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月夜の床屋【毎週ショートショートnote:お題「月見バーバー」】

たらはさん、お題をありがとうございます。貼付記事以下、参ります。

(  520  字)


月が空の上、1番高いところに昇った状態を南中なんちゅうと呼ぶのだ、訳知り顔の床屋はそう言って薄い笑いを浮かべた。

1ヶ月に1日だけ、真夜中に店を開く風変わりな理髪店がある。儲けは度外視であるらしい。「食っていかれりゃ、それで充分なのさ。それは普段の営業で足りている。これはおとっときの趣味なんだ、俺の」そう言って、月が満ちる夜、夜空高く昇る月明かりに照らされながら、深夜営業の床屋、その商いがはじまる。

店主も変わり者だが、そこを訪れる客はもっと風変わりだ。彼らは揃って、どう見ても理髪の必要のない連中ばかりだった。満月に負けぬほどの輝きを持つスキンヘッド集団。サングラスを掛ける者がいたなら、その筋の人間にしか見えないだろう。

「何言っていやがる。俺ぐらい真面目な小市民はいないだろうが」

客のひとりはニヤリと笑ってそう言うのだった。全くもって可笑しな連中である。


かくしてスキンヘッドの常連客たちは、床屋の店主に頭を磨かれ、髭をあたられて、すっきりとした面持ちで帰宅に着く。最後の客を見送った店主が店の入口に鍵を掛けたとき、まだ月が残る空は藍色から水色へと変わっていた。

奇妙な夜、そんなお伽噺のある、月見理髪店のお伽噺。次の章は1ヶ月後に。



#毎週ショートショートnote   #月見バーバー #チラ見バーガー
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©2023-2025 Harunaga Mutsuki

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