「記者会見」というツールを使って沈静化させていくことが、危機管理のプロの仕事である
記者会見の失敗が多いような気がしています。
ある組織が危機管理をせざるを得ない状況になると、マスコミの記者たちが群がります。
こうした記者たちを放っておくと、勝手に取材をして、危機管理作業の邪魔をします。
彼ら彼女らから逃げると、猟犬のように嗅ぎつけて追ってきます。
定期的な記者会見を開いて、記事になりそうな情報を提供するなど、ガス抜きをしないと爆発して炎上します。
こうした「記者会見」というツールを使って、危機状態を沈静化させていくことが、危機管理のプロの仕事です。
いやいや行う会見は、記者たちが納得しませんし、収束せずにかえって拡散していきます。
中途半端な準備で会見に臨むのは、大変危険です。
会見の場で発表していない新たな事実が発覚したら、記者たちから隠していたと思われて、それこそ目も当てられない状況になります。

日本大学のアメリカンフットボール部の大麻問題
ビックモーターの自動車保険の不正
ジャニーズの元社長の性加害
宝塚歌劇団の団員の自殺問題
フジテレビの性加害問題
いずれも中途半端な調査で、記者会見が失敗に終わっています。
会見で世間は納得しませんでした。
日大アメフト部は廃部となりました。
ビックモーターは保険指定が取り消されました。
ジャニーズは社名変更を余儀なくされました。
宝塚は公演が中止となり、あらたに労働基準法違反の疑いで労働基準監督署の立ち入り調査を受けました。
フジテレビは広告中止が相次ぎ、その影響は今も続いています。

私は、危機管理の記者会見の仕方について、プロから研修を受けたことがあります。
悪い見本として、雪印の社長と富山の焼き肉屋の社長の例があることを教えてもらいました。
黄色ブドウ球菌の毒に汚染された雪印の牛乳を飲んで、大阪を中心として食中毒が発生して多くの子供達が病気になりました。
富山の焼き肉屋で提供された生レバーやユッケが病原性大腸菌に汚染され、これを食べた子供が亡くなりました。
雪印の社長は追いかけて来た記者に向かって怒って「私は寝ていないんだーっ!」と叫びました。
記者は、多くの被害を受けた子供たちが苦しんでいるのに逆ギレするとはなんだ、となってさらに燃料を投下することになりました。
富山の焼き肉屋の社長にいたっては、生レバーを禁止しなかった厚労省が悪いと、当初は謝罪をしませんでした。
ところが、その次の記者会見では一転して土下座謝罪をしました。
この二人の社長のシーンは、何度も繰り返してテレビで流されました。

被害者がいる場合の会見は、被害者の救済が最優先です。
研修では、記者からの質問に対しては「被害者の救済に全力を尽くしてまいります。」というフレーズを加えよと言われました。
例えば、次のような感じです。
その件につきましては現在調査中で、わかり次第公表をさせていただきます。現在は、被害者の救済に全力を尽くしてまいります。
仮定の話には、お答えすることができません。いずれにしろ、被害者の救済に全力を尽くして参ります。
社長の被害者への直接の謝罪のご提案につきましては受け止めさせていただきます。今は、被害者の救済を優先させていただきます。
被害者への対応を最優先にすることを繰り返すことで、殺気だった記者会見の場が、次第に静まっていくということでした。
危機管理の記者会見を経験することはなかなかありません。
稽古不足を幕は待たない、危機はいつでも初舞台
です。
危機管理対応の練習はできませんが、佐々淳行さんの危機管理シリーズは、大変勉強になります。
おすすめです。
