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どうか縛らないでください

「お願いです…。どうかもう……、僕をどうか縛らないでください」

これで何度目のお願いだろう。
僕が何をしたというんだろう。
少し、子供らしく振る舞っただけなのに。
もうずっとここに縛られたまま…。

***

私は、その光景を見て驚いた。
枕が変わった事で寝付けなくて、旅館の中を1人ぶらぶらと散歩していた。
そうしたら、この老舗旅館の奥まった1本の柱に、男の子が縛り付けられていたのだ!

旅館に泊まってるお客なのか。いや、そんなはずはないか。じゃあ、この旅館の子?

だとしたら、こんな柱に縛り付けられてるなんて……もしかして虐待?

私は、男の子を柱に紐で縛り付けられている男の子を慌てて解いた。

「お姉ちゃん、ありがとう」

男の子は、疲れ切った顔で私を見上げる。

「ううん。誰が君のことを?それより、戻る場所はある?」

私は、矢継ぎ早に男の子に質問する。

「えっと…えっと……。僕をここに縛り付けたのは、知らないおじちゃん。白い服を来て棒で僕を捕まえて、ここにぐるぐる縛り付けたんだ」

男の子は、自分の身の上を思い出すように、ゆっくりと喋り始める。

「それから…。戻る場所はあるよ。ここじゃないずっと遠くに」

男の子は、窓の外に写る山々を指してそう答えた。
私は、指につられて外を見る。まだ朝には程遠く、窓の外は漆黒の闇に包まれていた

「今は真っ暗だから、朝になるまでお姉ちゃんのお部屋で過ごす?」

私の言葉に少し驚いた様子を見せた男の子は、ニコッと笑うと「大丈夫だよ」と答えた。

「お姉ちゃん、優しいね。そんなお姉ちゃんにこっそり教えてあげる。もう、家に帰ったほうが良いよ」

男の子は、そういうとスタスタと風を切るようにどこかへ行ってしまった。私は、慌ててその子を振り返ったが、よほど足が速いのか、どこにもその姿は見えなかった。

「もう帰った方が良い」

その言葉が妙に引っかかり、私は部屋に戻ると、夜が明ける前だったが、なんとなく荷造りを始めた。

どのみち、次の日にはチェックアウトだから、その時間が早まったと思えばいい。

空が白んできた頃、私は早々に宿を後にした。

***
翌日、ニュースを見て驚いた。昨日、チェックアウトしてまもなく、泊まっていた旅館が土砂に飲まれて、今も救助活動が行われているそうだ。

インタビューを受けた人は、こう言っていた。

「ここは、座敷わらしが出る宿で有名だったのに、どうしてこんな事に……」
……。
あー、私はどうやら、座敷わらしを解放してしまったようだ。


#アマノ文筆クラブ 『どうか縛らないでください』への参加作品です。

これは、実は実話がベースとなった作品で、私、怪談話が好きで、よくそういったYouTubeを観るんですけどね。その中で、語られていた怪談を元に作った話です。
今回のテーマが『縛らないでください』ということを知った時、直ぐにその時の話が浮かんで。そこで語られていた怪談を私風にアレンジして仕上げてみました。

とはいえ、今回は元ネタがあるお話なので、次は丸っとオリジナルでもう1本書けたら良いなって思ったり…😁

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