凝結する過去【毎週ショートショートnote:お題「雪和尚」】
田原さん、お題をありがとうございます。貼付記事以下、参ります。
真夜中に雪玉を作る。日中に見かけるそれとは印象が全く異なる行動だ。夜の雪は降り積もってから経過した時間の分、それだけ重くなっている。
園芸用の移植ゴテを持ち出し、ほどよい大きさのバケツも持ってきた。コテを使ってバケツに雪を入れる。1度集めた雪を少しずつ取り出して、ほどよい大きさになるように丸めていく。
両の手に収めるには少し大きなくらい、子供が遊ぶ毬ほどの大きさになったら、丸める手を止め、雪の球体が固くなるように圧をかけていく。ほどよい固さを手が感じたならば、最後の仕上げのタイミングだ。
バケツは二つ。一つは雪で満たされ、あとの一つには水が入っている。ひしゃくで水を汲み、雪玉に少しずつかける。かけ過ぎては雪が融けてしまうから、慎重に少しずつ。
濡らしては握り、わずかに雪を足し、また握る。水の雫を垂らす。そうすると、白い雪玉はくもりガラスの輝きを発しはじめるのだ。
笑い顔、泣き顔、怒る顔。
幸せな顔、不運を嘆く顔。
くもりガラスの球体、その表面に様々な顔が浮かんでは消える。
消したい過去を閉じ込める雪玉。その名前を雪和尚と呼ぶ。その名付け親が誰なのかは、誰も知らない。
【完】
480字
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©2023-2026 Harunaga Mutsuki

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