松本清張は、小説のAKBが重要だと言った
新潮文庫の「文豪ナビ 松本清張」を読みました。
いろいろと勉強になります。
堅実な作家活動をしていた松本清張が大きく飛躍するきっかけとなったのが、「点と線」です。
中央省庁の汚職を殺人の動機としたこと。
東京駅の13番ホームから15番ホームを見通せるのが1日に4分しかないという事実を織り込んだこと。
東京から博多という旅情がたっぷりあること。
トリックを考案した人物にほの暗いロマンチシズムがあったこと。
これだけ読みどころがあれば人気が出るのは当然だとしています。
「砂の器」は、方言をミステリーに盛り込み、犯人が属する流行の最先端で活躍するヌーボーグループと、昔かたぎのベテラン刑事との対比を描いています。
新しい時代と古い時代の相克、という作品のテーマが浮かび上がってきます。
物語の最後の台詞が決まっています。
「球形の荒野」では、冒頭の唐招提寺で父の筆跡を見つけた娘は、父は生きているのではないかという疑いを抱きます。
父は外交官でスイスに駐在して密かに終戦工作を行っていました。
唐招提寺のラストシーンは、感動的です。
中学生の頃に読んだ気がします。

森村誠一さんは松本清張を「永遠の灯台」と仰いでいます。
巨匠だった大佛次郎、川口松太郎、石川達三らは没後にことごとく消えているのに、清張は依然として現役同然、あるいは以上の名声を維持し、同業者の追随を許さない。
松本清張は、新人の森村誠一さんを歯牙にもかけませんでした。
森村さんは、まるで路傍の石榑のように扱われました。
ある日、編集者から「森村さんの作品は小説ではない」と清張が言っていたことを聞かされます。
清張ほどの巨匠が自分の小説を意識していると感じました。
ほどなくして清張から名指しで、文庫本の解説を依頼されました。
森村誠一さんの出世作である「人間の証明」は、清張リスペクトのような作品です。
おそらく、
殺意は「ゼロの焦点」、
地名の探索は「砂の器」、
最後は「黒地の絵」
を参考にしています。
清張が、川端康成の「伊豆の踊子」を意識して書いた「天城越え」に似ています。

松本清張の講演は面白いです。
もちろん、聞いたことはありません。
残された講演の記録を読んだだけ。
小説はプロットも大事ですが、人物の性格、事件の持つ雰囲気を盛り上げるための背景も重要だと言っています。
あらすじ、キャラ、場所の3つです。
さながら「小説のAKB」という感じです!
清張は場所にこだわっています。
北陸能登の高浜海岸や青木ヶ原樹海を、ヒロインの主人公が自殺する場所に選んでいます。
世の中の全てを犯罪と結びつけて考えています。
夫婦間の闘争が文豪を生んだという見方が面白いです。
具体例として、トルストイ、鷗外、漱石をあげています。
伊能忠敬は、若き妻が出奔したことで、全国を歩いて測量しました。
岡倉天心は、妻と愛人からインドに逃れて「茶の本」、「日本の目覚め」を英文で書きました。
開高健も、奥さんから逃れるために世界を旅して「オーパ」を書いたと言われています。
私は、小説のネタに、場合を考えたことはありませんでした。
これからは場所を意識しようと思いました。

丸一日、公衆衛生の原稿を書きました。
一歩も外に出ませんでしたが、別に苦痛も感じませんでした。
作家に向いているかも。
ただ、松本清張は、毎日日17時間机にむかえといったそうです。
駄目だこりゃあ。
でも、できる範囲でやるっきゃない。
目指すぞ、直木賞!
