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瞼の母 ~生みの親を想う直美の心~

(所要3分の記事です)

珠玉のドラマ『風、薫る』

◇通勤中、カーナビで連続テレビ小説『風、薫る』を観ている。主要キャストの一人、藤原季節さんは同郷なので一層注目しているが、出演俳優は皆演技が上手で魅力的だ。ドラマの評判もきっと良いに違いない。

◇先週までは、主人公の一人・直美と生みの母親の交流がメインテーマだった。みなし子として育ち、斜(はす)に構えて生きてきた直美だが、看護の道を選んだことで人として大きく成長した。そんな彼女も生みの親への想いはずっと抱き続けており、雑貨屋の店員である文(あや)を看病するうちに、彼女こそが実の母親であることを知る。

◇直美の母はかつて身体を売る苦界に身を置いており、直美を生んだ後に養育を放棄したという設定だ。それでも「会いたい」という想いを捨てきれなかった直美にとって、母は「瞼(まぶた)の母」であった。

生みの親を慕う心

◇このドラマを観て、かつて産院での取り違えが判明した男性のニュースを思い出した。その男性もまた、実の両親との面会を強く希望していた。やはり理屈ではわからない、血の繋がりという強い絆があるのだろう。

◇実は、私の最も身近な人もいわゆる「もらいっ子」だった。戦前戦後はそれほど珍しいことではなく、子宝に恵まれなかった家庭に赤ん坊が譲られる例は少なくなかったようだ。

◇私がその事実を知ったのは高校生の時で、あまりのショックで一緒に泣くことしかできなかった。さらに意外だったのは、その人に「存命だという生みの母親に会いたい」という強い願いがあったことだ。当時の私は「血が繋がっているだけで他に何があるわけでもない。放っておけばいい」という気持ちの方が強かった。しかし、後で見せてもらった写真の中のその人は、皮肉なことに、実際に育てられた兄弟姉妹の誰よりも顔がそっくりだった。

親と生き別れる悲しみ、子と別れざるをえない痛み

◇現代の日本でも、生みの親と別れざるをえない事例はある。育ての親とは別に生みの親がいることを知らずに過ごす人もいれば、何かの拍子に真実を知るケースもあるだろう。

◇そんな時、当事者が実の親との接触を強く希望するのは、周囲から見れば奇妙で無意味に映ることもあるかもしれない。しかし、こればかりは理屈ではない。大切なのは、その想いに寄り添うことなのだろう。