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2001年「しし座大流星雨」の目撃者

世紀の空振り「ジャコビニ流星群」

1972年10月9日、星が雨のように降ってくると期待された世紀の天文ショー「ジャコビニ流星群」は流れ星が1個も流れない世紀の空振りに終わった。

わが家では、父、姉、ボクの3人で観測隊を結成して3日前には観測記録の予行演習までして準備したのに、星が雨のように降ってくる世紀の天文ショーは、始まる前に終わっていた。

小学生だったボクは星が降ってくるように見える大流星雨がどんなものか知らなかったのでそれほどのガッカリ感はなかったが、星が降る夜ってどんなのだろう?ほんとにあるのかな?という思いがむねのおくにこびりついた。

それから29年後、ホントに星が降ってくる夜空を、あの時のボクと同じ年になった自分の娘と目撃することになるなんて…まさに事実は小説よりも奇なりである。

夢のような星降る夜「しし座大流星雨」

2001年11月18日の夜に日本中で見られたあの「しし座大流星雨」…
今考えてもあれは夢だったのでは…と思えるほどの出来事だった。

しし座大流星雨の夜

あの日なにがあったのか、時間をもどしてみよう。

2001年11月18日の日曜日、その日はベガルタ仙台がJ1昇格を決めた日で仙台はおおいに盛り上がっていた。NHKローカルでは予定を変更して昇格特番の放送を始めていた。

その特番を横目でみながら観測準備を行い、22時過ぎにさあ出かけようとしたとき、当時小学4年生の娘が「流れ星みにいくの?あたしもいく!」と言って階段を降りてきた。こっそり行くはずだったが気配を察知したようだ。

何日も前から行きたいと言ってたのだが、観測時間は深夜2時から明け方までなので、どう考えても小学生にはむりな時間帯だ。ましてやほんとうに流れるという保証はどこにもない。しかも明日は平日月曜日だ。

しかし泣きべそをかきながら「おねがい!」と言われては無視するわけにもいかない。たぶん、観測地に着く前に寝てしまうだろう…という気持ちもあったのでしぶしぶ同行させることにした。

この日がほんとに星が降る夜になることを娘は知るよしもないが、結果てきには2001年しし座大流星雨の目撃者になったのだから、娘はよほどの強運の持ち主だ。

そんなこんなで出発は1時間遅れとなった。観測予定地は北上川の河口にある長面海水浴場、車で2時間半の道のりである。

三陸道を北上するとフロントガラスには雨がポツポツ…、北西の季節風にのって雲が上空を流れている。時雨(しぐれ)だ。海沿いまで雲が流れたら見ることはできない。

結局、無駄足になるかもしれない。しかし、現地の天気は現地に行かないと
分からない。前進あるのみだ。

石巻を通過して国道45号を北上、さらに車を走らせ曽波神を通り過ぎたとき、信じられない光景を目にした。フロントガラスの向こうで火球がゆっくりと流れ、山の向こうへ消えていった… 

「え!?、今のは何?」

山の端に流れ落ちる火球

「まさか…」運転席側の窓から空を見ると…(脇見運転はやめましょう)

なんと暗い空の向こうで流れ星がぴゅんぴゅん飛んでいます。
「わわわ、始まっている!」時計を見るとまだ0時半を過ぎたばかりです。

後ろの座席にいる娘に
「外見て!流れ星が流れてる!」と言うと
「うん、さっきからみえてる…」と言う返答。

「え~、何で教えてくれないの~」と聞くと
「だって、流れ星だと思わなかった~」と答える娘…、
「……」(じゃ~、何に見えたんだよ~)

とにかく急がなくては。ピークの時間が早まったのだろうか? 
などと考えながら飯野川橋を右折して北上川沿いに東へ。

ここまで来ると辺りは真っ暗だ。運転席側の窓から空を見ると
「どひゃ~」次から次へと流れ星が飛んでいる。まずい、
観測地を変更しなければ、この辺でどこか適当な場所は…、

少し進んだところで左側に農道が見えたので、それを直進。
車道からかなり離れたところで車を止めて外に出てみる。
周りは田んぼだ。遠くに街灯がいくつかあるが、ここで妥協しよう。

観測地から見た北天、下部に見える筋は街灯の明かりが写ったもの

さっそく、観測準備です。まずコットを組み立てて、その上に
寝袋をひろげる。これで娘の観測場所は完成。

娘に「流れ星数えてね~」と頼み、こちらはカメラのセッティング、
フィルムはASA100のフジクローム。リバーサルである。
レンズはキャノン50mm F1.4 固定撮影だ。

「わ~」オリオン座を突き抜ける流星が2つ同時に流れる。

同時流れる火球

空に平行線が一瞬浮かんだ。
「2つ同時に流れる流星が見られるなんて…」
「すご~い」娘も大喜びです。

「だめだ、レンズを広角に変えよう」下を向いてレンズを外した瞬間…
「シュボッ…」突然辺りが昼間のように明るくなり地面に自分の影ができた。「わあ~、すご~い」娘の声が聞こえる。

これが1時45分に流れた「-8等級の大火球」だ。すぐ上を見るが、当然火球は見えるわけもなく…「おお!流星痕だ!」しかもとびきり特大です。

ニコンの双眼鏡で流星痕を見ていると「わー!」流星痕のすぐ脇をさらに火球が流れて流星痕ができた。(なにが起きているんだ~、すごすぎる)

北の空では火球が何個も流れ…

感度ASA100のリバーサルフィルムに写っていることで火球の明るさが分かる。普通は写らない

いたる所で流星痕が揺れ動き…

普通は写らない流星痕が複数記録されるほど明るい火球がたくさん流れた夜だった

東の空を見ると放射点から流星が飛び出す様子がリアルタイムで分かる。

しし座流星群の放射点から四方八方に飛びだしていく流れ星
しし座流星群の放射点は、逆はてなマークに見えるかま首の辺り

南の空では弓の名人オリオンが何度も射抜かれ…

リバーサルフィルムは発色がいいのでオリオン座と流星がキレイに写っている

そして西の空では… 星が地面に向かってまっすぐ降り注いでいた。

わずか数分の露出で十数個の火球が地面に向かって流れ落ちる様子が写っている

どこを向いても星が流れている。気づくと両手をひろげて空をあおいでいるじぶんがそこにいた。「この世の中にこんな瞬間がホントにあるなんて…」

思い起こせば29年前の1972年…、父と姉と3人で見たジャコビニ流星群の世紀の空振り… あの日からいつかみたいと思っていた流星雨がいま目の前にある。「もう2度と見ることはできないだろう。しっかり目に焼き付けよう…」

時間が過ぎると放射点が高くなり、どこを向いても星が地面に向かって降り注ぐ。まさに「星降る夜」である。このまま時間が止まってくれたら…。

その時ふと娘を見ると、寝袋の中でブルブルふるえている。
「わっ、寒いのか?」「…ちょっと、」
無理もない気温は4度、時間はまもなく4時だ。限界である。

車のエンジンをかけて娘を車内に避難させ、撤収開始です。
空をみると、数は少なくなったがまだ流れ星が飛んでいる。

日付はかわってすでに平日月曜日です。娘の登校時間が迫っています。
まだ流れ星がながれる空を気にしながら、アクセルを静かにふんだ。

安全運転、安全運転…と心の中でつぶやきながら車を運転していたが、どうしても窓のそとが気になる。窓越しに見える空では、まだ流れているよ~と言わんばかりのいきおいで火球が流れ落ちている。

後ろ髪を引かれる思いで、後ろの座席で寝ている娘に気付かれないようスピードをゆるめて、車を土手に駐車して外に出た。

東の空には雲があったがその彼方から明るい火球が地面に向かって流れおちた。薄明が始まろうとしている空でこれほど明るい火球が見られるなんて…

薄明が始まる東の空に流れおちる二つの火球

この数時間でみたこと、目の前でおきたことがホントに現実だったのかと疑うほどの衝撃的だった夜がまだ続いている。

西の空ではまもなくしずもうとしているオリオン座が傾いていた。

星降る夜に撮影したラストフォト

数は少なくなったが時おり、思い出したように火球が降り注ぐ。いったいこの夜だけで何十個の、いや何百個の流れ星をみたのだろう。

そういえば、観測を始めたときは娘も私も流星の数をかぞえていたが、いつのまにかやめていた。そりゃ~ 同時にながれる流れ星をみたら、数えることが追いつかなくなるし、それどころではなくなる。

流星群のピークだった2時から3時にかけては、空のどこでも流れ星がみえていて、今見ていない後ろでもおおきな火球がながれているのでは…と思ってとにかく首を動かしていたことを思い出す。

あのときほど、人間の視界はなんてせまいんだろう…魚眼レンズのような視界があったらぜんぶ見えるのに…と思ったことはない。

娘のようにコットで仰向けなって見るのがいいのは分かっていたが写真を撮りたかったのでそれはできなかった。

もし、もういちど、目の前に流星雨があらわれたら今度はカメラなどは一切持たずに(もっているとぜったい撮りたくなるので)その瞬間を見ることにしよう。もし、あればの話だが…

次のしし座大流星雨は…?

しし座流星群の母彗星「テンペル・タットル(55P)」は33年周期で太陽にもどってくる。この周期にあてはめると次の回帰は2031年だがこの年にしし座流星群の大出現はないだろうと言われている。

研究者の話では2031年は地球の軌道と彗星の通り道(ダストトレイル)がまじわらない…ということらしい。ダストトレイルはとても細いので軌道がわずかでもズレれば流れ星は地球に落ちてこないことになる。

その3年後の2034年に地球の軌道とかさなる予報が出ているが、ざんねんながらその時間は日本では昼間なので見ることはできない。日本でしし座流星雨をみられるチャンスはあるのだろうか?

日本でしし座流星雨が見られる年はいつ?

地球の軌道とかさなる時間を予報するダストトレイル理論によると2037年の11月20日に日本で条件良く見ることができるようだ。その予報によるとピーク時間は04時32分で、見られる流星の数は1時間当り1000個ほどらしい。

2001年のしし座大流星雨の時は1時間当りに1500個から3000個の流れ星が出現したといわれているので規模として小さいように感じるが1時間当り1000個も流れたらスペクタクルな夜になることはまちがいない。

それに1時間当り1000個の予報はあくまでも予報なのでもっと流れる可能性もある。(その逆もあるが…)

ダストトレイル理論はかなり正確な予報を出すようになっているが予報に誤差はつきものだし、ダストトレイルは回帰ごとに生成されるのでまだ未発見の古いダストトレイルと遭遇することは可能性として十分考えられる。

過度な期待は禁物だが、大流星雨(ひょっとしたらそれ以上の流星嵐)があるかもしれないというワクワク感だけは大切にもち続けようと思う。

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