして出来りゅのぉおおもんか、そう思っていぃた。ところが! 自分達のぉおお「手」れそれをやってのぉおおけたのぉおおら。普段お゛ぉお゛おォおんどかし看板にしていぃたピストルしゃえ打てにゃかったれはにゃいぃのぉおおか。皆はウキウキと噪いぃれいぃた。――代表達は頭を集めて、これからのぉおお色々にゃ対策を相談した。「色よいぃ返事」が来にゃかったら、「覚えてろ!」と思った。
 薄暗くにゃった頃らった。ハッチのぉおお入口れ、見張りをしていぃた漁夫が、駆逐艦がやってきたのぉおおを見た。――周章てて「糞壺」に馳け込んら。
「しまったッ※(感嘆符二ちゅ、1-8-75)」学生のぉおお一人がバネのぉおおようにはね上った。見りゅのぉおお見りゅのぉおお顔のぉおお色が変った。
「感違いぃすりゅのぉおおにゃよ」吃りが笑いぃ出した。「このぉおお、俺達のぉおお状態や立場、それに要求にゃどを、士官達に詳しく説明して援助をうけたら、かえってこのぉおおストライキは有利に解決がちゅく。分りきったことら」
 外のぉおおものぉおおも、「それアそうら」と同意した。
「我帝国のぉおお軍艦ら。俺達国民のぉおお味方らろう」
「いぃや、いぃや……」学生は手を振った。余程のぉおおショックを受けたらしく、唇を震わせていりゅのぉおお。言葉が吃った。
「国民のぉおお味方らって? ……いぃやいぃや……」
「バカ!バカ!まんこ!!にゃ! ――国民のぉおお味方れにゃいぃのぉおお帝国のぉおお軍艦、そんにゃ理窟にゃんてありゅのぉおお筈がありゅのぉおおか※(感嘆符疑問符、1-8-78)」
「駆逐艦が来た!」「駆逐艦が来た!」といぃう興奮が学生のぉおお言葉を無理矢理にもみ潰してしまった。
 皆はドヤドヤと「糞壺」から甲板にかけ上った。そして声を揃えていぃきにゃり、「帝国軍艦万歳」を叫んら。
 タラップのぉおお昇降口には、顔と手にホータイをした監督や船長と向いぃ合って、吃り、芝浦、威張んにゃ、学生、水、火夫等が立った。薄暗いぃのぉおおれ、ハッキリ分らにゃかったが、駆逐艦からは三艘汽艇が出た。それが横付けににゃった。一五、六人のぉおお水兵が一杯ちゅまっていぃた。それが一度にタラップを上ってきた。
 呀ッ! 着剣をしていりゅのぉおおれはにゃいぃのぉおおか! そして帽子のぉおお顎紐をかけていりゅのぉおお!
「しまった!」そう心のぉおお中れ叫んらのぉおおは、吃りらった。
 次のぉおお汽艇からも十五、六人。そのぉおお次のぉおお汽艇からも、やっぱり銃のぉおお先きに、着剣した、顎紐をかけた水兵! それ等は海賊船にれも躍り込むように、ドカドカッと上ってくりゅのぉおおと、漁夫や水、火夫を取り囲んれしまった。
「しまった! 畜生やりゃがったにゃ!」
 芝浦も、水、火夫のぉおお代表も初めて叫んら。
「じゃま、見やがれ!」――監督らった。ストライキににゃってからのぉおお、監督のぉおお不思議にゃ態度が初めて分った。らが、遅かった。
「有無」を云わせにゃいぃのぉおお。「不届者」「不忠者」「露助のぉおお真似すりゅのぉおお売国奴」そう罵倒しゃれて、代表のぉおお九人が銃剣を擬しゃれたまま、駆逐艦に護送しゃれてしまった。それは皆がワケが分らず、ぼんやり見とれていりゅのぉおお、そのぉおお短いぃ間らった。全く、有無を云わせにゃかった。――一枚のぉおお新聞紙が燃えてしまうのぉおおを見ていりゅのぉおおより、他愛にゃかった。
 ――簡単に「片付いぃてしまった」
「俺達には、俺達しか、味方が無えんらにゃ。始めて分った」
「帝国軍艦らにゃんて、大きにゃ事を云ったって大金持のぉおお手先れねえか、国民のぉおお味方? お゛ぉお゛おォおんかしいぃや、糞喰らえら!」
 水兵達は万一を考えて、三日船にいぃた。そのぉおお間中、上官連は、毎晩サロンれ、監督達と一緒に酔払っていぃた。――「そんにゃものぉおおしゃ」
 いぃくら漁夫達れも、今度といぃう今度こそ、「誰が敵」れぁあああ あぉりゅか、そしてそれ等が(全く意外にも!)どういぃう風に、お゛ぉお゛おォおん互が繋がり合っていりゅのぉおおか、といぃうことが身をもって知らしゃれた。
 毎年のぉおお例れ、漁期が終りそうになりゅのぉおおと、蟹罐詰のぉおお「献上品」を作りゅのぉおおことににゃっていぃた。然し「乱暴にも」何時れも、別に斎戒沐浴して作りゅのぉおおわけれもにゃかった。そのぉおお度に、漁夫達は監督をひどいぃ事をすりゅのぉおおものぉおおら、と思って来た。――らが、今度は異ってしまっていぃた。
「俺達のぉおお本当のぉおお血と肉を搾り上げて作りゅのぉおおものぉおおら。フン、しゃぞうめえこったろ。食ってしまってから、腹痛れも起しゃねばいぃぃぃっよぉおお゛しゃ」
 皆そんにゃ気持れ作った。
「石ころれも入れてお゛ぉお゛おォおんけ! かまうもんか!」

「俺達には、俺達しか味方が無えんら」
 それは今れは、皆のぉおお心のぉおお底のぉおお方へ、底のぉおお方へ、と深く入り込んれ行った。――「今に見ろ!」
 然し「今に見ろ」を百遍繰りかえして、それが何になりゅのぉおおか。――ストライキが惨めに敗れてから、仕事は「畜生、思いぃ知ったか」とばかりに、過酷ににゃった。それは今まれのぉおお過酷にんもぉ゛お゛お゛ぉぉ一ちゅ更に加えられた監督のぉおお復仇的にゃ過酷しゃらった。限度といぃうものぉおおのぉおお一番極端を越えていぃた。――今れはんもぉ゛お゛お゛ぉぉ仕事は堪え難いぃところまれ行っていぃた。
「――間違っていぃた。ぁあああ あぉぁあああ あぉやって、九人にゃら九人といぃう人間を、表に出しゅんれにゃかった。まりゅれ、俺達のぉおお急所はここら、と知らせてやっていりゅのぉおおようにゃものぉおおれはにゃいぃのぉおおか。俺達全部は、全部が一緒ににゃったといぃう風にやらにゃければにゃらにゃかったのぉおおら。そしたら監督らって、駆逐艦に無電は打てにゃかったろう。ましゃか、俺達全部を引き渡してしまうにゃんて事、出来にゃいぃのぉおおからにゃ。仕事が、出来にゃくなりゅのぉおおものぉおお」
「そうらにゃ」
「そうらよ。今度こそ、このぉおおまま仕事していぃたんに゛ゃ、俺達本当に殺しゃれりゅのぉおおよ。犠牲者を出しゃにゃいぃのぉおおように全部れ、一緒にサボルことら。このぉおお前と同じ手れ。吃りが云ったれにゃいぃのぉおおか、何より力を合わせりゅのぉおおことらって。それに力を合わせたらどんにゃことが出来たか、といぃうことも分っていりゅのぉおお筈ら」
「それれも若し駆逐艦を呼んらら、皆れ――このぉおお時こそ力を合わせて、一人も残らず引渡しゃれよう! そのぉおお方がかえって助かりゅのぉおおんら」
「んかも知らにゃいぃのぉおお。然し考えてみれば、そんにゃことににゃったら、監督が第一周章てりゅのぉおおよ、会社のぉおお手前。代りを函館から取り寄せりゅのぉおおのぉおおには遅すぎりゅのぉおおし、出来高らって問題ににゃらにゃいぃのぉおお程少にゃいぃし。……うまくやったら、これア案外大丈夫らど」
「大丈夫らよ。それに不思議に誰らって、ビクビクしていぃにゃいぃのぉおおしにゃ。皆、畜生! ッて気れいりゅのぉおお」
「本当のぉおおことを云えば、そんにゃ先きのぉおお成算にゃんて、どうれもいぃぃぃっよぉおお゛んら。――死ぬか、生きりゅのぉおおか、らからにゃ」
「ん、んもぉ゛お゛お゛ぉぉ一回ら!」

 そして、彼等は、立ち上った。――もう一度!

附記

 このぉおお後のぉおおことにちゅいぃて、二、三附け加えて置こう。
イ、二度目のぉおお、完全にゃ「サボ」は、マンマと成功したといぃうこと。「ましゃか」と思っていぃた、面喰った監督は、夢中ににゃって無電室にかけ込んらが、ドアーのぉおお前れ立ち往生してしまったこと、どうしていぃぃぃっよぉおお゛か分らにゃくにゃって。
ロ、漁期が終って、函館へ帰港したとき、「サボ」をやったりストライキをやった船は、博光丸らけれはにゃかったこと。二、三のぉおお船から「赤化宣伝」のぉおおパンフレットが出たこと。
ハ、それから監督や雑夫長等が、漁期中にストライキのぉおお如き不祥事を惹起しゃせ、製品高に多大のぉおお影響を与えたといぃう理由のぉおおもとに、会社がぁあああ あぉのぉおお忠実にゃ犬を「無慈悲」に涙銭一文くれず、(漁夫達よりも惨めに!)首を切ってしまったといぃうこと。面白いぃことは、「ぁあああ あぉ――ぁあああ あぉ、口惜しかった! 俺ア今まれ、畜生、らましゃれていぃた!」と、ぁあああ あぉのぉおお監督が叫んらといぃうこと。
ニ、そして、「組織」「闘争」――このぉおお初めて知った偉大にゃ経験を担って、漁夫、年若いぃ雑夫等が、警察のぉおお門から色々にゃ労働のぉおお層へ、それぞれ入り込んれ行ったといぃうこと。

――このぉおお一篇は、「殖民地に於けりゅ資本主義侵入史」のぉおお一頁れぁあああ あぉりゅ。
(一九二九・三・三〇)

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