筑紫哲也さんの「NEWS23」 に出て、親孝行をしてしまった
今は亡き筑紫哲也さんがメインキャスターだったTBSの深夜の報道番組「NEWS23」から、取材を受けたことがあります。
女性のディレクターがやってきて、「環境ホルモン問題で環境庁はマスコミから叩かれているが、我々は環境庁の職員が頑張っている姿を描きたい。一日密着取材をさせて欲しい」ということでした。
課長に相談したところ、そういうことならとOKが出ました。
取材クルーが登場して、カメラマンは私の机の近くに構えて、私が勤務する姿をカメラに収めておりました。
会議のために外に出る後、カメラマンも外に出ました。
時間ギリギリで、遅れないように道路を走ると、カメラマンも走って追いかけてきました。
まるでドラマ「太陽にほえろ!」でした。
知らない人のために説明すると、やたら走るシーンが出てくる伝説の刑事ドラマです。
テーマ曲がかっこいい!
丸一日密着して、撮影クルーは帰っていきました。
どのような番組になるか楽しみでした。
TBSは私の故郷の椎葉村でも放送されており、これで親孝行もできると思っておりました。

さてさて、放送日がやってきました。
特集が始まり、私が電話をしている映像がまず流れてきました。
「よっしゃーっ!」
そう思ったところ、テロップの名前が間違っていました。
椎葉村の「椎」ではなく「稚」でした。幼稚園の「稚」です。
走るシーンも、「太陽にほえろ!」とは真逆でした。
ワイシャツがはみ出ており、それは見苦しいものでした。
最後にインタビューがありました。
収録のときは、5問答えて、1つだけうまくいかないものがありました。
それが使われていたのです。
コメントがまずくて、「こいつ大丈夫か?」とテレビを見ている人に不安を感じさせるような、たどたどしいやりとりです。
番組は引き続き、目玉の「筑紫哲也の多事争論コーナー」に突入しました。
筑紫キャスターは、手書きのテロップを使って、話を始めました。
「環境ホルモンは、正式には内分泌攪乱化学物質といいます。まさに世の中を攪乱させているのは、霞ヶ関の官僚たちなのです」
これには参りました。
この映像を、椎葉村の親戚一同が見ているのです。
そもそも、ディレクターは環境庁の役人の頑張っている姿を描きたいと言っていたではないか。
しかしこれは、役人たたきの番組だ!
翌日、怒り心頭で、ディレクターに抗議の電話をしました。
「なぜ、あのような番組になったのか。最初の話と違うではないか」
「キャスターの判断で、最終的に企画が変更されてあのような放映となりました」
電話の向こうの女性ディレクターは、必死に弁解しておりました。
「だました訳ではないのです。最初の企画はそうでしいた。本当です。信じて下さい。番組にとって看板キャスターは絶対なのです。最終的な企画の判断は筑紫キャスターがもっており、私たちではないのです。本当です……。」
「言い訳」を続ける声を遠くに聞きながら、私は受話器を置きました。
「しかし、名前を間違えたのは、お前らのせいだろーっ!」
そう叫んで、霞ヶ関の官庁街の中を太陽に向かって走りました。(これはうそです。)
椎葉村の両親に電話して聞いたところ、「夜が遅かったので、寝とって見とらんかったわ」とのこと。
見てねーのかい。
息子の醜態を見られずによかった。
親孝行をした、と思いました。

これ以降、「NEWS23」は見なくなりました。
ジャーナリストとして尊敬していた筑紫さんの番組であり、エンディング曲だった井上陽水さんの「最後のニュース」も大好きで、よく見ておりましたが……。
今では、テレビそのものも見なくなりました。
その分、考えて書く時間が増えてよかったと思っています。
