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公衆衛生は、便所を水源から遠くに離したことから始まった

便所の話をしたいと思います。

昔、少年ジャンプに「トイレット博士」
というトイレ漫画がありました。

とりいかずよしさんという漫画家の、
学校を舞台にした漫画で、
かなり長期間にわたって連載されました。

連載当時は、
一般家庭にもくみ取り式の便所が多く、
洋式便所は
まだそれほど普及していませんでした。

題材が題材だけに、
内容は汚くて面白い、
「うんちく」の多いものでした。

自分のうんちから検便の検体を取るのがいやで、犬のうんちから取って学校に出したら、
保健所から連絡があり
家族全員が検便の再検査をやるはめになった
とか、とにかくネタはすべて糞便系でした。

今考えると、たいへん汚いものが多く、
よくぞ編集長が
連載を許可したものだと思います。

厚労省の安全衛生部長をしていたときに、
建設業の社長の話を聞いたことがあります。

「建築小町」という
建築現場の便所の改革に取り組む
建築業の女性グループの話でした。

外で作業をすることの多い建築業で、
女性の作業者が一番困るのは便所です。

便所の数や、男女別になっているか、
汚くなっていないか、が大事です。

便所が汚いものだったら、
使用することを我慢して
水を飲まずに熱中症になるなど、
便所は安全衛生上の問題です。

労働安全衛生法の安全衛生規則には、
便所の規定があります。

ちなみに、法令では「便房」と呼びます。

建築小町は、
建築現場の便所改革を呼びかけていました。

建築現場の便所がきれいになれば、
女性の建築作業員が来る。

女性が来れば、
男性作業員が張り切って仕事をする。

「便所を変えることにより好循環ができる」
と社長は力説していました。

山登りや災害時も
同じような「便所問題」が起こります。

山ガールが増えたのは、
登山道のトイレをきれいにしたことが
大きな要因だったようです。

なるほどと感心した私は、
便所についていろいろと調べました。

警察は、
特別に造った「トイレ車両」を
持っていることを知りました。

警備などで外で長時間待機している際に、
近くに公衆トイレがあるとは限りません。

警察官の立ちションはNG。

そのために
トイレが備え付けられた特殊車両を
待機しておくのです。

トイレ車両には
小便器と大便用の便房が複数あり、
外からは全く判りません。

総理官邸での会議で、
ダイヤモンド・プリンセス号の
感染者一〇〇人以上を、
新設で稼働前の
藤田医科大の岡崎医療センターに
移動させることが決定しました。

横浜から愛知県の岡崎市までの移動は、
自衛隊が担うことになりました。

移動中のトイレ問題が浮上します。

実は、自衛隊の保有するバスには
トイレが付いてなかったのです。

高速道路のサービスエリアのトイレを使うと、
他の利用者やマスコミから
批判されるのではないか。

会議室から出てきたばかりの
防衛省統合幕僚監部総括官が苦渋の表情でした。

防衛省の衛生監だった私は、
官邸の廊下で、
スマホで警察のトイレ車両を検索して、
その画像を総括官に見せました。

総括官は、私のスマホを取って走りだしました。

こらー、スマホ返せ!

その後私のスマホは無事に戻り、
警察庁とも話がついて、
自衛隊のバスに、
警察の二台のトイレ車両が
つくことになりました。

自衛隊と警察が共同した
長距離移送作戦は成功しました。

移動中、トイレの苦情もありませんでした。

便所を研究しといてよかったです。

そもそも、
公衆衛生は、
便所を水源から遠くに離したことから
始まりました。

便所を管理するものが、作戦を制します。

総括官はその後に防衛省の局長となりましたが、残念なことに
現職のときに病気で亡くなりました。

この話を知っているのが日本で私ひとり
となったので、
新型コロナウイルス感染症対策の
歴史の一ページとして記録に残しておきます。

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