2025年5月28日の法改正で災害救助法に「福祉」が明確化された。次期社会福祉法改正では、平時から災害時を見据えた包括的支援体制の構築が検討課題となる
静岡市で開催された日本公衆衛生学会では、菅野拓先生の講演を聞きました。
菅野先生は、大阪公立大学大学院の准教授で、専門は地理の先生です。
菅野先生の著書「災害対応ガバナンス-被災者支援の混乱を止める-」を読んでファンになりました。過去のハベレオ通信にも書いています。
先生のご講演を聞くために、この学会に参加したと言っても過言ではありません。
災害救助法の歴史的背景と現行制度の問題点を解説され、特に福祉の視点の欠如や、平時の民間サービスとの断絶が混乱を招くと分析しておられました。
災害対応は特別なものではなく、平時の地域づくりや社会保障の延長に位置づけるべきだというメッセージは心に響きました。
その講演の概要をご紹介させていただきます。

1. 日本の災害支援体制の構造的問題
災害対応におけるソフト面の課題
- 日本はハード面(インフラ復旧等)に強い一方、ソフト面(被災者支援)が著しく弱い。
- 背景には法制度の構造があり、1947年制定の災害救助法が戦後の「収容施設」発想から根本的に更新されていない。
- 関東大震災から100年経っても、先進国となった現在において体育館での避難所生活などの課題が解消されていない。
災害救助法と平時システムの断絶
- 平時の食料・住宅・医療・介護等は民間(スーパー、不動産、クリニック、NPOなど)が担う。
- 災害救助法適用時には、これらを自治体が一手に担う設計となり、ノウハウ・人材不足で機能不全に陥る。
- 特に福祉分野は2025年4月まで災害救助法で明確に位置づけられず、最も支援を必要とする人へのケアが届かない構造だった。
-災害の担い手として位置づけられていたのは、保健師だけだった。
災害救助法の歴史的背景と理念の形骸化
- 戦後GHQの指導、昭和南海地震の反省から制定。
- 憲法の生存権保障を背景に、生活保護を参照した「社会保障」の一環として構想された。
- しかし時が経ち、ハード中心の災害対策基本法等が整備される中で理念が薄れ、土木事業的イメージが定着。
- 介護保険等も災害時と結びつかず、福祉専門職が災害対応に関与しない体制となっている。

2. 解決策としてのフェーズフリーと新たな取り組み
災害ケースマネジメントの導入
- 東日本大震災の教訓から国レベルで導入。
- 平時の包括的支援体制を災害時に拡張する考え方で、アウトリーチ→アセスメント→計画→支援実行のプロセスにより個別に寄り添う。
- 平時の専門性(プロ)を災害時にも活かし、支援の実効性を高める。
法改正と連携の強化
- 2025年5月28日の法改正で災害救助法に「福祉」を明確化。
- これにより、DMAT同様に福祉専門職チーム(DWAT等)が避難所を訪問する動きが進展。
- 民間との連携も前進し、生協に物資配達を委託する等の協力体制を検討。
- 次期社会福祉法改正では、平時から災害時を見据えた包括的支援体制の構築が検討課題に。
フェーズフリーのまちづくり
- 混乱解消の鍵は「フェーズフリー」。平時のつながりの中で共に動く思想。
- 「餅は餅屋」で各専門分野が平時から連携し、得意技を災害時にも活かす世界を目指す。
- 平時から連携体制と「見える関係」を整え、平時のプロが自然に災害対応へ参画できる地域づくりが本質的解決となる。

以上です。
災害救助法に福祉が入ってよかったです!
後に、2025年は「災害福祉元年」と言われることになるでしょう。
