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砂の思い出【毎週ショートショートnote:お題「思い出相続税」】

田原さん、お題をありがとうございます。貼付記事以下、参ります。


真っ白な空間で私は目を覚ました。目の前には、巨大な机に向かい、古びた羽ペンを握る黒衣の男が座っていた。

「ようこそ、魂の世界へ。私は記録者。天に召された人々の歩みを一冊の本にまとめている」

彼は分厚い羊皮紙の束を撫でた。表紙には私の名前が刻まれている。その名前の役割が終わった時、その時間に置き去りにしてきた存在が、羊皮紙に刻まれた名よりも私にはずっと大切になっていた。

「私自身の記録はどうでもいい。残された妻は、あれから幸せな人生を送れたのだろうか。彼女の記録を読ませてはくれないか」

私は身を乗り出すようにして、記録者にそう請うた。記録者は羽ペンをインク瓶に置き、静かに私を見据える。

「あなたの大切な人、その歩みを知りたいのか? ならば払ってもらわねば」

冷ややかな声が響く。

「払う……?何を?」

私が戸惑いながら尋ねると、記録者は口元に微かな笑みを浮かべて答えた。

「彼女との一番美しい記憶を一つ頂こう」

やけにはっきり響く声に消され、大切な人の顔が消えていく。朧気になっていく笑顔が、私の名を呼んだ気がした。

                         --- Fin ----


450字

#毎週ショートショートnote
#思い出相続税
#お題で書いてみた

© 2023-2026 Harunaga Mutsuki


手を伸ばすのは彼か彼女か。挿絵としてniji 7にて生成(サムネ画像もniji 7です)

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