レポの基本:現先取引と現担レポ取引
これまでいろいろレポについて説明してきましたが、レポについて簡単に基礎的な内容を記載しておきます(今後必要に応じて加筆・修正します。不正確な記述や追加したほうが良い点等があればご指摘ください)。
現先取引とは
現先取引というのは、その名前の通り、現在、売って(買って)、将来、買い戻す(売り戻す)取引を指します。例えば、読者が国債をもっていて、現先で資金調達をしたいとしましょう。この場合、国債を私にうって、その時価を受け取ります。例えば、読者が360回債をもっており、時価が100円だとすれば、読者が360回債を売って、時価である100円を受け取ります。下記がそのイメージ図です(レポのスタート時)。
<スタート>

例えば、この契約が1年後だとして、レポコスト(レポレート)が1円(1%)とします。この場合、1年後に、全く逆の取引をします。すなわち、読者が私から国債を当時の時価で買い戻して、私に国債と共にレポコスト(賃貸料)を支払います。この場合はレポコストが1円だから、101円私に渡して、360回債を受け取ります。下記がそのイメージ図です(レポのエンド時)
<エンド>

この実体をみれば、「国債を売って、100円を受け取り、1年後に国債を買い戻すため、101円を支払っている」ため、読者は「国債を担保に100円を借り入れ、利息として1円、借りた100円を返済する」という経済行為をしていると解釈できます。そのため、売って買い戻すという現先は(法律等で違いがあるものの)経済的には担保付き借り入れと同じことになります。ここでは「売って買い戻す現先」を「借入」と解釈しましたが、「買って売り戻す現先」は「貸出」と同じと解釈できます。
ここでは単純化のため、レポレートを1%の値にしました。現在はマイナス金利なので、読者は100円で借り入れて、例えば99.9円を返す(レポレートは−0.1%)というような取引になっています。また、ここでは単純化のため1年間の取引を考えましたが、1営業日や1か月など、様々な期間がありえます。短い取引ほど流動性がありますが、数か月というのも普通にあります(データは後程確認します)。
また、ここでは1年としていますが、時価が動いた場合は値洗い(マージン・コール)がある点に注意してください(マーケットが大きく動くとマージン・コールが急増するというイメージです)。国債についてはいわゆるヘアカットは基本的にありません。
現担レポ取引(現金担保付き貸借取引)
我が国のレポ市場では歴史的経緯により(これは後述します。私の論文のBOX3にちょろっとかいています)、現先ではなくて、担保付きの貸借が広がっていました(繰り返しますが経済的には現先と同じです)。これを「現金担保付き貸借取引」(現担レポ取引)といいます。いまでも半分くらいのレポ取引は、現担レポ取引になります。
現担レポ取引で気を付けないといけないのは、あくまで「現金が担保であり、債券を貸借している」という点です。そのため、主語は国債(玉)です(この理由は後述)。したがって、先ほどの例のように、読者がお金を借りたいとしても、読者は国債を出すので、下記の図のとおり、「読者は国債を貸し出し」て、「担保としてお金を受け取る」ということになります。これは国債を担保にお金を借りていることと同じです。
<スタート>

エンドでは、その逆に、読者が国債を返してもらい、担保金を渡すということになります。そのコストについては、読者は債券を貸していたので、債券とともに債券の貸借料(品貸料)を受け取ります。一方、担保金を受け取っていたので、担保金に利息を付けて渡すということになります。下記がエンドの図です。
<エンド>

大切な点は、現先取引も現担レポ取引も同じ行為ですが、現先取引にはレポコストしか出てこなかったのですが、現担レポ取引では、現金を担保に債券の貸し借りをすると考えるため、「利息(付利)」(担保金の受け渡しから発生)と「賃貸料(品貸料)」(国債の貸借から発生)が出てくる点です。もっとも、現先取引と現担レポ取引の経済性は同じになることから、
現先のレポレート=現金担保の「利息(付利)-貸借料(品貸料)」
が成立します。この式は、東京マネーマーケットだと、p.164に記載があります。
市場慣行で、現担レポ取引の利息は「付利」ということが多いようです(東京マネーマーケットでは、「担保金利率(付利金利)」と記載しています)。なお、Bloombergでは、現担レポ取引と現先取引のPVを計算することができ、両者でPVが同じになることも確認できます(両者は法的やドキュメンテーションなどの観点で違いがある点に注意)。また、現担レポでは、付利と品貸料があるものの、現担レポ取引でも基本はファンディングであるため、その結果、決まるものは金利(レポレート)であり、マーケットでの商慣行では「利率(付利)」を0.01%とデフォルトとし、貸借料を定めます(東京マネーマーケットでも事例は0.01%とされています)。
なぜ「現金担保」の債券貸借取引か
これまでGCレポはファンディングのために用いられることを強調してきた説明をしたため、なぜ「債券担保」による貸借でなくて、「現金担保」による貸借なのか、という疑問を持つと思います(私が最初、東京マネーマーケットを読んだときはこういう疑問を持ちました)。これは私の意見では、現先と合わせるためだとおもいます。
現先はあくまで国債の売買をして、それが事実上、資金調達になっているという話でした。現先の主語は国債になりますから、貸借取引でも、あくまで「国債」が主語とし、その取引のために現金が担保として用いられていると整理されているのだと思います(この辺りについて歴史的な記載が分かればまた追記します)。実態としてはファンディングだとしても、貸借についても「現金を借り入れる」というわけでなくて、「国債を借り入れる」という風にして国債の方向を合わせておいた方が現先との関係で混乱が起こりにくいというわけです。
したがって、レポ取引はあくまでも、主語は国債(玉)なので、売買するときも、買い注文(ビット)は国債を買う、売り注文(オファー)は国債を売る、と表現します。つまり、レポ取引においてビットとは国債を買って、現金を出す一方、オファーとは、国債を売って、現金を受け取る行為です。前述のとおり(下記のリンクを参照)、(日系の)証券会社は常にお金を借りたいので、基本的にオファーサイド、一方、信託銀行はビットサイド、ということになります。
日銀統計からみたGCレポ市場|服部孝洋(東京大学) (note.com)
なお、より詳細を知りたい方は下記の5・6章をご一読ください。
