社会のかたより、砂糖のかたまり
『ナースコール』という映画を観た。人手不足でパンパンの病棟で奮闘する、遅番の看護師さんの物語。
あまりにスリリングで、面白かったというには少し言葉を選んでしまうが、看護師不足が叫ばれる現代において、この映画が公開される意義はとてつもなく大きい。もっと多くの人に届いてほしい一作だと感じた。
鑑賞後は、吉祥寺の「四歩」へ。雑貨屋が併設されたその空間は、立っているだけで自分の生活が少しだけ「丁寧」になったような錯覚におちいる。
そこで注文した唐揚げ定食が、これまた最高だった。玄米の大盛りを頼んだら、手加減なしの本気の大盛りがやってきた。「ちゃんと大盛りをやってくれるお店」は、それだけで無条件に信頼できる。
やはり、人類の到達点は定食だと思う。私は死ぬ間際、この世で最後に食べるのは定食がいい。熱い味噌汁を啜りながら、ゆるやかに、そして満腹で旅立ちたい。
食後は「Kiki」で美味しそうな砂糖の塊(……失礼、ドーナツだ)を調達し、井の頭公園へ。降り注ぐ日差しがあまりに心地よく、このままこの場所で人生を終えてもいいのではないか、という謎の希死念慮に襲われる。幸せすぎて天国と地続きになっているような、そんな感覚。
ところが、ふと横を見ると「排除ベンチ」が鎮座していた。ホームレスの人が寝られないように仕切りがついた、あの冷たい鉄のかたまり。
「公の園」と書くはずの場所で、何かを排除することで秩序を保とうとする社会の闇。ポカポカしていた心に、急に冷たいモヤが立ち込める。世界は、誰かの排除の上に成り立っているのだろうか。
夜はアマプラで『ファーストキス』を再鑑賞する。二回目、結末を知っているからこそ、序盤からワンワン泣いた。ふと「あれ、雨漏りかな? 頬が冷たいな」と思っていたら、自分の涙だった。画面が見えなくなるほどの落涙。
坂元裕二の脚本は、生活のディテールが細かすぎて、セリフの一つひとつが鋭利な刃物のように心に突き刺さり、温かい真綿のようにしみわたる。
過去を書き換えるのではなく、これからの「営み」を変えていこうとするささやかな希望。そこに胸が震えた。
映画をみ、定食を平らげ、砂糖に群れ、公園で日差しを浴び、夜は名作に溺れる。少し詰め込みすぎな気もするが、濃すぎる一日。
未来がどうこうではなく、今を必死に、のびのびと、たまにゆるっと、生きて、そして死んでいきたい。
またまた希死念慮。
