入札のケーススタディ:2026年7月15日の国債入札でGPIFの購入があったのか②
先日下記のメモを記載したのですが、意外と反響がありました。日本の場合、特定の大きなプレイヤーがいるので、入札の結果をみて妄想しやすい側面があり、多くの人が盛り上がりやすいのだとおもいます。一方、米国債の入札の場合、プレイヤーが雑多なので、そういう側面は少ないのではとおもいます(今は消されてしまいましたが、JGBと米国債の両方でトレーディングの経験がある人が、米国の場合、証券会社にいても取引全体が想像しにくく、入札そのものがそれほど大きなイベントになっていないということを記載していました)。
今回は、その後も、GPIFが買ったのかということでいろいろと議論されているので、それも数か月すると忘れられるので備忘録的に記載しておきます(入札のケーススタディです)。
GPIFがPDに注文を出した可能性
まず、議論されているのはGPIFが直接落札しただけでなく、PDを通じて発注していたのではという議論です。私個人は、役所にいた経験も含め、不祥事があった後に、こういうことは起こりにくいとは思うのですが、GPIFがPDを経由せず、1,000億円を落札していて、一方、PDに発注して1,000億円札をいれていた、みたいなことは可能性としてはあります。
第二非価格競争入札の枠がどれくらい行使されたか
前回、「第二非価格競争入札の結果は389億円です。この入札はPDの10%までしか行使できません。ということは、証券会社(PD)を経由した落札分は3,890億円ということです」と書いたのですが、PDがすべて第二非価格競争の権利を行使するとは限らないという点も大切です。例えば、PDが5,000億円落札して500億円分を第二非価格競争入札の権利として行使できるとしても行使できるとしても、389億円だけ第二非価格競争入札で行使するということはふつうに起こりえることです。
これは「非価格競争入札入門」という文章をかいたとき、色々と調べましたが、データをみると、後場の金利動向で第二非価格競争入札が行使されるかを完全には説明できません。実際には、業者の在庫状況などによって、後場に価格が上がっても、行使しないというのはかなりあるということです。なので、そもそもPDを通じた購入がそもそも多いという可能性もある(「証券会社(PD)を経由した落札分は3,890億円」という金額はあくまでPD落札の最低額である)という点に注意が必要です。
その意味で、非価格競争入札を考えるうえでも今回はよい事例だなとおもいます。このあたりは日本国債入門8章を改めて読んでほしいです。
リバランスの観点
あと、GPIFが1,000億円や2,000億円をかっていたとしても、リバランスの観点でこういうことはあり得るのではないかという議論もなされました。GPIFは300兆くらいの規模で4資産を25%でもっているので、国内株式が1%上昇すると、1,000億円以上、国内債券にリバランスによる買い需要が生まれてくることになります。構造的に、株高、債券安がずっと続いているので、国内債券への買い需要がかなり大きい可能性があります。
これについては日経の記事が出ていて、「保有株式の時価総額が膨らむ中、資産配分を調整する目的(リバランス)で国内債券を買い進めたためだ。4~6月は約7兆円の買いになったとの見方もある」という数字も議論されています。このように考えると、GPIFが仮に1,000億円をかっていても、これはふつうにあることであり、政府に配慮したわけでもなんでもないということになります。
ファクシミリ新聞の報道
ファクシミリ新聞から「非市場性国債を検討へー財務省、市場の信用回復で」という報道が出ましたが、これは市場参加者の中の話では、これは誤報のようです。ちなみに、私個人は検討する価値はあると思っています(下記のようなポストもしました)。
GPIFの入札は市場攪乱要因になりえMOFにとってもメリットがないし、GPIFにとっても変な憶測を生みます。公的年金であり広義の政府内の資金移動なので、GPIFは入札の平均価格や落札価格で買うというのもありかもしれません。市場参加者の方はどうおもうでしょうか。 https://t.co/F7quuchsVM
— 服部孝洋(東京大学) (@hattori0819) July 15, 2026
レポ市場の緩み
私が面白いなと思ったのはレポをみるものです。レポ市場をみると、GPIFが買ったとは思えない、ということです。レポのデータは外から見れないので、市場参加者の生の意見を聞く必要があります。なお、レポの基本についてはマネー・マーケット入門の5・6章をみてみてください(「緩む」などの表現もきちんと説明しています)。
JL197のレポの緩み方見てると、入札いったプレーヤーが売ってる気がする
— bb8 (@b24288375) July 17, 2026
よってGPIFではないね https://t.co/R64ywjnAaX
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ざっと思いつく論点を記載しましたが、これ以外にもあれば追記しようとおもいます。円債市場は、相場の変動に対して、色々と解釈していくのが面白い部分であり、今回はGPIFの運用やガバナンスについて考える良い機会であると思いました。
政府による介入について議論がなされていますが、そもそも今のGPIFのポートフォリオ自体も安倍政権によって政治的に決められたものです。今、4資産を25%づつとするポートを有しており、これがずっと続いていますが、そもそも円金利が上昇している中で、株のウェイトを維持している理由も、政治等の観点で、株の保有を減らせないのでは、という見方もあるとおもいます(市場参加者も基本ポートはポリティカルな影響を受けていると考えており、国民の資産であるため、もっと議論してもいいのではとおもいます)。
GPIFと政治との関係が最近議論されますが、今の基本ポートフォリオは安倍政権時に株式のウェイトを大幅に上げるという形で政治的に決定されたものです。当時は賛否両論ありましたが、結果的に高いパフォーマンスにつながりました。その経緯はこの書籍が詳しいです。 pic.twitter.com/LOJJJ5JsZT
— 服部孝洋(東京大学) (@hattori0819) July 16, 2026
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