サッカーの神様に祈ること
目覚まし時計を夜中の2時ぴったりにセットして、サッカーワールドカップを一人で見た。翌朝仕事の夫は2階で寝ていたが、どうやら階下から聞こえる私の声で敗退を悟ったらしい。
後半アディショナルタイム残り2分を切ったところでの失点は、あまりにも残酷だった。頭を抱え、無念の表情を浮かべる選手たち。それでも最後の瞬間までなんとか追いつこうと懸命に走る彼らを見ていると、痛々しくて胸が締めつけられる。
もういいよ、よくやったよ。
そんな過酷な状況から一刻も早く楽にしてやりたくなり、いっそのこと、試合終了のホイッスルが鳴ってしまえばいいのに、とまで思ってしまう。
われながら、メンタルが弱い。
私はドーハの悲劇をリアルタイムで見た世代だ。
大学生で、当時付き合っていた人と一緒にテレビで見ていた。
試合が終わったあと、私が何を言ったのかはよく覚えていない。「噓でしょう」とか、「信じられない」とか、ごくありふれた言葉だったと思うが、何度も繰り返していたのだろう。
普段は温厚な彼が、珍しく「しつこいなあ」と漏らした。しかも、わりと強い口調で。
きょとんとして黙り込んだ私に、彼は慌てて謝ってくれたが、あのときの彼の気持ちはいまだによくわからない。
彼は俄かサッカーファンだった私なんかより、日本代表をよく知っていたし懸命に応援していた。きっと私以上に悔しかったはずなのに、その感情を吐露することはなかった。
いつも優しくて、私をお姫様みたいに大切にしてくれる人だった。だからこそ、あの一言がいまだに忘れられない。
きっと私はこれからも、日本代表が今日のような悔しい負け方をするたびにあの日のことを思い出してしまう。
もう思い出したくなかった。
だから、私はサッカーの神様に祈る。
どうかもう二度と、私があの一言を思い出す日が来ませんように。
