11. シックスシグマプロジェクト失敗の原因をどうフィードバックするか?、14. シックスシグマでコスト削減と品質向上を同時に達成するための工夫
シックスシグマは、多くの企業が品質向上とコスト削減を同時に達成するために採用している強力な手法です。しかし、全てのプロジェクトが成功するわけではなく、中には失敗に終わるケースもあります。本記事では、シックスシグマプロジェクトが失敗する原因と、そのフィードバック方法について掘り下げて解説し、さらにコスト削減と品質向上を両立するための工夫についても考察します。
11-1) 失敗とはプロジェクトの中止
シックスシグマプロジェクトの「失敗」とは、多くの場合、プロジェクトが中止されたり、目標達成が見込めなくなった状況を指します。このような失敗には様々な原因があり、その分析は次回のプロジェクト成功のための貴重な学びとなります。以下では、シックスシグマプロジェクトが中止に至る主な要因について詳しく見ていきます。
失敗したプロジェクト
下図には、ある企業のシックスシグマのプロジェクトにおける代表的な「仕損低減」「生産性向上」及び「製品開発」テーマの成功及び失敗(=中止)したプロジェクトの関係を示します。
*縦軸の「成功」の%は、該当企業で表彰対象であったプロジェクトの構成比率のことを示している。
図からわかることは、仕損低減、生産性向上など、生産現場中心で行われる活動は、成功率が高く、かつ中止率が低く、これに対し製品開発プロジェクトでは、プロジェクトあたりの効果金額は大きいものの中止率が最も高く、かつ、成功率が最も低くなっており、プロジェクトを実施するリスクが高いことがわかります。

*〇の大きさは効果金額の大きさをイメージしています。
では、プロジェクトはなぜ中止されたのでしょうか?
「仕損低減」「生産性向上」に代表されるカイゼン型のプロジェクトの中止理由は前向きで、プロジェクトの対象が大きかったため分割した、他のプロジェクトを優先するため一時休止、などが理由でした。対象企業は、伝統的日本企業ですので、カイゼン活動に類似したテーマは得意としていることがわかります。
対して、「製品開発」プロジェクトでは、製品コンセプトの変更やビジネス環境の変化が理由で、ほとんどが最初のD(定義)フェーズで中止されていました。
11-2) 失敗から学び、次の成功につなげるフィードバック方法
プロジェクトが失敗に終わったとしても、その経験を無駄にしないことが重要です。失敗から学び、次のプロジェクトに活かすためのフィードバック方法について考えてみましょう。
中止が決断されたフェーズとその原因
プロジェクトが失敗した場合、その原因を明確にすることは効果的です。なぜプロジェクトが中止に至ったのか、どのプロセスで問題が発生したのかを特定することで、同じ失敗を繰り返さないための有効な対策を立てることができます。
では、上記のケースを深堀してみます。
「仕損低減」「生産性向上」及び「製品開発」のいずれのテーマも、中止は、ほとんどD(定義)、M(測定)フェーズで中止されていました。上記でも少し触れましたが、いわゆるカイゼン型の「仕損低減」「生産性向上」プロジェクトは、発展的に他のプロジェクトに移行しているため、アーリーフェーズで中止し他に移行している動きは理想的と言えます(メンバーがプロジェクトを見通している)。
対して、「製品開発」テーマでのアーリーフェーズでの中止は「プロジェクトを進める意思決定手段を有していなかった」と結論付けられ、当該組織では何らかの対応が必要です。
コミュニケーションの見直し
プロジェクトの進行中に適切なコミュニケーションが行われていたかどうかを検証し、不足していた点を改善することは極めて重要です。特に、各セクションの間での情報共有が不足していた場合、次回のプロジェクトではそれを改善することで成功の可能性を高めることができます。プロジェクトメンバー間の効果的なコミュニケーションは、問題の早期発見と迅速な対応を可能にします。
今回の企業の例では、「製品開発」テーマでの課題が浮き彫りになり、開発部門<->営業部門、また、マーケティング部門間でのコミュニケーション不足が推定されます(製品のコンセプトが定まらない、決まらないが主な原因で中止されていた場合)。
継続的なトレーニングの実施
シックスシグマプロジェクトに関与する全てのメンバーが必要なスキルを持っていることが、プロジェクトの成功に不可欠です。失敗したプロジェクトから得られた教訓をもとに、トレーニング内容を見直し、次のプロジェクトに向けてメンバー全員のスキルを向上させることが求められます。
特に、今回のケースでは、シックスシグマの手法ではなく、コミュニケーション、また、プロジェクトの進め方がネックになっているので、プロジェクトマネジメント面のトレーニングも積極的に進めていくことが求められます。
14-1) シックスシグマでコスト削減と品質向上を同時に達成するための工夫
シックスシグマはコスト削減と品質向上を同時に目指す手法ですが、その実現にはいくつかの工夫が必要です。以下に、シックスシグマを効果的に活用するためのポイントを紹介します。
プロジェクトの優先順位付け
すべての問題を一度に解決しようとするのではなく、重要度の高い問題から優先的に取り組むことで、リソースの効率的な配分が可能になります。これにより、コスト削減と品質向上の両立を効率的に達成することができます。重要な問題から着手することで、早期に成果を出しやすくなり、プロジェクトメンバーのモチベーション向上にもつながります。
今回の分析対象企業では、カイゼン型プロジェクトにおいては、プロジェクトを発展的に移行するなど優先順位を決定するスキルは組織に根付いています。要は重複しますが、該当するプロジェクトに関して組織にプロジェクトを進める意思決定手段があるか否かがネックになります。
継続的な改善(カイゼン)の取り入れ
シックスシグマはデータに基づくプロセス改善を重視しますが、上記の企業のようにカイゼン型のような現場での小さな改善活動を取り入れることで、柔軟かつ効果的な改善を進めることが可能です。これにより、コスト削減と品質向上を同時に追求することができます。
カイゼン活動は、現場の知見を活かした改善であり、日常業務の中で発見された問題点を迅速に解決することを目指します。これにより、現場レベルでのコスト削減と品質向上が進み、シックスシグマの取り組みと相乗効果を生み出すことが可能です。小さな改善の積み重ねが、組織全体の大きな成果に結びつきます。
顧客の声を重視する
品質向上を達成するためには、顧客のニーズを正確に把握することが重要です。VOC(Voice of Customer)をプロジェクトの初期段階から取り入れることで、顧客の期待に応える品質改善を行い、無駄なコストを削減することができます。顧客の期待に応じた改善を行うことで、製品の価値を高め、結果的に売上増加にもつながります。
ここでの課題はコストです。顧客の言うことは何でもかんでも聞くことはできないからです。閾値は必要ですので、各組織にて財務的な評価方法を決めておくことがここでの混乱を防ぎます。
*財務的な評価方法はシックスシグマではCOPQですが、COPQはコストアプローチで実施されることがほとんどですので、プロジェクトの性質によって変更する柔軟性が必要です。
まとめ
シックスシグマは、品質向上とコスト削減を同時に実現するために多くの企業で採用される手法ですが、成功が保証されるわけではなく、プロジェクトが中止されるケースもあります。本記事では、シックスシグマプロジェクトが失敗する原因として、特に「仕損低減」や「生産性向上」に対するカイゼン型プロジェクトと「製品開発」におけるリスクの違いを分析しました。中止の主な要因としては、コミュニケーション不足や製品コンセプトの不確定が挙げられ、改善にはメンバー間の情報共有強化とトレーニングが重要です。また、コスト削減と品質向上を両立するために、プロジェクトの優先順位付けや現場レベルでのカイゼン活動、顧客の声(VOC)の反映が有効であることも示されています。これらの工夫を活用することで、プロジェクトの成功率向上と持続的な改善が期待できます。
