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売り物ですから

「よぉ!久しぶり」

その声に視線を移すと、学生の頃によくつるんで遊んでいた明男が立っていた。

「こんな所で会うなんて、なんて偶然!」

懐かしい顔に、思わず駆け寄る。後ろには、明男の陰に隠れるように、綺麗な女性が立っていた。

「あ、ごめん。邪魔しちゃった?」

俺は、女性に会釈をした後、小声で明男に声を掛ける。

「いや、大丈夫だよ。僕が出かける時は、必ず同行させてるんだ」
「同行…させている?」

女性は、とてもスタイルが良く、まるでモデルの様な顔立ちをしている。かたや明男は、うん、まぁ良く言えば中の中。可もなく不可もなくといった男だったから、こんな綺麗な女性を、同行させるなんて、暴君めいた事ができる立場ではないはずなんだが……。

「えっと、どういう事?」
「んーと、話せば長くなるな。竜也、この後時間ある?」

明男がチラリと腕時計を見て声を掛ける。

「えっ?お前、その時計って…」
「あー、うん。ロレックスだね」
「えっ?何お前、めっちゃお金持ちじゃん」
「まぁ…」

明男は、苦笑いをしながら、ポリポリと頬を掻く。

「まぁ、とにかくあそこのカフェで話そう」

明男は、俺を誘って通りの向こうにあるカフェへと進むと、女性も黙ってそれに従った。なんて従順な女性なんだ!
***
「で。こちらの方は、誰なんだよ?」

俺は、席に着くなり明男の隣に座る女性の紹介を促した。

「今、僕の家にいる奴だよ」
「えっ?一緒に住んでるって事は、彼女とか奥さんとか?」
「全然そんなんじゃないさ」
「えっ?じゃあなんで一緒に?」
「育ててる」
「育ててる?えっ?この人を?」
「うん」

明男の話によると、何かの研究により作られた“人種”という種が育つと、その実として“人”が採れるそうだ。

「えっと、じゃあその……。横の人を育てきったら、お前、やりたい放題じゃん」

俺は、邪な事を考えながら、興奮気味に話す。

「いや、僕は手を出さないよ。大切な売り物だからねぇ。なんで僕が、こんな高級な時計、できていると思ってるんだよ」

そう言って笑う明男の顔は、まるで悪魔のように見えた。


マガジンでお世話になっている甘野さんが、面白い企画をされていたので、飛びついて見ました(笑)

ショートショートなので、少ない言葉の中で、どこまで世界観を出せているか、ドキドキです。

そして……。
改めて、私ってば不穏な物語やと、生き生きと書けるんだなって。
前回の、可愛いお話が書けそうなテーマでは、全然触手が動かずだったので😅
時には、甘い恋愛物語も書いてみたいのですがねぇ(笑)

ついでに宣伝を🤭
他にも短編や中編の小説書いてます。
それらは、それぞれマガジンにまとめていますので、よろしければ、プロフィールのマガジンから見てみてくださいね。

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