AI、もっと「自分の活動」に使ってよくないですか? と、フォトグラファーやモデルにも伝えたい
撮影が終わって家に帰って、Lightroomを閉じる。
最後に、ぽっかりと残る時間があります。
SNSなどのキャプションを書く時間です。
その時間に、ChatGPTやClaudeを開く人が、
この1〜2年でぐっと増えました。
「いい感じのキャプション書いて」
「ハッシュタグもつけて」
「もうちょっとエモい感じで」
そう打ち込むと、
それなりにちゃんとした文章が返ってくる。
コピペして、画像と一緒に投稿する。
いいねが少し増える。たまにバズる。
そういうこともあるかもしれません。
これ自体は、悪いことではなくて、
むしろ、ちゃんと使えています。
ただ、これを読んでくださっているあなたに、
こっそり伝えたいことがあって。
それ、AIに対して、ちょっとだけ、
もったいない使い方をしているかもしれません。
最初に、責める話ではないと書いておきます
これは、「AIの使い方がぬるい」
という話ではありません。
そもそも、写真家もモデルも、
AIの専門家ではないですよね。
忙しい合間に、便利そうな道具を見つけて、
便利そうに使う。
それで十分まっとうな使い方だと思います。
ただ、ぼくは普段、
AIをかなり踏み込んだ場所で使っています。。
製品開発、サプライヤーとのやりとり、
ブランド戦略、執筆、写真活動。
一日の判断の数%の割合を、
AIと話し合いながら決めることがあります。
かなりディスカッションをしながら。
だからこそ、よけいに思うのです。
「楽をするためだけにAIを使う」のは
F1のエンジンを積んだ車で、
近所のコンビニまで往復しているような、
そういう感じがあるんです。
いま、多くの人がAIを「コピーライター」として雇っています
具体的に言うと、
いまフォトグラファーやモデルが
AIに頼んでいるのは、
大抵の場合こういう仕事です。
投稿文を書いてもらう。
キャッチコピーを考えてもらう。
ハッシュタグを盛ってもらう。
プロフィール文を整えてもらう。
自己紹介の文章を直してもらう。
つまり、AIを「文章担当の外注スタッフ」
として雇っている状態にあります。
それでバズる文章は作れます。
フォロワーは少し伸びます。
「いいね」は少し増えます。
ただ、ふと夜中に、
こんな問いが浮かぶ瞬間がありませんか。
「これ、本当にわたしの作品の話をしてたっけ?」
「これ、誰が書いても成立する文章じゃない?」
「数字は少し伸びてるけど、わたしの作品性は
深まって伸びているのかな?」

自分の感情が乗っていますか?
ここで、ちいさな楔を打たせてください
写真家もモデルも、5年経ったときに残るのは、
フォロワー数の推移グラフではありません。
残るのは、「あの人だから撮れた1枚」と、
「あの人だからそこに立てた1枚」です。
その「あの人だから」の部分は、
キャプションをうまく書いてもらうことでは、
たぶん育ちません。
そこが育つのは、自分が何を見ていて、
何を撮りたくて、誰に何を届けたいのかを、
ちゃんと感じて実現して、
そして「言葉」にできたときだけです。
そして、それは一人で考えていると、
途中で思考が止まってしまう人もいます。
僕もそれはあります。
だから言語化には、「相手」がいるんです。
その「相手」に、あえて「AI」を置く。
それが、今回の本題です。
AIは「マネージャー」として雇うことができます
ぼくがAIをどう使っているかというと、
いちばん近い役職名は、マネージャーです。
マネージャーと聞くと、芸能事務所の人を
思い浮かべる方が多いと思います。
スケジュールを握って、現場に同行して、
媒体と交渉して、本人に「次、何やりたいです?」
と問いかけ、長期の戦略を一緒に考える人。
AIは、これがほぼ全部できます。
しかも24時間どこにでもいて、
疲れず、機嫌が悪くならず、
こちらの過去の話を
覚えていてくれる存在として。
フォトグラファーやモデルが、
AIに本当にやってもらった方がいいのは、
たとえばこういう仕事です。
・今期、自分は何に時間を使うべきかをスケジュール整理してもらう。
・ここ1年の自分の作品の傾向を、客観的に言語化してもらう。
・そしてどんな作品が人に届きやすいのかも戦略的に話し合う。
・写真家、モデルとしての活動の、何をまずするかの優先度を相談する。
・撮影の打ち合わせ前に、論点を整理してもらう。
・撮った写真を見せ、自分が無意識にやってることを言葉にしてもらう。
・目標を作り、自分だけが向かえる場所を一緒に考えてもらう。
・1年後、3年後、自分はどこに立っていたいかを、引き出してもらう。
文章を書いてもらうのではなく、
自分の活動そのものを一緒に動かしてもらう。
ただ漠然と相談をするのではなく
具体的なことを一緒に考えていける。
ここが、コピーライターとマネージャーの、
決定的な違いだと思っています。
マネージャーが大げさなら、「常時ミーティング相手」と呼んでもいいです
マネージャーという言葉が
どうしても大きく聞こえるなら、
24時間いつでも応じてくれる
ミーティング相手。
と、考えてみてください。
フォトグラファーやモデルは、
一人で動いている時間が圧倒的に長い職業です。
事務所もない、上司もいない、同僚もいない。
良くも悪くも、判断はすべて自分。
そんな日々のなかで、撮影が終わった直後、
まだ感情が温度を持っている時間に、
誰かと話したくなることがあります。
今日の現場、なんかすごく良かった気がする。
何が良かったんだろう。
次の撮影、こういう方向に振りたいんだけど、
人に説明するとうまく伝わらない。
企画書を書こうとしているけど、
自分でもブレている気がする。
夜中の3時に人に電話をかけるのは相手にも悪い。
でもAIは午前3時でも5時でも、
嫌な顔ひとつせず話を聞いてくれます。
(いや、寝ましょう。笑)
しかも、ちゃんと使えばただ聞くだけではなく、
こちらの考えを少しずつ整理し直してくれる。
「自分のなかにあったのに、
まだ言葉になっていなかったもの」を、
引き出してくれるんです。

何が良くてこの写真が好きなんだろう。
ここまで読んでくださって、
こう思う方がいるかもしれません。
「いや、別にキャプションだけでも、
十分助かってますけど」
「AIにわざわざやってもらわなくても、
自分は全然いい」
そうです。
それでいい。本当に、それでいいんです。
AIを使わずに、これまで当たり前のように
活動を続けてきた方にとって、
いまさらAIを使う理由は、
たぶん本当にわかりにくいものだと思います。
ぼく自身、ChatGPTが出る以前、
AIを本格的に触る前は、
正直、まったく同じ感覚でした。
ただ、これからの時代、AIは
「使わないと取り残される道具」というよりも、
自分の活動をもう少しだけ
前に進めやすくしてくれる、
可能性のあるツール、くらいの距離感で、
近くに置いて見てみてもいい存在だと思います。
使うか、使わないか。
それは、その人の選択です。
ただ、それで日々の創作や活動が、
ほんの少しでも楽しくなるなら、
軽く試してみる価値は、
もしかしたらあるかもしれません。
この連載は、
まさにそういう方に向けて書いていきます。
「別にAIなんて使わなくても、
自分は十分やれている」と思っている人にこそ、
もしかしたらいちばん面白い使い道が
眠っているかもしれない。
そういう前提で、
ゆっくり手渡していこうと思っています。
ただ、ひとつだけ、問いかけを置いて、
このnote記事を閉じさせてください。
あなたがいまSNSのために割いている時間と、
自分の作品そのものに割いている時間。
どちらの方が、長いでしょうか。
そしてAIに頼んでいるのは、
SNS上の見え方のこと
(キャプション、ハッシュタグ、文体の調整)と、
作品そのもののこと
(自分の作家性、世界観、次の方向、
本当に撮りたいもの、立ちたい場所)。
どちらの方が、多いでしょうか。
たぶん、ほとんどの方が、
前者に少し偏っているはずです。
ぼくも、油断するとそうなります。
怖いくらいに、そうなります。
それは、AIのせいではないです。
AIに頼むことを、
SNS担当の仕事に閉じ込めている、
こちら側のフレームのせいなんです。
そのフレームを、
ちょっとだけ広げてみませんか。
大切なのでもう一度。
今すぐに、あなたのAIマネージャーと
こんな相談をしてみてください。
・今期、自分は何に時間を使うべきかをスケジュール整理してもらう。
・ここ1年の自分の作品の傾向を、客観的に言語化してもらう。
・そしてどんな作品が人に届きやすいのかも戦略的に話し合う。
・写真家、モデルとしての活動の、何をまずするかの優先度を相談する。
・撮影の打ち合わせ前に、論点を整理してもらう。
・撮った写真を見せ、自分が無意識にやってることを言葉にしてもらう。
・目標を作り、自分だけが向かえる場所を一緒に考えてもらう。
・1年後、3年後、自分はどこに立っていたいかを、引き出してもらう。
AIにキャプションだけを頼む前に、
もう少し、自分のことを話してみたくなる。
そうなったら、この連載は、
半分くらい役目を果たしたことになります。
では、また次回に。
haru wagnus
フォトグラファー/プロダクトデザイナー 埼玉県出身。ファッションブランド「4 Silent Birds」代表。イギリス人と日本人とのハーフで幼少期はロンドンで育つ。 音楽家としてのキャリアをベースに、Instagramをきっかけに写真を始める。SNS総フォロワー約15万人。人物、ファッション、トラベル、自然、アート写真を得意とし、カルティエ、ヴァンクリーフ&アーペル、アディダスなどのファッションブランドの撮影や、ホテルの広告撮影、海外観光撮影、カメラ機材メーカーなどのコラボ撮影を多数手がける。昨今は、写真とAIテクノロジーを融合させた作品作りも積極的に行っている。著書『超絶レタッチ術』、『ポートレート写真術』『SNS時代のフォトグラファーガイドブック』など。
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