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今から30年以上も前、スイスの公共のトイレの男性用小便器内に「射的の的」があった。それは「ハエ」の絵だった

橋本之克さんの「世界は行動経済学でできている」(アスコム)を読みました。

行動経済学は心理学と経済学を組み合わせることで、人間の不合理な行動の謎を解き明かす学問です。

行動経済学の理論は、ビジネスやマーケティングの場で、「人々を企業などにとって都合の良い方向に誘導するため」に多数活用されているとのこと。

橋本さんは、行動経済学の知識を得て、それを自分で実践していくことで、私たちは、よりより賢い生活者になることが可能だと言っております。

この世界は、行動経済学でできている。そのカラクリをぜひ、一緒に学んでいきましょう。

「行動経済学には騙されないぞ」と、実は警戒をしてこの本を購入をしました。

しかしあっさりと降参してしまいました。

行動経済学の例示として、公共トイレの男性用小便器内に「射的の的」の絵を描いて、トイレを汚さない努力を自然な形で促すことが紹介されていました。

行動経済学でいう「ナッジ」という考え方が用いられています。

ナッジ(nudge)とは、英語で「(注意を引くために)軽くつつく、そっと押す」という意味の言葉で、それが転じて「ある行動をそっと促す」ことをいいます。

ビジネスや行政の現場では、この行動経済学の「ナッジ理論」を活用し、強制したり罰則を設けたりすることなく、人々が自発的に良い行動を選択できるように促しています。

今から30年以上も前に、スイスに行ったときに、公共のトイレを利用しました。

そのときに男性用小便器内に「射的の的」があったのです。

その絵は「ハエ」の絵でした。

ニヤリとして、そのハエめがけて放尿しました。

私は、一瞬でナッジ理論の餌食になったわけです。

日本では、このようなハエ印の的を見ることはありませんでした。

恐るべし行動経済学。

そうしたことから、この本を読み進めました。
結論からいえば、行動経済学は公衆衛生です。

世界的IT会社のグーグルのニューヨークのオフィスの事例があります。

グーグルは、社員の健康維持や、より良いパフォーマンスを引き出すこと、社員同士のコミュニケーションの活性化などを目的として、社員食堂の運営に力を入れています。

食事は全て無料で、豊富なメニューを取り揃えたビュッフェ形式のランチや、無料の自動販売機なども設置されています。

そのためアメリカでは、グーグルに転職すると15ポンド(約6・8キロ)太ると言われ、「The Google 15」という言葉までありました。

そこで、社員の健康増進のため、さまざまな対策を実施することになりました。

野菜や果物をできるだけ目立つところ、取りやすいところに置き、デザートやお菓子、甘いジュースなどハイカロリーのものは、取りにくい場所や容器に変えました。

その他にも、小さい皿を使うことを奨励するなどの取り組みを行い、社員の摂取カロリーを10%以上減らすことに成功したそうです。

人は基本的に面倒くさがり屋なので、「取りやすいところに置いてあるもの」を選びがちです。

こうした選択と行動は、ほぼ無意識に行われているため、従業員側に自主的に選ぶものを変えてもらのは簡単なことではありません。

そこで、太る原因になりそうなものを取りにくくして、「取るのが面倒だから選ばない」形に変えたのです。

うーむ。やるな、グーグル。

他の行動経済学の例として、「同調効果」を利用した取り組みが紹介されていました。

「同調効果」は、自分の意見や信念を曲げて多数派に従ってしまう心理効果です。

人間は集団で生活する生き物なあので、同調することが良いと捉える本能を持っています。

集団から外れず、集団と同じ行動をすることで安心を得ようとするのです。

逆に集団から離れた孤独な状態ではストレスを感じてしまいます。

これは、良し悪しや、意味の有無とは関係のない、人間の本能によるものです。

同調効果の代表は、同僚や友人たちと居酒屋に行って最初の飲み物を決めるとき、「トリアエズナマ」を選んでしまうこと!

みんなに合わせたい」は人間の本能でした。

「同調効果」が悪い方向に働いてしまうと、災害で警報が発令されていても、周囲が避難しないので自分も逃げないといったことも起こります。

「同調効果」を知ったうえでうまく活用すれば、よい効果を生むこともできます。

熊本地域医療センターでは、看護師の制服を勤務時間帯で色分けすることで、同調効果をうまく利用して残業時間の削減に成功しました。

この病院では、看護師の残業過多が問題になっていました

そこで、時間管理をしやすくするため、看護師の制服の色を日勤を赤、夜勤を緑に変えたのです。

残業が多い理由には、終業間際であっても仕事を振られれば断りにくい、という事情がありました。

色分け後は一目で勤務時間がわかるため、まわりの人も、勤務終了が近い人に新たな仕事を依頼しなくなりました。

同時に、色分けによる看護師故人の意識の変化も影響したと考えられます。

真面目な看護師ほど、時間を超過しても仕事をこなそうとする傾向があります。

ところが、周囲の看護師が時間で交代していくと、「同調効果」により自分も終わらせようと思うようになったのです。

まわりに異なる色の制服の看護師が増えると、自分が残っていることに居心地の悪さを感じ、早く交代しなければ、と思ったわけです。

これもまた「同調効果」の裏返しです。

毎日終業1時間前には院内放送で「院歌」を流し、スタッフや患者さん双方に交代時間が近づいていることを意識させる工夫も行われました。

こうして、この病院では2014年度の導入以後、前年度に一人当たり年間約110時間だった残業が半減しました。2018年度には約20時間と、導入前の5分の1まで減ったそうです。

離職率が半減し、交代時間の20分前出勤をルール化し、引継ぎをシステム化したことで、以前の「定時よりかなり早く来て情報収集する」というサービス残業状態も解消されました。

病院の取組は、大掛かりな設備投資やコストをかけず、持続可能な労務改善を達成したと評価されています。

日本看護協会の「看護業務の効率化先進事例アワード」で最優秀賞を受賞しています。

行動経済学は公衆衛生です。

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