現代思想2021年9月号「特集 〈恋愛〉の現在」
私はマッチングアプリを利用していて、そのアプリでは女性会員の日記を読むことができる。そこでは、女性会員が、相手と突然音信普通になったり、相手からブロックされたりして傷ついた心情を日記に書かれているのを時折見かける。かくいう私も、相手から突然ブロックされるという経験をしたことがある。
一体なぜブロックされたのか分からず、いろいろ調べてみたが、このようにいきなり連絡を絶って関係を終わらせる行為を「ゴースティング」と言うのだそうだ。つまり、相手の前から消えてゴーストになるということである。
これについて、現代思想2021年9月号が「〈恋愛〉の現在」という特集を組んでいて、その中に中森弘樹「ゴースティング試論」という論稿があったので読んでみた。その内容を一部紹介する。
まず、ゴースティングの特徴として、以下の3点が挙げられている。
①ゴースティングは、人間関係の中でも、とりわけ恋愛や性愛の関係において典型的に生じるものとされ、問題視されている。
②ゴースティングは、マッチングアプリやSNS、ショートメッセージアプリなどによって繋がった関係において生じがち。
③ゴースティングは日本国内だけでなく、アメリカやフランスなどの国々でより問題視されている。
③については、フランスのニュースマガジンサイトに「大事な人が音信不通になる『ゴースティング』が世界の若者を苦しめている」というタイトルの記事(https://courrier.jp/news/archives/59435/)が掲載されているくらいなので、外国でも不快な行為として受け止められていることが分かる。
中森論文では、ゴースティングの実態について、海外の先行研究が紹介されている。
まず、ゴースティングをする人たちについて。
・ゴースティングの動機には、利便性(別れの方法として簡便であること)、魅力(相手に魅力がないこと)、負の価値をともなった相互作用(相手の好ましくない振舞いによって関係を続ける気がなくなること)、関係性の状態(関係の種類と長さ)、安全性(自身の安全を確保すること)の5点がある。
・動機として、相手を傷つけることへの懸念や、相手を傷つけていると感じることを回避できるという潜在的な利点を挙げる研究もある。
一方で、ゴースティングをされた人たちについて。
・ゴースティングをされた人たちの多くは、悲しみ傷つけられたと感じ、長期にわたる自尊心の低下を訴えた。
・ゴースティングはその性質上、関係の最終局面においてコミュニケーションが存在しないために、ゴースティングをされた人は、「何が起きたのか」、「何が原因なのか」、「私が何か間違ったことをしたのか」という疑問を抱くことになる。
・もっとも、ゴースティングの方が、直接的に別れを告げられた場合よりも別離の苦痛の度合いが大きいかというと、そうではないという研究結果もある。
そして、こんな結果も。
・ゴースティングした経験とされた経験の両方を有する層がかなりの割合で存在する。
ゴースティングするような人は、他の誰かからも同じことをされるかも、という意見を女性会員からもらったが、すでに経験しているからこそゴーストになることへの抵抗感が小さいのかもしれない。
これらの研究結果は、すべて海外の調査に基づいたものであり、同じことが日本の場合に当てはまるとは限らない。ただ、ゴースティングの実態を知ることは、自身の状況を客観的に見つめ直すことに役立つかもしれない。
私は、ゴースティングした人たちが考えていることがなんとなく分かり(共感はできないが)、何も分からない状態から脱することができて、気持ちが少し軽くなった。
ゴースティングの背景には、本当に様々な事情があると思うので、そのすべてを否定することはできないように思う。しかし、相手との関係が面倒くさくなって、まるでゲームをリセットするように、ゴースティングをすることはやめてほしいと思う。自分に何か非があったのではないかと後々まで悩むことになるし、その理由を知ることはおそらく一生ないだろう。
また、その後、別の人とやりとりをすることになったとしても、また突然消えてしまうのではないかという不安に苛まれることになる。ゴースティングをする人たちには、それが相手にどのような影響を与えることになるのかについても想像してほしい。
