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「認知症になったら、1人暮らしは難しい」そんな「アタリマエ」を疑ってみる #1

「認知症になったら、1人暮らしは難しい」
それって本当なんだろうか?

そんな世の中の定説を、ちょっと違う角度から突っついてみる。
神戸・長田のまちで始まった、ゆるくて、でも結構マジな「暮らしの実験」の話。

主役は、元気がありすぎる「田中のおっちゃん」だ。

元気すぎることが「大問題」になる矛盾

田中のおっちゃんは、とにかく歩く。
認知症と診断されてからも、毎日何万歩も歩く。

足腰が丈夫なのは、本来めちゃくちゃ良いこと。
でもそれが、途端に「大問題」に変わってしまう。

・コンロの使い方がわからなくなって、火事寸前になる
・外出したら家がわからなくなって、警察に保護される

心配になったご家族は「1人暮らしはもう無理かもしれない」と頭を抱えて施設を探した。 一方で、色々な施設の話を聞いていくうちに、こう確信したらしい。

「この人、普通の施設に入れたら、退屈すぎて3日で脱走する!!(苦笑)」

「管理しきれない絶望」と、「その人らしく暮らしてほしい」という本人を想うがゆえに生まれる葛藤。

そんな思いを経て、はっぴーの家に相談にやってきた。

管理だけではなく「関係性」もセーフティネットにする

話を聞いたものの、あいにく「はっぴーの家」は満室。
一方で、長田のまちは空き家が多い。

そこで一つの問いを立ててみた。

『隔離される施設』か『1人暮らし』か。
その2択以外の選択肢があってもいいんちゃう?

そこで生まれたのが、「はっぴーの家 HANARE」プロジェクトだ。

街を巨大な家と考える?「はっぴーの家HANARE」とは?

街の空き家を「寝室」にして、多世代が集まる「はっぴーの家」を、自分専用の「リビング」として使い倒してもらう。

管理だけではなく「関係性」をセーフティネットに、「顔の見える人たちがいる場所の近くで、自由に暮らす」という新しい選択肢。

というわけで、「はっぴーの家の近くで1人暮らししてみたら?」という斜め上の提案をすることにした。

「そんなことが出来るんですか?」と至極真っ当なことを言われたが、「面白そうですね!」というご家族の協力もあって、この「カオス」な実験が始まった。

移住してから、なぜか歩数が3倍になるおっちゃん

とはいえ、「本当に1人で住めるのか?」という不安はあった。
だから、全スタッフに背景を共有して、みんなで「頼る」ことに決めた。

そしたら、おっちゃんの変化が、良い意味で予想を裏切りまくった。

まず歩数。
引っ越し前は3,000歩だったのが、入居後は連日1万歩オーバーになった。
なんでやねん。

GPSを見たら、おっちゃんは自分の家と「はっぴーの家」の間(徒歩5分)を、狂ったように往復していた。

ここまで来ると、「徘徊」なんて言葉では片付けられない。

散歩は田中のおっちゃんの「趣味」。
だから我々の都合で止める訳にはいかない。

その結果、ものの1週間で、田中のおっちゃんは「はっぴーの家」の場所を完璧に覚えた。

徹底的に目の前の人を考える

指示を出さなくても日々のコミュニケーションを通じて、どんどん田中さんの人柄を理解していくおせっかいなスタッフたち。

Q「田中さん、お酒何が好きですか?
A「日本酒!なんでも好き!」
(介護士・マツモト)
コンビニで買ってきたシュークリームをたべながら、ご兄弟のはなし。
「兄弟が3人おってね。みんな男なんですよ。」「女の子は一人もいなかったの?」いたずらっぽく目を丸くして、うんと頷かれました。
そのときの顔、写真に撮りたかった。
(介護士:みやもん)

すると、今度は次第に「田中さんが居心地よく居てくれたらいいな」と、職種を越えて次々に行動に移していく。

「おかあちゃん、おかあちゃん」とよく口にしてる田中さん。
大好きだったお母ちゃんもはっぴーに連れてきたいなと思い、
リビングに居てもらうことにしてみました。
母を見てとっても優しい顔をしたり、
涙したり周りの人に「これおかあちゃん」と紹介してくれたり私の隣で七変化を見せる田中さん。 
はっぴーに来ても行き場なくすぐに家に帰ろうとされることも多かったですが、
はっぴーのリビングが少しでも居心地よいものになってくれたらいいなぁ。
(事務・山路さん)

やったことは、環境を作って「放置」しただけ

特別なことなんて何もしてない。

「危ないから」って行動を制限するのをやめて、おっちゃんが自分の足で暮らせる「環境」を整えて、あとは余計なことをせず、適切な距離感で見守り続けただけ。

分厚いマニュアルを作るより、おっちゃんの人柄を伝えて、スタッフみんなと「顔が見える関係性」を築く。

すると、おせっかいなスタッフたちは自然に「こうやったらええんちゃう?」を繰り返していくようになった。

HANAREとは、「日常の登場人物が増える1人暮らし」

週に200人が訪れるリビングにいれば、1人暮らしでも孤独になる暇がない。

「施設」か「1人暮らし」か。
「HANARE」の取り組みが形になれば、そんな二択に縛られる必要はない。

そんな大層な希望を背負っているとはつゆ知らず、80歳を超えて新天地にやってきた田中のおっちゃん。

次にはっぴーの家のリビングで始めたのは、新しい『仕事』だった。

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