【ピリカ文庫】スイーツ探偵:和風ビスコッティでホッコリの巻
「時間を楽しむ、それが一番なの」
と先生はおっしゃって笑った。
「1・2・3・4・5♪」
「どうしたんですか?急に」
「ビスコッティで時間を楽しんでいるのよ」
スイーツ探偵の名にふさわしく、
先生は今日もスイーツを堪能している。
ワタシはこの探偵事務所の助手Cである。書類の管理から先生のお供までこなす。大学の授業がない時限定のアルバイトではあるが。
「え?お出ししたのは栗せんべいですけれど?」
「これはね、和風ビスコッティなの。和風ビスコッティとお言い!」
そこでまた「1・2・3・4・5♪」と数え始める。そしてコーヒーに浸された栗せんべ…いや和風ビスコッティを口に運ぶ。
「やっわらか~い♪」
「バリバリそのまま食べた方が早いのでは?」
そういってワタシは栗せんべいを1枚取り出しバキっと噛んでコーヒーを一口。十分美味しいじゃないか。早く食べ終われるし。
「もう、5まで数えて崩れる寸前を楽しむのがいいんでしょ!時間を楽しみなさいよ!」
と言いながら新しい袋に手が伸びる。もういったい何枚目なんですかとあきれていると事務所の外で大きな声がした。
この事務所は閑静な住宅街の中にある。通りに面してはいるが車の通りも少なく、人通りも多くない。
そのため、小さな悩み事を気軽に人目を気にすることなく相談できると評判なのだ。
日常に潜む悩みを速やかに取り去り解決後に共にスイーツを楽しむ、先生がスイーツ探偵と呼ばれるようになったのもこの辺に理由があるのだが。
先生、依頼人がいない時でもスイーツを食べていらっしゃる。
なのだが。大声を聞きつけた途端、
「なにかしら」
とサッと栗せんべいを置き、立ち上がる。
事件の匂いを嗅ぎつけると行動は素早い。こういうところはやはりプロだと感心する。
ドアを開けるとサラリーマンが2人、もめていた。
いったいどうしたんだろう?
「早く戻れ!」
「戻りません!」
「なにを!忘れたくせに!」
「それは申し訳ないと思ってます!」
2人ともかなり頭に血が上っているようだ。周囲の人も遠めに見ているだけ。ここは住宅地、時間は14時をまわったところで、か弱き女性と幼子しかいない。成人男性が在宅している時間ではないのだ。
仕方なくワタシが声をかける。こういう時は冷静なワタシが…
「うるせー!」
ボム、ドスッ。一瞬で払いのけられた。
若い方の男性が「あっ」と言ったが戻れと言っている男性は払いのけたことも気づかない。
「すぐ戻れ!それがベストだろ!」
もう警察を呼ぶしか、と思ったその時、
「静かになさい!」
先生の鋭い声が響き渡った。
スイーツばかりを食べているがここぞという時は声が通る。
予期せぬ鶴の一声に年上の男性もハッとして周囲を見回し、漸く人だかりに気づいた。目を丸くした老人、母親の洋服をつかんで怖そうに見つめる幼児。
自分達が場違いな声を出して言い争いをしていたと、やっと気が付いたようだ。
「くっ…」
「まあ、ここではなんですから。うちの事務所で落ち着いて話をしません?」
先生が優しく2人を事務所に誘導する。
「助手C!」
鋭い先生の声にピクリと反応して立ち上がる。さっとホコリを払ったワタシは、
「スイーツを共にいただきながら日常のささやかな悩みの解決をいたします」
と優雅かつ、にこやかな表情で集まった人達に事務所の名刺を配る。
突然の騒ぎを営業につなげられるよう、常に名刺を持つよう指示されているのだ。
スイーツを食べている姿からは想像できないが、なかなかどうして大したやり手である。
名刺を配り、いくつか簡単な相談を受けた後に事務所に戻ると、冷房の効いた部屋で男性2人がコーヒーと栗せんべいでホッコリしていた。
2人とも客先でのプレゼンに向かう途中、資料がないことに気づき言い争いになったそうだ。
先輩の方はすぐ戻れと騒ぎ、後輩はUSBがあるはずだからコンビニに行こうと提案。
しかし、カバンの中からUSBが見つからなかったため、イライラした先輩が怒鳴り売り言葉に買い言葉で言い争いが激しくなったのだとか。
悪いことに今日は35度近くの猛暑日。プレゼン用のスーツ姿ということもありイライラが加速してしまったようだ。
「コーヒーと和風ビスコッティ、めちゃウマっす~」
と後輩がホワン。
「お茶請けの栗せん…いや和風ビスコッティがコーヒーにつけると甘味が濃厚になってホロッと崩れて…」
先輩もホワホワとしている。
「美味しいのは良いのですが、USBは?急ぎなのでは?」
「大丈夫よ、ほら」
先生の視線の先を見るとプリンタがご機嫌な様子で動いている。
「USBはスーツの内ポケットに入っていたの。だから」
「待ち時間でスイーツタイムですか」
「プリントアウトした資料を忘れた僕が悪いんですけれど」
「いや、せかして会社を出した上、探す時間を与えなかった俺も悪かった」
フワワ~ンとなっている2人を見ながらドヤ顔で、
「時間を楽しむ、それが一番なの」
と先生はおっしゃって笑った。
🌰🌰🌰
声をかけていただいた時は感激しつつも、
私で良いのか?
とふるえました。
私は雑文書きのため、
ピリカ文庫と無縁だと思っていたので。
noteを書き始めて、毎日投稿を苦にしたことが
実はなかったのですが。
緊張で何日か書けない体験もしましたし、
最初書き上げたものはボツにしました。
緊張したのか毎日noteは1投稿と
決めているのを忘れ、
18時に平常投稿しちゃうし😂
でもピリカ文庫にうんうん言っている間、
とても楽しかったんです😊♪
貴重な体験いただき感謝しております😊
これからも精進いたします🙌
