振り返りの代償ー足音の向こう側
これは、とある女性の2つのパラレルワールドの物語。
生きていれば、遭遇する事もあるであろう、後ろから聞こえてくる足音。
ピッタリとくっついて来るその足音に気付いた時、あなたはどうする?
【振り返る】
私は、もう決して振り返ることはない。
あの日以来、私は二度と振り返る事ができなくなった……。
それは、去年の冬のこと。
仕事帰りのいつもの道。街灯が少ない住宅街を家に向かって歩いていた。
帰りはいつも、ワイヤレスのイヤフォンで薄く音楽をかけている。だからその日も、いつも通り音楽を聞きながら歩いていた。ただあの日は、後ろから響く足音に気付いた。
カツン、カツンーー。
規則正しい音だったが、どこか不自然さを感じた。
自分の歩調とわずかにずれていて、まるでその存在を主張するかのように、意図的にずらしているようだった。
その事に気づいた時、反射的に振り返ろうとした。しかし、自分の中の何かがそれに強く警鐘を鳴らし、既(すんで)のところで止めた。が、尚も続く自分の歩みにピッタリとくっついてくる拍子はずれの足音の正体に、好奇心が勝り振り返ってしまった。
ヒュン!!!
自分の身に何が起こったのか、正確には分からない。
ただ、空を切る何かの音を最後に、何故か舗装された地面と赤黒い水溜りが目の前に広がっていたーー。
***
好奇心に勝てずに、振り返ってしまった女性の末路は…。
では、もしあの時、振り返る事がなかったとしたらーー。
【振り返らない】
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