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社会保障のレポートをまとめた若手に、三人の論客は日本の歴史や文化をもっと学ぶようにと指摘した

厚生労働省の医政担当の審議官だったときに、議員会館で、ある国会議員から「経産省はすごいぞ」と声をかけられたことがあります。

経産省の若手が集まってとりまとめた「不安な個人、立ちすくむ国家 ~モデル無き時代をどう前向きに生き抜くか~」というレポートを、経産省の局長が国会議員に配って説明しているとのことでした。

レポートの内容をざっくり言えば、
日本の社会保障制度における年齢による一律の区分を廃止し、
個人の意欲や健康状態、経済状況などに応じた負担と給付を行う制度に抜本的に組み替えていくべき、

という主張です。

そうすれば、
個人の生きがいや社会のつながりを増やすし、
財政負担の軽減にもなる、

と言っておりました。

議員は、「このレポートは大したもんだ。それに比べて本職の厚労省は何をしているのかねえ」と苦言をたれたのです。

私は怒りがこみ上げてきました。

「厚労省の職員は忙しいのです。経産省ならエネルギー政策やら、新しい時代の日本の産業振興政策を検討すべきでしょう。そもそも経産省に社会保障を検討してくれと頼んだ覚えはありませんが……」

議員からは「まあまあ、そう怒るなよ」と笑いながら諭されました。

この経産省の若手レポートは、ネットでも評判となり、文藝春秋社から本で出版され、ベストセラーにもなりました。漫画にもなっています。

関東信越厚生局に勤務したときに社会保障を担当したので、この本をアマゾンで取り寄せて読んだことがあります。

文藝春秋社の本には、経産省若手と論客三人との座談会が収録されていました。

医師の養老孟司氏、実業家の冨山和彦氏、作家の東浩紀氏です。

養老氏は、「旧世代はモデルとして確固たる目標があったが今の若者はない、という認識は間違っている」と切り捨て。

冨山氏は、「現実を直視することが、何はさておき出発点」とやり直し。

東氏は、「高齢者の年金をカットして若者に付け替えることを、どうやって実現するのか書かれていない」と全否定。

社会保障を抜本的に変えるためには、モデル化した現状認識ではなく、現実を直視し、具体的な実現方法を提示しないと絵に描いた餅と指摘していました。

三人の論客は、日本の歴史や文化をもっと学ぶように言っておりました。

このレポートは新型コロナウイルス感染症のパンデミック前のものです。

新型コロナウイルスは、あらゆる状況を一掃しました。

くだんの議員は、厚労大臣に就任されましたが、その間、大臣からは経産省の若手レポートの話はいっさい出ませんでした。

もう二度と、経産省の若手がスキマ時間に社会保障のレポートを書いて、経産省の局長が国会議員に説明してまわるようなことはないでしょう。

社会保障の抜本的改革は、難しいです。
具体的な実現方法を提示できなければ、絵に描いた餅です。

餅は餅屋に任せるべきでしょうが、
現実を直視できない、
絵に描いた餅屋」には任せられません。

社会保障の歴史を知れば知るほど、不安になり、立ちすくみます。

社会保障についてわずかですが、大学で講義をしました。

そのときの議事録が、リアルな実態を踏まえた「保健医療福祉行政・財政の理念と仕組み②ー社会保障と国際協力」です。

それこそスキマ時間に読んでいただけれは。

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