見出し画像

人なるか、ならざるものか 【毎週ショートショートnote:お題「夜桜系男子」】

田原さん、お題をありがとうございます。貼付記事以下、参ります。


夜桜を見にいくぞ。そう誘われた。「行かないか」ではなく、断定で告げるのが、いかにもその人らしい言い方だった。

彼は言う。昼間の桜は好きじゃない、と。見物人が多くてわずらわしい、立てる物音や話し声のせいで、折角の花見、気が散って叶わないと。

誘われるままに、誘った人の横を歩く。気付けば辺りはすっかり暗くなっていた。桜は満開から散り始め、盛りを迎えようとする濃桜色の花は八重桜だった。

街路灯の白い灯りに照らされて、八重桜は青味を帯びて見えている。青白く光る花の下にいる人、その肌は陶器のように見えていた。

「夜は花が近くていい。邪魔も入らないし、じっくりと味わうことができる」

その人はそういって薄い笑いをこぼした。

春はもはや終わろうとしていて、日中は汗ばむこともある、そんな季節だ。なのに、つと背中に冷たいものが走る。それは怖れか、それとも「予感」なのか。


桜の精を喰らう鬼が、昔はいたのだという。それは平安の都が色鮮やかな頃のお伽噺。

その末裔が今もいるのだという噂話を、その人に確かめようとして、思い留まる。私たちの横を、蒼い風が吹きすぎていった。


                                            — 完 —


470字

#毎週ショートショートnote
#夜桜系男子
#お題で書いてみた
#niji7
#AIでサムネ画像を作ってみた

©2023-2026Harunaga Mutsuki


やや「ネタばれ」?イメージ画像として。サムネ共々niji 7にて生成。

いいなと思ったら応援しよう!

春永睦月 拙稿をお心のどこかに置いて頂ければ、これ以上の喜びはありません。ありがとうございます。