【短編ホラー】都市伝説
一人の少女が夜の街を歩いていた。
彼女は、いわゆるストリートチルドレンと呼ばれる10歳にも満たないような子供で、生きるためいつものように、路地裏のゴミ捨て場に向かっていた。
空腹を少しでも満たすために、夜の街のゴミ捨て場から、腹の足しになりそうなものを探すのが日課だった。
そんなある日、ゴミの中に捨てられた小さな手鏡を見つけた。
細やかな銀細工のが施されたその鏡は、腐敗臭が漂う場所には似つかわしくないほどにきらびやかな光を放ち、まるでつい先程まで、誰かが大切にしていたかのように、美しく磨き込まれていた。
「きれい…」
戸籍もなく、名前すらあやふやな少女。そんな彼女が持つにはあまりにも上等で上品な鏡。
「誰かの落し物かな」
少女は、あたりを見回してみたが、それらしい人はなく、彼女はキラキラと光る鏡に、引き寄せられるように拾い上げた。
その瞬間ーー何かが心に囁いた。
「これは、私のもの。」
彼女は、その声に驚きあたりを見回した。が、そこには誰もいない。
その声が自分のものだったのか、若しくは悪魔の囁きだったのかーー。それでも少女は、囁きに従うようにもう一度辺りを見回し、この鏡を手にした事が誰にもバレていない事を確認すると、素早く洋服の中に滑り込ませ、足早にゴミ捨て場を後にした。
廃墟となった小さなアパートの一室。
かつては、他の誰かと過ごした事もあったこの部屋は、もう何年も明かりは灯っていない。それどころか、自分以外の声も聞こえることはなく、何年も暗く冷え切ったままだった。
固く冷たい床に座り込み、彼女は懐から手鏡を取り出すと、じっと覗き込んだ。
しばらくは、くたびれた少女の顔が映っていただけだった。
しかし、どこからともなく白い靄が鏡面を覆い、鏡に映る彼女の顔を隠したかと思うと、次の瞬間靄が晴れ、そこには現実の自分からは想像もできないほど、豊かで幸福そうな少女が映っていた。
背景には暖炉の火が灯る部屋、美しい調度品、そして…優しげに微笑む一人の男が映っていた。
「えっ?」
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