散らばる闘志【毎週ショートショートnote:お題「誤解陸上」】
たらはさん、お題をありがとうございます。貼付記事以下、参ります。
( 498 字)
それは、スタートのピストル音が鳴った瞬間から、誤解と混乱でできていた。
象徴的だったのは100メートル走。定められたコースを走るはずのランナーは斜め前の曲がり角、トラックのコーナーに向かって走り出すもの、スタート位置から後ろを振り返り、ゴールを見失ったようにおろおろとする者、我関せずにゴールを目指す者。
8レーンにその位置を定められた走者たちは、バラバラの動きを見せていた。
この四散は、何の原因で起こったのか。審判たちは事態を収拾する目処も付かず、途方に暮れていた。
「あれでいい。あれこそが正しい姿だ」
そう言ったのは今回大会の顧問審判員だった。
「いかなる事態にも対応する。それが武士の心構えというものなのだ」
何を言っているんだ、この人は。問いかけようと声の主に視線を送ると、一冊の本を誇らしげに掲げてくる。
待機時間の選手たちに、しかと大和魂を叩き込んだと誇らしげに語る顧問を横目に見ながら、一人の係員は心の中で呟いた。
スポーツマンシップと武士道を混同するじゃない。それが誤解の元なのだ、と。
かの陸上競技大会が無事終了したのか否か。それは担当者に尋ねて欲しい。これにて結果記録を終わる。
#毎週ショートショートnote
#誤解陸上
#和解劇場
#CanvaAI

©2023-2025 Harunaga Mutsuki
いいなと思ったら応援しよう!
拙稿をお心のどこかに置いて頂ければ、これ以上の喜びはありません。ありがとうございます。