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海外で育つ子どもの日本語。「漢字まで必要?」と思ったときに知ってほしい、脳と言葉の不思議

海外で子育てをしていると、こんな疑問を持つことはありませんか?
「家では日本語を話しているし、会話ができれば十分なのかな?」
「でも、日本語を読む力や漢字まで本当に必要なのかな?」
海外生活では、学校では英語や現地語、友達との会話も現地の言葉。日本語に触れる時間は、日本にいる子どもよりどうしても少なくなります。だからこそ、多くの海外在住の親御さんが悩むのが、
“どこまで日本語を続ければいいのか”
ということだと思います。今回は、少し違う角度から、日本語について考えてみたいと思います。実は日本語という言語は、世界的に見ても少し珍しい特徴を持っています。
それは、「ひらがな」と「漢字」という、性質の違う文字を同時に使っていること。そして、この違いは私たちの脳の読み方にも関係しています。

ひらがなは「音」を手がかりに読む文字

例えば、「ねこ」と書いてあった場合。

子どもはまず、

「ね」

「こ」

という音を覚え、それを組み合わせて「ねこ」という言葉を理解していきます。ひらがなは、基本的に音を表す文字です。そのため、文字と音を結びつける力を育てる大切な役割があります。小さな子どもが、まずひらがなから学ぶのは、このためです。

漢字は「意味」への入り口になる文字

では、

「猫」

という漢字を見たときはどうでしょう。もちろん「ねこ」という読み方も必要です。
でも同時に、

・動物であること

・小さい頃から知っている存在であること

・どんな姿をしているか

という意味やイメージにもつながります。漢字は、形そのものが意味と結びついている特徴があります。脳科学の研究でも、漢字とひらがなでは、読むときに関わる脳の活動パターンに違いが見られることが報告されています。ただし、「漢字は右脳、ひらがなは左脳」というように単純に分けられるものではありません。文字の特徴や、読む目的によって、脳はいくつもの領域を協力させながら処理しています。

海外の子どもに漢字は必要なのか?

私は、海外で暮らす子どもほど、漢字に触れる意味は大きいのではないかと思います。なぜなら、日本語に触れる時間が限られる環境では、
「知っている言葉の数」

だけではなく、

「言葉を深く理解する力」

が大切になるからです。

例えば、

「大きい」

「巨大」

という言葉。

どちらも大きさを表しますが、漢字を通して言葉の違いやニュアンスを感じ取れるようになります。文章を読み、考えて、自分の言葉で表現する。日本語で学ぶ力は、単に日本語が話せることとは少し違います。

日本語は「コミュニケーション」だけではなく「思考の道具」

海外にいると、「日本語を忘れなければいい」と思うこともあります。もちろん、家族と気持ちを伝え合う日本語はとても大切です。
でも、日本語で学ぶ力を育てるには、

読む力

考える力

表現する力

も必要になります。その土台になるのが、ひらがなで音を学ぶこと。そして漢字を通して、言葉の意味を広げていくこと。海外で育つ子どもたちにとって、日本語は「日本に帰ったときのため」だけのものではありません。世界を見るための、もう一つの思考の道具です。忙しい海外生活の中で、日本語学習の時間を作ることは簡単ではありません。
でも、一日少しでも。

一冊の本でも。

一つの漢字でも。

子どもの中に、日本語で考える力は少しずつ育っていくのだと思います。


参考文献・参考資料

・Sakurai Y. et al. (2000)

“Different cortical activity in reading of Kanji words, Kana words and Kana nonwords.”

Cognitive Brain Research.

(漢字・かな・かな無意味文字の読みにおける脳活動の違いを調査)

・Ino T. et al. (2009)

“Recognition and reading aloud of kana and kanji word: An fMRI study.”

Brain Research Bulletin.

(漢字とかなの認識・音読時の脳活動を比較)

・Nakamura K. et al. (2014)

“Inter- and Intrahemispheric Connectivity Differences When Reading Japanese Kanji and Hiragana.”

Cerebral Cortex.

(漢字とひらがなの読みにおける脳内ネットワークの違いを研究)


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