日出処の天子ごっこ
妹が急に仕掛けてきた。
コタツに入って寝ていると思ったから、気を使って静かにしていたのに。
まさか、うつ伏せにそんな理由が隠れていたなんて。

「王子ぃぃぃっ!って叫べよっ!」
うつ伏せ状態から突如起き上がった妹は怒鳴った。
「え?え?もしかして今、厩戸王子?」
「そう。今、コタツは夢殿」

「え?えーっ。じゃあ、自動的に毛人(えみし)になっちゃうじゃん!毛人やだ!王子がいい!」
「ダメ!早い者勝ち。コタツから出て。ドアを開けて王子を見つけるシーンから」
毛人役は嫌だとさんざん文句を言ったが結局、コタツから追い出され夢殿で倒れた王子に声をかける毛人を演じた。
「王子ぃぃー!」
姉妹で「日出処の天子」の大ファン。リスペクトしているからこその遊びであった。
あーあ。厩戸王子役、やりたかったな。
妹は最近、「日出処の天子」を知らない知人を、こちらの世界に引き込むために全巻貸した。
その友人の感想。
「目からビームってひどくない?怖いよ」
そこじゃなくて作品全体を見て欲しかった。
王子は超能力者ゆえに優れていたし、悲しみも背負っていたんだもの。目からビーム出したっていいじゃないか!
ファンでない人が読むと、超能力の部分が異様に見えることがわかった。推し活動が最近は推奨される傾向になりつつあるが、十分注意して行うようにしたい。
高校では世界史クラスを選択。理由は「ベルばら」や「7つの黄金郷」など、世界を舞台にした名作漫画の影響をもろに受けていたから。
実際、世界史クラスの「ベルばら」率はかなり高かった。「ベルばら」で受験科目として世界史を選んだ人は意外と多いのではないか?受験以外でも人生の選択時に影響を与えた漫画はかなりあると思う。
「エロイカより愛をこめて」に影響されてドイツに留学した友人いるし。
ただ、世界史を「ベルばら」好きという理由だけで選んだ友人は、古代中国では「フランス貴族だけを学びたい!」と叫んでいた。古代中国の国の多さは半端ない暗記量だったからだ。
「日出処の天子」を知ったのは世界史クラスを選択した後。友人が学校に持ってきて回し読みをしたことがきっかけだった。すぐ本屋に走って購入。
選択前に出会っていたら日本史クラスを選んでいたかもしれない。それくらい影響を受けた作品だ。「日出処の天子」好きの友人達と奈良旅行もした。夢殿の前で悶絶する高校生は、地元の人の目にどう映っていたのだろう?
古文は苦手だったのに「あさきゆめみし」を読んだら、突如得意科目になった。流麗な絵にうっとりしているうちに古文を目でなく心で読むようになっていたのであった。
