シャッターチャンス
20年間写真の現場で働いててシャッターチャンスという言葉を一度も耳にしたことがない。
「いまがシャッターチャンスだ!!えいやっ……カシャ…」なんてことはないし、デザイナーや編集者から「シャッターチャンスです!お願いします!!」なんてこともいわれない。
映画や漫画でシャッターチャンスという言葉が出てくると、デザートをスイーツと呼べない恥ずかしさと似たものを感じる。
だけどシャッターチャンスのニュアンスは理解できる。いまがいい感じということだろう。
そのへんは現場で耳にしない言葉の代表格、三分割構図とはずいぶん違う。三分割構図で撮りましょうって教えてる人たち三次情報で教えてるやろ。三分割だけに。
シャッターチャンスのニュアンスはわかる。だけど誤解が混じっているようにも感じる。シャッターチャンスを決定的瞬間と捉えている人が少なくない。スナイパーが一撃必中の狙撃をするようなイメージだ。
写真で決定的瞬間を撮ることは難しい。なぜなら人間は未来を予測できないからだ。
写真は決定的瞬間が起きてからカメラを構えるからいつもちょっと遅れる。映像は決定的瞬間が撮りやすい。決定的瞬間が起きる前から撮影して、決定的瞬間とその後も流れで撮影できる。
ドライブレコーダーや防犯カメラは決定的瞬間の宝庫だ。
決定的瞬間が繰り返される場合は写真も撮れる。例えば料理のシズルや野球選手のフルスイングみたいなものだ。
何度でもチャンスがあるし予測もできる。そもそも撮れるまで何度も繰り返す。
結婚式の撮影を頼まれて緊張する…みたいなことがあるかもしれない。
「一瞬を切り取る、撮り直しができない、失敗ができない」って思いがちだけど、準備から挙式と披露宴まで合わせりゃ5時間ぐらいある。5時間もあればいくらなんでも撮れるだろって話だ。
シャッターチャンスはワンチャンスではない。
写真の現場におけるシャッターチャンスは決定的瞬間ではなく光だ。
シャッターチャンスという言葉は聞いたことがないけど「太陽待ち」「日待ち」「光待ち」「天気待ち」「天気予備」という言葉は耳のテルテル坊主がタコを吊るすぐらい聞いている。
新人のころロケ現場で雨が降ってきたから折りたたみ傘を使ったら「折りたたみ傘をもってくるなんて縁起が悪い、雨が降ると予想してたんかワレ!?」と先輩に怒られたことがある。
ぼくは先輩のことを旧日本兵と影で呼んでいた。
雨が降っても傘をさせないから、必然的に撮影スタッフはゴアテックス素材のジャケットを着る(さすがに縁起由来ではないと思うけど)
明るい服もNGだから制服のようにノースフェイスの黒いジャケットを着る。
おしゃれスタッフにはアークテリクスやパタゴニアが人気で、コスパを重視するスタッフにはモンベルも人気だ。外国人のクルーには極度乾燥しなさいも人気だ。
テレビやドラマの撮影現場に遭遇したら、技術スタッフの服を見てほしい。マジでみんなこれだ。
先日、宮城県の白石という街でロケをしていた。天気はどん曇りで写真としてはかなり厳しい。


天気予報を確認すると翌朝は天気が回復するので、翌朝また撮影した。日の出が6時なので5時起きだ。これが真夏だと3時起きになる。冬は時間が遅くなるかわりに寒い。
光がいい状態で撮るとこうなる。曇りとは大違いだ。ちなみにNGカットなので掲載している。


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