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小説 『なんか夜遊び的な』 ⑤ 生きることに向いてない

Chapter 3 「マミ」

つまり、私は精神的に弱いということだと思う。中学でクラスの女子たちにイジメられて不登校になったことからも一生立ち直れないだろうし。あれ以来ずっと余裕なんかない。

あれから心から明るい気持ちになったことがない。私の笑顔はいつも半分嘘だ。外行きモードにならないとまともに人と話せないし。「あ、この人、家で一人でいるときは、めちゃくちゃ暗い人だろうな」ということがわかる人にしか心を開く気になれない。

ハマっているコンビニのハンバーグ弁当をチンしすぎて容器が溶けて、ハンバーグやご飯にプラスチックが流れ込んで付着しているのを見ただけで、バッドに入って、食べ物をまともに温めることすらできない愚かな私に生きている価値なんてないんだ、という気持ちが強く湧いてきてさらにバッドに入る気持ちをわかってくれる人じゃないと、一緒にいるだけでしんどくなる。

「今動けないから、なんかご飯と飲みもの買ってきて」
と彼氏のソウタにラインするとすぐに既読がついた。事務のバイトから帰ってきてからぼーっとしていると、いつの間にか21時になっていたけど、冷蔵庫に何も食べものがないことに気づいた。

今日の帰りに買ってくるつもりだったけど忘れてた。はい、私、愚か。そう思うと、バッドに入って、もうトイレに行くのも面倒になったので、買い物なんか今から行けるはずないし、明日のバイトも休もうと思った。

体調がそんなに良くないことは職場の上司に伝えてるけど、こんなこと続けてたら多分そのうちクビになるだろうなと思う。でも、しょうがないよね、私だって、こんなふうになりたくてなったわけじゃないし。

「わかった、何がいい?」
ソウタから返事が来たけど、頭がぼーっとしたままで回らない。

「なんでもいい、今考えるのしんどい。私がいつも食べてるようなやつ」

「わかった」

ソウタは、私の愚痴を一生聞いてくれるから好きになった。好きになったというか、この人は私から離れないことを信頼したって感じかも。

付き合う前、夜中に急に電話かけて「あー」って私が言うと、ソウタはその一言で病み電だって理解して、
「話聞くのはいいけど「死にたい」って言い出したら切るから」って言われた。

いくらソウタでも、「死にたい」っていう甘えは受け入れられないらしい。私は、そのワードを一番言いたいのに。だって本当だから。

代わりに私は、「もうダメだ」とか「貧乳すぎて病むから豊胸したい」とか、TVに映っている芸能人の名前を出して「この人絶対ネクラだよ」とか「私って一生結婚できないのかな」とか「本当の私を見せて受け入れてくれる人なんかいないと思う」とか「もう全部やめたい」とか、そういうことを言い続ける。

ソウタは「う〜ん」とか「まあ大丈夫やろ」とか、適当に返し続ける。

インターホンが鳴ったので、アパートのドアの覗き穴から外を見ると、相変わらず、外でもいつも部屋着みたいな格好のソウタが無表情で立っている。手にはレジ袋。私は鍵を開けて顔が見えないようにドアを少しだけ開いて、手だけ外に出して彼が手に持っているレジ袋を掴んで部屋の中に引っ張り込むと、勢いよくドアを閉めて鍵をかけた。

立っているのも面倒なので、レジ袋ごとベッドに倒れ込み、中を確認する。中には、いくらのおにぎり、塩おにぎり、ポケモンパン、ウイダーinゼリー、サラダチキン、500mlの水とリンゴジュースのペットボトルが入っていた。

私が最近ポケモンパンについているシールを集めているのを見ているので買ってきてくれたんだと思うと嬉しくなって、袋を開けて、下についている薄い紙を剥がしてチーズ味のスポンジパンをかじりながら、スマホを手に取りソウタのラインを開いた。

「買ってきてくれて嬉しかったにょ(涙)」と打って、入っていたヤドンのシールの写真を撮って送ると、「あい」と返事が来た。

私は、専門学校を出てから、就職せずに、バイトを色々と転々としてきた。パン屋とか、工場の作業とか、カラオケ店員とか、一番続いたのはコンカフェだ。三年続いて、後半の一年半は一つ店舗を任されて店長をしていた。ソウタはその時のお客さん。

いかにもコミュ障で、属性「闇」って感じで親近感を持った。この人は私のことを軽蔑しないと思えるし、そういう人の前では、気を遣って明るくいなくていいから楽でいい。

ソウタは、企業のロゴとかを扱う印刷委託会社の作業系の正社員をしている。学生の時にLOFTでバイトしたことあるらしいけど、すぐに客とケンカになって、それを注意してきた上司ともケンカになって辞めて、接客はそれ以来してなくて、就職するとき営業職も除外したと言ってた。

でも、ソウタがコンカフェに連れてきた高校からの友達らしいキョウちゃんは普通に明るい性格なので、ソウタは擬態が私より上手いのかも。

ソウタが私のいる店に来るとき、初めは互いに仕事の愚痴を言い合っていたけど、それも尽きると、途中からは私が一方的に抽象的な愚痴を吐き続けるのを聞いてもらうばかりになって、私のこの感じに耐えるなんてすごいと思った。

ポケモンパンと、塩おにぎりを半分ずつ食べて、リンゴジュースを飲み、虫歯にはなりたくないので、なんとかベッドから起き上がって歯を磨いた。この感じだと、明日はどうせバイトは休むだろうからと風呂はキャンセルすることにした。

私は、別に中学の時にイジメられなくてもどうせこうなっていたと思う。そもそも生きることに向いてないから。

まずストレスに弱すぎる。自分の顔も全然好きになれないし、貧乳なことにも耐えられないし、生きる上であるネガティブなことに耐えられない。とにかく自信がない。こんな弱くて愚かな自分が嫌いなのにどうやって自信なんか持てばいいのかわからない。

暗く生きてきた過去も嫌いだし、未来は不安すぎる。一人っ子だから、お父さんと、お母さんが死んだらどうなるんだろうってよく考える。

私は、一人になることが怖くて仕方がない。だから友達が結婚する度に、一人になるくらいなら死んだほうがマシだって思う。眠剤って何錠飲めば死ねるのか、失敗した場合どうなるのかの経験談をネットで定期的に調べる。

私は自分を認めていないので、周りに自分から離れない人がいることで他人から認めてもらうしかない。そうしないと、私は自分の存在がどんどんと薄くなっていってしまう不安感を感じる。

その不安に対処するために最近しているのは顔面ピアスだ。リストカットより私にはしっくりきた。これで最後にしようと毎回思うけど、病んだときは、顔面に孔を開けないと気が狂いそうになるので、衝動的に買い溜めしているピアッサーで開けてしまう。

最後にしようと思いながらもピアッサーを買い溜めしているのは、本当にメンタルがヤバくなったときのための、緊急時のためのお守りのようなものだ。そして、緊急時は定期的にくる。

耳は前から開けてたけど、顔は、鼻ピを初めに開けて、次は眉、次はブリッジ、リップ、モンロー、あと先月はラブレットを開けた。開けるほどに顔を洗うのがどんどん面倒になる。あんまり強く洗うと、ピアスにてのひらや指が引っかかって、孔が傷ついてすぐに血が出るからだ。

今は、これで終わりにしようと思ってるけど、次にもし開けるならチークかなと思っている。
ソウタは、私が顔にピアスを開け始めた時、初めは「おー」ってリアクションしていたけど、途中からは完全スルーになった。

ピアスを顔に開けるときの痛みで、半透明になっている自分の存在を実感できる。だから私はその痛みに愛着が湧くから、痛みに名前を付ける代わりに、開いている孔にピアスを付けて飾り立てて、そうすることで、私を認めてくれた感覚の象徴とする。


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