地域医療を学ぶためには「地域医療学」ではなく「地域医療道」が必要である
日本地域医療学会に出席しました。
学会では、「集まれ!!未来の地域総合診療専門医」と題した医学生の活動報告がありました。
座長をされたのは、日本地域医療学会の監事で、全国自治体病院協議会副会長の吉嶺文俊先生と、新潟大学大学院医歯学総合研究科特任教授の井口清太郎先生です。
「地域医療学」という言葉を「地域医療道」と表現していました。
「学」は、知識と実践を切り分けて語ることができるのに対して、「道」は知識と実践が一体となり不可分になるとのこと。
剣道や柔道がその代表格となるそうです。
地域医療道は、地域医療に関する学びと実践を一つに結びつけていく姿勢を指すものだと言っておりました。

富山大学医学科、三重大学医学科、徳島大学医学科、新潟大学医学科の4つの医学生が、取組を発表しました。
富山大学には、医学科の学生で組織する「虹の鳥」というサークルがあり、「街ナカ保健室」、「ぬいぐるみ病院」の取組が紹介されました。
地域医療について学びたいが、地域について知らなかった。そこで有志が集まって工作教室のイベントを開催したところ、予想以上に地域の人が集まってくれた。
学生も地域の一員になれるのでは、と活動を広げていった。
大学の同世代だけでつながるのではなく、地域の○○さんと知り合いになることが大事。
街ナカ保健室では、BSL講習や救命方法について教えてみた。
地域住民は医療や健康について遠いものだと考えている。
もっと近くになればと思って実施した。
ぬいぐるみ病院は、ぬいぐるみを治す病院ではなく、ぬいぐるみをつかって診察技術を学ぶという取組。
子どもたちにぬいぐるみをつかって、鼻咽頭検査のしかたなどの手技を教えたりすると、病院が怖くなくなる。
親子連れが興味をもって参加してくれる。
一方的な情報提供ではなく、双方向の交流が大事。
最近は、コラボ企画の依頼が多くなった。
地域に出て地域を知る楽しさを知った。地域の一員としての実感を得た。

三重大学には、 MIEGP12という総合診療医養成を目的としたプロジェクトがある。
地域医療の現場の見学や、地域活動の補助、月に一度のミーティングでのミニレクチャーや活動報告を行っている。
今年から大学周辺の栗真町屋町をフィールドとした活動を実施している。
三重大学が立地するにもかかわらず、学生と地域住民のつながりが希薄だった。
そこで、学生が地域の祭りや高齢者のサロンの運営の手伝いを行い、アンケートやインタビュー調査を行って、地域のニーズに基づいたサービスが提供できないか、模索中である。
これまでは大学から遠い地域で活動をしていた。
しかし、大学周辺の地域での活動に変更した。
祭りは担い手不足でやめる寸前だった。
高齢者のサロンでは、健康教育、フレイル予防などを行い、また畑をかりて、地元の人の指導を受けてサツマイモの栽培を体験した。
学生と地域の人に交流が芽生え、学生が地域に求められているという実感を得た。
顧問の総合診療科の先生が、学生の取組をいろいろと支えてくれたのがよかった。

徳島大学には、地域医療に革命を起こすという目的をもった。T-CoMというサークルがある。
Tokushima Community of Medecine の略で、学生の立場から徳島の医療従事者を増やすために結成された。
徳島県の南部に海南町があり、ここに海南病院がある。病院が人手不足で困っていた。
海南町出身の医療従事者を増やすために、病院祭りの際に学生くらしの保健室コーナーを設置して、PRするなどの取組を行った。
活動は海南町の役場と一緒に実施している。大学から海南病院にいくときは、町のマイクロバスの送迎協力を受けている。
インスタなどの発信も行っている。

新潟大学では、「ひよこドクターのほけんしつ」という取組を進めている。略称は「ひよほけ」。
学生による健康相談の場で、地域住民の健康に対する意識の向上を目的として設置した。
不明な点は、付き添いの指導医に相談する。
この取組は、今年6月に札幌市で開催された日本プライマリケア学会で発表した。
こうした発表で他の大学との交流が進んだ。大分大学医学部でも「ひよほけ」が行われると聞いている。
学生の健康相談は、住民にとって医師にはきけないことを聞くことができると言っていた。学生の方が聞きやすいとのこと。
住民の方々と気軽に話せる関係をつくる。地域とのつながりを深める。低学年から学べる環境づくりとなる。
こうした取組は、持続的な医療サイクルの構築を目指すために有効である。

富山大学の学生は、次のイベントとしてメディカフェの取組を進めるといっていました。
こうした取組は、全国の医学生が手を組めば、同時多発的に実施することができるので、つながろうと呼びかけていました。
動機付けは、「なんだか面白そうなことやっているな」が大事。
「意識高い系」は、だめ絶対。
講評する時間が無くなったので、最後に座長が、「いいドクターになってね!」で終わりました。
学生たちの熱気あふれる心地よい時間を体験できました。
ところで、宮崎大学医学部にはこうした地域医療を学ぶサークルはあるのかしら。
ネットで検索すれば、すぐ他の大学とつながるいい時代になったと思います。
