藤の花
柔らかな風に押されるようにして大きな寺院の境内を歩いていた
黑くそびえる三重塔、年月を感じさせる大講堂
静かに鬱蒼と茂る樹木
吸い込む空気に重みと歳月を感じる
歩く先に紫雲が湧きだしたような色彩を見た
大藤の木だ
丁寧に重ねられた藤棚に溢れるような花房が並ぶ
紫から群青、青から桃色
藤棚の下は薄暗く、まるで紫の滝が流れているよう
微かに花の香りも漂っている
桜とはまた違う感じの古木の花
雲の合間から差し込む日差しにほんのりと輝く
静かで重みさえ感じる古寺に、そこだけ生の色彩が湧き出ていた
長く生き抜いてきた藤の不思議な美しさ
このお寺で最も古い住人だろう
知らず手を合わせて拝んでいた
ある春の一日の出来事。

