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消しゴムのカスで惚れられた

消しゴムのカスを拾って持ち帰ったことで、人に惚れられたことがあった。

資格試験を受けたとき、消しカスを捨てる場所がなかったので、紙に包んで持ち帰った。それを、その人は見ていたらしい。

後日、「掃除する人のことを考えられる良い人だと思った」と、少し顔を赤らめながら言われた。

私は、妙なことで他人に好かれてしまったものだと思った。

もちろん、好意を向けられること自体が嫌だったわけではない。

それに私だって、夫と結婚する前、彼が無駄なことを嫌うくせに、初デートでほとんど口を開かず、身体に悪そうな黄緑色のクリームソーダをひたすら美味しそうに飲んでいる姿を見て、胸がときめいた人間だ。

ただ、私は別に、掃除する人のことを考えていたわけではなかった。

机に消しカスを残したまま帰るのが気になっただけだった。

けれど、その人は、そこから私の心のあり方を読んで、清楚な衣装を着せた。

DJをしているという彼から、「あなたに聞いて欲しくて」と、美しいピアノ曲を繋いだ音源を渡された。

「あなたに気がなくても、見ていることは許して欲しい」と願われた。

その紳士らしい口説き方は美しかったが、少し居心地が悪かった。

人に興味を持たれることと、読まれることは、私の中では少し違う。

玄関に立つのはいいが、そのまま奥の部屋の話をされると、少し困る。こちらが「どうぞ」と言ってから、感想は言ってほしい。

消しゴムのカスひとつで、人は案外、遠くまで読めてしまう。

けれど服は、着せられるより、自ら脱いだ方が情緒がある。

こちらは、人間観察の実践編である。

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