【シロクマ文芸部:お題「夜に降る」】
小牧さん、お題をありがとうございます。貼付記事以下、参ります。
(561字)
夜に降る雨には星の欠片が混じっている。そんなお伽噺を聞いたことがある。日が一日一日と秋色を増していく日々、夜は少しだけとがった空気をまとって、そこに佇むものを包み込む。
ピンと張った空気、その中に混じる水は冷やされて小さな欠片になり、夜陰の風に紛れ込む。月が昇る夜には、月の光を注がれた欠片たちがキラキラと光り輝き、ガラスでできたビーズのように、秋の夜を彩っていた。
空気を掬うように両の手を伸ばしてみる。光の粒がふわりと手のひらに乗った。薄く積もった光の砂はすぐに夜風に攫われる。光の粒をまとった夜風が、月の光に照らされてキラキラと光っている。
あの砂粒を集めてみたい。それで砂時計を作ったならば、さぞかし美しかろう。時間の流れを図るためにではなく、時間を眺めるための砂時計は、眠れぬ夜のよき友になってくれそうだ。
私の脳裡にひとつの硝子瓶が浮かび上がる。指先で触れると、ガラスを通り抜けて、私の指先から硝子瓶の中へと光の欠片たちが移っていく。欠片は降り積もる。人知れずこぼした溜息にも似て、過ぎゆく時、その結晶として欠片は砂粒になり、サラサラとキラキラと、舞いながら瓶の底へと還っていくのだ。
朝が来るまであと二時間。夜が明けるまで二時間を切った。しばし見つめていよう。夜に降る、記憶の雨、その光の雫たちを。
— Fin —
#シロクマ文芸部
#夜に降る
#お題で書いてみた
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©2023-2025 Harunaga Mutsuki


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