2年物の共通担保オペについてのメモ

日銀が2年物の共通担保オペを1月4日に実施すると公表したようです。日銀のリリースを見ると、オファー額は10,000億円であり、貸出金利が0%、期間は、2023年1月5日から2025年1月6日ということになります。

共通担保オペとは、直感的には、日銀に担保をだして、日銀から一定期間お金を借りられるオペレーションです。今回の2年物の共通担保オペとは、国債など、日銀が適格とする担保を出すことで、2年間金利0%で借りられるという政策です。

報道では、日銀が短期金利の上昇圧力を低下させるために実施したと説明されます。要は、投資家は2年国債を買って、それを担保に2年間、日銀から0%で借りられれば、2年債ロングのアービトラージができます。BBの引け値(29日)だと、2年が3.5bpsなので、投資家はマーケットで、3.5bpsで国債を買って、それを担保に日銀から0bpsで調達することが出るので、限度額10,000億円を上限に、2年債ロングのアービトラージができるわけです。下記がそのイメージです。

このアービトラージは、投資家に2年債ロングを促すので2年債の金利低下に寄与します。もちろん、上限が10,000億円ですが、供給量が十分で、裁定が働ければ理屈上は2年国債の金利は0%近傍になるはずです。投資家のアービトラージを促すことで、日銀が企図した方向にマーケットを誘導するという意味では、今年の6月に実施した補完供給オペの要件緩和などと類似的な政策とみることもできるかもしれません。

共通担保オペは、金利上昇時に日銀がかつて実施した戦略です。今でもよく覚えているのですが、2013年4月の金利上昇時にも、日銀は共通担保オペを打ちました。自民党が選挙に勝ち、黒田さんが総裁になり、日銀が緩和的な政策をとってくる機運の中で、2013年4月に日銀がQQEを発表した直後、金利が大幅に上昇しました。私の妄想もあるかもしれませんが、2013年になって国債市場がラリーしていく中で、材料が出尽くしたQQE発表直後、投資家が国債を売って利益確定した行為が、金利上昇を招いたと理解しています。

当時の金利上昇局面でも、日銀は、共通担保オペを打ちました。当時の報道をみると、2013年時点では、1年物の共通担保オペが打たれています(後述するとおり、この時点では1年を超える共通担保オペは導入されていませんでした)。日経の報道によれば、2013年以降では、2年物の実施は初めてとしています。

当時の共通担保オペは、効果があったとされており、黒田さんは2013年6月の会見で次のようにコメントしています。

「本日の金融政策決定会合において、いわゆる1 年超の共通担保オペを導入するかどうかや、そのメリット・デメリットについて、議論があったことは事実です。これまでのマーケットの状況をみて、長期国債の買入れオペ自体を相当弾力化してきましたが、それが一定の効果を持ったことは市場関係者も認めているわけです。他方、1 年までのいわゆる共通担保オペが何度か行われ、それが効果を持ったことも事実です。さらに、市場参加者との意見交換会では、1 年を超える共通担保オペを検討してはどうかというご意見もあったようで、当然、これについても議論しました。

結論を申し上げると、現時点では、1 年を超える共通担保オペの導入は必要ないのではないか、ということになりました。1 つの理由としては、日本銀行が行っている巨額の国債買入れは、リスク・プレミアムを圧縮する効果があるわけですから、毎月毎月オペを重ねていくことによって、その効果がさらに強まっていくことがあります。もう 1 つの理由は、そうした政策効果をより効果的に発揮させるためにも、市場参加者の意見なども聞きながら、長期国債買入れオペを必要に応じて、より弾力的に運用する──買入れ金額、買入れ頻度、残存期間などについて、弾力的に運用する──方針が、一定の効果を持っているわけです。今後も、必要に応じて弾力的にオペを行うことにより、金利の跳ね上がりや、特にボラティリティの上昇を抑制するよう対応していけるということです。 」

2013年当時は共通担保オペの年限を伸ばすかどうかについて上記のとおり、議論があったのですが、YCCを導入した2016年9月の決定会合で1年から10年に期間を延ばしています。この点に注目すると日銀はもっと長い期間の共通担保オペを打つ余地がある点も理解しておく必要がありそうです。

共通担保オペについては、日銀のオペに参加できる金融機関を対象にしている点も重要です。2013年4月時点に比べて、現在、金融機関がどれくらい活発にアービトラージに参加できるかもポイントかもしれません。2022年6月の先物暴落時も、アービトラージをする投資家に体力が残っているかなどが議論されたと記憶しています。

日銀が10年金利のレンジを±0.25%から±0.5%にした後、各年限の金利が上昇しているわけですが、2年債に着目すると、12月の決定会合後では-0.02%であったところ0.035%まで上がってきています。(タームプレミアムなどを捨象して)2年債が短期金利を2年間ロールした場合の金利と解釈すれば、市場では利上げが織り込まれ始めているとも解釈できます。

12月末に実施された、2年国債の入札は無難と報道されていますが、テールは2銭4厘であり、この水準では需要があまりなかったことが窺われます。いずれにせよ、イールドカーブを決めるうえで、短期金利が企図した形でコントロールできなくなると土台が壊れてくることになるため、指値オペ以外にも早めに日銀はケアをしてきたと解釈できます。

今回の決定会合は多くの市場参加者にとってサプライズであり、市場にサプライズを起こすことは日銀がよくやる方法であり、日銀流ともいえます。ただ、サプライズを起こすと自分が企図した政策のメッセージを出しても信用されなくなるなどのリスクもあります。来年は金融政策について政策の転換点が多くありそうなので、研究という観点でも注視していきたいと思っています。

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