No radio, no life
子供のころからラジオが好きだ。
住んでいる地域的にTBSラジオの電波が良く入り、もっぱらTBSラジオを聞いて育った。
母が内職をしながら聞いていた「大沢悠里のゆうゆうワイド」が、私のラジオの原風景だ。
普段は学校で聞けなくても、夏休みなら午前中の生ワイドが聞けるので嬉しかった。
いつもの番組なのに、聞けるときはなぜかちょっとスペシャルな気がした。
午前中のまだちょっと涼しいうちに宿題をしながら、聞くともなく聞いていたラジオ。
ずっと聞いている番組は、どのコーナーが始まると何時になったか分かり、すっかり時計代わりになっていた。
10時台は「毒蝮三太夫のミュージックプレゼント」。
11時台は「森山良子のハートオブポップス」「永六輔のだれかとどこかで」。
永さんの声がすると「もうお昼だな、そう言えばちょっとおなか空いてきた!」なんて思う。
午後の「小沢昭一の小沢昭一的こころ」も楽しかったな。
なにしろゆうゆうワイドは長寿番組だったので、大人になってからはカーラジオでもよく聞いた。
相変わらずコーナーで時間が分かるので結構便利だった。
ただ、余りに長寿番組すぎて、時には鬼籍に入られる出演者などもいてコーナー自体が減っていき、最後の頃は悠里さんはトイレ休憩もままならなかったらしい。
自分の育休中に番組終了の報を聞いた時は、なんとも言えない喪失感があった。
週末の「土曜ワイドラジオTOKYO 永六輔その新世界」も好きだった。
自分より、何なら親よりも大人の人たちが、世の中の見方を教えてくれた。
土曜ワイドのアシスタントの中では、特に外山惠理アナが大好きだった。
私とほぼ同年代で親近感もあるし、永さんとはかなり年が離れている。孫のようだ。
私には、永さんが他のアシスタントに対してよりも丁寧に接しているような気がした。やはり孫のようだ。
「惠理にも分かるニュースえりごのみ」「三省堂書店の明解さんちゃん」なんかのコーナーが特に好きだった。
永さんの番組は、永さんが亡くなるまで形を変えながらもずっと続き、体が不自由になってきた永さんを今度は外山アナが献身的に支えていた。
最後まで外山さんが永さんを慕い敬う様子が本当に素晴らしかった。
毎週金曜日に放送中の「えんがわ」の中に「ラジオTOKYOリメイク」というコーナーがある。
かつてのTBSラジオのアーカイブからいろいろ流してくれる人気コーナーである。
永さんの命日である七夕の時期になると、たっぷりと永さんの声を流してくれる。
永さんが生前言っていた「人間は二度死ぬ。一度目は亡くなった時。二度目は忘れ去られた時」という言葉も紹介していた。
外山さんは「じゃあ永さんは死なないね!」とカラっと言っていて、玉ちゃん(玉袋筋太郎)も「そうだな!」と受けていた。
なんだか胸が熱くなる。
ちなみにこの「えんがわ」、月に一度あの「毒蝮三太夫のミュージックプレゼント」をやっているのがスゴイ。
マムちゃんは御歳90歳。
今も頭の回転は速いし、記憶力はすごいし、話はハキハキだし、もう脱帽するしかない。 こんな90歳いる!?
今回、ゆうゆうワイドや土曜ワイドのことを書くにあたってWikipediaを見てみた。
当時のコーナー名やいつも言っていたセリフがずらりと並んでいる。
それを見ただけであの頃の語り口が頭の中に響く。
あの頃にタイムスリップするようだ。これはたまらない。
YouTubeには、昔のTBSラジオの音源も残っている。
ときどき聞くことがあるのだが、不思議なことに、普段はあまり過去へ戻りたいと思わない私でも、「この放送、リアルタイムで、もう一度だけ聞いてみたいな」と思ってしまう。
ラジオは、その日の空気ごと閉じ込めているのかもしれない。
今でもTBSラジオは大好きで、日常の楽しみであり続けている。
「ジェーン・スー生活は躍る」「こねくと」「えんがわ」「土曜ワイド ナイツのちゃきちゃき大放送」「安住紳一郎の日曜天国」「爆笑問題の日曜サンデー」……。
ラジオは手を止めないけれど、単純作業で気が進まない時(洗濯物を畳んだり、お皿をふいたり)に楽しさをくれる。
耳を傾けながら無心に作業していると、あんなにおっくうだった家事が終わっている。
ついでに生活のヒントもくれたりする。
知らない調味料とか。(生活は躍るを聞いてマキシマム買っちゃった。美味しい!)
テレビはつい画面を見てしまって手が止まるけれど、ラジオは暮らしのリズムを邪魔しない。
radikoの登場で、いつでも聞き逃した時間帯の番組が聞けるようになった。
それでも、祝日などでオンエア中にリアルタイムで聞けると、やっぱりとても嬉しい。
気がつけば、パーソナリティは親より年上だったのに、今や同年代、あるいは年下になった。
ずいぶん長い事聞いてきたもんだ。
悠里さんは、番組の最後に必ずスタッフの名前を読み上げていた。
番組への責任感を持ってもらうためでもあるが、「家族が聞いたらうれしいでしょう?」という思いもあったそうだ。
そんな話を聞くと、「ああ、悠里さんらしいな」と思う。
話が面白いパーソナリティはたくさんいる。
でも、どんなに面白くても「この人は好きになれないな」と思ってしまうと、どうしても聞き続けることが出来ない。
きっと私は番組だけではなく、その人そのものを聞いているのだ。
「ラジオはウソをつけない」と、スーさん(ジェーン・スー)が言っていた。
もともとは悠里さんが言っていた言葉らしい。
テレビは映像でいくらでもごまかせるけれど、声は、特に何時間も話す声にはその人がそのまま出てしまう。
少し間を開けただけで「あっこの人、今ウソついた」「心にもないことを言った」と分かってしまうらしい。
だからこそ、ラジオのリスナーはパーソナリティ本人を信頼し、愛し、耳を傾けるのだろう。
少なくとも、私はそうだ。
実は、ラジオには強い思いがあるのに、なかなか書き出せずにいた。
言いたいことがありすぎて、広い海のようにつかみどころがなかったからだ。
でも、いざちょっと書き出したら、思いがあふれ出て止まらなくなった。
一つの思い出が、もう一つ、もう一つと思い出を連れてきて、あっという間に私を何十年も前へと連れていってしまう。
この秋、TBSラジオ開局75周年記念特番として「ゆうゆうワイド」が1日限りの復活をするという。
しかも番組内で「ミュージックプレゼント」もあるとか。
久々に悠里さん&マムちゃんの丁々発止のやり取りが生放送で聞けるなんて。
今から本当に楽しみ!
