悪たれ口。働きアリの語る怪談昔話。その弐~言霊~
こんばんは、アリゼロです。
この前書いた、怪談昔話が思ったより好評だった?(と、私は信じてる)みたいでまさかの続編です。
コメントいっぱい頂けて嬉しいです😃ありがとうございます。
今宵も必ずあなた様を恐怖のどん底に落として見せましょう。
さぁ、今のうちにトイレに行って、歯を磨いておいた方が良いと思いますよ?
言霊
人の言葉には魂が宿ると言われている。
悪い言葉を言えば、人を殺す事もできる。
暖かい言葉を言えば、人を助ける事もできる。
自分の言った言葉には魂が宿り、自分自身に返ってくるのだ。
そして世の中には、うっかり言ってはいけない言葉がある。
これは前の会社にいた、ある男の話だ。
この会社には身勝手な社長がいたが、その社長の娘もとんでもない人物だった。
遅刻、欠席、早退、会議バックレなんでもOK。
遅刻も早退も全て自分でタイムカードを操作し、なかったことにする。
事務員なのに電話にも出ない。
だから、さっきからずーっと電話が鳴りっぱなしなのだ。
だが会社を辞めさせてしまうと、この娘は社会で生きていけない。
それがわかっているからクビにも出来ず、社長も手を出す事が出来ない。
この社長の娘は会社で気に入らない人がいると、皆の前でその人の事をこう言うのだ。
「あ、ゴキブリがいる」
こんな人間だ、社内ではいつも陰で悪口を言われていた。
男も、社長の娘の悪口をゲラゲラとよく言っていた。
「あんなのと結婚したら人生終わりだ」
「まじで関わりたくねぇ、あいつやばすぎだろ」
いくら相手に問題があっても、かなりひどい言葉だ。
周りで誰が聞いているかわからない会社では、このような事は言ってはいけない。
悪口は言っても、何も解決しない。
負の感情は伝染し、周りの雰囲気も悪くする。
そして呼び寄せてはいけないものを呼び寄せる。
当たり前だ、自分で聞こえるように声に出したのだから。
そう、呼んでしまったのだ。
ある夜勤の夜、男は同僚Aと喋っていた。
同僚Aは今でいうところのイケメン、実は社長の娘は同僚Aの事を気に入っていたのだ。
同僚Aはその事を嫌がっていたが、普段から男はその事をからかっていた。
もちろん同僚Aも社長の娘は嫌いだ。
ある夜、同僚Aと更衣室で会った。
少し様子がおかしい気がする。
男「どうした?昨日スロット行くって言ってたけど10万位負けたのか?(笑)」
同僚A「・・・いた」
男「いた・・・?何が?」
同僚A「スロット打ってたら・・・後ろにあいつ(社長の娘)がいた・・・」
男「・・・(絶句)」
同僚A「一言俺に、「タノシイ?」って聞いてきた」
男「ぇ・・・」
同僚A「楽しいですけどって返事したら、そのまま何も喋らずに後ろを向いて店から出て行った・・・」
男「社長の娘ってスロットやらないよね?同僚Aに会う為だけに店に行ったってこと?」
同僚A「そうに決まってるだろ!!なんであいつが、俺があの時間にあの店に居るの知ってるんだよ!お前が言ったのか!?」
男「いやいや!俺があいつと喋るわけないじゃん!というか俺も、お前が何時にどこの店にいたのかは知らないよ!」
同僚A「そうか・・・そうだよな、悪い、悪かった。かなり怖くてさ・・・」
男「いや、いいんだ。まぁ、誰かお前がよく行く店の名前を言って、たまたま社長の娘がお前の車を見つけて店の中に入って、話しかけただけじゃないのか?」
そんな訳ないと2人は心の中では思っていたが、互いにそれ以上の言葉が出なかった。
だがその日以降、社長の娘は同僚Aには近寄らなくなったそうだ。社長の娘はギャンブルが嫌いで、ギャンブルをする同僚Aに興味がなくなったのではないかと会社で噂された。
夜勤は3人でやっていた。男、同僚A、同僚Bの3人だ。
割と3人とも仲が良くて、勝手に相手のスマホで音楽をかけたりしながら、楽しくのんびりと仕事をしていた。
規則正しく鳴る機械の音。
人の気配もなく、音も少ない静かな工場。
そんな中、夜勤では聞きなれない音が聞こえる。
ㇷ゚ㇽㇽㇽㇽ プルルルル プルルルルル
3人は顔を見合わせる。
時刻は深夜2時だ。
夜勤の電話は良い事はない。
いたずら電話、間違い電話、誰かの訃報。
同僚Bが受話器の近くに行き、電話番号を見ているが様子がおかしい。
男「どうした?面倒なら俺が電話取ろうか?」男は受話器に近づいていく。
同僚B「社長の娘だ」
その瞬間、男も同僚Bも顔をしかめた。絶対ロクな内容ではないからだ。
男「少しほっといて、受話器あげて放置しておこう。」
同僚B「そうだな・・・電話取ろうとしたんですけど、切れちゃって、受話器ちゃんと戻してませんでした、スミマセンデシターとでも言っておこう」
男「後で誰か受話器戻しておかないとな・・・面倒くせぇ」
こっちを見ていた同僚Aも事情を察してくれたようだ。
3人はまた仕事に戻る。
するとすぐに同僚Bの携帯電話が鳴りだした。ブブブブブ ブブブブブブ
うんざりした顔で同僚Bは言った
同僚B「社長の娘だ・・・」
緊急の可能性もあるので、仕方なく同僚Bが電話に出て話した。
そうしたら15秒位で会話が終了する。
男「なんだって?」
同僚B「猫に朝、餌をやっておいてくれって・・・」
2人は呆れて沈黙する。
この会社で猫は飼っていない。社長の娘が近所にいた猫に、わざわざ会社の敷地内でご飯をあげたのだ。ふっくらしてるし、毛並みもいいし、首輪してるからどこかの飼い猫だと思うのだが。
猫はかわいいが、問題がある。
品質に厳しい製品を作っている工場で、化粧品や医療品も多く、毛の混入とか大問題になってしまうのだ。
自分の親の会社なのだから、トラブルを持ち込まないで欲しい。
身の回りにあるものが、あって当たり前だと思っているのだろう。
男は笑いながら言った。
男「だから、普段から社長の娘と電話で話すなって、お前完全に社長の娘の相談役になってんじゃん。結婚でもして会社の重役にでもなるつもりか?」
同僚Bは面白くなさそうに、笑ってごまかした。周りからこんなことばかり言われてうんざりしていたのだろう。
相手の気持ちも考えずにこのような事を言ってはいけない。
何の得にもならない、信用も失う、いつか自分が言われる側になる。
呼び寄せてはいけないものがどんどん近づいてくる。
3人の男は気づいた。あれ、これ猫の餌をやらないと俺ら家に帰れないんじゃないか?いつ来るのかわからない猫にご飯をあげないと帰れない状況に3人は絶望した。
この日、結局猫は来なかった。そして猫にご飯をあげなかった同僚Bは社長の娘から理不尽な文句を言われた。それ以来電話でも話していないそうだ。
相変わらず、会社内で社長の娘の悪口は続いた。
いつ結婚するんだ、もう何歳だ、誰があんなのと結婚するんだとか。
社長の娘に気に入られた奴かわいそーとか。
社長も娘を結婚させたくてしょうがないらしいよ、とか。
毎日毎日同じ事をグダグダと話す、こんな非生産的なことはない。
結末はあっさりしたものだった。
社長の娘が他のトラブルを起こし、取引先に迷惑をかけ社長の堪忍袋が切れ、会社をクビになったのだ。
そして会社に平和が訪れた。
目障りな人間がいなくなると、一時的にだが雰囲気が良くなったように感じるものだ。だがまた似たような別の問題が起こる、そしてまた同じ悪口を言う。
会社の雰囲気はどんどん悪くなっていく、そんな会社は成長しない。
このような悪口を何というかご存じだろうか、諸説もろもろあって意味が正確に定まっていない所もあるが、こう言う。
悪たれ口
平和になった会社で、工場のシャッターが開く
社長だ
嫌な奴がきたな、と心の中で思いながらもあいさつをする。
社長はまっすぐ男の所に歩いてくる、心なしかいつもより早足だ。
そして男に向かってこう言った。
「アリゼロ、お前結婚とか考えている人いるのか?」
働きアリの語る怪談昔話~言霊~ 完
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呼んではいけない、こっちにきてしまうから
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