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9. シックスシグマでの目標設定が現場の実情と乖離している場合の対策

シックスシグマは、製造業やサービス業などで品質を向上させたり、プロセスを効率化したりするために使われる手法です。しかし、実際に現場で導入する際に、設定された目標が現場の状況と合わないことがあります。このような状況では、プロジェクトの成功が難しくなり、現場のモチベーションが下がることもあります。この記事では、シックスシグマの目標が現場と乖離する原因と、その対策について説明します。


目標設定が現場と乖離する原因

シックスシグマで設定された目標が現場の状況と合わなくなる原因には、いくつかの要素があります。主な原因を以下にまとめました。

1. 経営層と現場のコミュニケーション不足

 シックスシグマの目標は、経営層がトップダウンで設定することが多いですが、その際に現場の状況や制約を十分に理解していないと、現実的でない目標が設定されることがあります。シックスシグマに限りませんが、経営陣の「やってほしいこと」と現場の「できること」の乖離です。現場の実際の状況を把握せずに目標を決めると、現場に無理な負担がかかり、プロジェクトがうまく進まないことが散見されます。また、現場の従業員は達成不可能な目標に対してやる気を失ってしまうことがあります。

読者の皆様も通常の業務おいてもこの経験はされていると思います。

2. データに頼りすぎる

 シックスシグマはデータに基づいて進める手法ですが、データだけでは現場のすべてを反映することはできません。定性的な要素や現場の経験が無視されてしまうことがあります。特に、人間の感覚や現場特有の事情など、データには現れにくい要素がプロジェクトの結果に大きく影響することもあります。そのため、データだけに頼るのではなく、現場の声も取り入れることが重要です。

例えば、製造現場にて歩留まりが95であれば、トップ(もしくは事業統括者)は99に目標設定したい誘惑があります(100でないのは検査サンプル分に1を想定しています)。このプロジェクトはそのような何気ないことからスタートしたのですが、全社のブラックベルトが参集する会議で話題になりました。論点は少し違うかもしれませんが、ブラックベルトは数値化に傾倒する嫌いがあります。

そのプロジェクトは、通常のプロジェクトのように測定フェーズに差し掛かり、問題なく分析フェーズへ進みました。当初、担当ブラックベルトは当該工程のベテランオペレーターの設備の設定は、あまりにも人為的で設定も日により微妙に変えているため、ここで有意な因子を見つけだしコントロールできると考えていました。
ところが、分析を進めていく中で、有意な因子がわかりません。他のブラックベルトに相談するも、やはり有意は因子はありませんでした。そこで、再度、測定の範囲を広げ、測定期間も長くし測定フェーズをやり直しました。
結果、まさかととは思いましたが、有意な因子は3因子の交互作用でした。チームは定量化をあきらめ、ベテランオペレーターの定性的な情報の分析に切り替え、複雑な設備の各種設定、関連をヒアリングし標準化を進めました。当該企業ではベテランオペレーターの凄みにブラックベルトがお墨付きを与えた話題のプロジェクトとなりました。

数値化できない例

3. 現場の環境の変化 

 現場の状況は常に変化しています。シックスシグマプロジェクトを進める中で、設定した目標が現場の変化に合わなくなることがあります。例えば、新しい機械の導入や生産量の変動、スタッフの異動などが影響します。このような変化に対応せずに目標を追い求めると、現場に無理が生じ、プロジェクト全体の成果が落ちてしまうことがあります。

 筆者が経験したプロジェクトでも、スポット的に入った生産量の急な増加により、最初に設定した目標が現実的でなくなったことがありました。このとき、現場のスタッフと協議して目標を再設定し、無理なく進められる計画に変更したことで、最終的には成功を収めることができました。

目標設定の乖離を解消するための対策

目標設定が現場と合わない場合、どのように対策すればよいのでしょうか。以下に具体的な方法を紹介します。

1. 現場とのコミュニケーションを強化する

経営層やプロジェクトのリーダーは、現場としっかりコミュニケーションをとることが大切です。現場のスタッフや管理者と定期的にミーティングを行い、目標についてのフィードバックを得ることで、目標を現実的なものにすることができます。また、現場のスタッフが目標設定に関わることで、自分たちのプロジェクトだという意識が高まり、やる気も向上します。

筆者の経験では、現場のスタッフとのミーティングを定期的に開催することで、目標に対する理解が深まり、最終的にはプロジェクト全体の進捗が良くなりました。方法はいろいろあるかと思いますが、喫煙ルームで話を
していくのは効果的でした(現在では困難ですね)。現場の声を直接聞くことで、より実現可能な目標に調整できたことが成功の要因だったと思います。

問題は経営陣(いわゆるチャンピオンに設定されている方)とのコミュニケーションです。当時、筆者のチャンピオンは事業統括だったのですが、シックスシグマ推進室では専務が管掌しています。専務のもとでの会議でプロジェクトに関して決まったことに事業統括は意見を挟めません。時には、事業統括にただハンコをもらいにいくだけになり「俺はハンコを押すだけか」と嫌味も言われます。これに通常の業務も加わるためより複雑になります。

これに抜本的な解決策はありませんが、筆者が心掛けていたのは、プロジェクトの報告、進捗はマメにし、ブラックベルトが集まる会議の内容もやはりマメに連絡することでした。「聞いていない」「知らない」うちに進んでいくことは事業統括の面子をつぶすことになります。日本的かもしれませんが、コンフリクトは発生しないに越したことはありません。

2. データと現場の知識を組み合わせる

 データ分析は大切ですが、それだけに頼らず、現場の経験や直感も取り入れるべきです。現場で働くスタッフの意見を聞くことで、データだけでは見えない課題や改善点を把握することができます。例えば、データ上は問題がないように見えても、実際には作業者にとって不便な手順がある場合があります。こうした現場の意見を反映することで、より実現可能な目標を設定できます。

あるプロジェクトでは、効果金額が大きいこともあり、実験設備も設置しプロジェクトが進行していました。特に、進捗には問題はなく、それなりの結果は期待できるものでしたが、プロジェクトに参加していたなかったベテランオペレータのふとした一言が妙に気になり、筆者はチームに新たな因子を取り入れた実験を追加で頼みました。グリーンベルトであったのは直属の先輩であったこともあり、訝しんだのですが、時間の関係上、実験数を大幅に削減できるタグチメソッドを利用しました。
結果、新たに取り入れた因子のSN比が最も大きく、生産現場へ導入した際の当該工程の操業状態には、チーム全員が驚きました。

現場の声を取り入れたタグチメソッド

3. 目標を柔軟に見直す仕組みを作る

プロジェクトが進む中で現場の状況が変わった場合、目標を柔軟に見直すことが必要です。定期的に目標の達成状況をチェックし、必要に応じて目標を修正することで、現場とのズレを最小限に抑えることができます。また、目標の見直しには現場のスタッフも参加し、合意を得たうえで変更することが重要です。これにより、現場が無理なく目標に向かって進むことができます。

4. 段階的な目標設定を行う

大きな目標に一気に取り組むのではなく、段階的に小さな目標を設定し、少しずつ進めていくことも有効です。こうすることで、現場の負担を軽減しながら確実に成果を上げることができます。また、段階的な目標達成を重ねることで、現場のスタッフは自信をつけ、最終的には大きな目標にも積極的に取り組めるようになります。段階的な目標は、プロジェクトの進捗をわかりやすくし、関係者全員が進展を把握しやすくする効果もあります。この場合、プロジェクトの分割が有効です。

まとめ

シックスシグマでの目標設定が現場と合わないことは、プロジェクトの成功に大きな影響を与えます。しかし、現場とのコミュニケーションを強化し、柔軟な目標設定を行うことで、この問題を解決することが可能です。シックスシグマを効果的に活用するためには、現場と経営層が協力し、現実的な目標を共有することが重要です。時に、ブラックベルトは板挟みになりますが、成果のためには仕方ありません。
また、段階的な目標設定や目標の柔軟な見直しを行うことで、現場の負担を軽減しながら持続可能な改善を進めていくことが求められます。

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